契約社員に休職制度を適用させないといけませんか?
今回は「契約社員に休職制度を適用させないといけませんか?」を解説します。
休職制度とは、業務外でのケガや病気(私傷病)で、一定期間仕事を休んで療養が必要な場合に、会社が労働義務を免除する制度となっています。
休職制度は「必ず定めなければならない」と法律で決められているものではありません。
よって、会社ごとに休職期間が設定されています。
就業年数によって休職期間に差を設けている企業が多いようです。
しかし、「休職制度は会社が自由に決められる」のでしょうか? 特に働き方改革で、「正規社員と非正規社員の処遇差をなくそう」ということを実施しなければなりません。
これに関する裁判があります。
<日本郵便(休職)事件 東京高裁 平成30年10月25日>
〇時給契約の期間雇用契約社員Aは約8年8ヵ月就労後、傷病で出社できず、6ヶ月後に雇止めとなった。
〇Aは「雇止めの無効」「ペイバック等の支払い」を求めて裁判を起こした。
〇原審(東京地裁 平成29年9月11日)は、時給契約の期間雇用契約社員の職務は、正社員と職務内容の違い、雇用の期間が異なる等の理由で、不合理な労働条件の相違ではないとした。
→法人側の主張が通ったが、その後、別の裁判、日本郵便(東京)事件で正社員と期間社員の病気休暇の相違が違反と判断された。
〇Aはこの判断に納得せず、控訴した。
そして、東京高裁は以下の判断を下しました。
〇不合理な労働条件の相違ではないとし、本件控訴の理由がないと棄却となった。
裁判の大きな争点は病気休暇と休職制度についてです。
前提となる労働条件は以下となっています。
〇正社員には勤続年数に応じて90日又は180日以内の有給休暇と最大3ヵ月の休職制度が認められる
〇時給制契約社員は無給の10日間の病気休暇しか認められない
この労働条件の相違が労働契約法20条(同一労働の正社員と非正規社員の労働条件に差をつけてはいけない)違反を主張されたのです。
原審では「時給制契約社員を含む期間雇用社員の職務内容や、職務内容の変更範囲や配置の変更範囲について相違が大きい」「正社員等には長期雇用の確保から休職制度を設けている」となっています。
この2点を挙げ、不合理な労働条件の相違とは認められないとしたのです。
そして、高裁では更に詳細な事実認定を行ったのです。
それは、正社員の中でも時給契約社員に近い一般職と比較し、業務内容、スキル、責任の範囲等を比べたのです。
その結果、業務内容については、大きな差異はないが、期待される習熟度やスキルについては違いがあり、責任の程度も異なることが認められました。
更に、一般職は転居を伴わない転勤があるが、時給制契約社員は、特定された職場及び職務内容での勤務なので、労働条件に関し一定の相違があると認められました。
さらに、時給制契約社員も傷病手当金の受給ができ、金銭補てんの治療が可能なので格差が不合理ではないとされました。