非正規社員にも賞与が必要になります?
今回は「非正規社員にも賞与が必要になります? 」を解説します。
同一労働・同一賃金の対応についてご質問の多い「賞与」について解説いたします。
「パート社員にも賞与?」と感じられる方が多いと思いますが、皆さんはいかがでしょうか?
今まで、契約社員、パート社員等は「時給」で、賞与や退職金は「当然に支払わない」と考えられてきました。
しかし、非正規社員と正社員との「差」を禁じた労働契約法ができ、さらに2020年4月からはパート・有期労働法で、強制力を持った形で法改正がスタートしています。
それに先駆けて、正社員と非正規社員の処遇の差が「違法」ではないかという裁判が多く出てきたのです。
特に賞与については支払いの判断が下されたものがあります。
<大阪医科薬科大学事件 大阪高裁 平成31年2月15日>
〇有期アルバイト職員が、正職員との差額賃金(賞与含む)を請求した(基本給の差額、賞与の差額等で1,038万円を請求)
〇地裁の判断は「すべての相違は不合理ではない」と判断された
〇裁判は上告されました。
そして、高裁は以下の判断を下したのです。
〇基本給について、不合理ではない(差があっても問題ない:異なる賃金制度のため)
〇賞与について、アルバイト職員について、年齢、成績、会社業績にも一切連動していないことからすれば、功労の趣旨での砕石に対する対価と認定。
〇賞与は正職員の60%は支払うべき
以上となったのです。
また、賞与に関連する裁判が以下です。
<井関松山製造所事件 松山地裁 平成30年4月24日>
〇契約社員が「正社員との処遇差が違法ではないか?」と裁判を起こした
〇問題となる差異は賞与、家族手当、住宅手当等であった
〇賞与は正社員35万円から38万円で、契約社員は寸志5万円程度であった
そして、裁判所は以下の判断を下したのです。
〇賞与について、賃金後払い、功労報償、将来の労働に対する勤務奨励と複合的な性質である
〇正社員と契約社員では、業務責任が一定程度相違しており、また、配置変更範囲の相違があることや、寸志が支払われていたり、正社員登用制度があることから不合理ではない。
〇賞与の差異については違法ではないと判断された。
この2つの裁判をみてみると正社員と非正規社員の違いは、「長期雇用を前提として将来に中核的な責任を担うことが期待される正社員に対し、賞与を手厚く支給すること」は当然と考えらえます。
さらに、正社員の定着を図るための施策として一定の合理性があるという考え方です。
よって、賞与の格差が、「将来企業の中核を担う正社員定着のための施策」として合理的に説明がつく場合は、正社員と非正規社員の間に賞与の格差があっても問題ないでしょう。
とはいえ訴訟リスクを回避するためには非正規社員に「寸志」の賞与支給をおすすめします。