傷病で復帰できない場合、解雇はできるのでしょうか?
今回は「傷病で復帰できない場合、解雇はできるのでしょうか?」を解説します。
社員が病気やケガで、業務に就けない場合、多くの会社では、休職制度を活用して回復を待つということになります。
そして、病気やケガの程度では、休職期間が経過しても業務に戻れない場合もあります。
こんな場合、就業規則等では「期間満了により退職、解雇」と記載されているケースがほとんどと思われます。
しかし、実際の対応として、「満了によりすぐに退職、解雇」という判断を躊躇する会社も多く、その理由としては「本当に法的に有効なのか?」と疑問の声も上がっています。
これに関する裁判があります。
<三洋電機ほか事件 大阪地裁 平成30年5月24日>
〇社員Aは自転車による通勤途中で自動車と接触し、頭部、胸部、腰部打撲、腰椎ヘルニア等の傷害を負った。
→3年程度の間、休職して回復を待った
〇その後、子会社の人事で復職し、内勤業務を行っていた。
〇そして、腰椎椎間板ヘルニアを理由に私傷病休職で約3年間休職扱いとなった。
〇休職後、復職となって内勤業務に従事していたが、進行直腸がんが判明し、休職となった
〇約3年超の期間を経てAは復職を希望したため、親会社、子会社、Aとの面談が行われた。
〇さらに、産業医との面談が実施された。
→会社が主治医の病状照会を依頼したが、Aは拒否した
〇その後、Aは子会社に復職したが、7日間の外勤活動を行ったが、その後有給休暇を取得した。
〇有給休暇消化後は欠勤となった。
〇会社は就業規則の条文である「精神または身体上の故障のため、業務に堪えられない時」に該当するとして、解雇を実施した。
〇Aは「解雇は無効」と主張し、裁判を起こした。
→腰痛は業務が起因したとも主張し、会社に対し、安全配慮義務違反等の主張も行った。
そして、裁判所は以下の判断を行ったのです。
〇解雇は有効
〇腰痛の原因は業務が起因していない
→会社の安全配慮義務違反ではない
この裁判を詳しくみていきましょう。
最後の休職期間が満了する前に、Aから復職を希望したが、会社が主治医の病状照会を希望したのも関わらず、それを拒否したのです。
そして、僅か7日間の勤務で欠勤等に陥っていることなどを鑑みれば、就業規則の「精神または身体上の故障のため、業務に堪えられない時」に該当するのは明らかと判断されたのです。
さらに、本件解雇は、客観的に合理的理由を欠くとは言えず、社会通念上相当であると認められると判断されました。
本来の労働契約は労働者が労務の提供を行いそれに対し、会社が賃金支払い義務を負います。
よって、労務の提供がなければ、解雇理由になるというのは当たり前のことなのです。
休職制度とは「解雇にさせないための執行猶予」と考えられます。