相手が嫌がらなければセクハラに該当しません?
今回は「相手が嫌がらなければセクハラに該当しません?」を解説します。
セクハラ(セクシャルハラスメント)の判断は難しいとされています。
なぜなら、「相手が嫌と感じたらセクハラになるが相手が嫌と感じなければセクハラに該当しない」と言われているからです。
判断の基準に主観が介入してくる割合が高いからです。
よく「セクハラと思われてしまった・・・」と委縮して、伝えることもあいまいになっていくとの話を聞きます。
しかし、ことのほうが業務上大きな問題なのです。
では、セクハラかセクハラではないか?そして、この基準はどのようになっているのでしょうか?
これに関する裁判があります。
<P大学事件 大阪高裁 平成24年2月28日>
〇大学教授(男性)Aが女性准教授に対し、しつこく食事に誘っていた。
〇上司の誘いなので、女性准教授はしぶしぶ応諾し、その飲酒の席でAは身体を触ってきた。
〇女性准教授は、この件後に急激に精神状態が悪化し、カウンセリングを受けるなどした。
〇その後、学部長と非公式に面談し、Aにセクハラを受けたことを訴えた。
〇さらに、学部執行部に対し同様の訴えをし、防止委員会に対し、救済を求める申立書を提出した。
〇大学は調査委員会を設置して調査をした上、Aのセクハラ行為により女性准教授の教育・研究環境を悪化させたなどとして、懲戒処分として、減給処分を行った。
〇Aはセクハラ行為を否定し、減額分の賃金の支払いを求めて提訴した。
〇地裁では「主張するようなセクハラ行為があったとは認められない」として、処分を無効とした。
〇女性准教授はこれを不服として控訴した。
そして、高裁では以下の判断を下したのです。
〇セクハラ行為を認めて、地裁の判断を取り消した。
〇Aの請求を棄却した。
この裁判を詳しくみていきましょう。
一般に、セクハラとは、「相手の意に反する性的言動」と定義されます。
飲食当日のAの行為は、店舗内において、右隣に座っていた女性准教授の左太股に手を置き、これに不快感を示したにもかかわらず、複数回にわたって同様の行為を繰り返したのです。
さらに、「おまえ」と呼びかけて、年齢や婚姻の有無を尋ねたり、地下鉄車内で二の腕をつかむなどしたというものであって、これらの行為は、セクハラに該当すると判断されたのです。
Aは「女性准教授は食事後『お気遣いありがとうございました』とお礼のメールが来ている」ことから誘いを嫌がっていないと反論しました。
これに対し、裁判所は「上司であるAの機嫌を損ねることを避け、自己に不利益が生じないようにした行為」と判断したのです。
職場内のセクハラ行為について被害者が明白な拒否の姿勢を示しておらず、同意があったまたはそのように誤信した等との主張がなされる場合がありますが、これは認められないと考えないといけないでしょう。