役職者の解任を行うにはどうしたら良いのでしょうか?
今回は「役職者の解任を行うにはどうしたら良いのでしょうか? 」を解説します。
「社員を昇格させて、役職の地位の仕事をこなしてもらおうとしたのですが、仕事をこなすどころか、地位にあぐらをかいて人が変わったような社員がいるのですが・・・」
このような相談が先日ありました。
課長の業務や部長の業務は今までと異なり、マネジメントの 能力が試されます。昇格させてポジションにつかせたら、「あれ?こんなはずじゃなかった・・・」となるのです。
そんなときは、すぐに解任するのではなく、もう一度、ポジションに見合う働きができように再教育することになるのです。
しかし、再教育等では対応できないことがあります。
そんな時は「役職の解任」となりますが、どのように進めれば良いのでしょうか?
これに関する裁判があります。
<社会福祉法人X社事件 大阪高裁 平成29年7月7日>
〇Aは特別養護老人ホームの施設長(管理職)をしていた。
〇ショートステイ利用者の補聴器の紛失が生じ、保険にて補償を行ったが、新たに購入した領収書の提示がなく、混乱が生じた。
〇死亡した入所者の遺留品を遺族に引き渡す際に確認書に署名押印をしてもらうルールであるが、これが実施されていなかった。
〇Aは施設内での喫煙ルールを守らず、喫煙場所を利用しないで、空き缶等を灰皿にして室内で喫煙していた。
〇職員が退職の申し出をし、退職したが、会社への報告は事後であったことが度々あった。
〇施設長として出席しなくてはいけない会議を正当な理由無く欠席し、「会議に出なくても理解できないし、知る必要もない」等の暴言を吐いた。
→会社は「不適切な問題行動」であるとした。
〇職員へのパワーハラスメントも存在した。
〇Aは整理整頓ができず、また、服を脱ぎっぱなしにして、ジャージ姿でうろうろしている等、職場の規律を乱す行為をした。
〇会社はAを施設長から解任した。
〇Aは、「この解任について、社会通念上相当ではないし、人事権を逸脱するので無効」と主張し、裁判所に訴えた。
〇一審では、「人事権の濫用ではない」とし、会社側の主張が通り、Aはこれを不服として控訴した。
そして、高裁では次の判断をおこなったのです。
〇本件解任処分は人事権の範囲を逸脱し、または濫用したものに当たるとはいえない。
〇したがって解任は有効である。
この裁判をみていきましょう。
Aが起こした数々の不適切な言動等は、施設長としての業務遂行の適格性を疑われる不適切な事情に該当すると判断されています。
人事権の行使として、一定の役職を解くことは、労働契約上、使用者の権限の範囲内のものなのです。
よって、「人事権の行使としての施設長の解任要件として、懲戒処分と同様またはそれに準ずるほどの事情が必要とは言い難い」と裁判所は判断しています。
懲戒処分より人事権行使の範囲は「広い」ので、このことを参考にして対応を考えましょう。