転籍の場合、年次有給休暇の扱いはどうなるのでしょうか?
今回は「転籍の場合、年次有給休暇の扱いはどうなるのでしょうか?」を解説いたします。
あるご相談がありました。
「子会社に在籍出向させていた従業員を、転籍扱いにしたいと考えています。年次有給休暇の付与日数が何日になるかは継続勤務した年数により決まりますが、転籍のタイミングでリセットすることになるのでしょうか?」
在籍出向と転籍出向では従業員の所属の籍が異なってきます。
このようなご相談はとても多く、会社の事情で対応が様々なケースが見られます。
年次有給休暇の日数は、「継続勤務」期間に応じて定まります。
「継続勤務」しているといえるかは実質的に判断されますが、たとえば、非正規雇用から正規雇用に切り替えられた場合や定年退職者が引き続き再雇用された場合、有期労働契約が反復更新されている場合においても、それぞれ継続勤務と解されています(昭63・3・14基発150号)。
在籍出向の場合についても、勤務の継続性を肯定しているほか、出向中の期間については、出向元で労働契約が維持されている以上、継続勤務と考えられます。
在籍出向させたタイミングで勤続期間をリセットすることはせず、出向期間も含めて在籍期間をカウントして、継続勤務年数が6年6カ月以上なら少なくとも20日の付与が必要になります。
一方、在籍出向から移籍出向(転籍)した場合ですが、「いわゆる移籍出向の場合については、出向元との労働関係はいったん消滅し、労働関係は新たに出向先との間に成立するので、継続勤務とみるのは困難」と解されています。
転籍の場合は雇用主である使用者自体が変更となることから、従来の雇用契約は消滅し全く新たな雇用契約を結ぶこととなるのです。
従いまして、グループ会社への転籍であっても原則としては、残有休の権利は一旦消滅し勤続年数も通算せずリセットされることになります。
但し、就業規則等でグループ会社間での年休引継ぎや勤続年数の通算が定められている場合ですと、そのように取り扱わなければなりません。
いずれにしても、転籍を行われる場合は原則として当人の同意を得ることが必要ですので、有休の取り扱い等も含め労働条件についてどのようになるか事前にきちんと説明されておくことが重要です。
資本関係のある親子会社間等であっても、年休付与のベースとなる継続勤務期間のカウント方法に違いはありません。
原則として別法人に転籍するのであれば、継続勤務とは扱いません。
なお、出向者の年5日の年休取得に関連して、移籍出向の場合は、原則として出向先において新たに基準日が特定されるとしていて、例外的に出向の前後を通算できる場合を示しています。
通算するためには、出向元における年休残日数と付与基準日を継承することが条件となっています。
この点も働き方改革関連法でポイントとなる部分です。転籍、出向等の事情が複雑に絡む場合でも、確実に消化できるようにしてください。
会社から現場に向かう自動車の乗り合いは労働時間か?
今回は「会社から現場に向かう自動車の乗り合いは労働時間か?」を解説いたします。
先日、次のご相談がありました。
「当社の業務は事務所と違う現場へ出向く作業がほとんどです。現場への移動は、事務所へ集合し社用車で向かったり、従業員同士で、車の直行を認めたりするなどさまざまです。このような場合、どこまで労働時間と扱うか疑問が生じたのですが、ルールなどあるでしょうか?」
労働基準法上、労働時間とは、「使用者の指揮監督の下にある時間をいう」となっています。
そして、使用者の「明示の指示」だけでなく「黙示の指示」も労働時間に含まれます。
自宅から会社への移動する時の通勤時間には、一般的には労働時間に当たらないとされています。
なぜなら、「労務の提供」という労働者の責任は、使用者の求める場所で提供することを内容とするものであり、通勤という行為は、労働力を使用者の下へ持参するための準備行為に位置付けられるものとなっているのです。
よって、業務性を欠いているほか、通常は自由に時間が利用できる保障がなされているためです。
会社などに集合し社用車に乗り合いで作業現場へ向かう場合はどうでしょうか?
行政解釈は、労働時間の該当性の判断は個別具体的に行う必要があるとしつつも、次が示されています(令5・7・6「建設業の時間外労働の上限規制に関するQ&A」、令6・3・25)。
先に、移動時間について、直行直帰の場合や、移動中に業務の指示を受けず、業務に従事することもなく、移動手段の指示も受けず、自由な利用が保障されているような場合は労働時間に当たらないとされています。
よって、労働時間に該当しないケースとして、工事現場への直行直帰が認められているなかで、労働者間で任意に移動手段の1つで、集合時刻や運転者を決めて社用車に乗り合って移動することの場合を挙げています。
一方、労働時間に該当するのは、
〇移動手段として、社用車に乗り合いで現場に向かうこと等が指示されている場合
〇現場に移動する前に会社に集合し資材の積込みをしたり、現場から会社に戻った後に道具清掃、資材整理をするよう指示されていたりする場合
〇移動の車中に使用者や上司も同乗し、打合せが行われている場合
としています。
このほか、一度最寄りの事務所に集合し従業員が運転する社用車で現場へ移動するも、車内では業務を行っていなかったケースについて、労働時間に該当しないとしています。
裁判では、自家用車等で通勤する場合と差異はないとしていました。
自動車の乗合が「労働時間」と評価されないためには、以下の3点に留意しましょう。
〇現場の作業時間を所定労働時間内に収める。
〇現場集合を基本とし、現場までの経路は車両の乗合のほか、自家用車、バイク、電車を自由に認める。
〇当日の作業内容や材料等の積込は前日までに済ませ、当日は車両の乗合だけとする(積込作業などさせない)。
以上のことを守ってください。
制服の着替え時間は労働時間に含まれるのでしょうか?
今回は「制服の着替え時間は労働時間に含まれるのでしょうか?」を解説します。
「制服の着替え時間は、作業をしているわけではないから、労働時間には入らないよね」
と気になっていませんか。
結論から申し上げますと、従業員が会社の指揮命令下にある等、特定の条件下では、その時間は労働時間と判断されることになるのです。
労働時間だと判断された場合、会社は従業員に賃金や残業代の支給を求められることになります。
今回は、制服の着替え時間が労働時間になる条件や、該当しないケースを見ていきます。
労働時間とはどのような時間か?
厚生労働省の定義では、労働時間は使用者の指揮命令下に置かれている時間です。
具体的には、使用者の明示または黙示の指示に基づき、労働者が業務に従事する時間が労働時間に該当します。この定義に基づいて、労働時間の適正な管理や労働環境の健全な維持が求められます。
また、「制服への着替え時間が労働時間に含まれるかどうか」も、この定義に基づいて判断されます。
〇制服の着替え時間が労働時間に当たるケースには、これから解説する4つがあります。
1.会社の明示的な指示がある
制服の着替えが明示的な指示によって行われている場合、労働時間に含まれると判断される可能性が高くなります。
なぜなら、使用者の指揮命令下であると見なされるからです。
2.会社の黙示的な命令がある
制服の着替えは、黙示的な命令によって行われる場合、労働時間に含まれる可能性があります。
3.会社が場所を拘束している
会社が制服を着替える場所を拘束している場合、労働時間に該当すると判断される可能性があります。
4.着替えが業務上必要とされる
制服の着替えが業務上必要とされる場合、労働時間に該当する可能性が高くなります。
なぜなら、仕事上必要な行為だからです。着替えが仕事のための準備だと見なされます。
〇着替え時間が労働時間に該当しない場合も様々なケースがあります。ここでは、3つのケースについて解説します。
1.従業員側の都合で着替えている
従業員が自身の都合で着替えをする場合は、労働時間には含まれません。
2.着替えることを必要としない制服
着替え時間が労働時間に含まれるかどうかについて、着替えを要しない制服は労働時間に該当しない可能性があります。
3.通勤時に制服の着用が認められている
通勤時に制服の着用が認められている場合、その着替えの時間は労働時間には該当しません。
なぜなら、通勤中は指揮命令下ではないためです。通勤経路などは合理的な経路を活用することを求められる一方で、労働者がある程度自由に決めることができます。
また、自宅で着替えてから会社に出発するので、場所の拘束も受けていません。
以上のように基準があるのでここを抑えていきましょう。
有期雇用契約の雇い止めは有効でしょうか?
今回は「有期雇用契約の雇い止めは有効でしょうか?」を解説いたします。
有期雇用契約とは「時期が来たら雇用契約は期間満了で終了」という契約です。
これでは有期雇用者が厳しすぎるとして、通算5年を超えて働く有期契約労働者が、希望すれば無期雇用に転換するルールが2018年4月から適用されたのです。
これにより、通算5年を超えて働く有期雇用労働者は、本人が希望すれば雇用契約の期間を無期に転換にすることができるのです。
この制度により「通算5年を超えないように」とする対応を行う会社が増えたのも事実です。
具体的な事例があります。無期契約への転換を申し込める直前に不当に雇い止めされたなどとして、日本大学危機管理学部やスポーツ科学部などの非常勤講師らが、職員としての地位の確認などを求め、東京地裁に提訴したというものです。
<日本大学事件 東京地裁 令和6年1月30日>
〇A・B・Cらは、大学との間で有期労働契約を締結して、日本大学の非常勤講師として就労していた。
〇大学から各有期労働契約の更新の申込みを拒絶された。
〇A・B・Cらは以下を主張した。
→有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的理由があり、かつ、雇止めは客観的に合理的理由を欠き、社会通念上相当であるとは認められないため、労働契約が更新されたと主張して、労働契約上の権利を有する地位の確認等を求めた。
→A・B・Cらが、専任教員との間に、賞与、住宅手当および家族手当の支給の有無に関して不合理な労働条件または待遇の相違があると主張して、不法行為による損害賠償を求めたのである。
そして裁判所は以下の判断を行いました。
〇Aらは有期労働契約の締結時及び1回目の更新時に更新上限条項が明記された本件契約書に署名押印している。
〇有期労働契約の更新時において、契約期間を1年とした上で、契約更新回数の上限を4回とする旨の非常勤講師規程5条の定めによる旨が明記された改訂後契約書に署名押印している。
〇Aらと大学との間の有期労働契約は、雇止めの時点において、既に4回にわたって更新されており、かつ、引き続き更新した場合には、その期間が5年を超えることとなる状況にあった。
〇Aらの有期労働契約が更新されると期待することについての合理的理由があったとはいえない。
〇会社側の主張が採用された。
大学の専任教員と非常勤講師の職務の内容には大きな相違があり、専任教員の業務は内容の難度や責任の程度が高いものとなっていたのです。
また、契約更新回数の上限を4回とする旨の非常勤講師規程5条の定めによる旨が明記された改訂後の契約書に署名押印しているところがポイントとなっているのです。
このように、限度の記載があると「更新の期待」は無くなると考えられています。
実務でも参考となるので押さえておきましょう。
在宅勤務時などの中抜けの取扱いをどうするか?
今回は「在宅勤務時などの中抜けの取扱いをどうするか?」を解説いたします。
先日のご相談が次となっております。
「当社の従業員が、プライベートな理由で、休憩時間とは別にいわゆる【中抜け】をしていました。休憩時間を追加で付与したものとして処理しています。その分働いて穴埋めをするようにと伝えたところ、残業となるのか聞かれました。終業時刻を超える労働については、残業と扱うことになるのでしょうか?」
このような内容のご相談は他社からもあり、在宅勤務、テレワークの働き方を明確にすることが求められています。
テレワーク等の在宅勤務で休憩時間以外に業務から離れる時間を、中抜け時間として規定することがあります。
中抜けの全部または一部を追加の休憩時間と扱うことも可能となっています。
ただし、労働時間の途中で休憩時間が増えたとしても、終業時刻が当然にずれるわけではありません。
始業、終業時刻は、就業規則の記載事項となっています(労働基準法89条1号)。
「所定労働時間の長さと位置」を明確にするために規定が求められています。
終業時刻後の労働は所定外労働、すなわち残業となるのです。
始業、終業時刻を変更するためには、たとえば、始業終業時刻を繰り上げまたは繰り下げる方法があります。
一般的な規定では、始業、終業時刻の繰上げや繰下げをセットで行い、1日の所定労働時間数を維持していることが現実的な対応と言えます。
なお、1カ月単位の変形労働時間制に関してですが、契約時間数を超えて労働させる場合には、(労働時間の)変更権により労働時間数を変更するのではなく、所定時間外労働命令により労働させることになるとしたものがあります。
中抜けを休憩時間として処理すれば、その分、実際の労働時間が減ることになります。
そこでその時間分について、終業時刻を繰り下げる方法があります。
繰下げによって所定労働時間数を維持できます。
この場合、中抜けに関する取り扱いを就業規則等でルールを明記して運用することが必須となります。
単に「60分中抜けしたから、終業時刻を60分延長」運用だけでは、トラブルの種になってしまいます。
それから、中抜けに応じて終業時刻を繰り下げる規定がないとき、終業時刻を繰り下げて働いてもらうとすれば、残業(所定外労働)になります。
中抜け時間を賃金控除するとしても、法定内の所定時間外に対する賃金は、別段の定めがない限り通常の賃金を支払わなければならないとしています。
このような行政解釈もあるので、中抜けを制度化して就業規則等でルール化し、運用を実施してください。
安易な考えだけで運用することはリスクが伴うことになるのです。
就業規則の記載例として、次のような記載を加筆しましょう。
「中抜け時間については、休憩時間として取扱い、その時間分終業時刻を繰り下げること。」
中抜け時間は「勤務に当たっていない時間」であり賃金が支払われません。
会社側としても線引きを明確にして、中抜け時間に業務を割り振らないよう徹底しましょう。
高校生をアルバイトで採用した場合の制約について
今回は「高校生をアルバイトで採用した場合の制約について」を解説いたします。
「年末年始の時期が繁忙で人手不足のため、臨時にパートやアルバイトを募集しています。そして、高校生から応募があり、採用を考えています。例えば閉店後に行う店舗の装飾の変更など、終業が遅くなるようなことも回数が少なければ問題ないでしょうか?労働時間の決め方などにも注意点はありますか?」
このようなご相談がありました。
満18歳未満の者は、労働基準法上は「年少者」として特別な保護を受けます。
なお、満15歳に達した日の最初の3月31日までは「児童」として法律上は原則使用が禁止されています。
よって年少者については、児童を含まない15歳の到達年度後の者とします。
年少者は、まず、22時から翌朝5時の深夜業が原則禁止されています(労働基準法61条)。
法定労働時間内であっても22時以降は働かせることができません。
なお、例外や適用除外が規定されています。
例外は、例えば交替制によって使用する満16歳以上の男性労働者などです。
適用除外としては、労働基準法33条の非常災害時の時間外・休日労働に伴う場合などが該当します。
次に、36協定に基づく時間外・休日労働も原則禁止されています(労働基準法60条)。
こちらも非常災害時や公務の際の時間外・休日労働は認められてはいます。
また、36協定に基づく時間外等なので、法定内の所定時間外労働までは条文上は制限していないのです。
弾力的な労働時間制度も対象外とされており、変形労働時間制やフレックスタイム制などを適用することはできません。
ただし、近い働かせ方は認められています。
1つは、週の労働時間が40時間を超えない範囲内で、週のうち1日の労働時間を4時間以内とする代わりに、他の日を10時間まで延長できるというものです。
4時間以下の日には全一日労働させない日も含むほか、他の日は1日に限られないとしています。
例えば週休2日制を導入していれば、法定休日のほかに全一日労働させない日ができるため、所定労働日5日のうち4日は8時間40分、1日は5時間20分という働かせ方も可能です(平6・3・31基発181号)。
なお、就業規則の始・終業時刻の定めについては、職種や業種ごとに異なる場合にはそれぞれ規定が必要なのと同様、年少者について特別の始・終業時刻を規定しておく必要があります。
もう1つ、週48時間、1日8時間を超えない範囲内で、1カ月・1年変形制の例により働かせることも可能としています。
1年単位の変形制の例により働かせる場合は、労使協定の締結も必要です(平6・1・4基発1号)。
なお、上記は年少者の話のため、高校生でも18歳に達していれば、労働基準法上は深夜労働等をさせることも可能となっています。
民法改正で、2022年4月1日から、成人年齢が20歳から18歳に引き下げられました。
成人とは、親の親権に服さなくなる年齢のことで、2022年4月1日以降に18歳になる人は、18歳の誕生日を迎えた時点で成人となります。
このポイントを踏まえて、高校生を採用した場合は対応をおすすめします。
定年後の再雇用者に賞与支給について
今回は「定年後の再雇用者に賞与支給について」を解説いたします。
定年後の再雇用者に賞与支給に関する法律や慣行については、企業の就業規則や労使間の慣行に依存する部分が大きいです。
以下に、定年後の賞与支給に関する主要なポイントをまとめます。
賞与支給の法的背景をみてみましょう。
〇支給日在籍要件: 賞与の支給には、支給日に在籍していることが条件となります。
〇定年退職者の扱い: 定年退職者に対しても、支給日在籍要件を適用することは原則として許可されています。
〇会社都合の退職: ただし、会社都合での退職(例: 定年や人員整理)においては、労働者が退職日を選べないため支給日在籍要件の適用が合理的でないとされることがあります。
そして、再雇用時の賞与については以下となります。
〇再雇用契約: 定年後に再雇用される場合、非正規雇用として扱われることが一般的であり、この場合は賞与が支給されないことが多いです。企業によっては、再雇用契約の際に賞与の支給について交渉することも可能です。
〇企業の方針: 賞与の支給は企業の方針によるため、就業規則に「非正規雇用者には賞与を支給しない」と明記されている場合、賞与が支給されない可能性が高いです。
定年後に賞与を支給しなくても法的には問題ない場合が多いですが、企業の就業規則や慣行に依存します。
特に、支給日に在籍していることが条件とされている場合、支給されないことが合法とされます。
再雇用の場合は、非正規雇用として扱われることが多く、賞与が支給されないことが一般的です。
したがって、具体的な状況に応じて、企業の規定を確認することが重要です。
ただし、同一労働同一賃金の原則に基づくと、継続雇用者に対して賞与の支払いを免除することは、特定の条件下では違法となる可能性があります。
同一労働同一賃金は、正規雇用者と非正規雇用者(契約社員やパートタイム労働者など)との間の不合理な待遇差を解消することを目的としています。
この原則により、同一の職務内容を持つ労働者には、基本給や手当、賞与などの待遇が均等であるべきとされています。
次に賞与の支払いに関する法的見解をみてみましょう。
具体的には、賞与の支払いについても同一労働同一賃金の原則が適用されます。
例えば、正社員には賞与が支給される一方で、契約社員やパート社員には支給されない場合、これは不合理な待遇差と見なされる可能性があります。
最高裁判所の判決(大阪医科薬科大学事件)では、正社員と契約社員の間で賞与の格差が不合理である場合、違法とされることがあると指摘されています。
次に継続雇用者に対する賞与の支払いです。継続雇用者に対しても、同様の原則が適用されます。
もし継続雇用者が正社員と同様の職務を遂行しているにもかかわらず、賞与が支給されない場合、これは不合理な待遇差として法的に問題視される可能性があります。
特に、企業が契約社員やパート社員に対して賞与を支給しない理由が合理的でない場合、法的なリスクが高まります。
試用期間の有効性について
今回は「試用期間の有効性について」を解説いたします。
まずは試用期間とはどんなものなのでしょうか?
試用期間とは、採用した社員が正社員として働く上での適性や能力を持っているか企業が見極めるため設けている期間ですが、実は、試用期間について法律による明確な定義や制限はありません。
しかし、以下の点に注意が必要です。
〇期間の長さ:法的な上限はありませんが、多くの企業では3〜6ヶ月の間で設定しています。一般的に、長くても1年程度までとするのが通例となっています。
〇公序良俗違反:必要以上に長期の試用期間は、公序良俗違反で無効となる可能性があります。ブラザー工業事件(名古屋地裁 昭和59年3月23日)では、労働能力や勤務態度等を判断するのに必要な合理的範囲を超えた長期の試用期間は無効の判断が下りました。
〇本採用拒否:試用期間後の本採用拒否は、解雇権濫用法理の規制(労働契約法)の類推適用により厳しく判断されます。
〇試用期間の延長:延長には就業規則で延長の可能性、理由、期間を明記する必要があります。
〇労働基準法の適用:試用期間中でも、労働基準法第20条(30日前解雇予告または解雇予告手当)などの規制が適用されます。
これらの点を考慮し、企業は適切な試用期間を設定する必要があります。
そして、本採用拒否の際には、以下の法的な注意点を考慮する必要があります。
〇解雇権濫用法理の適用:本採用拒否は解雇と同様に扱われ、労働契約法16条に基づく「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」が必要です。正当な理由がない場合、本採用拒否は違法・無効となる可能性があります。
〇合理的理由の必要性:最高裁判例によると、本採用拒否は「客観的に合理的な理由が存し社会通念上相当として是認されうる場合」にのみ許されます。能力不足や適格性の欠如を理由とする場合、将来的な改善の可能性がないことを示す必要があります。
〇予定外の能力・適性不足への注意:雇用契約上予定されていない能力・適性の不足を理由とする本採用拒否は違法となります。新卒社員に対して、既存社員と同程度の業績を期待することは適切ではありません。
〇適切な指導と改善機会の提供:十分な注意指導や改善の機会を与えずに行う本採用拒否は、不当解雇となる可能性が高くなります。
〇理由の明示義務:労働基準法22条に基づき、労働者の求めに応じて本採用拒否の理由を書面で示す義務があります。
これらの点を考慮し、慎重に本採用拒否を行うことが重要です。不当な本採用拒否は、無効とされるリスクや賃金支払い義務、さらには慰謝料請求のリスクを伴う可能性があります。
試用期間中に社員として適当か不適当かを見極めることができます。
そして、その判断に合理性があれば、法的にも本採用拒否が認められるのです。
そのためには、試用期間に「何を見極めるのか」が明確になっていないといけません。
採用時に業務を明確にし、職務明細書などの作成をおすすめします
従業員ががんにり患した場合の対応について
今回は「従業員ががんにり患した場合の対応について」を解説します。
2人に1人ががんにり患するという現代で、従業員ががん患者となった場合、一定の対応や配慮が必要となります。
そこで、ご相談がありました。「国の対策や、その他の支援体制など、会社でできることや義務を含めてご教授ください。」
まず、会社として考えなければいけないのは「治療と仕事をどう両立させるのか?」という点です。
労働安全衛生法では、事業者による労働者の健康確保対策に関する規定が設けられており、健康診断の実施および医師の意見を勘案し、その必要があると認めるときは就業上の措置の実施を義務付けるとともに、日常生活面での指導、受診勧奨等を行うよう努めるものとされています。
また、安衛則では、事業者は、「心臓、腎臓、肺等の疾病で労働のため病勢が著しく増悪するおそれのあるものにかかった者」については、その就業をやむを得ない場合に限り禁止しなければならないとしています。
具体的な対応として、厚生労働省から「事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン」が公表されています。
がんなどの疾病を抱える人々に対して、治療と職業生活が両立できるようにするため、事業場における取組みなどをまとめたものです。
疾病を抱える労働者は少なくなく、高齢化で一層治療と仕事の両立支援が必要に「治療と職業生活の両立等支援対策事業」における調査(平成25年度)によれば、1カ月以上連続して休業している従業員がいる企業は、メンタルヘルスが38%、がんが21%、脳血管疾患が12%となっています。
また、仕事を持ちながら、がんで通院している者の数は、32.5万人と推計されています。
事業場で疾病を抱えた労働者の治療と仕事の両立への対応が必要となるケースはさらに増えるでしょう。
従業員から「がんに罹患した」と報告があった場合、まず本人の意思を尊重し、冷静な判断を促すよう配慮します。
「退職」を防ぐためにも、退職や異動など重大な決断を急かさないことが重要です。
そして、情報収集と共有がポイントとなります。
主治医や産業医と連携し、「治療内容」「就業可能性」「必要な配慮事項」などの情報を収集します。
次に治療と仕事の両立支援についてです。
従業員本人と話し合い、「両立支援プラン」または「職場復帰支援プラン」を作成します。
これには産業医や保健師など専門家の助言も活用します。
そして、職場環境の調整を行い、業務負担軽減や同僚への理解促進を図り、治療と仕事が両立できる環境を提供します。
それから、継続的なサポートです。治療中および復職後も定期的に状況確認を行い、必要に応じて支援内容を見直します。
これらの対応は、従業員が安心して治療に専念しつつ働き続けるために不可欠であり、企業としても優秀な人材の離職防止につながります。
近年では、厳しい経営環境のなかでも、労働者の健康確保や疾病・障害を抱える労働者の活用に関する取組みが推進されています。
加えて、労働者の治療と仕事の両立支援に取り組む企業に対する支援や医療機関等における両立支援対策の強化も必要な状況にあります。
法定休日を特定していない場合の対応について
今回は「法定休日を特定していない場合の対応について」を解説いたします。
先日、クライアント様から次のご相談がありました。
「当社は、土日を休日とする週休2日制です。しかし、就業規則に法定休日の特定がされておらず、「休日は次の各号のとおりとする」としかありませんでした。このように就業規則に規定がない場合、法定休日はどのように決まるのでしょうか?」
法定休日の特定は法律上の義務ではありませんが、実務上は必要となってきます。
就業規則で法定休日の定めがない場合、以下のように扱われます。
〇暦週(日曜日から土曜日)の最後に来る休日が法定休日とみなされます。
〇週休2日制の場合、週の最終日(通常は土曜日)が法定休日となります。
〇4週間を通じて4日以上の休日がある場合、それらの中で後ろに位置する休日から順に法定休日となります。
ただし、休日労働の割増賃金計算のために、実務的には法定休日を特定することが推奨されています。
厚生労働省も、「法定休日と法定外休日を区別し、就業規則に記載することが望ましい」としています。
法定休日を特定しない場合、労使間のトラブルを避けるため、就業規則に「○曜日を起算日とする1週間の、最後の1回の休日」などと明記することが推奨されます。
そして、法定休日を特定する際の具体的な方法は以下の通りです。
〇就業規則への明記
〇暦週の最後の休日
〇週休2日制の場合は一般的に土曜日が法定休日、日曜日が法定外休日となります。
〇休日出勤の少ない曜日を法定休日に設定します。
〇シフト制の場合は個人別に毎週1日、または4週間を通じて4日の法定休日を設定することができます。
就業規則での具体的な記載:「○曜日を起算日とする1週間の、最後の1回の休日」などと明記することが推奨されます。
法定休日の特定は法律上の義務ではありませんが、割増賃金の計算や労使間のトラブル防止のために、実務上は特定することをおすすめします。
さらに、法定休日を特定する際の注意点は以下の通りです。
まずは就業規則への明記です。法定休日を特定し、就業規則に明確に記載することが望ましいです。
就業規則で特に定めがない場合、暦週(日曜日から土曜日)の最後に来る休日が法定休日とみなされますので、土曜日が法的休日となります。
週休2日制の場合は、一般的に土曜日が法定休日、日曜日が法定外休日となります。
カレンダーが赤日の日曜日が法定休日になるということではありません。
ただし、日曜日を法定休日にしたい場合は就業規則に明記する必要があります。
そして、割増賃金の計算について法定休日を特定しないと、休日労働の際の割増賃金の計算が正しく行えないため、実務上は特定が必要となるのです。
また、労使協定の締結は、法定休日に労働させる場合、労働基準法36条に基づく労使協定を締結し、労働基準監督署に届け出る必要があります。
これらの点に注意しながら、適切に法定休日を特定しましょう。
