港区の社会保険労務士 内海正人の成功人材活用術!!
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 最初次のページへ >>

副業、兼業制度導入における企業の注意点について

今回は「副業、兼業制度導入における企業の注意点について」を解説いたします。

 

 

副業、兼業制度は働き方の多様化や人材不足解消のアプローチとして注目されています。

 

厚生労働省は2018年に「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を策定し、労働者が希望する場合には副業・兼業を認める方向で検討することを企業に求めています。

 

しかし、企業が制度導入にあたっては以下の点に注意が必要です。

 

 

〇労働時間の適切な把握と管理

 

労働基準法38条1項では「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する」と規定されています。これは異なる企業での労働時間も含まれるため、企業は従業員の副業先における労働時間も把握・管理する必要があります。適切な労働時間管理は過重労働防止のためにも重要です。

 

 

〇安全配慮義務と健康管理対策

 

労働契約法第5条に基づき、企業は従業員の安全や健康に配慮する義務があります。副業により業務量や労働時間が増加することで、従業員の健康状態が悪化するリスクがあります。

 

 

〇本業への影響回避策

 

労働者は就業時間中、職務専念義務を負っています。副業が本業のパフォーマンスに影響を与えないよう、明確なルールを設定することが重要です。

 

 

〇情報漏洩と競業避止への対策

 

労働者は使用者の業務上の秘密を守る義務(秘密保持義務)と、在職中に使用者と競合する業務を行わない義務(競業避止義務)を負っています。企業秘密やノウハウが副業先に漏洩したり、利益が損なわれたりするリスクに備え、適切な制限を設けましょう。

 

 

〇企業の信用・名声保護

 

労働者は自社の名誉・信用を毀損しないよう誠実に行動する義務があります。副業先での行動により企業の評判が損なわれないよう、就業規則で明確な基準を示すべきです。

 

 

〇導入プロセスの整備

 

副業・兼業制度導入にあたっては、厚生労働省のガイドラインを参考に、届出制や許可制など適切な管理体制を構築することが重要です。また、労働者の希望を尊重しつつも、企業としての合理的な制限を設ける必要があります。

副業・兼業制度は適切に導入・運用することで、企業と従業員双方にメリットをもたらす可能性があります。しかし、上記の注意点を踏まえた制度設計と就業規則の整備を行わなければ、様々なリスクが生じる恐れがあります。企業の実情に合わせた慎重な検討が求められます。

 

副業、兼業制度を導入する際は、従業員のニーズを把握した上で、申請フローやルールを明確化することが重要です。

 

副業、兼業制度は適切に設計・運用することで、企業の人材戦略や組織活性化に貢献する重要な施策となります。

 

一方で、様々なリスク要因も考慮した慎重な導入と運用が求められます。企業文化や業種特性に合わせたカスタマイズされた制度設計が成功の鍵となるでしょう。

 

 

人事評価のメリット、デメリットについて

今回は「人事評価のメリット、デメリットについて」を解説いたします。

 

人事評価を導入すると従業員の納得性が高まり、成果が上がるといわれていますが、人事評価を入れると「従業員同士がギスギスする」「評価に納得できない」などの意見もあり、人事評価制度導入が必ずしも良いことではないという意見もあります。

 

そこで、今回は人事評価のメリット、デメリットをみてみましょう。

 

まずは「人事評価のメリット」についてです。

 

〇成果が上がる

 

人事評価制度を導入することで、単に労働力アップが期待できます。

 

それは、従業員が給与・待遇を上げるために労働意欲が向上するからです。

 

 

〇人材育成、成長サポート

 

会社が求める人物像に対して、何が課題で何はOKなのかが、人事評価を通して客観的に明らかになってきます。

 

その課題を来期はどのように教育、研修、勉強、実践をして、成長していくかを上司部下で話し合い、次回に取り組んでいきます。

 

 

〇人材の把握ができる

 

従業員ひとりひとりのスキルや問題点を認識することができます。

 

人事評価の大まかな目的は従業員の現状を評価し、給与・待遇に還元するものです。

 

 

〇コミュニケーションの促進

 

部下と上司のコミュニケーションの活性化も期待できます。

 

頑張ったことに対して、会社や上司からのフィードバックがあることで、従業員のモチベーションアップになります。

 

人事評価のための個人面接や目標設定の確認などの時間を設けることで、従業員は相談や提案がしやすくなるでしょう。

 

 

次に「人事評価制度のデメリット」についてです。

 

〇手間がかかる・人事評価のスキルが必要

 

まず、人事評価制度を導入するための手間がかかります。評価の指標自体が不明瞭であれば、人事評価制度の効用は得られません。

 

〇評価が低い人にとっては不満要素となる

 

どんなに公平に見ていったとしても、評価をするということは、序列ができてしまいます。頑張って貢献してくれる人の評価は高くなり、そうでない人は低くなります。

 

評価が低い人にとっては、適切であったとしても、不満要素となります。

 

 

〇評価される仕事しかしなくなる

 

従業員たちが評価の向上に囚われてしまう可能性があります。

 

では、人事評価制度がうまくいかないのはなぜでしょうか?

 

〇目的がはっきりしていない

 

何のために人事評価を導入するのか?そもそも人事評価制度導入のメリットについて理解をしているか?を考えなければなりません。

 

〇力の配分を間違えている

 

しっかりとした計画設定を行ってから人事評価制度を導入しないと、大概は期限ギリギリの時期に慌てて評価を行うこととなるでしょう。

 

 

このように人事制度導入は簡単ではありません。

 

まずは自社の状況を分析してから導入の有無を考えましょう。

業務中に私的メール・ネット利用をする従業員への対応について

今回は「業務中に私的メール・ネット利用をする従業員への対応について」を解説します。

 

 

業務上で不可欠となっているインターネットとメールですが、従業員がこのツールを業務外の目的で使用していたらどうでしょうか。

 

例えば、業務時間中に、仕事に集中しないでネットゲームをしながら仕事をしていたり、業務と関係なくインターネットサーフィンをし続けていたり、株の取引等に熱中していたり等、従業員が職務に専念していないということがあります。

 

具体的に私の顧客から何件もご相談をお受けしております。

 

さらに、最近では悪質なサイトへのアクセスや迷惑メールによるサイバー攻撃などの問題もあり、私的利用が原因となって被害を受けた事例もありました。

 

 

では、従業員のメールやネットの私的利用にどう対応していくべき見ていきましょう。

 

そもそもメールやネットの私的利用は禁止するべきものなのでしょうか。

 

業務中の息抜きに同僚と少し話す程度の時間と変わらないのであればそのままでもいいのでは、という意見もあるかもしれません。

 

しかし、メールやネットの私的利用は会社に大きなダメージを及ぼす可能性をはらんでいるのです。

 

もし、メールやネットの私的利用によって悪質なサイトにアクセスしたり、ウイルス感染ソフトが仕込まれたメールを受信してしまったらどうでしょう。

 

不必要なサイバー攻撃に遭い、会社の機密情報などが外部に漏洩する可能性があります。

 

情報漏洩を起こしたとなれば金銭的な損害だけで無く、社会的信用が損なわれ会社のイメージダウンにも繋がります。

 

また、漏洩した情報の中に取引先の重要情報が含まれていた場合、大切な取引先を失うことにもなりかねません。

 

「単なる」私的利用ではなく、情報流出の一手となる可能性があることを認識しておきましょう。

 

従業員は会社との間で「業務時間中は仕事に集中しなければならない」という、職務専念義務を負っています。

 

私的なメールやネットの利用は業務から離れた行為ですので、この職務専念義務に違反する行為となります。

 

そして、会社パソコンではなく、従業員個人のスマートフォンやタブレットを使っていたとしても同様です。

 

業務中は業務に関係ないことは慎むよう、従業員への周知を含め、就業規則の服務規定の内容についても見直すと良いでしょう。

 

メールやネットの私的利用があり、職務専念義務違反が疑われるなど調査を行う合理的な必要性があれば、就業規則に定めがなくても会社がモニタリングや閲読による調査を行う事は許されるとされています。

 

しかし、特に必要性がないにもかかわらずモニタリングを行う事は従業員のプライバシー侵害に抵触する可能性があります。

 

つまり、会社の備品だから自由にモニタリング等を行っていいかというと、そうではないということです。

 

後々トラブルに発展しないよう、調査・モニタリングの実施方法やルールについては就業規則等に規定し、従業員へ事前の告知や周知を行っておくほうが良いでしょう。

 

身元保証人に損害賠償を請求できますか?

今回は「身元保証人に損害賠償を請求できますか?」について解説いたします。

 

 

従業員が企業に採用される際、身元保証契約の締結を求められることがあります。

 

一般的には、入社が決まった時に、採用時の提出書類のひとつとして渡される身元保証書へ署名押印することで締結されます。

 

皆さん、気軽に身元保証契約を結んでいますが、本来の意義はどうなっているのか理解されていますか?

 

身元保証契約の第一義的な目的は、従業員が会社(雇用する企業)に損害を与えた場合の金銭賠償について、身元保証人の資力を弁済の担保とするというものです。

 

会社としては、万が一従業員が誠実義務などを果たさず損害を与えた場合に備えて、その損害を補う手段として従業員の身元保証人と契約を交わすものです。

 

 

しかし実際はどうでしょうか?

 

会社が身元保証人に対して賠償請求する場合、裁判では会社側の過失や、身元保証人に対し契約に伴うリスク説明を行っていたかなど様々な事情が考慮され、損害賠償の範囲は大きく制限されます。

 

金銭賠償契約としての実効性は低い、と言わざるを得ません。

 

では、身元保証契約を交わす意義は薄いのでしょうか?

 

リスクの管理に対する価値観によるので一概には言えませんが、身元保証という契約関係を通じて得られるものは大きいようにも感じます。

 

 

ここで関連する裁判例をご紹介します。

 

<丸山宝飾事件 東京地裁 平成6年9月7日>

 

〇貴金属宝石類の販売会社の従業員Aが、営業先にて宝石類の入ったカバンの盗難にあった。

 

〇会社は、従業員A本人とその身元保証人である両親に対し、損害賠償(約2760万円)を請求した。

 

そして、裁判となり、裁判所の判断は以下となったのです。

 

〇損害の公平な分担から、信義則上相当と認められる損害の賠償・求償を従業員Aに対し、求めることができる。

 

〇だが、会社側は従業員Aが持ち歩く多額の貴金属宝石類について盗難保険に入っておらず、これを契機に保険に加入した。

 

〇従業員Aに請求できる損害賠償の範囲は、損害額の50%(約1380万円)。

また身元保証人が負担すべき損害賠償の範囲は、その損害賠償額のさらに4割(損害額の20%:約550万円)が相当とされた。

 

身元保証契約を締結しているからといって、損害の全額を身元保証人に請求できるわけではありません。

 

実際に身元保証契約に基づく損害賠償請求が争われる場合、裁判所は次のような事情を総合的に考慮し、その賠償の範囲を判断します。

 

・従業員の監督に関し、会社の過失の有無

 

・身元保証人が、従業員の身元保証契約を引き受けた経緯・事情

 

・身元保証人が、身元保証契約を引き受ける際にどの程度の注意を払っていたか

 

・被用者が従事する職務や身上の変化など

 

通常、身元保証人に請求できる損害賠償額は大幅に減額されると認識しておきましょう。

 

 

固定残業制度を導入するには?

今回は「固定残業制度を導入するには?」を解説いたします。

 

従業員に対し、あらかじめ定額で残業手当を支給する固定残業代の制度ですが、実は法律上で制度を導入する上での明確な基準や定めはありません。

 

ただし、制度を導入する際は2つのポイントを押えて固定残業代を設計する必要があります。
 

1.固定残業代の項目、金額、根拠を明確にし、従業員が理解できる状態にする具体的には以下の点に注意しましょう。
 

〇「固定残業代部分」と「そうでない部分」を明確にする。一番わかりやすいのは、「固定残業手当」などという名称で別に手当を支給することなどです。
 

〇固定残業手当として支給している金額の計算根拠を明確にする。

 

〇従業員各人の労働条件通知書や給与明細などで、固定残業代の金額、時間数などを明示
する。

 

書面で従業員に明示することにより、従業員にきちんと金額、時間数、根拠などがわかる状態とすることが必要です。
 

2.固定残業代を上回る残業代の支払をする
 

1ヶ月の残業手当を計算した場合、その残業手当の金額が固定残業代の金額より大きくなった場合は、その差額を支払う必要があります。

 

よって、固定残業代の制度を導入したとしても、月々の残業手当については、法令に基づいた計算処理を行う必要があります。

 

 

固定残業代の制度を導入する際は、上記1、2のポイントを考慮して制度設計を行い、後に従業員とトラブルが起こらない運用をする必要があります。

 

これに関する裁判があります。

 

<ビーラインロジ事件 東京地裁 令和6年2月19日>

 

〇会社は旧給与体系の各種手当を廃止し、定額残業代を新設することとした。

 

〇新たな給与体系への変更に関する説明会を実施したうえ、口頭または書面による同意を得た従業員から、新しい給与体系により給与を支給していった。

 

〇会社は、新給与体系を反映した労働条件通知書兼労働契約書を各従業員に対して提示し、Aらは署名押印した。

 

〇Aらは請求対象期間の給与について、残業代の算定に関して基礎賃金に含まれるべき手当が含まれていない。

 

〇会社に対し、未払割増賃金等を請求する訴えを提起した。

 

そして、裁判所は以下の判断をしました。

 

〇給与規程への変更について、分かり易い給与体系に改善する必要があったが、新給与体系の変更する必要があったとは認められない。

 

〇新給与体系に変更することによる従業員の労働条件の不利益の内容及び程度は、減縮するというもので、新給与体系の変更に関する説明会は実施されているものの、不利益の内容及び程度を十分に把握し得るだけの情報提供が行われたとは認め難い。

 

〇これらの事情を考慮すると、給与規程への変更が合理的なものでなかった。

 

 

事例の裁判では、労働条件の変更の説明と同意の手続きは取っているが不十分であったとみなされています。

 

適法に固定残業を導入するにあたり、この部分は丁寧にかつ正確に対応することが必須と考えられます。

 

 

労働時間とタイムカードのズレ

今回は「労働時間とタイムカードのズレ」について解説いたします。

 

 

働き方改革関連法の施行もあり、近年、サービス残業や長時間労働に対する取締りが厳しくなりました。

 

このような流れを受け、最近増えている実務相談の1つに、タイムカードの打刻と、始業時刻や終業時刻のズレの管理方法についての相談があります。

 

 

法的に正しく労働時間管理を行うには、1分単位で労働時間の記録や残業代の支払が必要ですが、職場の入口に設置されているタイムカードや、ゲートの通過などで出退勤の管理を行っている場合、タイムカード等に打刻された時間と、実際の始業時間や就業時間にはズレが生じてしまいます。

 

 

しかし、未払い残業で裁判になった場合、会社が別の立証をできなければ「タイムカードの時間=実労働時間」と認定され、タイムカードに打刻をされた全ての時間に対して残業代の支払を命じられてしまうので、ここが、会社が悩みとなっていました。

 

業務終了から打刻までの数分間の残業代ならまだしも、業務終了からタイムカード打刻までタバコを吸いながら同僚と雑談をしていたり、残業中に夕食を食べに中抜けした時間まで残業代を支払うことになってしまったら、会社としては納得がいかないというのも事実です。

 

ところが、昔ながらの単純なタイムカード管理だと、裁判になった場合、タバコ雑談や食事の中抜け時間まで、残業代にカウントされてしまうリスクがあるのです。
 

 

この問題を解決するためには、実務上、4つのポイントがある。
 

第1は、残業や早出は指示書または申告書に基づいて実施させるということです。

 

タイムカードだけで社員の時間管理を行っていると、タイムカードに打刻された時刻が退社時刻なのか業務終了時刻なのか曖昧になってしまいます。

 

第2は、タイムカードと実労働時間に15分以上ズレがあった場合には、本人から上長に理由を申告させるということです。

 

「15分」というのは、タイムカードを職場への入退出記録として利用している場合、終業時刻から15分以内に打刻されていれば、裁判になった場合や労働基準監督署の調査等があった場合にも、概ね定時に業務終了したと推定してもらえます。

 

第3は、タイムカードを速やかに打刻しないことや、サービス残業を就業規則上の懲戒事由にすることです。
 

タイムカードの不正打刻は多くの会社で就業規則上の懲戒事由になっています。

 

会社が労働時間の管理に対して厳格な責務を負わなければならないこれからの時代、社員にも会社が労働時間を正しく把握するために協力をしてもらわなければならないのです。
 

第4は、タイムカード打刻や部下の労働時間管理を人事評価項目にすることです。

 

会社が勤怠管理を重要事項と位置付けていることを社員に理解してもらうには、懲戒項目と並び、人事評価項目として位置づけることが有効です。

 

一般社員は、タイムカードの打刻漏れや、正当な理由が無い15分以上の打刻差が多い場合にマイナスの評価を受けることになるでしょう。

 

 

転籍の場合、年次有給休暇の扱いはどうなるのでしょうか?

今回は「転籍の場合、年次有給休暇の扱いはどうなるのでしょうか?」を解説いたします。

 

あるご相談がありました。

 

「子会社に在籍出向させていた従業員を、転籍扱いにしたいと考えています。年次有給休暇の付与日数が何日になるかは継続勤務した年数により決まりますが、転籍のタイミングでリセットすることになるのでしょうか?」

 

在籍出向と転籍出向では従業員の所属の籍が異なってきます。

 

このようなご相談はとても多く、会社の事情で対応が様々なケースが見られます。

 

年次有給休暇の日数は、「継続勤務」期間に応じて定まります。

 

「継続勤務」しているといえるかは実質的に判断されますが、たとえば、非正規雇用から正規雇用に切り替えられた場合や定年退職者が引き続き再雇用された場合、有期労働契約が反復更新されている場合においても、それぞれ継続勤務と解されています(昭63・3・14基発150号)。

 

在籍出向の場合についても、勤務の継続性を肯定しているほか、出向中の期間については、出向元で労働契約が維持されている以上、継続勤務と考えられます。

 

 

在籍出向させたタイミングで勤続期間をリセットすることはせず、出向期間も含めて在籍期間をカウントして、継続勤務年数が6年6カ月以上なら少なくとも20日の付与が必要になります。

 

 

一方、在籍出向から移籍出向(転籍)した場合ですが、「いわゆる移籍出向の場合については、出向元との労働関係はいったん消滅し、労働関係は新たに出向先との間に成立するので、継続勤務とみるのは困難」と解されています。

 

転籍の場合は雇用主である使用者自体が変更となることから、従来の雇用契約は消滅し全く新たな雇用契約を結ぶこととなるのです。
 

 

従いまして、グループ会社への転籍であっても原則としては、残有休の権利は一旦消滅し勤続年数も通算せずリセットされることになります。

 

但し、就業規則等でグループ会社間での年休引継ぎや勤続年数の通算が定められている場合ですと、そのように取り扱わなければなりません。

 

いずれにしても、転籍を行われる場合は原則として当人の同意を得ることが必要ですので、有休の取り扱い等も含め労働条件についてどのようになるか事前にきちんと説明されておくことが重要です。

 

 

資本関係のある親子会社間等であっても、年休付与のベースとなる継続勤務期間のカウント方法に違いはありません。

 

原則として別法人に転籍するのであれば、継続勤務とは扱いません。

 

 

なお、出向者の年5日の年休取得に関連して、移籍出向の場合は、原則として出向先において新たに基準日が特定されるとしていて、例外的に出向の前後を通算できる場合を示しています。

 

通算するためには、出向元における年休残日数と付与基準日を継承することが条件となっています。

 

 

この点も働き方改革関連法でポイントとなる部分です。転籍、出向等の事情が複雑に絡む場合でも、確実に消化できるようにしてください。

 

 

会社から現場に向かう自動車の乗り合いは労働時間か?

今回は「会社から現場に向かう自動車の乗り合いは労働時間か?」を解説いたします。

 

 

先日、次のご相談がありました。

 

「当社の業務は事務所と違う現場へ出向く作業がほとんどです。現場への移動は、事務所へ集合し社用車で向かったり、従業員同士で、車の直行を認めたりするなどさまざまです。このような場合、どこまで労働時間と扱うか疑問が生じたのですが、ルールなどあるでしょうか?」

 

 

労働基準法上、労働時間とは、「使用者の指揮監督の下にある時間をいう」となっています。

 

そして、使用者の「明示の指示」だけでなく「黙示の指示」も労働時間に含まれます。

 

 

自宅から会社への移動する時の通勤時間には、一般的には労働時間に当たらないとされています。

 

なぜなら、「労務の提供」という労働者の責任は、使用者の求める場所で提供することを内容とするものであり、通勤という行為は、労働力を使用者の下へ持参するための準備行為に位置付けられるものとなっているのです。

 

よって、業務性を欠いているほか、通常は自由に時間が利用できる保障がなされているためです。

 

 

会社などに集合し社用車に乗り合いで作業現場へ向かう場合はどうでしょうか?

 

行政解釈は、労働時間の該当性の判断は個別具体的に行う必要があるとしつつも、次が示されています(令5・7・6「建設業の時間外労働の上限規制に関するQ&A」、令6・3・25)。

 

 

先に、移動時間について、直行直帰の場合や、移動中に業務の指示を受けず、業務に従事することもなく、移動手段の指示も受けず、自由な利用が保障されているような場合は労働時間に当たらないとされています。

 

 

よって、労働時間に該当しないケースとして、工事現場への直行直帰が認められているなかで、労働者間で任意に移動手段の1つで、集合時刻や運転者を決めて社用車に乗り合って移動することの場合を挙げています。

 

 

一方、労働時間に該当するのは、

 

〇移動手段として、社用車に乗り合いで現場に向かうこと等が指示されている場合

 

〇現場に移動する前に会社に集合し資材の積込みをしたり、現場から会社に戻った後に道具清掃、資材整理をするよう指示されていたりする場合

 

〇移動の車中に使用者や上司も同乗し、打合せが行われている場合

 

としています。

 

 

このほか、一度最寄りの事務所に集合し従業員が運転する社用車で現場へ移動するも、車内では業務を行っていなかったケースについて、労働時間に該当しないとしています。

 

裁判では、自家用車等で通勤する場合と差異はないとしていました。

 

 

自動車の乗合が「労働時間」と評価されないためには、以下の3点に留意しましょう。

 

〇現場の作業時間を所定労働時間内に収める。

 

〇現場集合を基本とし、現場までの経路は車両の乗合のほか、自家用車、バイク、電車を自由に認める。

 

〇当日の作業内容や材料等の積込は前日までに済ませ、当日は車両の乗合だけとする(積込作業などさせない)。

 

以上のことを守ってください。

 

 

制服の着替え時間は労働時間に含まれるのでしょうか?

今回は「制服の着替え時間は労働時間に含まれるのでしょうか?」を解説します。

 

 

「制服の着替え時間は、作業をしているわけではないから、労働時間には入らないよね」

と気になっていませんか。

 

結論から申し上げますと、従業員が会社の指揮命令下にある等、特定の条件下では、その時間は労働時間と判断されることになるのです。

 

労働時間だと判断された場合、会社は従業員に賃金や残業代の支給を求められることになります。

 

今回は、制服の着替え時間が労働時間になる条件や、該当しないケースを見ていきます。

 

労働時間とはどのような時間か?

 

厚生労働省の定義では、労働時間は使用者の指揮命令下に置かれている時間です。

 

具体的には、使用者の明示または黙示の指示に基づき、労働者が業務に従事する時間が労働時間に該当します。この定義に基づいて、労働時間の適正な管理や労働環境の健全な維持が求められます。

 

また、「制服への着替え時間が労働時間に含まれるかどうか」も、この定義に基づいて判断されます。

 

〇制服の着替え時間が労働時間に当たるケースには、これから解説する4つがあります。

 

1.会社の明示的な指示がある

 

制服の着替えが明示的な指示によって行われている場合、労働時間に含まれると判断される可能性が高くなります。

なぜなら、使用者の指揮命令下であると見なされるからです。

 

2.会社の黙示的な命令がある

 

制服の着替えは、黙示的な命令によって行われる場合、労働時間に含まれる可能性があります。

 

3.会社が場所を拘束している

 

会社が制服を着替える場所を拘束している場合、労働時間に該当すると判断される可能性があります。

 

4.着替えが業務上必要とされる

 

制服の着替えが業務上必要とされる場合、労働時間に該当する可能性が高くなります。

 

なぜなら、仕事上必要な行為だからです。着替えが仕事のための準備だと見なされます。

 

〇着替え時間が労働時間に該当しない場合も様々なケースがあります。ここでは、3つのケースについて解説します。

 

1.従業員側の都合で着替えている

 

従業員が自身の都合で着替えをする場合は、労働時間には含まれません。

 

2.着替えることを必要としない制服

 

着替え時間が労働時間に含まれるかどうかについて、着替えを要しない制服は労働時間に該当しない可能性があります。

 

3.通勤時に制服の着用が認められている

 

通勤時に制服の着用が認められている場合、その着替えの時間は労働時間には該当しません。

 

なぜなら、通勤中は指揮命令下ではないためです。通勤経路などは合理的な経路を活用することを求められる一方で、労働者がある程度自由に決めることができます。

 

また、自宅で着替えてから会社に出発するので、場所の拘束も受けていません。

 

以上のように基準があるのでここを抑えていきましょう。

有期雇用契約の雇い止めは有効でしょうか?

今回は「有期雇用契約の雇い止めは有効でしょうか?」を解説いたします。

 

 

有期雇用契約とは「時期が来たら雇用契約は期間満了で終了」という契約です。

 

これでは有期雇用者が厳しすぎるとして、通算5年を超えて働く有期契約労働者が、希望すれば無期雇用に転換するルールが2018年4月から適用されたのです。

 

これにより、通算5年を超えて働く有期雇用労働者は、本人が希望すれば雇用契約の期間を無期に転換にすることができるのです。

この制度により「通算5年を超えないように」とする対応を行う会社が増えたのも事実です。

 

具体的な事例があります。無期契約への転換を申し込める直前に不当に雇い止めされたなどとして、日本大学危機管理学部やスポーツ科学部などの非常勤講師らが、職員としての地位の確認などを求め、東京地裁に提訴したというものです。

 

<日本大学事件 東京地裁 令和6年1月30日>

 

〇A・B・Cらは、大学との間で有期労働契約を締結して、日本大学の非常勤講師として就労していた。

 

〇大学から各有期労働契約の更新の申込みを拒絶された。

 

〇A・B・Cらは以下を主張した。

 

→有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的理由があり、かつ、雇止めは客観的に合理的理由を欠き、社会通念上相当であるとは認められないため、労働契約が更新されたと主張して、労働契約上の権利を有する地位の確認等を求めた。

 

→A・B・Cらが、専任教員との間に、賞与、住宅手当および家族手当の支給の有無に関して不合理な労働条件または待遇の相違があると主張して、不法行為による損害賠償を求めたのである。

 

そして裁判所は以下の判断を行いました。

 

〇Aらは有期労働契約の締結時及び1回目の更新時に更新上限条項が明記された本件契約書に署名押印している。

 

〇有期労働契約の更新時において、契約期間を1年とした上で、契約更新回数の上限を4回とする旨の非常勤講師規程5条の定めによる旨が明記された改訂後契約書に署名押印している。

 

〇Aらと大学との間の有期労働契約は、雇止めの時点において、既に4回にわたって更新されており、かつ、引き続き更新した場合には、その期間が5年を超えることとなる状況にあった。

 

〇Aらの有期労働契約が更新されると期待することについての合理的理由があったとはいえない。

 

〇会社側の主張が採用された。

 

大学の専任教員と非常勤講師の職務の内容には大きな相違があり、専任教員の業務は内容の難度や責任の程度が高いものとなっていたのです。

 

また、契約更新回数の上限を4回とする旨の非常勤講師規程5条の定めによる旨が明記された改訂後の契約書に署名押印しているところがポイントとなっているのです。

 

 

このように、限度の記載があると「更新の期待」は無くなると考えられています。

 

実務でも参考となるので押さえておきましょう。

 

1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 最初次のページへ >>