管理監督者の基準とは? | 港区の社会保険労務士 内海正人の成功人材活用術!!

管理監督者の基準とは?

今回は「管理監督者の基準とは?」を解説します。

 

管理監督者とは、労働条件や労務管理が経営者と同様な立場にある者のことですが、近年ではこの管理監督者の取り扱いを巡るトラブルが多発しています。

 

管理監督者とは、一般の労働者とは異なり、企業内で相応の地位と権限を与えられて業務内容の管理や業務を遂行するために監督を行う者のことです。

 

管理監督者に残業や休日出勤をさせ、その分の残業代や休日労働手当を支払わなかったとしても、休憩や休日を与えなかったとしても、労働基準法違反に問われないのです。

 

管理監督者について、一般の中小企業では、部長級、工場長級が該当するケースが多く見られ、労働時間、休憩、休日に関する労働基準法上の規定が適用されないことを悪用した「名ばかり管理職」問題が挙げられます。

 

具体的には、企業が、法律上の管理監督者には該当しない従業員に対して名目上の肩書を与えることで、残業代や休日労働手当の支払いを逃れようとすることです。

 

これに関する裁判があります。

 

<日産自動車事件 横浜地裁 平成31年3月26日>

 

〇社員Aは課長級の管理職として、複数の部署でマーケティングを担当してした。

 

〇Aは商品決定会議にも出席し、製品原価と販売価格の基礎となる数字について約束を取り付ける権限を有していた。

 

〇Aは執務中に倒れ、脳幹出血で死亡した。

 

〇配偶者は、「Aは管理監督者ではないので、残業等の未払いの賃金を請求する」として裁判を起こした。

 

→未払いの残業代約520万円の支払い

 

そして、裁判は以下の判断を下したのです。

 

〇未払い賃金約357万円およびこれに対する遅延損害金の支払いを命じる。

 

この裁判を詳しくみていきましょう。

 

裁判所は管理監督者に該当する要件を次の3つとしました。

 

(1)当該労働者が実質的に経営者と一体的な立場にあるといえるだけの重要な職務と責任、権限が付与されているのか?

 

(2)自己の裁量で労働時間を管理することが許容されているか?

 

(3)給与等に照らし管理監督者としての地位や職責にふさわしい待遇か?

 

この点から考えると(1)について、「Aは商品決定会議にも出席し、製品原価と販売価格の基礎となる数字について約束を取り付ける権限を有していた」とのことですが、実際は、「上席者の補佐」に過ぎず、間接的であると判断され、経営者と一体の立場とは言えないと判断されました。

 

(2)については、欠勤控除等はされず、自己の裁量で労働時間が管理することが許容されていました。

 

更に、(3)の処遇についても年収が約1,237万円位で、部下よりも年収ベースで約244万円も高かったので、管理監督者にふさわしいと判断されたのです。

 

この裁判では実質的に経営者と一体的な立場にあると言えるだけの重要な職務と責任、権限が与えられているとは認められないとして、管理監督者に該当しないと判断されたのです。