若い選手を鼓舞し、競技を引き上げ続ける羽生結弦選手　タラソワ／郷ひろみ

本日4本目
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羽生結弦選手が出る試合では、
不思議なことが起こるのだ。

他の選手までが
神演技を見せることがある。

まるで、
羽生選手の発するオーラに鼓舞されたかのように、

若い選手たちが、素晴らしい演技を見せてくれるのだ。

圧倒的な強さで会場を興奮の坩堝へと変え、

観客は熱狂し、
黄色い熊が飛び交う。

その熱狂に圧倒され萎縮するのではなく、

背中を押されたかのように、

若い選手たちが力を与えられるのは、何故だろう。

平昌五輪シーズンが始まった時に、

郷ひろみさんが書いたエッセイを、

ふと、読み返した。

答えが一つ、あるではないか

郷さんは、
201７年の24時間テレビの１企画の中で、

結弦くんに再会した。

郷さんの歌で、喘息の少年のために、

結弦くんが「言えないよ」を滑る、という

シークレットなアイスショーだった。

リハーサルでは

なかなかジャンプが決まらず苦戦した結弦くん。

でも、演技本番、

結弦くんは、４T、３Aなど、全てのジャンプをクリーンに跳んだ。

まるで競技会のような高難度のジャンプ構成。

その全てを、美しく豪快に跳んで見せたのだ。

凄まじい集中力。

難度の高い技を成功させることへの

強い意志。

試合じゃないのに。

たかが、アイスショーで、

なぜ、そこまで？？？

結弦くんは語った。

「失敗を恐れずに、

　ダイナミックで高度な技に挑戦する姿を見せたかったのだ」と。

「自分も幼い頃、難しい演技を見て、それに

鼓舞されたから。」と。

（ゲーテ2017年11月号）

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競技のレベルを引き上げ、

新しい世界があることを、他の選手たちに、常に示し続けてきた結弦くん。

歴代最高得点の更新は１９回。

超えそうで、

超えられなかったSP100点の壁を打ち破ったのも、

結弦くんだった。

それも、

五輪の大舞台で、

世界が注目する巨大なプレッシャーの中での偉業。

当時、

絶対王者と言われていたパトリックですら、

超えそうで超えられなかったFS200点の壁は、

100点の壁を越えた翌年に乗り越えた。

それも、201点とか202点とか、

やっとやっとで超えたのではなく、

ガツンと216.07点を叩き出し、

総合での300点の壁も、322.40点という驚異的な得点で乗り越えてみせた。

壁があっても怯まない。

何が何でもよじ登る。

登った先にある新しい風景が、

素晴らしいものであると信じて。

そして、結弦くんが特別なのは、

単に、高難度な技を次々と成功させて観客を魅了するだけでなく、

音楽との高度な一体化で、

見るものの心に究極の芸術に触れた時だけに訪れる至高体験を与えられるということ。

タラソワ先生の言葉、asappoさんが和訳してくださったブログから

お借りします。http://kurkuma.blog.fc2.com/blog-entry-2796.html

「フィギュアスケートの歴史には、卓越した滑り手たちがいましたが、しかし、羽生は別です。

彼は、天界の人です。」

「最後にはスタンディングオベーションをしないではいられない、

ひざまずき、それを見る事が出来た事を神に感謝しないではいられない、そういうプログラムなのです。」

「音楽への100パーセントの呼応、音楽との共体験のみならず、また音符の一つ一つに乗せられた最高難度のエレメンツのみならず、

人間の魂と音楽とのある種の驚くべき完全な融合なのです。

このようなものを私は人生で二回だけ見たことがあります、氷上でではなく、バレエで：マイヤ・プリセツカヤが《瀕死の白鳥》を踊り、ムスチスラーフ・ロストロポーヴィチがその伴奏をした時と、ニューヨークのバレエスタジオで、ジアナ・ヴィシュニョーワが踊り、ワレーリー・ゲールギエフが指揮をした時です。羽生結弦の滑りは、それと同様の現象なのです」。」