地平線から来た男(1971) | つぶやキネマ

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大好きな「映画」について「Twitter」風に
140文字以内(ぐらい)という制約を自ら課して、
"つぶやいて"みようと思います...ほとんど
「ぼやキネマ」になりそうですが。

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★注意!!! 作品の内容に触れています★


地平線から来た男(1971)


 19世紀半ばのアメリカ西部コロラド州、ラティゴ・
スミス(ジェームズ・ガーナー)はやり手のマダムのゴ
ールディ(マリー・ウィンザー)と婚約しデンバー行き
の列車で婚前旅行に出たが、ゴールディが寝たのを見
計らってパーガトリーという町でこっそり途中下車す
る。しかし、町は金鉱を巡ってふたりの鉱山主の対立
から争いが絶えず、駅の前では鉱山主のテイラー・バ
ートン(ハリー・モーガン)のじゃじゃ馬娘ペイシェンス
(スザンヌ・プレシェット)が銃を乱射していた。バート
ンは、駅長のエズ(ヘンリー・ジョーンズ)から対立する
鉱山主エームズ大佐(ジョン・デナー)が南西部に名を轟
かす凄腕ガンマンのスウィフティ(チャック ・コナーズ)
に電報を打ち用心棒として雇って数日で町に到着すると
いう情報を得ていたので、ラティゴをスウィフティと思
い込んで息子バド(ディック・カーティス)と共にホテル
に泊まったラティゴの元を訪れる。バートンが訳の解ら
ない事ばかり言うので、ラティゴはホテルを出たところ
酒飲みのジャグ・メイ(ジャック・イーラム)が金が無い
ので拍車を買い取ってくれないかと話しかけてくる。ラ
ティゴは拍車は買わず100ドルを渡すと酒場に向かうが、
そこはルーレット賭博場も兼ねていて、最初は賭博をや
る奴は馬鹿だと言っていたラティゴだったが、回転する
ルーレットに玉が投げられると4600ドルを賭け負けてし
まう。一文無しになったラティゴはジャグ・メイから拍
車をもらうと、娼館のマダム・ジェニー( ジョーン・ブ
ロンデル)を訪ね亡くなった友人の依頼で遺品を渡しに
来たと言う。ラティゴは金持ちの女を騙して生活してい
る詐欺師だったのだ。話を信じたジェニーはラティゴに
豪華な寝室を提供して歓待するが、彼を殺そうと娼婦に
変装して侵入したペイシェンスの話からスウィフティと
誤解されている事を知り、自分はマネージャーでジャグ
・メイこそがスウィフティであるとバートンに売り込み
用心棒契約料5000ドルをせしめる。その噂は町中に広ま
りエームズ大佐の雇った用心棒たちが逃げ出した事で町
は平和になるが、医者のシュルツ(ダブ・テイラー)を捜
して酒場へ行ったラティゴは、ルーレットの音に抗しき
れず再び4600ドルを賭け負けてしまう。そこへラティゴ
を探してゴールディが町へ現われ、しかも彼女がジェニ
ーの友人だった事でラティゴの嘘がバレてしまい、さら
にスウィフティが偽者だと見破ったエームズ大佐が本物
のスウィフティを呼び寄せたと知らされる...というお話。
「夕陽に立つ保安官(1968)」に続くジェームズ・ガーナ
ー主演の"脱力"西部劇で、前作との関連はまったくない
のだが共通する出演者が脇役として似たような役で多数
出演しているのが嬉しい。今回も全編ゆる~い笑いでス
トーリーが進行するのだが、前作よりもストーリーの面
白さや普通度が上がっていて大爆笑ポイントの多いコメ
ディになっている(注1)。今回も基本ストーリーには元ネ
タがあって、町の状況が黒澤明の「用心棒(1961)」なの
が何となく嬉しくなってしまう...パロディとしてはセル
ジオ・レオーネ「荒野の用心棒(1964)」 の方だろうけど
ね。ストーリーの面白さを重視したためか小ネタのギャ
グは少なめなのがチョッピリ残念ではあるものの、前作
では口の達者な凄腕のガンマンを演じたジェームズ・ガ
ーナーが今回は女たらしの詐欺師で、飄々としたオトボ
ケなキャラクターは今回も快調であります。ラティゴは
町へ着くとすぐに医者を捜し始めるんだが、その理由が
酔った勢いで入れてしまったゴールディの名前の入った
胸の刺青を消すためというのが笑える...胸毛だらけの胸
全体に彫られた刺青はかなり大きい。父や弟にまで銃を
乱射して荒れ狂っているペイシェンスが、町を出てニュ
ーヨークのハドソン川近くの女子大に行きたがっている
というのが楽しいが、すべての行動の基本が女子大に行
く事につながっているのが素晴らしい...医者のシュルツ
が、"ペイシェンス"と"ペイシェント(患者)"というダジャ
レを言うのだが日本語字幕では意味が解らないんだよな。
スウィフティに成りすます事になったジャグ・メイは早
撃ちの練習をするのだが、自ら普通より遅いレベルと言
うラティゴの方が圧倒的に早いのには笑ってしまう...ジ
ェームズ・ガーナーはTVシリーズ「マーベリック(1957
~1962)」で鍛えられた上に「墓石と決闘(1967)」でワ
イアット・アープを演じていて、ガンさばきがメッチャ
上手く早撃ちも得意なのだ。ラティゴが帽子屋に居た時
にエームズ大佐が送り込んだ殺し屋コロラド・マギー(ベ
ン・クーパー)が現われて決闘する事になり、外に出よう
と言われて振り返ったコロラドの頭をラティゴがいきな
り殴り銃が抜けないようにアイロンで右手の指を潰すん
だが、ジャグ・メイからコイツの利き腕は左だよと言い
われ左手も潰そうとする。ジャグ・メイは抱いていたジ
ェニーの飼い犬のチワワの目を「見ちゃダメだよ」とい
う感じで隠してやるのがむちゃくちゃ可笑しい...すごー
く卑怯で残酷なシーンなのだが大爆笑必至。バートンが
対立するエームズ大佐の妹アビゲイル(エレン・コービ
イ)と恋人同士で大佐の戦略が筒抜けなのも可笑しいのだ
が、大佐の家にはナポレオンの肖像画が何枚も飾ってあ
るし、結構な歳のふたりが鈴の付いた馬車でデートして
いるのが笑える。クライマックスでスウィフティと対決
する事になったラティゴがラバに大量のダイナマイトを
積んで現れ、同士討ちを覚悟しているから早く撃てと迫
るのだが、地下の金鉱で爆薬を使う時に町中に「発破だ
ー !!」と警告して回る男が何度も登場して、その度に爆
風と衝撃が町を襲う。にらみ合うふたりの前にその男が
現われて叫び大爆発、爆破の衝撃でスウィフティは自分
の足を撃って悶絶、ブーツを履いたまま死にたくないと
大騒ぎするという結末には唖然...結局最後まで死なない
んだけどね。


●スタッフ
製作総指揮・監督:バート・ケネディ
製作:ビル・フィネガン
脚本:ジェームズ・エドワード・グラント
撮影:ハリー・ストラドリング・Jr.
音楽:ジャック・エリオット


●キャスト
ジェームズ・ガーナー、スザンヌ・プレシェット、
ジャック・イーラム、ハリー・モーガン、
エレン・コービイ、ジョーン・ブロンデル、
マリー・ウィンザー、ジョン・デナー、
ディック・カーティス、ヘンリー・ジョ ーンズ、
ウィリス・ボーシェイ、ウォルター・バーク、
ジーン・エヴァンス、キャスリーン・フリーマン、
ベン・クーパー、チャック・コナーズ


◎注1; バート・ケネディ監督とジェームズ・ガーナー
はこの路線を完全に自分のモノにしたようで、とにか
く楽しい場面が連続し前作よりも完成度の高い傑作に
なった。今回は、ルーレット狂だったり嘘がバレたり
と結構ピンチな場面も多いが、周りの人間を上手く利
用して切り抜けるあたりは前作とほぼ同じ。スザンヌ
・プレシェットは、「恋愛専科(1962)」等の恋愛モノ
のヒロインがハマリ役で「40ポンドのトラブル(1962)」
「黒ひげ大旋風(1967)」「火曜日ならベルギーよ(19
69)」等のコメディにも沢山出演しているが、今回はか
なりはじけたコメディエンヌとして大活躍。じゃじゃ
馬ぶりがメッチャ可愛いので、彼女を観たいがために
繰り返し観てしまう。鉱山主バートンのハリー・モー
ガン、駅長エズのヘンリー・ジョー ンズ、鉱山役員マ
クラグレンのウィリス・ボーシェイ、鉱山役員モリス
のウォルター・バーク、鉱山役員ブッチャーのジーン
・エヴァンス、ホテルの女将ミセス・パーキンスのキ
ャスリーン・フリーマンは前作からの再登場組で、前
作同様の名演技で作品を盛り上げています。そして今
回も「リオ・ブラボー(1959)」組がひとり、メキシコ
人の宿屋の主人を演じていたペドロ・ゴンザレス・ゴ
ンザレスが娼館の床屋オーティスの役で出演してます。
チャック・コナーズは特別ゲスト扱いで冒頭のタイト
ルにも名前が無いのだが、クライマックス直前の列車
内での初登場場面から挙動不審なのが可笑しい。ラテ
ィゴとの対決はあっという間に終わってしまうが、映
画史に残る間抜けぶりが最高です。そして前作以上に
大活躍なのがジャック・イーラムであります。彼の登
場シーンは笑いをこらえられないぐらいとにかく可笑
しいし、ラティゴの計略のおかげでスウィフティと決
闘しなければならなくなったのに何だか楽しそうな感
じなのは、こちらもニコニコです。前作同様にエンデ
ィングに登場、ラティゴとペイシェンスのハネムーン
列車の最後部で見栄を切り、「新婚夫婦はニューヨー
クへ行くが、俺はイタリアに行ってイタリアン・ウェ
スタン(マカロニ・ウェスタン)のスターを目指すんだ」
と言い放ちます。

◎蛇足; 本作は、以前ビデオが発売されていたが我が
国ではDVDは未発売。BS・CS等ではたまーに放映さ
れるので要チェック。欧米ではDVDも発売されてい
ます。


★Amazon.co.jp★


 

地平線から来た男[DVD]

(リージョン1のアメリカ盤です。日本語字幕はありません)


PS: 以下のサイトも運営しています、よろしかったらどうぞ。


★ 漫画を中心とした同人サイト

「日刊...かもしれないかわら版」

http://www.geocities.jp/saitohteruhiko/index.html


★伝説の漫画誌「COM」についてのサイト

「ぐら・こん」ホームページ

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