「法務省法制審議会」の法案 | 子の連れ去り被害に遭わないために。親子断絶防止(共同養育)するために。

子の連れ去り被害に遭わないために。親子断絶防止(共同養育)するために。

有責配偶者による子どもの連れ去りを防止。また親子断絶にならないように法律を学び、より良い世の中に変えていく。共同親権、共同監護、共同養育を大切に。子にとって親という存在は一番の宝物。ツイッター(@hanabizone)でも情報発信中。

 

  概要

令和6年1月30日付となりますが、共同親権の法改正のたたき台として法務省案が公開されました。実質的に法制審議会で諮問された結果がそのまま反映されているような雰囲気です。これまでパブリックコメントを含めて審議されるような過程があるはずですが、条文としてまとまっておらず、幅広いニュアンスとなっています。要綱案を参照しますと、親権があるということで、どこまで親子関係の存在を実質的に担保できるかということが不透明です。この法務省案はたたき台という位置づけであるため、実際には与野党による修正がありますが、長年にわたって吟味されてきただけに乏しい内容が目立ちます。今後法改正は一度だけとは言い切れないので、段階的にできるところから改正されていくものとして継続審議が図られ、拡充した法改正になるように変わっていくべきだと思います。

 

引用元

 

(目次)

1.子どもの養育

2.親権と監護

3.離婚時の親権者の定め

4.離婚時の監護者の定め

5.養育費(子の監護に要する費用)の先取り

6.親子交流(面会交流)

7.附帯決議

8.そのほか

 

  解説

1.子どもの養育

☑父母は、自己と同じような水準で養育していく案が出されています。同居親と別居親の区別なく、同じ水準で養育するということであれば、生活水準だけではなく教育的(親が子どもに与えるきっかけ作り)も同様な水準で注目されていくことが望ましいと言えます。しかし豊かな暮らしのために共同で養育できるような子育てを実現したいところです。法案の「同等」という定義だけでは曖昧な部分が残ります。決して数値化できる費用分担だけで片付く話ではないからです。

 

☑民法第818条第1項では、子の利益のために行使しなければならないと改正される模様です。では子の利益の明文化をして法規定しない限り、裁判所は法律がないから判断できない(直ち違法までとはいえない)という論理の繰り返しで終わってしまいます。子の利益とは、原則論として親子が少しでもありふれた日常生活を過ごすことだと思います。

 

2.親権と監護

☑法務省案では、親権は共同であったとしても、監護は単独で良いとされています。つまりは監護の優先権を与えるような内容です。父母の意見が一致しなければ、先に監護実績を積み上げてもよいという解釈の余地も残されるため、実務としては子の利益のための改正になっていません。

 

☑子の出生前に離婚した場合には、親権は母にすると定義されています。これでは母性優先の原則が明文化されたに過ぎず、かえってジェンダー不平等を引き起こします。

 

3.離婚時の親権者の定め

☑審判または調停が出ていれば、離婚届が出せるという特殊な条項が追加されています。父母の意見が対立し、調停不成立になれば親権の定めがなされるということになるので、家庭裁判所の実務を圧迫するものです。合意があるから婚姻するのであって、合意ができなければ離婚をしてはならないという基本原則に振り返るべきです。親の責務が果たされていません。父母の合意がないから調停しても、結局は不成立のままということが言えそうな気がします。そうなると中立的な判断をしたことにはならないといえます。少なくとも調停すればよいという解釈ができるので、要綱案からこの部分を消去しなければならないのではないでしょうか。

 

4.離婚時の監護者の定め

☑現在の運用を踏襲すれば、先に連れ去って監護実績を作ることで単独監護となります。これを共同親権者が監護を妨げてはならないという規定が追加されていますので、単独監護者の意向によって自由自在であることが明文化されてしまうことになります。両方の監護が良いという定めをすることが裁判所の実務で多くなるべきです。現行の子の監護者指定にあたり、稀にしか両親に監護者となるという判例がありません。この運用が見直されないと意味がありません。家庭裁判所は個人情報が開示されないように、これまでの実施例を公開してフィードバックしていくべきです。個人情報の非開示の判断は、当事者同士であっても裁判所の判断が多くなされてきており、部分非開示にすることは比較的難しくないことでしょう。家事事件の運用の実態について透明性を持つべきです。

 

5.養育費(子の監護に要する費用)の先取り

☑子と同居する親だけの特権として、債権者(同居親)が、債務者(別居親)の給与債権に関わる情報の取得ができるようになります。これは養育費(子の監護に要する費用)の水準を平等に決めるにあたって、債務者(別居親)が債務者(同居親)の給与情報を取得するようなことが明文化されておりません。憲法の平等権の侵害になることが予見されます。

 

☑債務者(同居親)が先取りとして、給与差し押さえができるという特権があります。生活の計画がなされないまま別居するケースを防げないものになるかと考えます。また現状では、離婚する(婚姻関係を解消する)までは、財産を持ち出しても折半することができず、泣き寝入り状態になることから、先取り特権という制度が生活困難になるリスクがあると思います。

 

☑子の監護に要する費用は、生活費として使われないことが疑問視されています。別居親が、生活費の中からある程度、こどものために決められるという枠組みがほしいところです。履行確認権があってもよいのではないでしょうか。

 

6.親子交流(面会交流)

☑大きく伝えたい部分ですが、まるで従来と変わりがありません。親子交流の父母の協議が整わないときは、家庭裁判所が決めることになりますが、これまでの昭和からの判例の積み重ねによって、親子交流の頻度については1か月に1回(数時間)が妥当ということだけで、海外と比較しても圧倒的に親子関係が希薄なままです。親子交流についても、あくまで任意という形が継続されるだけで、法としての自由な親子交流を認めるということは一切書かれておりません。酷い場合には、まったく会うことができないという事態になりかねません。もし同居親が、「子どもが会いたがらない」という虚偽申告をしたとなれば、子どもの利益にならないと判断せざるえない事態になる場合もあります。このままだと親子が接することで次第に打ち解けやすくなるというような段階的なステップが見込めません。子どもの利益ならば、自由な親子交流(子育て・育児)という観点を最大限に尊重すべきところでしょう。

 

☑別居親の親族に会うことは、特に子ども利益として必要と認めるときだけ定めることができるとされています。これは基本的人権侵害であって、祖父母であっても会うことを確約するというものではない案です。裁判所は、法の下で制限をする位置づけであるため、このような消極的法案は、子どもの利益にならないことが推測されます。自由面会交流訴訟の判決に照らし合わせても、親族に自由に会うことが法律上において確約されたものはないとしていることからも、改善しなければ海外からのも批判を浴びることになるかと思います。子どもの権利を大事にしてほしいと思います。

 

7.附帯決議

☑「父母の別居や離婚に伴う子の養育をめぐる事件の審理に当たっては、改正後の民法等の規定の趣旨を踏まえた上で、子の利益を確保する観点から適切な審理が行われることが期待される」としか記載されておらず、民法改正の趣旨からすると、子の利益になるという位置づけは明確ではないことがかります。規定の趣旨を少なくとも記載されるところ、その説明が一切公開されておりません。”期待する”ということではなく、実際に問題を解決する姿勢が問われます。またこのような審理がなされるように意見があることは、これまで不適切な審理があったことを暗に認めたものになっているかと思います。

 

☑子の利益の実現については、各省庁に任されることが記載されています。各省庁にとっては法規定でなければ、下位のガイドラインで解決しなければなくなり、現状どのように変えるべきなのかという責任や方針が問われていないので、現実的な法改正が意味するところが法務省として定めないような案となっています。各省庁は、子の福祉という位置づけが難しくなります。既に立法化されているこども基本法よりも中身が薄い法案です。父母および親権者(両親を亡くした方を含む場合がある表記)は、教育機関などと連携を図ることが定義されていますので、家族法は少なくともこの部分が明記されることが望ましいといえます。

 

8.そのほか

☑子どもの利益にとって、父母の協議が整わないまま、一時避難という意味ではなく子どもの監護および親権を確保するための実子誘拐(子どもの連れ去り)は依然として未解決問題であり、単独監護状態が優先権を持つことに変わりがないことから、たとえ同居親が有責配偶者(現状では、生死にかかわらない虐待程度)であったしても問題視されていません。

 

☑既に理不尽な親子断絶によって、別居期間や虚偽DVなどによって離婚した親にとっては、親権回復のための明文化がなされるべきところ、記載がありません。つまり共同親権になるための親権変更の手続きをする場合には、すべて家庭裁判所を挟まなければならないというような意味合いになる可能性があります。審理期間がいたずらに伸びることなりますし、協議するための手段が硬直化します。誰もが裁判所で協議することにある程度のストレス(障壁)を抱えるのではないでしょうか。海外を参考にすると、ADR(裁判外手続き)の拡充が期待されるべきかもしれません。

 

▼参考元

法務省(外部サイト)

「家族法制の見直しに関する要綱案」(令和6年1月30日)

 

▼メディアの表記2024.2

相手を理由なく排除するような行動があれば、親権者として不適切な事情として評価されるとある。

引用元

 

▼共同養育議員連盟

2024.02.02

法務省としては、立法案にはしないものの、共同養育計画、親教育プログラムの体制を整えていくとしている。このほか、親子交流の規定の明確化や、不当な連れ去りの防止、法定算定表の適正化、支援措置における審査請求が可能になることなど要望や通達の確認が行われている。

引用元

 

▼ポンチ絵

引用元

 

▼分かりやすい比較

引用元

 

●民法等の一部を改正する法律の公布

 

●(共同親権に関する修正案)民法等の一部を改正する法律

 

●「法務省法制審議会」と「民間法制審議会」の比較

 

●自民党法務部会が承認した「家族法に関する民法改正の法案」

 

●家族法(民法の一部を改正する法律案)「日本維新の会」

 

●連れ去りが起こる心理と法の問題を知る

 

●利権問題を知る

 

●世の中が変わるように陳情や請願を自治体に

 

●別居親が子に会えないときは継続して調整

 

●片親疎外(親子断絶が続く心理と子への影響)

 

●共同養育計画を大切にしよう

 

●共同親権反対派の思想を持つ人々

 

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