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今回は、ちょっとした初心者向けレコーディングTipsです。
以前、ドラムのパンポットについて書きましたが、今日もパンポットについての話です。
昔、PA屋(音響屋)で働いてた頃に、レコーディング関連で、それぞれ違うお客さんが、エンジニアに同じ質問をしているのを聞いた事が何度かあります。
それは「スリーピースのバンド(楽器がドラム・ベース・ギターのシンプルで最低限な三人編成のバンド - トリオバンド)の場合、パンポットはどんな風に振ればいいんですか?」って内容の質問でした。
パンポットとは、音を左右に振り分けてステレオ感を出す為のツマミなのですが、詳しくは、『ドラムのミキシング、左右どっちに振る?』でも解説してます。
当時は、カセットテープのMTRが、けっこう安く手に入る様になって、MTR全盛の時代でした。
なので、レコーディングスタジオで本格レコーディングより、リハーサルスタジオを借りて、MTRを使って自分達でデモ音源を録音してしまおうってバンドが凄く多かったんです。
自分でミキシングをした経験のない人は、こんな話を聞けば、スリーピースって何か特別なの?って思うかもしれませんが、ある意味、他とはちょっと違うんです。
その時、その質問を受けた一人のエンジニアが「ディレイで逆サイドに音を振れば?」とアドバイスしていたのを覚えています。
その回答に何となく違和感を覚えながらも、その違和感について当時は深く考えませんでしたが、今になって思うと、彼らの訊きたいポイントはそこじゃないんです。
僕もこの事については、大いに悩んで迷いましたし、だからこそディレイを使うと言う答えに違和感を覚えたのでしょう。
だって、僕はギターにディレイをかけて弾くなんてほとんどないですし、大抵の場合はディレイなんて使いたくないですから。
レコーディング全体のステレオ感を出す為だけに、自分のパートに必要のないエフェクターを使って根本的な楽器の音作りまでいじると言う答えに納得のいくギタリストなんてこの世にいるのでしょうか?ってくらい、今の自分には違和感のある答えです。
レコーディングをしようと思う人が本を読んだり、人に訊いたりして誰でも覚える、ごく常識的なセオリー。
それが、この悩みを生み出しているんです。
そのセオリーと言うのが、ベースとボーカルはセンターで、ギターやキーボードを左右に振って、左右のバランスを取るって事です。
その時、ドラムは個別にパンポットを振り分けるかモノラルでセンターにもっていくってのも、そのセオリーの一つでした。
左右のバランスは確かに大事なんですが、楽器が3つ(スリーピース)の場合、ドラムとベースとボーカルをセンターにすると、残るギターだけを左右どちらかに振ると凄く片方に寄ってしまいますよね?
さっきのエンジニアはこの段階でディレイを使ってギターを逆サイドに広がる様にすればいいって事を言っていた訳なんですが、さっきも述べた様に、空間系のエフェクターをどうしても使いたくない事って凄く多いので、これでは、答えとしては不完全と言える訳です。
ギターだけを左右どちらかに振ると凄く片方に寄ってしまうってトコまで、話を戻します。
かと言って、ギターを真ん中に持っていくと、ドラム以外はほぼ全て中央でモノラル状態になってしまう。
彼らの多くはそこで迷って、迷路から抜け出せなくなっていたのです。
こんなものに答えなんてないのは事実なんですが、「答えなんてないので、適当にやりなさい」と言う答えを初心者相手に出す人もけっこういますが、そんな事を言われて初心者が適当に出来る訳はないのです。
適当ではなくそれこそ無茶苦茶になるのが、オチでしょう。
プロのスリーピースバンドの音源をいくつか聴いてみて、音の振り分けが聴き分けられるのなら、それがベストだとは思いますが、取り敢えず、まず、一つでいいので、オーソドックスなパターンを人から教わるのが、一番いいと思います。
最初はいわゆる『アホ(バカ)の一つ覚え』でいいでしょう。
それをまず覚える事で、後は、経験とともに、勝手にいろいろ試してみたくなるものです。
前置きがいつも通り、長くなりましたが、その基本パターンをいくつか解説させて貰います。
まず、最近の傾向からして、初心者で自分でミキシングをしてしまおうって人は、ドラムは打ち込みでやろうって人が多いと思います。
ドラムを打ち込みでやる場合、デフォルトでドラムはステレオに既に振り分けられていると思います。
取り敢えず、今は、そのデフォルトのままでいいでしょう。
先ほど、ドラム以外は全て真ん中でモノラルになってしまうと言う話が出ましたが、実は、それがほぼ正解に近いのです。
要は、ステレオ感を出す事はドラムに任せてしまいましょうって話です。
ただ、全てをど真ん中に集中すると音が被って、お互いを邪魔しあったりしてしまいますので、その時はセンターからほんの少し、ずらしてあげて下さい。
特に邪魔をしあわなければセンターのままでも問題ありませんが、自分では判断がつかないと言う初心者は取り敢えず、不安要素を削る為だけに、ずらしてみると言うのもアリです。
パンポットのパラメーターはソフトによって若干の表記の違いがありますが、大抵は、センターを0として、右に64振れば右だけが鳴って、左に64振れば左だけが鳴る様になっています。
そのパラメーターを基準に話を進めると、ほんの少しと言うのは10くらいを指しています。
ドラムをステレオのままセンター、ボーカルもセンター、ギターのバッキングを左へ10、ベースを右へ10。
ここでリードギターが入る場合ですが、スリーピースをリアルに再現したのならば、そのままリードのタイミングでバッキングを止めて、パンポットは左10のままでいいでしょう。
音を薄くしない為に、敢えてバッキングにリードを重ねるなら、バッキングと逆サイド(右)に15~18程度、パンポットを振ってあげればいいでしょう。
勿論、これは一つのパターンであって他にもいろいろパターンがある事は最初の方で述べた通りです。
少し、突っ込んだ話をします。
ベースとギターの左右の決め方ですが、自分達のバンドのベースとギターが普段どっちに立って演奏してるかにこだわるミキシングをする人って多いと思います。
それも一つの考え方で、間違ってないと思います。
でも、高い金属音を出す、ハイハットとライドシンバル、それとギターを逆に持っていく事を僕はオススメします。
これは、そのドラマーの演奏スタイルやアレンジによっても変わるのですが、出来るのならそうした方が音が被りにくくて、聴きやすく仕上がります。
特に、アコギとライドシンバルは、ぶつかりあう可能性が高いので、ギターはエレキでなくアコースティックで弾くと言う場合、ライドと逆に振ってあげると聴きやすくなります。
普段、曲の大半でハイハットが右で鳴っている場合、その間、バッキングのギターは左で鳴らします。
リードに入った途端、ドラムはライドを叩き始めるとすると、ライドはハイハットと逆の左で鳴るので、リードは右で鳴らす。
こういう展開がオーソドックスな鳴らし方だと思います。
丁度、僕が一人で演奏して自分でミキシングした曲で、憂歌団の『オナカ・イ・タ・イ』って曲のカバーがそのパターンに近いです。
◇オナカ・イ・タ・イ(憂歌団カバー)/皆見つかさ
(『せっかくだから、少しでもいい音で音楽を楽しんで欲しい。 』)
この曲はライドシンバルは使ってませんが。
ステレオで空間の広がりを感じさせる役目をドラムに任せて、ハイハットが右で、ギターのバッキングが左10、そして、ベースが右10になっています。
リードギターは右へ18です。
リードは間奏ですので、ボーカルの代わりにど真ん中でも、いいと思います。
非常にシンプルでオーソドックスなミキシングになっています。
これ以外だと、ドラムをセンターでステレオ。
ベースが真ん中ってセオリーは無視して、ベースとギターを左右に振り分けてしまうパターンが好きです。
僕の知り合いのエンジニアさんで、このパターンの場合、ドラムはモノラルにしないと気持ちが悪いって言ってる人がいましたが、僕はステレオの方が好きです。
あと、左右にどれくらい振るかですが、僕はスリーピースでギターとベースを左右に振る場合は、37とか38くらいから42か43くらいまでにしておきたいのですが、これも好みです。
さっきのエンジニアに言わせるともっと極端に振った方が気持ちがいいそうですから。
極端な例ではこんなパターンもあります。
LOVE PSYCHEDELICOの『"O"』って曲なんですが、ドラムとベースを左に寄せてある、ちょっと変わったパターンです。
LOVE PSYCHEDELICO / "O" |
ドラムを片側に完全に寄せるパターンはビートルズも使ってたパターンです。
まぁ、こんなパターンもある訳ですから、世間で言われてるセオリーに、あんまり縛られる必要はないと思います。
中には、もう都市伝説レベルの有り得ない話が、ネットでセオリーとして語られてる場合もありますから。
取り敢えず、この記事で解説したパターンは、初心者に必要なオーソドックスパターンとしては役立つと思います。
後は、自分でこれを叩き台的に昇華させていけば、いいだけです。
これはパンポットに特化した話でしたが、最初の頃に出た、ディレイなどでステレオ感を出すのもオーソドックスな手法ではあります。
慣れたら、また、いろいろ試してみて下さい。
以上です。
それではまた。
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