今村夏子原作、大森立嗣監督・脚本の「星の子」を観た! | とんとん・にっき

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今村夏子原作、大森立嗣監督・脚本の「星の子」を観てきました。大森監督の映画は、「日日是好日」、「MOTHER マザー」に引き続きですが、「星の子」とはまったく異なったテーマと言えるでしょう。大森監督、ふり幅が広い。

 

今村夏子の「父と私の桜尾通り商店街」(2019年7月30日再版発行)、もう読み終わって、あとはブログに載せるばかりです。6篇の短篇集です。まあ、それはそれとして…。やはり表題作がよかったですね。

 

テレビで放映されていた「日日是好日」観ちゃいましたよ。10月5日にBSテレ東で放映されていたので、観始めたらなんと以前見たものでした。ブログにも書いてました。まったく、やんなっちゃう。歳取ると、観たのか観てないのか、区別がつかない、まあしょうがないか。「星の子公開記念」と銘打っていました。早い話が「番宣」だったんですね。

 

で、大森立嗣監督・脚本の「星の子」ですが、これ、なかなか悩みどころの多い、難しい映画です。主演は芦田愛菜ちゃん、主役の思春期の少女を演じる顔が素晴らしくいい。両親が怪しい宗教に入っている。頭に水を浸したタオルをいつも載せています。怪しい霊水を飲むと、風邪を引かないという。姉はそんな両親に嫌気をさして、家出したまま家に寄り付かない。

 

少女はどうするか、迷うところです。ラスト、両親とともに、宗教団体の集会に参加します。大規模な集会です。参加者は狂信的に、すべてを信じているようです。集会の夜、両親とともに、満天の星空を見上げるシーンが、美しく素晴らしい。その後少女はどうなったか、保留にしたままで映画は終わります。

 

 

大森立嗣監督は、「『星の子』という小説を読んで思ったのは、自分のことを置いといてでも人を思う気持ちです。敏感で多感な14歳の少女は風に揺れながら、飛んでいってしまいそうな小さな体で立っています。それでも自分のことのように人を思うのです。これなんだろう?  と思ったら、優しさでした」と原作の印象を語る。そして、「この映画が清涼な一陣の風のように、皆様を優しさで包み込むようになればと思っています」と意気込んだ。

 

原作は、今村夏子の「星の子」です。

今村夏子の「星の子」を読んだ!

 

文庫本の巻末に、今村夏子と小川洋子の、30ページ弱の長い対談が載っています。様々な箇所で、けっこう示唆に富んだ対談です。

今村は、「星の子」のラストは最初はもっと不穏な終わり方だったのが、編集の方と相談し、家族の物語を書いているのに、最初に書いたラストだとあまりにも悪意が見えすぎていて、それで直した、と。その結果いろんな読み方をされるようになったという。小川は、書評などで「この最後は希望が見えて良かった」と書かれていて、「ええーっ、これのどこに希望が?」と私は思った。流れ星も決して接触できない、すれ違っていくしかないという不穏な感じが。「ああ、いよいよこの子は、この世界から飛び出してゆく時が近づいているんだな」と思ったと。ラストを直すのはけっこう勇気がいりますね、と、小川。

 

以下、シネマトゥデイによる。

 

見どころ:
「こちらあみ子」「あひる」などで知られ、「むらさきのスカートの女」で第161回芥川賞を受賞した今村夏子の小説を原作にしたヒューマンドラマ。怪しげな宗教を信じる両親のもとで育った少女が、思春期を迎えると同時に自分が身を置いてきた世界に疑問を抱く。メガホンを取るのは『母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。』『タロウのバカ』などの大森立嗣。『円卓 こっこ、ひと夏のイマジン』などの芦田愛菜が、ヒロインのちひろを演じている。

あらすじ:
父(永瀬正敏)と母(原田知世)から惜しみない愛情を注がれて育ってきた、中学3年生のちひろ(芦田愛菜)。両親は病弱だった幼少期の彼女の体を海路(高良健吾)と昇子(黒木華)が幹部を務める怪しげな宗教が治してくれたと信じて、深く信仰するようになっていた。ある日、ちひろは新任の教師・南(岡田将生)に心を奪われてしまう。思いを募らせる中、夜の公園で奇妙な儀式をする両親を南に目撃された上に、その心をさらに揺さぶる事件が起きる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今村夏子:

1980年広島県生まれ。2010年「あたらしい娘」で第26回太宰治賞を受賞。「こちらあみ子」と改題し、同作と新作中編「ピクニック」を収めた「こちらあみ子」で2011年に第24回三島由紀夫賞を受賞。2017年、「あひる」で第5回河合隼雄物語賞、「星の子」で第39回野間文芸新人賞、2019年「むらさきのスカートの女」で第161回芥川賞を受賞。他の著書に「父と私の桜尾通り商店街」。著作に「冬の夜」「木になった亜紗」「ある夜の思い出」。

 

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大森立嗣:

父親は前衛舞踏家で俳優の麿赤児。弟は俳優の大森南朋。大学時代から8ミリ映画を制作し、俳優としても活動。2001年、プロデュースと出演を兼ねた奥原浩志監督作「波」が第31回ロッテルダム映画祭最優秀アジア映画賞を受賞する。阪本順治監督作や井筒和幸監督作など、多数の映画に演出部として携わる。05年、長編監督デビュー作「ゲルマニウムの夜」が国内外の映画祭で高い評価を受ける。以降、「ケンタとジュンとカヨちゃんの国」(10)、「まほろ駅前」シリーズ(11、14)などのメガホンをとる。その後も、「さよなら渓谷」(13)、「セトウツミ」(16)、「光」(17)などすべての監督作で脚本・脚色も兼ねた。18年には、森下典子の人気エッセイの映画化「日日是好日」でメガホンをとる。

 

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映画「星の子」公式サイト

http://hoshi-no-ko.jp/

 

朝日新聞:2020年10月9日