今村夏子の「木になった亜沙」を読んだ! | とんとん・にっき

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今村夏子の「木になった亜沙」(文芸春秋:2020年4月5日第1刷発行)を読みました。

 

僕が、今村夏子の「むらさきのスカートの女」を読んだのは、芥川賞の候補作になった時でした。正直言ってまさか芥川賞を取るなって、つゆほどにも思っていませんでした。それがなんと、堂々と第161回芥川賞受賞したから、驚きました。その後続けて「こちらあみ子」や「あひる」を読んで、そしてまた「木になった亜紗」でしょう。文章は平易で読みやすいのですが、内容がというか設定が毎回ぶっ飛んでいて、訳が分かりません。にしても、次々と様々な文学賞を受賞しているから、ますます訳が分からなくなりました。今後の今村夏子は目が離せません。

 

食べて、お願い。私の手から。

誰かに食べさせたい。願いが叶って杉の木に転生した亜紗は、わりばしになって、若者と出会った――。

奇妙で不穏でうつくしい、三つの愛の物語。

 

目次

木になった亜紗

的になった七未

ある夜の思い出

 

担当編集者の一押しコメント! 

今村 夏子『木になった亜沙』(4月6日刊)
田中 光子 (文藝出版局第一文藝部)
自分をかえるきっかけになりそうな小説

どうしても、自分の手から食べてもらえない亜沙。願いがかなって杉の木に転生し、わりばしになって若者に出会う――。
表題作を読んで、私はほとんど打ちのめされました。
新しい小学校で給食の時間がつらかったことを思い出しましたし、コンビニでわりばしをもらっては捨ててしまう自分を反省しました。若者と亜沙の食事の場面では、ほんとうによかったと涙ぐみました。それなのに……。
亜沙たちにあれほど愛されて、若者は、しあわせだったのか。ワイルドの『幸福の王子』を読んだあとのような、しずかなさみしさが、今も心から去ってくれません。
なにか自分の行動を変えるきっかけになりそうな力を秘めた小説――。今村夏子さんにしか描きえない、究極の愛の短篇集です。

 

作品紹介:

誰かに食べさせたい。願いがかなって杉の木に転生した亜沙は、わりばしになって若者と出会う(「木になった亜沙」)。どんぐりも、ドッジボールも、なぜだか七未には当たらない。「ナナちゃんがんばれ、あたればおわる」と、みなは応援してくれるのだが(「的になった七未」)。夜の商店街で出会った男が連れていってくれたのは、お母さんの家だった。でも、どうやら「本当のお母さん」ではないようで…(「ある夜の思い出」)。『むらさきのスカートの女』で芥川賞を受賞した気鋭の作家による、奇妙で不穏で純粋な三つの愛の物語。

 

今村夏子:

1980年広島県生まれ。2010年「あたらしい娘」で第26回太宰治賞を受賞。「こちらあみ子」と改題し、同作と新作中編「ピクニック」を収めた「こちらあみ子」で11年に第24回三島由紀夫賞を受賞。17年、「あひる」で第5回河合隼雄物語賞、「星の子」で第39回野間文芸新人賞、19年「むらさきのスカートの女」で第161回芥川賞を受賞。他の著書に「父と私の桜尾通り商店街」。

 

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