大森立嗣監督の「ケンタとジュンとカヨちゃんの国」を観た! | とんとん・にっき

大森立嗣監督の「ケンタとジュンとカヨちゃんの国」を観た!

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大森立嗣監督の「ケンタとジュンとカヨちゃんの国」を観てきました。大森立嗣監督は、5年前の「ゲルマニウムの夜」に続き、第2作です。前作の「ゲルマニウムの夜」は花村萬月の芥川賞受賞作が原作でしたが、今回は自らオリジナル脚本を書きました。児童養護施設で兄弟のように育った幼なじみのケンタとジュン。ビルの解体現場でコンクリートの壁を壊す仕事、「ハツリ屋」という仕事に就いています。低賃金、劣悪な労働環境、それに加えて先輩(新井浩文)の陰湿な虐めにあっています。「やりてぇ」と街でカヨちゃんをナンパしたジュンには、電動ブレーカーからくる腱鞘炎か、手の先が白くなることがあります。それを見た女の子から「キモイ」と言われて、落ち込みます。2人は先輩の高級車を大ハンマーで破壊し、会社のトラックとオートバイを盗んで、ジュンにまとわりつくカヨ(安藤サクラ)と3人で、ケンタの兄(宮崎将)のいる網走へと旅に出ます。


カヨちゃんはセックスだけが生き甲斐の、頭のやや足りない、ブスでデブ、しかもワキガの、それでも今風の女の子です。トラックやオートバイで旅する彼らの姿は、一見「ロードムービー」のようにも見えます。しかしそれは見かけだけに過ぎません。ケンタとジュンは、カヨちゃんを非情にも簡単に捨て去ってしまいます。社会の底辺を漂流するもの同士が、結果として互いに傷つけ合うことになってしまいます。ケンタは網走刑務所で会った兄の姿に大きく傷つきます。その怒りがジュンとカヨに向けられます。追ってきた先輩が銃を構えて立ちふさがります。ケンタは何とか彼を倒しますが、結局はその銃が3人を生と死に引き裂いてしまいます。


「ケンタとジュンとカヨちゃんの国」は大森立嗣監督のオリジナル脚本ですが、結果として「ゲルマニウムの夜」を引きずっているように思います。どちらの主人公も施設で育ち、社会に居場所のない、受け入れられない若者です。鬱屈した精神が、毒をまき散らし、結局は暴力へと向かい、それが悲しさを誘います。そこへいくとカヨちゃんには、なぜか不屈の精神が備わっているように思われます。カヨちゃんのケラケラと笑う声が耳から離れません。いつの世も女は滅法強い、と思わざるを得ません。


以下、とりあえず「シネマトゥデイ」より引用しておきます。


チェック:孤児院で兄弟のように育った若者たちが、過酷な労働環境で働かされている解体現場の仕事にいら立ちを募らせ、人生の新たな一歩を踏み出そうとする青春ストーリー。『イキガミ』の松田翔太と『ハゲタカ』の高良健吾が、気迫あふれる演技力で、現代社会を生きる若者たちが抱える不安や憤りを生々しく体現する。彼らのリアルで切実な希望の物語をオリジナル脚本でまとめた、『ゲルマニウムの夜』の大森立嗣監督による硬派な演出も光る。


ストーリー:孤児院で兄弟のように育ったケンタ(松田翔太)とジュン(高良健吾)は、電動ブレーカーでひたすら壁を壊すだけの解体現場で働く日々を送っていた。安い賃金に過酷な労働環境、そして陰惨ないじめに遭い、行き場のないいら立ちを募らせた彼らは、兄貴のいる北へ向かうことにかすかな希望を抱いて、旅に出ることにするが……。



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「ケンタとジュンとカヨちゃんの国」公式サイト


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