Bunkamuraザ・ミュージアムで「デュフィ展」を観てきました。観に行ったのは6月16日のことです。デュフィの作品は、地方の美術館の館蔵品展でだいたい数点観ることができます。ブリヂストン美術館では「開かれた窓の静物」「静物」「ドーヴィルの突堤」「オーケストラ」の4点が図録に載っています。特に「オーケストラ」は、いかにもデュフィらしい描き方の作品です。デュフィのメロディーが聴こえてきそうな音楽をモチーフにした、明るい色彩とリズミカルで軽やかなタッチの作品は、多くの人を魅了してきました。いわゆるデュフィらしい作品といえます。
もともとこんな作品ばかり描いてきたと思っていたのですが、今回の「デュフィ展」を観て、こうした作品は比較的晩年の作品であることがわかりました。1899年、美術学校で学ぶためにパリへ出てきた当初は、デュフィは印象派に共感を覚えていました。やがてマティスに刺激を受け、フォービスムの画家たちの仲間入りをします。さらにセザンヌの回顧展にも感銘を受け、南仏に滞在してセザンヌ風のタッチの風景画を残してもいます。
今回、20世紀のファッション界の革命児ポール・ポワレと出会い手がけたテキスタイルや、詩人・アポリネールの「動物詩集あるいはオルフェウスのお供たち」のために制作した木版画も展示されていました。綿布や麻布のプリント、レリーフプリントの他に、ファッション画としてのクロッキーも出ていました。他に花瓶などの陶器の作品、面白かったのは椅子「パリ」の4点、「シャン=ゼリゼ」「チュイルリー公園」「オペラ座」「ムーラン・ルージュ」でした。そして晩年、あの色彩とメロディーの溢れるような世界へと行き着きます。
展覧会の構成は、以下の通りです。
第1章 1900-1910年代 造形的革新のただなかで
第2章 木版画とテキスタイル・デザイン
第3章 1920-1930年代 様式の確立から装飾壁画の制作へ
第4章 1940-1950年代 評価の確立と画業の集大成
第1章 1900-1910年代 造形的革新のただなかで
第2章 木版画とテキスタイル・デザイン
第3章 1920-1930年代 様式の確立から装飾壁画の制作へ
「馬に乗ったケスラー一家」1932年 油彩
イギリスの裕福な大地主であるジャン・バティスト・オーグスト・ケスラーの注文による、家族の集合肖像画。デュフィが独自のスタイルを確立し、精力的に制作に打ち込んでいた1930年代の代表作の1点です。デュフィの作品に特徴的な澄んだ青色の背景には、木々の葉が装飾的に描かれ、画面を活気づけています。高さ約2m、幅約2.7mのこの大作は、鑑賞者を圧倒する存在感を放ちます。
第4章 1940-1950年代 評価の確立と画業の集大成
「デュフィ展」
ラウル・デュフィ（1877-1953）は、明るい色面に軽快な筆さばきで線描をする独特の様式で知られ、日本でも人気の画家です。1920年以降、地中海のまばゆい光と解放的な風土、演奏中のオーケストラや行楽地の風景を主題とした作品で、その様式を開花させました。本展は、故郷のル・アーヴルを出てパリ国立美術学校に入学する1899年から晩年に至るまでを紹介する回顧展です。フォーヴィスムとの出会い、ブラックと共に行ったレスタックでの制作、アポリネール『動物詩集』のための木版画制作、そしてポール・ポワレとの共同制作によるテキスタイル・デザインなど、造形的な展開を丁寧に検証することで、色彩と光の戯れの向こうにある画家の本質を引き出します。
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