【時代劇局長のズバリ感想文】
いよいよ、直江状まできたか。大河が始まる前は楽しみで仕方がなかったが、放送当日となると寂しさを感じる。しかし、始まりがあれば終わりがある。あまり悲観的にならずに見る事にしよう。さぁ、どう描かれるか・・・。
①火種は上杉
冒頭の言葉は『火種は上杉』。天下分け目の戦いといわれる関ヶ原は、上杉が家康に挑戦状を送った事から始まったという解説だ。これまで関ヶ原は数多く描かれてきたが、この細かい部分はあまり描かれなかったように思う。どう対峙するか兼続!本編の内容を期待をさせる冒頭の言葉であった。
②仙桃院の今後は?
謙信の23回法要が営まれた。そうか、もうあれからそんなに時が経つのか・・・。兼続は既に40歳を超えていた。仙桃院が参列していたが、原作では既に、堀秀治から『いつも睨まれている気がするので、会津にお引取り願いたい』と強い要請があり、謙信公の遺骸ともども、仙桃院も会津に移されていたが、今話ではその描写はなかった。この機会に説明しておいた方が良かったのでは?と思った。ちなみに仙桃院は、上杉家の米沢移封にも付き従い、慶長14年(1609年)に米沢で亡くなっている。墓所は兼続と同じく、米沢市の林泉寺にある。
③兼続対家康なんだけどなぁ~
上杉に家康から書状が届いた。これは、上杉景勝宛ではなく、”直江兼続宛”で届くが、今話は上杉景勝宛であるかのように描かれた。これはなぜか?これは上杉家と徳川家の戦いではなく、兼続と家康の戦い。家臣たちの反応、景勝の了承のシーンはいらなかったように思う。そして、世に言う『直江状』の作成に入る・・・。
④直江状紹介の演出法にガッカリ
筆者はラジオ番組を作るのを本業としている。だからこそ、同じ制作者としてNHKが『直江状』をどう描くか大変興味があったが、正直、期待はずれであった。確かに、直江状の文字数は多い。ノーカットで読み上げるのは難しいと思う。しかし、各大老や関係する武将が、それを読み上げるシーンをつなげていたのはあまりにも邪道すぎる。正直、制作者なら誰しもこの描き方は予測出来た。確かに分かりやすく描いていた。でも、だからこそ、そう描いて欲しくはなかった。描き方が普通すぎて、直江状の存在自体が軽く扱われた気がしたからだ。たくさんの人を出したのは単調になるのを防いだと思われるが、筆者なら、あえて妻夫木聡さん演じる直江兼続が直江状を読み上げる演出をした。もちろん、単調にならない演出法で・・・。
⑤上杉びいきとしては悔しい!
書状を読んだ家康は激しく怒り、諸将を集めて上杉討伐に向かう。一方、兼続は会津の南、白河の革籠原に巨大な防塁を築く。敵軍をここに誘い込み一気に叩く作戦だ。兼続は上田衆に、この戦は義の国を築くための最後の試練と告げた。この時点で兼続にどの程度の勝算があったのだろう。原作の火坂先生にインタビューした際、『恐らく上杉が勝っていた』と言っていたのを思い出した。『兼続は本当に策士ですね~そのまま天下も取れたのでは?』と質問した筆者だが、火坂先生は『いや、その戦法は白河でしか出来なかった事なんです』と返答。そうか・・・。その策に完全にハマる事なく、西に兵を向けた家康。上杉びいきとしては悔しい!の一言だ。
⑥『早すぎるッ!』がなかった・・・
三成の盟友・大谷吉継がようやく登場した。唐突に2人の仲を描かれても違和感があるが、まぁ、いいだろう。その後、毛利輝元を総大将として家康討伐のため挙兵。こうして関ヶ原が始まる訳だが、三成の動きが早すぎた!知らせを受けた家康は、三成を討つため大坂へと引き返すのである。原作では、『決して先に動くな!』と三成に釘をさしていた兼続だが、原作にある『早すぎるッ!』という兼続のセリフがなかったのが残念だ。決して全て原作通りにして欲しいとは思ってないのだが・・・。
⑦義とは?
家康引き上げにあたり、兼続は家康を挟み撃ちにする絶好の機会と景勝に進言した。しかし、景勝は敵を背後から討つのは義に背くと応じなかった。それでも訴える兼続。義を主張する景勝だが、確かに景勝の言う事はもっともだ。しかし、兼続の言う事も正しい。義とは何か?本当の義とは何か?常に筆者も心掛けている義だが、その言葉の意味には奥深いものがある事を感じた。義・・・筆者の義など義を語る以前の問題なのかもしれない。それにしても、最後の兼続対景勝のシーンは見所があった。迫力満点でこれは良かった!しかし、これによって三成は、敗北の道へと進むのである。
【来週の展望】
来週は、関ヶ原が描かれる。ドラマとはいえ、歴史が変わるわけではない。でも、今回ばかりは三成に勝利を・・・。そう思うのは筆者だけではないだろう。う~ん。やっぱり悔しい。