【時代劇局長のズバリ感想文】

11月に入り、大河ドラマ『天地人』もカウントダウンに入った。今回を入れて残り4回。しっかり楽しみたいと思う。それでは終盤の第44回の感想文にいきましょう。

①取扱注意

冒頭の言葉は『取扱注意』。上杉を守るための策として、直江家に本多正信の次男を婿養子に迎えた兼続。大谷吉継、宇喜多秀家、福島正則と主君を変え、関ヶ原では西軍についた得体の知れぬ男・・・と解説があったが、まさにその通り。さぁ、そんな男が米沢でどんな行動を取るのか見ものだ。

②単なる縁組ではなかった?

慶長9年(1604年)、本多政重が直江家に婿入りして名を勝吉と改めた。”勝”の字は上杉景勝の”勝”だ。兼続の長女於松の女婿で、実子がなかった上杉景勝の養女とし、勝吉との間にできた男子に、上杉家を継がそうという考えもあったらしい。その企みは景勝に嫡子が誕生した事で消えるが、縁組というのは単なる縁組にあらず、いろんな思惑があってのものなんだという事を感じさせた。

③またまた綺麗な話にするのでは?

兼続の娘・お梅が14歳で亡くなり、続いてお松も婿を迎えて1年足らずで病没しまった。自分よりも先に子を亡くした兼続とお船夫婦はさぞ哀しい思いをしたに違いない。兼続は、そんな勝吉に対して上杉の内情を包み隠さず明かし、上杉の鉄砲づくりまで見せた。驚く勝吉に兼続は、『これからもここで暮らすように』と話す。後に弟の大国実頼の娘阿虎を養女にして政重にとらせるが、この結婚を機に姓を本多姓に戻したという記録がある。その後、米沢を出奔。その辺りをどう描くか注目だが、今週の放送で『跡継ぎは竹松に譲りたい』と申し出るなど、きっと竹松に気を使って出奔するという綺麗な話にするのものと思われる。筆者は、上杉での役割を終えた事での出奔と見ているが・・・。

④兼続の思惑は?

鉄砲の製造兼続は勝吉に鉄砲づくりの現場を見せるが、鉄砲づくりの解説がなかった。また、将軍職が家康から秀忠に譲られた事で、『天下は動く』と挑発した政宗に対しても『民の暮らしこそ大事』と答えるに留まった。この辺りはもう少し視聴者に分かる解説をしても良かったのでは?原作では、幕府に対して内密に進められた鉄砲製造は、勝吉を通じて情報が外に漏れる事を兼続は最初から計算していた・・・という記述がある。要は徳川幕府に恭順の意を示しながらも、他方では大規模な戦闘に備えていた武備恭順の思想であるが、この兼続の思惑が表現されていなかったのは残念だ。

⑤ここは是非!

猿尾堰が決壊した話があったが、ここは是非ご覧下さい。猿尾堰は松川(最上川)の水を分水し、灌漑や生活用水とした重要な堰で、現在でも米沢市東南地区の農業用水、融雪用水として活躍している。ここには『龍師火帝の碑』があり、兼続が洪水防止と干ばつ防止を願い建立したといわれている。直江石堤の上流、猿尾堰取水口のそばにあるので、直江石堤、武家屋敷とセットで見てみては?とても穏やかな場所にあり、綺麗に整備されているので当時の面影は感じないかもしれませんが、貴重な場所だと思います。

⑥これって本当の話?

猿尾堰の決壊に際し、兼続は米沢生まれの政宗に治水について相談。治水に詳しい者を送ってもらい、米沢を訪れた政宗に、『ここは一つの天下をなしている』と、兼続の街づくりを褒めた。このエピソードを初めて知ったが・・・政宗が力を貸していたというのは事実であろうか。筆者が調べた限りではそのような事実はなかった。う~ん、正直、ありえん!と思うのだが・・・。

【来週の展望】

予告に、”残り三回”という表記があったが、どんな最終回になるのか?今の状態では全く予想がつかない。ここ数回の話で、『兼続の愛と義』が明確に表現されていない気がするが、ただただ期待するのみだ。