ベトナム当局による実質的な銀行の融資規制で企業(または個人)は銀行から現在、融資がなかなか受けられない状況にあります。そうしたなか、「闇金融」が運転資金に支障をきたした企業(商店)などを相手に暗躍しているようです。
地元紙「ラオダン」は潜入レポートを報じています。
テト(旧正月)用の商品仕入れのための資金が必要な商人を装って、同社レポーターはインターネット上に「お金貸します」と広告を出していた闇金融業者と接触しました。電話での闇金融業者の第一声は「担保はあるか」です。「ラオダン」によると、闇金融の融資担保掛目は不動産市場価格の50-60%といったもので、闇金融業者は「土地使用の権利書があればいくらでも融資する」というようです。「無法な高金利」であるのは言うまでもありません。
地元紙レポーターは、「闇金融では融資時に融資金額で一旦、不動産を売却し、融資全額返済時に不動産を反対売買するという念書にサインを強要される」と続けます。つまり、法的には闇金融側にいったん不動産を売却する形をとるもので危険極まりないものです。再売買の予約(?)を闇金融側がなんらかの理由で拒否すれば不動産の所有権(社会主義国の場合、使用権だが)は永遠に戻ってこないことになるからです。
「無法な高金利」の内容は、「金利(借り入れ時支払い)」と「サービス手数料7%(借り入れ時支払い)」です。具体例を挙げる。仮に借主が10億ドンの不動産を担保に差し出して闇金業者から4億ドンの融資を受けるとするならば、「金利」分の4800万ドン、プラス「サービス手数料」分の2800万ドンの合計7600万ドンを差し引いた(実質)3億2400万ドンの融資を受けることになります。つまり、返済が無い場合は10億ドンの不動産を3億7600万ドンで闇金業者は手に入れることができるわけです。
ホーチミン5区、6区、ビンタン区の不動産を扱う老舗不動産会社のトータン(Tu Thong)社は、「年初やテト後には多くの人が土地・家屋を闇金融への返済のために売却することになるだろう」と観測しています。
日本人には90年代日本の「金詰り」をイメージすれば分かりやすいと思います。しかし、ベトナムは当時の日本のように「貸しはがし」の段階ではありません。
2010年に入って、銀行の貸し渋りの最悪期は過ぎましたがまだベトナムの「貸し渋り」は続いています。根底にあるのは、昨年のGDPの8.7%に及ぶ景気刺激策の後遺症・インフレ懸念です。ベトナム国家銀行は今年の目標融資増加率を前年実績37.73%を大きく下回る25%に設定しています。