3月中旬のサコムバンク(STB)の株主総会で以前から噂となっていたANZ銀行(オーストラリア・ニュージーランド銀行)の保有するサコムバンク(STB)発行済み株式10%分売却計画が追認されました。現在、AZN銀行はSTBの株価にできるだけインパクトを与えないように株式10%分の引き受け先を探しています。
ANZ銀行は2005年にSTBと戦略提携しました。同時に、ANZ銀行はSTBの発行済み株式10%分を2700万ドルで購入しています(現在、同株式の評価額は約8100万ドルです)。
ANZ銀行のCEO(最高経営責任者)は今回のSTB株式の売却について、「(STBとの)戦略提携は不完全で、当行のメリットは限定的だった」と述べています。一方、STBの取締役会議長タン氏は「ANZ銀行と当行は(ベトナムでの)リテールバンキング分野で競争相手になってしまった」と語ります。
銀行株には、外国人投資家の投資上限発行済み株式数の30%という投資規制があります。更に、外国金融機関に対しては投資上限(発行済み株式数の)10%という規制が存在します。つまり、ANZ銀行は上限一杯10%のSTB株式を保有していたことになります。この投資規制のために、ANZ銀行としては追加的にSTBの株式を購入して(STBとの)関係を深めるという選択肢はありませんでした。また、ANZ銀行は2008年に100%外資のANZ銀行(ベトナム)を設立したため、リテールバンキング事業でSTBと競合することになってしまったのも今回の提携解消の大きな要因でしょう。
銀行アナリストは、今回のANZ銀行のSTB株式売却はあくまで個別的なもので、他の(ベトナムの)銀行の海外戦略提携(パートナーシップ)に大きな影響は及ぼさないと分析しています。現在、ベトナム10行が海外銀行と戦略提携を行っています。例えば、アンビン銀行はマレーシアのメイ銀行、テクコムバンクは香港上海銀行(HSBC)、オリエンタル商業銀行(OCB)はBNPパリバ銀行、アジア商業銀行(ACB)はスタンダードチャータード銀行、エクシムバンクは三井住友銀行、南方銀行はユナイテッドオバーシーズバンク、ハブバンクはドイツ銀行AGなどです。
ACBの発行済み株式6.09%を保有するスタンダードチャータード銀行では「戦略パートナーとしてACBには完全に満足している。機会があればACB株式を更に購入したい」とコメントしています。確かに個別的なものなのでしょう。
日本の投資家にとっては、STB株式の売却先次第では購入上限30%の内、10%が空くことになります。但し、市場の噂では売却先有力候補としてシンガポール系銀行の名前が挙がっています。今後の動向に注目したいと思っています。