フィッチ、ベトナム国債を「ネガティブウォッチ」へ | ホーチミン市(旧サイゴン)在住・証券アナリストのタイ株、ベトナム株、日本株ブログ

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ホーチミン市(旧サイゴン)在住の証券アナリスト・竹内浩一が、ベトナムを中心に世界の金融市場を見渡すブログです。

 銀行や国債の格付けで有名な格付け会社「フィッチ(Fitch)」は3月中旬に、「SBV(ベトナム国家銀行)が追加的な金融引き締めをしないならば、ベトナム国債の格付けをBB-から引き下げる可能性がある」とし、ベトナム国債をネガティブウォッチ(将来の格付け引き下げ可能性有り)リストに入れました。

 フィッチ社では通貨ドンの信認低下、外国為替準備金の減少、インフレ懸念などマクロ経済上の不安要因を指摘しています。

 これに対して、バークレイズ・キャピタル(シンガポール)のソファット氏(エコノミスト)は、「フィッチが示した懸念は早急で近視眼的」との見方を示しています。ソファット氏によると、「フィッチは(ベトナム経済の)ファンダメンタルの強さ長期的な潜在能力を見逃している」といいます。同氏は、「通貨ドンは昨年11月、今年2月に切り下げられ、現在の通貨ドン相場は安定している」との見方を示すとともに、貿易赤字については、「年初以降、貿易赤字は改善傾向にある。2010年は海外直接投資(FDI)が110億ドル、海外からベトナムへの送金が70億ドルと合計180億ドルの資本流入が予想されている。これは貿易赤字を十分にカバーする金額だ」と分析しています。また、SBVの金融政策については、「SBVは静かに金融引き締めを実行している」としています。これは、先日の融資金利規制の緩和(交渉制へ移行)、融資助成金の削減などを指したものです。

 一方、シティグループのアナリストは、「SBVは市場に明確な金融引き締めシグナルを示す必要がある。国債格付け引き下げも有りうるのでは」と観測している。仮に、フィッチがベトナム国債の格付けを引き下げれば、資金調達コストの増加は(ベトナム)経済に悪影響を及ぼすことになります。

 ベトナム国家銀行(SBV)では4月中の基準金利(8%)の引き上げは無いと発表しています。