『光の雨』 (2001) 高橋伴明監督 | FLICKS FREAK

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いやぁ、映画って本当にいいもんですね~

 

自ら学生運動に身を投じて第二次早大闘争に参加したことで、大学を除籍され二文中退という経歴を持つ高橋伴明監督による、連合赤軍事件を描いた作品。「連合赤軍事件」とは1971年から1972年にかけての山岳ベース事件と続くあさま山荘事件を指すが、それから30年を経たこの作品が連合赤軍事件を初めて本格的に描いた作品というのは少なからず驚かされた。当事者意識が30年の熟成を経てこの作品に投影されていることは言うまでもない。

 

立松和平の著作を原作とする作品だが(立松和平の原作の映画化作品には、根岸吉太郎監督の秀作『遠雷』がある)、立松の原作をそのまま映画化するのではなく、小説『光の雨』を映画化する模様を描いた作品となっている。また、その映画の中で映画作成のメイキングを撮影するシーンもあり、そうした多層の入れ子構造が特徴的だった。

 

子供の頃にあさま山荘事件の中継をテレビの前で釘付けになっていた記憶はあるが、自分が大学生時代('83-'87)はゲバ字の看板こそ目にすれ、学生運動はかつての先鋭性は全く失われていた時代だった(なんクリ~ホイチョイ世代)。中道ノンポリを標榜していたが、それ自体学生運動時代の残滓で、今日では「ノンポリ」などは死語なのだろう。自分が敢えて「ノンポリ」を標榜しなければならなかったのは、自分が学生運動時代に学生だったらどうだったのだろうと思うからであり、彼らの行動は唾棄すべきと疑いもないが、その衝動には眩しいものを感ぜざるを得ない。

 

連合赤軍事件を描きながら、それを劇中劇とすることで、少し距離を置いた描き方になっているのは(演じる役者に、学生の行動に疑問を投げかけさせるのは、世間の反応を忖度しているように感じる)、少々「逃げ」のように感じないでもない。しかし、そうしなければ描けなかったほど、生々しい当事者意識が高橋監督には30年を経てもあったのかもしれない。

 

連合赤軍事件を描いた作品としては、若松孝二監督『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』(2008)といった秀作がある。リアルさという点では若松作品に分があるように感じるが、高橋作品のよさは森恒夫をモデルとする倉重を演じた山本太郎と永田洋子をモデルとする上杉を演じた裕木奈江の独特な存在感だろう。森恒夫と永田洋子の悪魔性をそのまま映すのではなく、役者が演じているという虚構性を加えることでうまくデフォルメされているように感じた。また、彼らに準ずるポジションながら彼らに完全に従属する坂口弘をモデルとする玉井のキャラクター(演じているのは池内万作)は、『実録・連合赤軍~』の井浦新よりはよほどよかった。

 

山岳ベース事件では「総括」により殺害された学生は12人だが、この作品では連合赤軍の前身である革命左派(日本共産党革命左派神奈川県委員会、後に共産主義者同盟赤軍派と合流し連合赤軍となる)が起こした印旛沼事件での内部粛清の犠牲者2人を加え、14人の殺害が「同志殺害」として描かれている。

 

学生運動の先鋭化の先に同志殺害という異形が生み出された歴史から何を学ぶかは人それぞれだろうが、考えさせる力を持った作品である。観て損はないだろう。学生運動に興味があるなしに関わらず。

 

★★★★★★ (6/10)

 

『光の雨』予告編