『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』 (2008) 若松孝二監督 | FLICKS FREAK

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いやぁ、映画って本当にいいもんですね~



あさま山荘事件が起こったのは1972年2月。自分が小学校2年生の時だった。勿論、何が起こっていたかを理解していたわけではなかったが、連日テレビの前に釘付けになっていた。自分の実家は自営業をやっていたが、突入があったのは店が休みの月曜日(1972年2月28日)だったため、親が店の片付けをしている光景と自分が中継のテレビを見ながら地元のお菓子(福富屋製菓の「ビーバー」)を食べていた記憶がリンクしている。あさま山荘事件は、その時点で何がその背景かを理解していないという意味でリアルタイムの経験とは言えないが、それでもそうした「かすった」経験があるのと全くないのではやはり関心は違うのではないだろうか。

先日観た『11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち』 に続き、若松孝二監督による史実に基づく作品。『11.25~』は正直感心しなかったが、この作品はよかった。実はとてもよかった。

名前としては「あさま山荘事件」の方が有名だが、連合赤軍の事件の中で興味深いのはやはり山岳ベース事件。あさま山荘事件の時には、森恒夫も永田洋子もいないから。やはり彼らがいかに集団を狂気と恐怖で支配していたかの方に興味はそそられる。

その意味で、この映画はタイトルこそ「あさま山荘」を掲げているが、あさま山荘事件は最後のおまけ程度で、やはり山岳ベース事件が中心になっており、連合赤軍が形成される過程からあさま山荘事件、その後の連合赤軍の状況まで、過不足なくバランスよく扱っていると感じた。

その点においても、警察側の視点で描かれた『突入せよ!あさま山荘事件』は、自衛隊投入を許さなかった警察権力の輝かしい歴史を扱った多分に翼賛的なものであり、事件の掘り下げとしては浅いと言わざるを得ない。

そしてこの映画の描く山岳ベース事件は、現実に起こった凄惨さを如実に伝えると共に、なぜ彼らが狂気に駆り立てられていったかがうかがい知れる内容になっている。特に、連合赤軍を形成する赤軍派と革命左派の間の軋轢と内部の権力闘争が一つの鍵のように描かれていて興味深かった。脱走者を出さないために、殺害の共犯とさせるという狡猾かつ残忍な意図もよく見えた。

森恒夫を演じた地曵豪と永田洋子を演じた並木愛枝の演技がこの作品に説得力を与えていた。それに比較してNo.2(森、永田が同列の首領として)の坂口弘を演じた井浦新は、この作品でも精彩を欠いていると感じた。彼の透明感、不思議感が活きていないようであった。

歴史から何を学ぶかは人それぞれだが、そのfood for thought/思考の糧となるにはよく出来た映画と言える。

★★★★★★ (6/10)

『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』予告編