『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』 (2015) J・J・エイブラムス監督 | FLICKS FREAK

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いやぁ、映画って本当にいいもんですね~



大流行りのレストランで、自分も贔屓にしている店のシェフが変わったとする。シェフは新しいことをやりたかったのだが、店のオーナーは看板にこだわり、リスクを取らせたくなかったと聞いている。オーナーが昔からのスタイルに固執したのは、かつてシェフが新たなチャレンジをして、昔からの客に相当批判されたということも背景にあったのだろう。新たにシェフに迎えられたのは、ほかの店で大人気のスターシェフだった。自分は、彼のレストランにも行ったことがあるが、確かにそつはないものの斬新さに欠け、「こういう味を出していれば満足だろ?」と言っているかのような底の浅さを感じた。看板で店を選ぶ人もいるかもしれないが、自分にとっては、やはり自分がお気に入りだったシェフが変わればレストランも変わると思っている。

あるいは...

70年代、80年代に一世を風靡したロック・ミュージシャン。一時期ブランクはあったものの、その後再ヒットもして、ビッグ・スターとしての地位を確立している。ただ近作はあまりぱっとした売れ行きもしておらず、ここ10年はニュー・アルバムも出していない。そのミュージシャンが久々にアルバムを出したということで、来日のコンサートが予定され話題となっている。そのコンサートに行ったものかどうか。時流の変化に合わせて新たな音楽の方向性を見せてくれるのなら楽しみだが、昔のヒット曲のオン・パレードで、オールド・ファンに迎合するステージなら、ノー・サンキューと言いたいところである。

ディズニーがジョージ・ルーカスから版権を買い取ったスター・ウォーズの新トリロジーだが、ジョージ・ルーカスの原案をディズニーが拒否した時点であまり期待はしていなかった。しかもパージされたジョージ・ルーカスに代わって監督に選ばれたのは、J.J.エイブラムス。彼の作品は、今回のスター・ウォーズ新作を観るために観直して(『スター・トレック イントゥ・ダークネス』 『M:i:III』 )、自分とは合わないことを確認済みである。

そのため公開当初から静観して、人の混雑が一巡してから観ればいいかなという程度の期待値だった。それが首都圏の雪の影響で足元が悪くなり、これならそんなに混まないかなと、思いのほか早いタイミングで観ることになったスター・ウォーズの新作は、十分に期待値を下げていたにも関わらず、それでも失望する出来だった。というか、予想通りのJ.J.エイブラムスらしいそつのなさ、新味の薄さだった。

例えば、エッフェル塔にしても、また私の地元の金沢駅の鼓門にしても、最初は相当批判されたが、やはりその斬新さが新たな時代の価値を創出したと今では評価されている。

スター・ウォーズという歴史的名作シリーズの続編を作るディズニーとJ.J.エイブラムスに、そうした新たな価値の創出の意欲があったとは到底思えない作品だった。本作品の評価は上々であり、ディズニーもJ.J.エイブラムスも胸をなで下ろしていることだろう。新たなファンも獲得したようだが、「変化を求めるオールド・ファン」のニーズは満たせなかった。

まず、あまりに旧作とのイメージのオーバーラップが多過ぎる。フォースを隠れた能力として育った主人公が、成長過程で見出され、宇宙に飛び出していくという設定は、アナキンもルークも同じパターン。そのパターンを踏襲することに陳腐さはないのだろうか。

レジスタンスのX-ファイターが、最終兵器発射のカウント・ダウン中のデス・スター(もどき)のエネルギー・ジェネレーターを、シールドの落ちている間に爆破するという設定は、これで3度目?

ライトセーバーはジェダイの象徴であり、フォースの加護がなければ使いこなすことができないという設定ではなかったのか?レイはまだしも、所詮ストーム・トルーパーのフィンが使えるってもなあ。しかも彼をさっさと片付けられないカイロ・レンって弱過ぎ。

カイロ・レンがダース・ベイダ―にそっくりなのも手抜き感大。ダークサイドに墜ちながら、「ダース~」を名乗るシス卿ではないのだから、もっと斬新なイメージ・チェンジが欲しかった。

レイがフォースを持っていることから、親はルークかレイアのいずれかなのだろうが、そうすると、カイロ・レンとは兄・妹あるいは従兄妹ということになり、そうした肉親間の確執も手垢がついている。もはや「I am your father.」のインパクトはない。

ストーリーがつながっている以上仕方ないが、ハリソン・フォード、キャリー・フィッシャーの年老いた姿はあまり見たくなかったようにも感じる。ラスト・シーンも、ほとんど紅白歌合戦のトリに大御所演歌歌手が出てくるかのような印象だった。

『スター・ウォーズ』が公開された1977年当時には、これほどキャラクターに親しみが持てるエンターテイメント性を持ったSF作品はなく、『スター・ウォーズ』はオンリーワンの存在だった。しかし、今はSF作品がヲタク占有物ではなく、一般に受け入れられ、高水準の作品が百花繚乱である。それらの中で更にそれらを上回る出来を期待するという方が酷というものだろう。

とは言え『スター・ウォーズ』である。トレンド・フォロワーではなく、トレンド・セッターとして、燦然と輝いてほしい作品だった。しかし実際は、135分が長く感じられた。

やはりジョージ・ルーカスあっての『スター・ウォーズ』なのではないだろうか。

★★★ (3/10)

『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』予告編