障害者の性を扱った映画といえば、2012年(日本公開2013年)の『セッションズ』が記憶に新しいが、『セッションズ』は障害に対する意識が進んだアメリカ発の映画であり、セックス・サロゲートという職業をモチーフにして、「障害者の性」に真正面から取り組んだ作品だった。
この作品は、インド発。かなり封建的な社会であろうインドで、障害者の性、しかもバイセクシャルとあれば、かなり先鋭的なはずだが、そうした制作の背景を裏読みしなければ、肩肘の張らないむしろすがすがしい青春映画のよう。
ライラは、インドの大学に通う19歳の女の子。脳性マヒのため、車椅子に乗らなければ動くことができず、話す言葉も不自由。それでも両親や弟に支えられ、体は不自由でもとにかく活発。友人のロック・バンドのために歌詞を書き、ハンサムなバンドの男の子に恋をして、時にはインターネットでポルノ・サイトを盗み見る。
彼女が、健常者の女の子が経験するよりもちょっとだけハードだけれども、それでもやはり10代の普通の女の子がぶつかる同じような悩みを乗り越えて、前向きにそしてひたむきに生きる姿を描いている。
この映画を観て思い出したのは、「なぜ『おかあさんといっしょ』には障害児は出ないのですか」という投書を読んだ時のこと。実は、NHKはあくまで抽選で選んでいるので、別に障害児であっても出られないわけではないのだが、だからといって特別扱いもしないとのこと。ただ『おかあさんといっしょ』に、障害児が出ることに違和感を感じる人もいないわけではないだろう。そうした感覚が、障害に対する差別に根ざしていることは間違いない。
日本で、この映画と同じテーマで作ったなら、多分、随分と違った作品になったであろう。それくらい、この映画は、障害のあるないに関わらない(とはいえ、離れることはできないのだが、それでも)少女の大人の女性への成長と、家族、特に母親とのつながりの深さを、みずみずしく描いた作品である。
敢えて難を言えば、ラストシーン。監督はエンディングを随分と考えたのだろうが、それがうまくいっているとは言えなかった。ドラマチックな演出より、もう少しさらっといってもよかったのではないだろうか。あと邦題のダサさは、いつもながら残念なところ(原題「Margarita, with a Straw」)。
この作品は、インド映画だからとか、障害を扱っているからとか、そうした垣根を取り払って観る価値のある映画だったと言える。
★★★★★★ (6/10)
『マルガリータで乾杯を!』予告編