『最愛の子』 (2014) ピーター・チャン監督 | FLICKS FREAK

FLICKS FREAK

いやぁ、映画って本当にいいもんですね~



凄い映画。生半可なお涙頂戴ものではなく、深く考えさせられた。

田舎から深圳に出てきたかつての夫婦のティエンとジュアンには3歳のポンポンがいた。ティエンはインターネットカフェを経営し、ジュアンは再婚してキャリアウーマンとして働いていたが、それぞれポンポンを愛していた。そのポンポンが誘拐され連れ去られてしまう。

ティエンとジュアンの必死の捜索の結果、3年後、ある農村でポンポンが奇跡的に見つけられる。しかし、その時にはポンポンは実父母のことを忘れていた。自分を不妊だと信じ、誘拐犯の夫から代理母から引き取ってきたと聞かされ、彼の死後も一人でポンポンを実の子のように育てていたホンチン。ポンポンが誘拐されたと分かって引き離された後も、彼女は子供のことを忘れられず、それは子供の方も同じだった。

中国の現代的問題が非常にヴィヴィッドに描かれていて、観ていて怖くなるほど。これがもっと未開の後進国なら、臓器売買や性的奴隷としての人身売買なのだろうが、中国の場合は、一人っ子政策と、深圳のような都会と農村部との経済格差という特殊事情から、農村部の働き手としての子供の誘拐、人身売買が社会問題化しているという。

そして、子供を探す親を食い物にしようとする詐欺団が、彼らに群がって来る様子が実に中国。さらわれた子供を探す親のグループが存在し、誘拐グループが摘発されると、バスを仕立てて直接誘拐グループに会いに行き、会えてしまうのが実に中国。警察の取り調べの様子も、裁判の様子も、日本の常識とはあまりにかけ離れていて、実に中国。

そうした「リアル中国」の実態に驚かされながらも、やはり子供を思う親の気持ちというのは、ユニバーサルであり心を揺さぶられた。

この映画では、子供を誘拐された親も被害者なら、誘拐された子供と知らずに育てて引き離された育ての親も被害者なら、複雑な状況に置かれた誘拐された子供も被害者という悲しい状況。

ストーリーも一本調子ではなく、紆余曲折あり、最後まで息をつかせず観させてくれる。特にラスト・シーンでの、ホンチンの涙は複雑な感情を思わせ、後を引く。

予定調和のハッピーエンド、心が軽くなる感動ものを期待すると頭をガツンと殴られるかのようなショックを受けること間違いない。しかし、やはり子を思う親の気持ちは海より深いと納得することも間違いない。子を持つ親は必見、そうでない人も。

★★★★★★★★ (8/10)

『最愛の子』予告編