『スター・トレック イントゥ・ダークネス』に続き、J・J・エイブラムス監督の作品『M:i:III』を鑑賞。
ラットが誰かということまで、ほぼ10年前の公開時に観た時のストーリーの記憶を全く失っていたので、再鑑賞ながらそれなりに楽しめた。
アクション映画としての出来は上々、特にオープニングは秀逸。映画全体ではフィリップ・シーモア・ホフマンの冷徹な悪役ぶりが光るが、このオープニングのトム・クルーズの演技は特筆できる。
プロットにいくつかの穴あるいは非常に分かりにくい部分があるものの、それを除いて、この作品のよい点、悪い点は『スター・トレック イントゥ・ダークネス』に通じるものがあると感じた。つまりそれは監督の味ということなのだろう。
J・J・エイブラムス監督作品のよい点というか特徴の一つは、キャラクターを親しみやすく作ること。この作品でも、イーサン・ハントは任務遂行のためのマシンではなく、妻を愛し、後輩と相慕う温かみのある人間として描かれている。そして素直に楽しめる一種の単純さを備えている。
しかし、ミッション・インポッシブル・シリーズがほかのスパイ・アクション物と一線を画すると言えるまでのスタイルをこの作品に感じるかというと疑問だろう。
オリジナルのTVシリーズのもつ雰囲気を出すために、J・J・エイブラムス監督は一人のヒーローではなく、チームプレイを意識したと言うが、その着目がよいだけに、もっとそれを前面に押し出すべきではなかっただろうか。その意味では、サイモン・ペグがトム・クルーズを食うくらいに印象的な『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』がやはりシリーズ最高傑作と言えるだろう。
プロットの穴は、「ラビット・フット」を盗むため上海に行くのだが、その「ラビット・フット」は相当厳重に警護されているだろうに、あまりにも無計画に盗み出せた点。48時間のタイムリミットで、実際の計画は上海に移動してからのほぼ1日。そしてビル突入直前でタイムリミットまで18分というのはあまりにも無理な設定。その穴を隠すため、イーサン・ハントがビルの屋上に飛び移ってから、盗み出すシーンが全く描かれていない。
また、ダヴィアン(フィリップ・シーモア・ホフマン)と取引するため、彼の送ったリムジンに乗った時には「ラビット・フット」を持っていたが、次のシーンではダヴィアンは「どこにあるかとジュリアの命と引き換えに聞き出そうとする。「ラビット・フット」はマスグレイブが横取りしたように見えたが、それが明らかではなく、もしそうだとしてもその意図が明確ではない。
あとブラッセルがラットだと思わせるように仕組まれ過ぎて、そうでないと分かった時に違和感が残る。例えば、彼のイーサンに対する処遇はあまりに厳し過ぎて、彼がラットでなければ異常と言えるほど。
やはりスター・ウォーズ新作の期待は高まらない。並みのSF作品ではすまされないだけに。J・J・エイブラムス監督であれば、無難な出来に収まるような気がしてならない。
★★★★★ (5/10)
『M:i:III』予告編