事件記者(映画版)
今回は「事件記者」の劇場版である。ドラマはNHKで58~66年まで続き、その後フジテレビでも放送された人気シリーズだが、映画版も日活で10本、東宝(東京映画)で2本の12本が存在する。まずは、日活版の「事件記者」シリーズを取り上げたい。
NHK版に関しては世代ではないし、63年までは生放送だったこともあり現存する映像もほとんどないということで、ほぼ見たことがない。この時代の記者は新聞記者にしろ雑誌記者にしろドラマにしやすいこともあったのか、ヒーローのような扱いだった。
舞台は警視庁詰めの新聞記者が所属する「警視庁桜田クラブ」。番組スタート翌年の59年に1作目の「事件記者」が公開される。1本50分程度のSPだが、59年の後半だけで6作が公開されている。日活版では多くのテレビシリーズのキャストが、そのままの役で出ているが、数名のオリジナルキャストが存在する。主演の沢本忠雄演じる東京日報の新人・菅記者もオリジナルキャラである。沢本忠雄は57年のデビュー。大学時代(日本大学芸術学部)に日活で助監督募集を見て応募するが、何故かエキストラとして映画に出演することになり、その時の阿部豊監督により見いだされ、次作の「雌花」でヒロインの南田洋子の弟役に抜擢された。翌58年の「十代の恋よさようなら」で初主演となるが、本人は元々裏方志望だったため、その旨を日活の幹部に伝えると「君を売り出すのにいくらかかったと思っていいるんだ」と言われ、役者を続けざるを得なかったという。
1作目~8作目では、テレビ版と同じく東京日報は永井智雄(相沢キャップ)、原保美(長谷部)、大森義夫(八田)、滝田裕介(伊那)、園井啓介(山崎)、綾川香(浅野)と全員出ているが、中央日日は高城淳一(浦瀬キャップ)、山田吾一(岩見)で、新日本タイムスは外野村晋(熊田キャップ)のみ。この時期にレギュラー入りしていたかは不明なのだが、近藤洋介、前田昌明、中原成男らは出演しておらず、清村耕次が演じた新日本の荒木記者は内田良平が演じている(1、2作目のみ)。
警察関係では宮坂将嘉演じる村田部長刑事のみテレビシリーズから登場。他はオリジナルキャストで、二本柳寛(捜査一課長)、清水将夫(西郷デスク)、相原巨典(中央日日・桑原)、雪丘恵介(毎朝・桜井キャップ)、相馬千恵子(ひさごの女将)、丘野美子(やす子)など。丘野美子は1,3,5作目に登場するが、主人公の菅ではなく滝田裕介演じる伊那の婚約者という設定である。4作目から高原駿雄(新日本・竹本)も登場する。
ゲスト出演は1作目は宍戸錠、2作目「真昼の恐怖」で小園蓉子、3作目「仮面の脅迫」で楠侑子、4作目「姿なき狙撃者」で南風夕子、5作目「影なき男」で待田京介といったところである。
特別機動捜査隊 東京駅に張り込め
映画版「特別機動捜査隊」の第2作目は「特別機動捜査隊 東京駅に張り込め」(63年)である。前作から二カ月も経たないうちの公開である。走るパトカーの中に特捜隊の五人がこじんまりと乗っているOPは前作と全く同じである。テレビシリーズのOPでは二台または三台の覆面パトカーが連なって走っているイメージが強いが、初期は1台のみ(初代クラウンのパトカー)だったのである。
メンバーは勿論前作と同じで、安部徹(立石主任)、織本順吉(橘部長刑事)、南廣(荒牧刑事)、亀石征一郎(桃井刑事)、千葉真一(内藤刑事)である。クレジットは1枚目に千葉、南、安部の順で、2枚目はゲストで、織本と亀石は3枚目に回されている。これは1作目も同じだ。千葉と亀石は共に第6期東映ニューフェイスだが、少し差を付けられている。ただテレビの「特別機動捜査隊」においては、千葉は一回だけゲスト出演するに留まったが、亀石は66年に久保田刑事役で二度ほど出演。その後73年になって五人目の主任である矢崎警部補としてレギュラー入りしている。
ちなみに当人同士は親友関係にあり、千葉が主宰するJACの重役を亀石が務めたりしていた。亀石は2021年7月に亡くなったが、千葉はその1か月後の8月に亡くなっている。共に82歳であった。
さて、映画の方だがファッションショーの舞台で新進デザイナーが毒殺される事件が発生する。ファッション業界のドロドロした内幕を描いたシチュエーションの話は他でも見たような気がするが、何かは忘れた。本作のテレビシリーズでも似たような話があったかもしれない。
ゲスト出演者は久保菜穂子、筑波久子、新井茂子、小川守、故里やよい、高英男、浜田寅彦など。小川守と新井茂子は、本作の翌月に公開された「警視庁物語十代の足取り」(63年)でも共演し、両作で恋人関係にある役を演じている。新井も千葉、亀石と同期である第6期の東映ニューフェイス。後に中田博久と結婚して引退する。小川守は第7期のニューフェイスで期待されていた存在だったようだが、65年には早々と引退してしまったようである。事情は不明である。
高英男の本職はシャンソン歌手だが、画面に登場するだけで怪しい雰囲気があり、主に悪役で数本の映画に出演している。
映画の方は二本のみで終了したが、テレビシリーズは77年まで全801回の長寿番組となった。
特別機動捜査隊(映画版)
現在でもあるのだが、特に昔は人気のテレビドラマの映画版が製作されることがままあった。今はテレビ版のキャストを変えることは、ほぼないであろうが、昔は映画版ではキャストが一新されることも多かった気がする。
「特別機動捜査隊」は61年~77年にかけて、全801話が放送された人気刑事ドラマである。本作にも映画版が2本存在するのだが、キャストは映画版のみの顔ぶれとなっている。
映画版「特別機動捜査隊」及び「特別機動捜査隊 東京駅に張り込め」(東映いずれも63年)は、上映時間約60分で、テレビサイズより10分程度長い。出演は千葉真一、南廣、安部徹、亀石征一郎、織本順吉の五人で彼らが特捜隊刑事を演じている。少し年配の人なら、いずれも顔は思い浮かぶメンツではないだろうか。
千葉真一は最も若手の刑事役で、普段は悪役の安部徹はギャングの親分にしか見えないが主任警部補役なのである。テレビ版では主任、つまり当時で言えば波島進が主役なのだが、この映画版では安部よりも千葉がトップクレジットなので彼が主演扱いなのだろう。
問題は彼らの役名なのだが、いくつかある映画データーベース的なサイトではいずれも、安部徹(秋山警部補)、織本順吉(倉本部長刑事)、南廣(井上刑事)、亀石征一郎(土屋刑事)、千葉真一(小松刑事)となっている。しかし、ウィキペディアでは順に立石警部補、橘部長刑事、荒牧刑事、桃井刑事、内藤刑事となっている。どちらが正しいのか。
これは見てみるのが一番早い。幸いにも録画したものがあるので確認してみた。すると、すぐに安部徹が「立石」で、千葉真一が「内藤」であることがわかり、後者つまりウィキペディアが正解であることがわかる。実は後者の役名はテレビ版と同じものなのである。
おそらく台本上では、役者も違うしゆえに役名も違うものを用意していたのではないだろうか。それをテレビ版と同じ役名にどこかの段階で変更したのであろう。つまり記録上では最初に予定された役名のままになっているということなのではないだろうか。
ちなみに、62~63年ころのテレビ版キャストは波島進(立石主任)、南川直(橘部長刑事)、岩上瑛(荒牧刑事)、轟謙二(桃井刑事)、巽秀太郎(内藤刑事)となっており、俳優に詳しくないとわからない顔ぶれであろう。南川、岩上、轟は東映の脇役俳優であり、巽は特撮ヒーロー「ナショナルキッド」(60~61年)で主役(二代目)を演じていた。波島は当時のスター俳優であるが、この番組を71年に降板直後に引退しているため知らない人も多いかもしれない。ちなみに初代七色仮面であり、千葉が二代目七色仮面である。
ザ・ガードマン 東京忍者部隊
「ザ・ガードマン」の映画版2作目は「ザ・ガードマン 東京忍者部隊」(66年)である。前作の「東京用心棒」から年は跨いだが、約2カ月しか経っていないので、テレビレギュラーからの出演者は前作と同じで、宇津井健(高倉キャップ)、藤巻潤(清水隊員)、倉石功(杉井隊員)、中条静夫(小森隊員)、稲葉義男(吉田班長)である。おそらく前回書いたのと同じ理由で、川津祐介(荒木隊員)と神山繁(榊隊員)は出ていない。なお、前作同様に早川雄三が上司である三原本部長役で出演している。
ちなみに本作の公開日前日に「東京警備指令ザ・ガードマン」第45話が放送され、神山演じる榊が警察から転職しメンバー入りしている。
今回はテレビシリーズでもお馴染みの現金(金塊)輸送が行われる。しかし、やはり番組本編も忙しいのか、本作ではこの映画だけのオリジナルメンバーが登場する。長谷川明男(並川隊員)と小笠原良智(牧隊員)の二人である。長谷川は当時、大映に籍を置いていたが、小笠原は俳優座の人である。共にテレビシリーズにはゲスト出演経験があり、本作の監督である弓削太郎の監督回に小笠原がゲスト出演していたところからの抜擢であろうか。
この二人と藤巻潤演じる清水が今回の輸送を担当し、特殊輸送車の運転席に長谷川と小笠原、その後部の密閉された部屋に藤巻が配置され直接、金塊を守るというスタイル。つまり、三人で輸送を担当しているものの藤巻に関しては別撮りが可能になっているわけである。ゆえに、出番の最も多いガードマンは長谷川と小笠原の二人なのだ。話は逸れるが、この二人と言えば、「必殺必中仕事屋稼業」の13話「いろはで勝負」の回で遊郭の跡目争いをした三人(もう一人は東野英心)の中の二人だったことを思い出した。
他の出演者だが、犯人グループが成田三樹夫、安部徹、戸浦六宏という中々の顔ぶれ。他にも山下洵一郎、松村達雄、穂積隆信、長谷川待子、明星雅子など。前作の待田京介同様に、成田三樹夫の名が1枚目にクレジットされている。タイトルの「忍者部隊」を感じるようなところは、まあないだろう。
「ザ・ガードマン」の映画は、二本のみで終了してしまうが、テレビシリーズは71年末まで続いたのである。
ザ・ガードマン 東京用心棒
「ザ・ガードマン」は65~71年にかけて全350回放送された大人気番組である。その映画版の第1作が「ザ・ガードマン 東京用心棒」(65年)である。舞台となる「東京パトロール」は、日本初の警備業である日本警備保障(現・セコム)がモデルであり、警備会社とガードマンという言葉がが日本中に広まるきっかけともなった。
製作は大映テレビ室で、出演俳優も当時は大映所属だった顔ぶれが多い。映画版も当然大映の製作である。
レギュラーは、宇津井健(高倉キャップ)、藤巻潤(清水隊員)、倉石功(杉井隊員)、中条静夫(小森隊員)、稲葉義男(吉田班長)に加え、本作には出演していない川津祐介(荒木隊員)、神山繁(榊隊員)がいる。
川津は大映の所属ではないし(松竹出身だがこの時点ではフリー)、この時期は東映のアクションドラマ「スパイキャッチャーJ3」(65~66年)への出演で忙しかったからであろう。本編の欠席も多いし。神山に関しては、そもそもこの時期はまだレギュラーではなかったのである。ガードマンは事件捜査・逮捕などの権限はないので警察の人間が必要となり、高倉の親友である「榊警部」が第2話からセミレギュラーとして登場していた。だが、66年放送分の45話から唐突に転職してメンバー入りしているので映画版の公開時には不在なのだ。ただ、本作では北原義郎が榊警部役で出演している。
また、番組初期は高倉の上司として清水将夫演じる三原チーフ(本部長)の存在があった。確か通算4~5回程度しか登場しないが、初期のOPには毎回顔と名前が出ていたわけである。本作では早川雄三が三原本部長役で出演している。
ところで、番組タイトルだが、47話までは「東京警備指令ザ・ガードマン」が正式タイトルになっていたが、48話以降は「東京警備指令」の文字が外れている。そもそも本作のタイトルである「東京用心棒」は、番組開始にあたり、日本警備保障が「当社は用心棒ではない」と拒否されたタイトルなのである。映画ならいいだろうと内緒で使用したわけではないと思うが、余程使いたかったのだろうか。
ゲストは待田京介、江波杏子、久保菜穂子、渚まゆみ、千波丈太郎、根上淳など。当時は「007」の影響で前述の「スパイキャッチャー」のようなドラマが流行っていたこともあり、いかにもな「秘密兵器」が使われてたりしている。
出演者クレジットだが、1枚目が宇津井健、藤巻潤/待田京介、倉石功で、稲葉義男は2枚目、中条静夫に関しては3枚目に回されており、長年大映の大部屋俳優だった中条の当時の序列の低さが窺える。しかし、この番組でブレイクし人気俳優となっていたのは、改めて言うまでもないだろう。
ちなみに、中条静夫と早川雄三、北原義郎はいずれも第4期大映ニューフェイスである。
七人の刑事 終着駅の女
「七人の刑事」映画版の三本目は今までの二本(松竹)と異なり日活で製作されている「七人の刑事 終着駅の女」(65年)である。
この作品は「七人の刑事」という有名タイトルでありながら長い間、詳細不明とされていたようである。その理由がどうやら地方公開のみの併映作品だったから日活本社でも封切り日の詳細等が不明だった、ということのようである。では何故、地方公開のみだったのか?
それは後に回すとして、七人の顔ぶれはテレビ、松竹版と同じ堀雄二(赤木主任)、芦田伸介(沢田部長刑事)、菅原謙二(杉山刑事)、佐藤英夫(南刑事)、城所英夫(中島刑事)、美川洋一郎(小西刑事)、天田俊明(久保田刑事)。
ここに「特捜最前線」の船村刑事でお馴染みの大滝秀治が所轄の刑事役で加わっているような形。名前を呼ばれる場面はないらしいが、設定では「山越」という名のようだ。
上野駅のホームで若い女の刺殺死体が発見される。その死体を発見するのが「西部警察」の係長で知られる庄司永建である。メインゲストとなるのが笹森礼子で、他に北林谷栄、平田大三郎、梅野泰靖、草薙幸二郎、大森義夫、杉山元など。
他にも沖田駿一が本名の吉田毅名義で組員役、日色ともえが食堂のウエイトレスというチョイ役で出演していたりする。
笹森礼子はこの65年に結婚して引退しており、公開時期から考えると「男の紋章喧嘩街道」よりも本作が引退作ということになりそうである。平田大三郎も60年代の日活作品で活躍した役者だが、68年頃引退して実業家に転身している。
本作の注目点としては渡辺宙明が「音楽」ではなく「音響」としてクレジットされていること。誤植というわけではなくではなく、実はこの作品には音楽がないのである。
渡辺本人の話では、監督(若杉光夫)が音楽なしでいきたいと言い、劇中に街ノイズとしての音楽が流れるので、著作権使用料のかからない音楽について自分がアドバイスしたのだという。本人の感想として音楽がないと固い感じがつきまとい、かなり損をしている。音楽の必要性を改めて感じたとのことだった。
興行的にも成功しなかったのはそのためだろうとも述べており、つまりは地方公開のみになった原因にもなっているということになるのではないだろうか。
七人の刑事 女を探がせ
前回の続きだが「七人の刑事」の松竹映画版の第二弾は前作から約三か月後に公開された「七人の刑事 女を探がせ」(63年)である。
七人のキャストはもちろんテレビ版と同じ堀雄二、芦田伸介、菅原謙二、佐藤英夫、城所英夫、美川洋一郎、天田俊明である。
今回は感化院で火事があり、四人の非行少女が脱走したのだが、その中の一人が絞殺死体で発見されるところから話は始まる。その非行少女たちの顔ぶれが中々なのである。脱走組が香山美子、青山ミチ、中村晃子そして脱走者ではないが(後に逃走)被害者と同部屋だった十朱幸代というメンバー。十朱は城所演じる中島刑事のことは振り回すが、菅原演じる杉山刑事には従順といった役柄。杉山刑事は女の子にモテるという設定である。
当時、十朱は21歳、中村は18歳、香山は19歳だが、青山は14歳であった。この中では後に「銭形平次」の女房となる香山の非行少女というのが想像しづらい。まあ子役出身で、松竹入社まもない頃である。中村もまだ無名というか(新人)と付いていた。青山は13歳で歌手デビューしたが、身長も高く中学生には見えなかった。米兵と日本人母とのハーフだが、父親については不明だ。黒人とのハーフっぽくも見えるのだが、白人であると断言している説がある。
他にも田村高廣、高千穂ひづる、加藤嘉、浅茅しのぶといった顔ぶれ。香山の彼氏役で園田明弘(新人)という男が出ているが、他に出演記録はなく詳細不明である。高千穂ひづるの父は「俺がルールブックだ」の名言で知られるプロ野球審判員の二出川延明。「月光仮面」で知られる大瀬康一と64年に結婚した後は、徐々に芸能の仕事は減らしている。
犯人役はこれまで名を挙げた中にいるが、それなりの人がやっているとだけ言っていこう。
前述の非行少女役の女優たちは、軒並み出世したが、歌手である青山ミチは66年に覚せい剤で逮捕。活動再開後の74年には万引きで現行犯逮捕されているが、営業などでそれなりの収入はあったとされる。78年に覚せい剤で再び逮捕され、芸能界からは追放状態となってしまうのである。
七人の刑事(映画版)
企画変更というか、GSネタが尽きたので、TVドラマの映画版というのをいくつか取り上げてみたい。
まずは有名どころだが、「七人の刑事」(61~69年)である。新キャストによる78年~79年版もあるのだが、タイトル上は同じでややこしい。60年代版は全385話放送されたようだが、映像が残っているとされるのは2話分のみである。ゆえに番組の存在を知っている人は多いだろうが、実際に見たことある人は少ないかもしれない。
映画版は意外と知られていない気もするが、松竹版が2作、日活版が1作の全3作が存在する。今回は松竹版を取り上げてみたい。
ちなみに、キャストはテレビ版と同じである。ポスタ-の表記順で書くと、堀雄二(赤木主任)、芦田伸介(沢田部長刑事)、菅原謙二(杉山刑事)、佐藤英夫(南刑事)、城所英夫(中島刑事)、美川洋一郎(小西刑事)、天田俊明(久保田刑事)の七人である。菅原謙二は後に謙次、美川洋一郎は後に陽一郎と改名している。
堀雄二はスタート当時39歳だが貫録十分。東映の「警視庁物語」シリーズ(56~64年)で、部長刑事役でレギュラーだったことからの抜擢であろう。芦田と美川は共に老刑事といったイメージだが、スタート時は芦田44歳、美川43歳である。佐藤、菅原、城所は36~34歳とほぼ同年代で、天田が唯一の20代(26歳)であった。
この中では堀と共に映画スターだったのが菅原である。大映では主役時代もあったが、準主役的なポジションが多くなったこともあってか、オファーを受け入れたようだ。当時は映画からテレビに来るのは結構な冒険だったと思われる。
さて、映画版1作目だが、タイトルはそのまま「七人の刑事」(63年)。脚本は前述の「警視庁物語」も担当していた長谷川公之。メインゲストは倍賞千恵子、早川保、園井啓介で、当時のポスターでは七人より、この三人が大きく載っていた。
園井は新聞記者の役だが、当時NHKの「事件記者」にレギュラー出演していた。ちなみに、「七人の刑事」が放送される前「刑事物語」(60~61年)という30分ドラマが放送されていた。その顔ぶれは堀雄二、芦田伸介、佐藤英夫、美川洋一郎、天田俊明、そして園井啓介だったのである。役柄も堀は主任、芦田は部長刑事と「七刑」と同様だったようである。多忙であったと思われる園井が抜け、菅原と城所を加えて「七人の刑事」が誕生したわけである。
話を映画に戻すと、他の出演者は香山美子、富士真奈美、瞳麗子、平尾昌晃、高宮敬二、松村達雄、清村耕次、佐々木孝丸などである。
ザ・ジャガーズの映画 その2
前回の続きである。「進め!ジャガーズ敵前上陸」(68年)には、前回書いた以外にも興味深い出演者が多い。
まずは、ナルシストな警部役の五代目三遊亭圓楽。後に「笑点」の司会者となるが、この時点では大喜利メンバーの一人であった。一度番組を降板しているが、本作にも出演している3代目司会者である三波伸介の急死に伴い、4代目司会者として復帰している。先日亡くなったのはその弟子である六代目の円楽だが、個人的には「楽太郎」のイメージが強い。
軍曹役で出演している南道郎は悪役のイメージが強いが50~55年頃までは、漫才師でもあった。中村晃子の友人?役で出演している謎の双子がレイコ・ミツコ。他に出演歴もないようだし、リアルに謎の双子である。
五人組の女性暗殺者レッド、ブルー、グリーン、イエロー、ホワイトが登場するが、それぞれ荒井千津子、園江梨子、杉本マチ子、比嘉照子、藤田憲子が演じている。
荒井千津子は当時22歳の松竹女優だが、本作の翌月に公開された「いれずみ無残」では主演に抜擢されている。これはシリーズ化され「いれずみ無残鉄火の仁義」「新宿そだち」(68年)の3作が公開され、いずれも荒井が主演で、準主演が松岡きっこであった。しかし「めくらのお市物語真赤な流れ鳥」(69年)で、準主演を務めた後の出演記録はなく、その時点で引退したのかもしれない。園江梨子は以前書いたとおり、後に平山洋子と改名し(妹は平山みき)し歌手とし活動している。
藤田憲子(現・紀子)は70年に人気力士だった貴ノ花と結婚。つまり若貴兄弟の母であり、近年でもたまに芸能ニュースで話題になることもあるが、松竹時代はほぼ端役専門の女優であった。しかし前述の「新宿そたち」のポスターでは、その名前が載っている。女優としては目立った実績はなかったが、貴ノ花から手紙が届いたのが交際のきっかけだったようだ。
ジャガーズと同じ事務所に所属していたザ・クーガーズもその縁で出演。ジャガーズはミリタリールックが好評だったため、クーガーズはスコットランド風衣装つまりキュロットスカートを伴うものだった。事務所から坊主頭との二択を迫られ、まだマシだからと選んだものであったらしい。ベース担当の島田宏昌は後にコミックバンド・ビジーフォーのリーダー島田与作となる。他の三人(モト冬樹、グッチ裕三、ウガンダ)は有名になったが、島田を知っている人はあまりいないのではないだろうか。
ザ・ジャガーズの映画
ザ・ジャガーズの主演映画は1本だけ存在する。「進め!ジャガーズ敵前上陸」(68年)である。前回と前々回のヴィレッジ・シンガース、パープル・シャドウズの映画と同じ松竹の製作なのだが、テイストは全然違う。純粋な青春ラブストーリーで藤岡弘の友人といった立ち位置だった前者に比べ、ブラックコメディといった感じの本作のジャガーズは主演と言って差し支えないないだろう。ただ、ポスターでのトップは中村晃子だった。
ザ・ジャガーズは6人組で、67年6月に「君に会いたい」でレコードデビュー。続く「ダンシング・ロンリーナイト」「マドモアゼル・ブルース」もヒットし、人気グループとなっていった。中でもヴォーカルの岡本信は甘いマスクで人気だった。しかし、他メンバーに関しては知らない人も多いのではないだろうか。
リーダーは宮ユキオ(ドラムス)で、レコードデビュー時は既に29歳であった。ちなみに岡本は10歳以上離れた18歳。他は沖津ひさゆき(リードギター)、森田巳木夫(ベース)、宮崎こういち(サイドギター)、佐藤安治(キーボード)。映画はこの6人で出演しているが、公開された68年3月にリーダーの宮が脱退。グループ内で内紛があったらしい。代わりに浜野たけし(ドラムス)が加入している。
ヒロイン役は前述の中村晃子。65年に歌手デビューし、当初はパッとしなかったが、67年に出した「虹色の湖」が大ヒットする。本作でもジャガーズの演奏で「虹色の湖」を歌唱するシーンがある。62年高校在学中に松竹にスカウトされ、64年に正式契約。チョイ役ではあったが63年頃から映画には出演していた。
もう一人のヒロインはヴィレッジ・シンガース、パープル・シャドウズの映画でもヒロインを務めた尾崎奈々である。彼女は、内田良平のマネージャーにスカウトされ、日活、東映いずれのカメラテストにも合格。結局入社したのは、最後に受けた松竹だった。人気ドラマ「お嫁さん」および吉永小百合が主演した「娘たちはいま」に出演して、映画よりもテレビで先に注目されていたのである。ちなみに「お嫁さん」の主演だった東山明美も本作ではスチュワーデス役で顔尾出している。
他の注目点としては、てんぷくトリオの3人が出演しているところか。三波伸介、戸塚睦夫、伊東四朗によるお笑いトリオだが、戸塚が73年に42歳の若さで病死。三波も82年に52歳で亡くなっている。残った伊東は現在も活躍中だが、三人揃っている映画は少ないので貴重かもしれない。ただし、本作では伊東はジャガーズの仲間だが、戸塚と三波は彼らを狙う悪役である。