ザ・タイガースの映画 その2
さて「ザ・タイガース 世界はボクらを待っている」(68年)だが、製作はは東宝と渡辺プロ。監督はドリフや55号映画も手掛けた和田嘉訓である。挿入歌は10曲以上あり、映画の半分は彼らの演奏シーンである。とにかく、彼らが多忙で撮影時間もあまり取れなかったこともあり、ストーリーはかなり無理のあるものになったという。まあ、SFラブコメディとでも言うのであろうか。
ヒロインであるアンドロメダ星王女シルビィに扮するのは久美かおり。彼女も渡辺プロに所属していた新人歌手である。植木等主演の「日本一の男の中の男」(67年)にも「メイツガールズ」の一人として出演していた(他のメンバーは平山三紀、「トワ・エ・モア」の山室英美子)。彼女はタイガース映画全てのヒロインを演じることになる。
シルビイの従者に天本英世、浦島千歌子、婚約者であるナルシス殿下に三遊亭園楽(五代目)までが宇宙人役。浦島は当時40代の宝塚歌劇団出身の女優。聞き馴染みないと思ったら69年には引退しているようだ。圓楽は先日亡くなった六代目円楽(楽太郎)の師匠。キャッチフレーズに「星の王子さま」を使っていた。
他の出演者だが、松本めぐみ、高橋厚子、小橋玲子、なべおさみ、小松政夫、小澤昭一、石橋エータローなど。また、本作の挿入歌全ての作詞を手掛ける橋本淳、作曲を手掛けるすぎやまこういちもチラっと顔を出している。
第二作は「ザ・タイガース 華やかなる招待」(68年)。製作は渡辺プロと東宝系の東京映画である。監督は先日紹介したスパイダース主演の「にっぽん親不孝時代」を手掛けた山本邦彦。
ここでは彼らに役名が付いている。沢田(宇野健二)、岸部(赤塚修)、森本(大坪太郎)、加橋(糸川忠夫)、瞳(江田浩)となっており、頭文字は「アイウエオ」になっている。下の名は三人は本名に因んでいるが、加橋と瞳は何故か違うものになっている。役柄は高校生である(当時の実年齢は20~22歳)。前作と違いちゃんとストーリーもあり、普通の青春映画となっている。
前述のようにヒロインは久美かおりで、その友人が小山ルミ。担任教師が西村晃で、校長が藤村有弘、それぞれの親が三宅邦子、立原博、塩沢とき、上田忠好、潮万太郎。他に春川ますみ、牟田悌三、野村昭子、大泉滉、小松政夫など。
69年になると、アイドル性を前面に出したプロモーションはメンバーの不満を募らせて行くことになった。特に芸術家肌だった加橋は68年には脱退を仄めかすようになり、現状維持派だった沢田との対立が顕著になっていた。沢田に並ぶボーカルだった加橋の脱退は避けたい渡辺プロは、彼の意向を反映したアルバム「ヒューマン・ルネッサンス」をリリースしたが、その後も加橋の脱退意志は収まらなかった。次回に続く。