お宝映画・番組私的見聞録 -28ページ目

沖雅也の出演映画 その2

今回も沖雅也の日活時代を取り上げてみたい。
出演3作目となるのが「恋のつむじ風」(69年)である。主演は松原智恵子で、デビュー9年目にして初の単独主演ということである。彼女の役名が松山アカネで、ルームメイト役の長谷川照子が梅村ミドリ、太田雅子(後の梶芽衣子)が竹野アオイ。それぞれの通称がウエスト、バスト、ヒップ(笑)という三段構え。ただクレジットは松原がトップ、長谷川が二番手に対し、太田は7番手になっている。
男性陣が杉良太郎、和田浩治、川口恒、そして沖雅也。他の女優陣が山本陽子、有沢正子、西恵子、久万里由香そして丘みつ子といった顔ぶれ。沖の役柄はアオイの友人でデッサンモデルをしている高志という青年。丘の役柄は杉の妹。なにげに杉とは過去三作とも共演していることになる。
沖と丘は本作でも脇役。この二人と長谷川照子、西恵子は「エメラルドライン」として売り出そうと考えられていたらしい。無論石原裕次郎、小林旭、和田浩治、赤木圭一郎の「ダイヤモンドライン」に肖ってのものだが、役者が違いすぎる気もする。長谷川照子はあまり馴染みのない人も多いと思うが自分もそうである。ショートカットで知られ、本作ではサルのような髪型だ。西恵子といえば「ウルトラマンA」の美川隊員という人も多いと思うが、本作には山中隊員役だった沖田駿一(当時は吉田昌史)も出演している。得意?のチンピラ役だが、れきっとした日活ニューフェイスだ。
この次に沖が出演したのは、「前科 仮釈放」(69年)である。観客動員の伸び悩みもあり、この辺りから日活も青春路線を辞め、東映のような任侠路線へと転換し始めていたのである。主演は渡哲也で、ヒロインは松原智恵子。沖はクレジット3番手で(新人)の文字が付いた。役柄は渡の弟分の組員で松原の実弟。じかし、殺されてしまうのである。悪玉が内田稔、青木義朗。他の出演者は大木実、戸上城太郎、玉川良一、長内美那子、そして今井健二と、かなり東映色の強い顔ぶれとなっている。今井はずっと東映所属のイメージだが、62年にはフリーになっていたのである。
続くシリーズ第2弾「前科 ドス嵐」(69年)にも沖は組員役で出演しているが、メインから少し外れているようだ。ちなみに、この2作に丘みつ子は出演しておらず、コンビは既に解消という感じである。
本作には、東宝から森光子、佐藤允が出演。他にも中村竹弥、伊藤るり子、奈良岡朋子、そして宍戸錠など。悪役は今井健二、青木義朗。日活では悪玉の多い青木が、この69年に「特別機動捜査隊」の三船主任に抜擢され、長く主演を務めることになるのである。

沖雅也の出演映画

唐突だが今回から沖雅也である。森田健作より若干早い68年末に日活よりデビュー。意外と語られていない気がする沖の日活時代を追ってみたい。
沖雅也は52年大分生まれで、本名というか出生名を楠城児(後に日景城児)といい、逆に芸名っぽい。元々は裕福だったが、父の事業失敗や両親の離婚などもあり、中学卒業前に家出して上京。年齢を偽り住み込み等で働き、68年スナックでバーテンダーをしていた時にオスカープロにスカウトされる。日活関係者に紹介され「ある少女の告白 純潔」での映画デビューが決った。正式に中学を卒業していなかったため、デビューする際に卒業証書を受け取っている。
「ある少女の告白 純潔」だが、主演はデビュー2作目となる丘みつ子で、沖はその相手役に抜擢されている。高校三年生の役だが、沖は16歳、丘は20歳になっていた。日活は二人を浜田光夫、吉永小百合に続くようなコンビにしたいと考えていたようだ。クレジットには共に(新人)が付いていた。
丘は当時、十朱幸代のそっくりさんと言われるくらい彼女によく似ていた。モデルの仕事をきっかけに映画界入りを薦められ東映ニューフェイスに合格していたが、より向いていると言われた日活に入社していた。「ある少女の告白 禁断の果実」(68年)でデビューし、「~純潔」はシリーズ2作目であったが、3作目が製作されることはなかった。
他の出演者だが、杉良太郎、小山ルミ、清水将夫等で、杉は沖の先輩、清水は沖の父親役だ。他にも同級生役で「レインボーマン」の高樹容子、「帰ってきたウルトラマン」の桂木美加、役柄はよくわからないが「ダイヤモンドアイ」の大浜詩郎など。
沖の出演2作目となるのが69年の正月(明け)作品である「花ひらく娘たち」だ。ただ、ここでの主演は吉永小百合、浜田光夫の黄金コンビで、加えて和泉雅子、杉良太郎、おまけにストーリーにはほぼ絡まないが渡哲也も顔を見せており、沖、丘コンビは完全に脇役といってよい(丘はほぼチョイ役)。吉永と和泉は姉妹で、沖はその弟という役だ。
他にも川口晶、斎藤チヤ子、西恵子、清水将夫、宇野重吉といった顔ぶれ。清水はまたしても沖(たち)の父親役で、斎藤の弟役が渡である。
そしてピンキーとキラーズが本人たちの役で「恋の季節」を披露するようだ。ちなみに、映画「恋の季節」は本作の翌月に松竹で本人たちの出演で公開されている。奈美悦子や早瀬久美、そして森田健作が共演している。

喜劇 大誘拐

森田健作の主演映画をもう一つ。「喜劇 大誘拐」(76年)である。
これは、早朝の通勤電車で知り合った平凡な4人の男が計画した誘拐事件が巻き起こす騒動を描いたものである。その四人を演じるのが森田健作、小倉一郎、岸部シロー、そして三木のり平である。
彼等はそれぞれ金を必要としており、誘拐を計画する。日本一所得を得ている男(小池朝雄)をターゲットに決め、その孫を車ごと誘拐するのだが、根が善良なため怖くなってタクシーで送り返した。しかし、そのトランクには孫と遊んでいた祖母つまり男の母(ミヤコ蝶々)が隠れていた。彼等の話を聞いた蝶々は、自ら息子に五億円を請求する。人質を買って出て、彼らに協力しようとするのだった。事実上、蝶々の指揮のもと彼らは行動することになる。
他の出演者だが、夏純子、立川談志、津島恵子など。
そう言えば、「大誘拐」というタイトルの映画が他にもあったなあと調べると岡本喜八が監督した「大誘拐 RAINBOW KIDS」(91年)があった。
これは三人の若者(風間トオルなど)が、大金持ちの老女(北林谷栄)を誘拐するのだが、いつの間にか彼女自身がリーダーとなり、家族に身代金百億円を請求するという話なのだ。読んでわかると思うが、基本的なプロットは「喜劇 大誘拐」と同じだと言ってよい。
じゃリメイク作品なのかというと、そういう扱いでもないようだ。これは天藤真の小説「大誘拐」を原作としている映画なのである。この小説は78年に書かれたものということで、つまり「喜劇 大誘拐」より後に書かれたものということになる。
当時の反響はわからないが、今の世なら「パクリじゃん」とか騒がれそうな気がする。しかし映画公開からわずか2年、しかもタイトルをそのまま「大誘拐」としているところから、この映画を参考にして書いたものだと宣言しているようにも思える(全然違うかもしれないが)。しかも、この小説、79年に日本推理作家協会賞を受賞しているのである。
この中では「喜劇 大誘拐」が、一番忘れられている作品ということになるだろうが、小説「大誘拐」や「大誘拐 RAINBOE KIDS」の原点となる作品と言えると思う。

森田健作の主演映画 その2

今回も森田健作の主演映画から、まずは「東京ド真ん中」(74年)を。
森田の主演映画はテレビとは違い、重たい悲劇的な作品が多いのだが、本作は松竹テイストの下町喜劇である。森田が主演扱いとなっているが、ストーリー的にはもう一人の主役といっても良さそうなのが宍戸錠である。森田の高校時代の教師で、偶然彼のいる街に引っ越してきたという役柄である。宍戸と言えば、日活アクションのイメージだが、71年に日活は一般映画の製作を停止し、日活ロマンポルノに転じたため、宍戸を含めたスター俳優は日活を離れていた。
実は日活時代にも松竹作品への出演経験はあり、70年代に入ると松竹喜劇への出演も数本あったのである。東宝出身の加東大介も出演しており、珍しい感じの顔ぶれに感じるが、他は松竹お馴染みの顔ぶれといってよい。倍賞千恵子、佐藤蛾次郎、太宰久雄、そして渥美清と「男はつらいよ」シリーズの面々が並ぶが、本作には山田洋次が脚本として参加している。森田の相手役は榊原るみだが、榊原もマドンナ役を務めたことがある(男はつらいよ奮闘編)。森田の妹役で立花かおるという人が出演しているが、これ1作のみの出演のようで詳細は不明である。検索してヒットするのは、別人であろう(生年より)同姓同名の女優のことがほとんどである。
「はだしの青春」(75年)は、前述のような重たい感じの悲恋ストーリー。タイトルは森田のシングル曲のタイトルでもあるが、森田も流石に高校生の役ではなく、なんと高校教師の役である。しかも暗い過去を背負った陰のある青年といった役柄のようだ。
中心となるのは、森田の他、小林由枝、南条弘二、池上季実子である。南条弘二は「続・愛と誠」(75年)で主演の誠を演じたばかり。池上季実子も「愛と誠」の愛役で知られるが、それはテレビ版である。つまり映画版とテレビ版の「愛と誠」が共演したわけである。
ちなみに、南条のデビュー時の芸名は小林弘二という。ピンと来た人いると思うが、これは森田が「おれは男だ」で演じた主人公の名前である。さらにややこしい話だが、本作での森田の役名は南条恭助という。わざわざメインキャストと同じ名前にせんでもと思ったが、実は「はだしの青春」には少女マンガの原作があり、その登場人物の名前をそのまま使っているので仕方がないのだ。さらに付けくわえると「裸足の青春」は56年の東宝映画。宝田明と青山京子が主演である。
もう一人の小林由枝は、松竹映画はこれ1作のようだが、この後テレビ版「宮本武蔵」(75年)でお通役に抜擢される。武蔵役は市川海老蔵(現・12代市川團十郎)である。小林由枝名義での活動期間は短く、その後、小林かおりと改名。「必殺仕事人」(79~81年)では、伊吹吾郎演じる左門の妻を演じていた。どっちも見ていたが、正直同一人物とは知らなかった。よく考えたら同じ顔なんだけれども。

森田健作の主演映画

森田健作の主演作はテレビドラマだと、森田自らが主題歌を歌っていることが多い。松竹は歌謡映画が結構多いと思うが、森田のヒット曲の映画化というのは意外と少なかったりするのだ。
初主演作となった「夕陽の恋人」(69年)で、同タイトルのデビューシングルを歌っているが、その次となったのが「ひとつぶの涙」(73年)となる。どちらかと言えば、CMソングとして有名だったであろうか。正式には「青春のバラード~ひとつぶの涙」というタイトルだ。
映画の方は孤児院で育った三人の青年(森田健作、水谷豊、高岡健二)と盲目の少女(吉沢京子)を中心に描く、青春映画。吉沢京子というとテレビでの桜木健一とのコンビがイメージに強いが、映画では森田とのコンビが数作存在する。
森田と水谷と言えば、NHKドラマ「男たちの旅路」の第1部(76年)で鶴田浩二の部下である若手警備員コンビとして共演しているが、それ以降は絡んでいるイメージがない。桜田淳子は当時15歳でデビューまもない頃。森田に憧れる中学生の役だが、彼女が事務所としてサン・ミュージックを選んだのは森田が居たからだという。本作では「花物語」を披露している。後、ポスターには高岡ではなく西城秀樹が載っているだが、歌唱シーンがあるだけで物語には絡むわけではない。他の出演者は田島令子、森次晃嗣、赤木春恵、津島恵子などである。
 

続く「涙のあとから微笑みが」(74年)も森田のシングル曲がタイトルとなっており、ヒロイン役も引き続き吉沢京子である。桜田淳子は今回は森田の妹役で出演。森田の友人としてストーリーにも大いに絡むのが小倉一郎、石立和男。鉄男ではなく、その実弟の和男である。役者として活動した期間は短く、プロフィールも詳細は不明だ。鉄男にさほど似ているわけでもなく、印象に残りづらいタイプだと個人的に思う。松竹の作品データベースで、STORYの部分では石立和男となっているのだが、その下のキャストの部分では石立鉄男なっていたりする。これは鉄男の方が誤植だろう。
他の出演者は森次晃嗣、高沢順子、岡本茉莉、一谷伸江、安西マリア、岡田英次など。
安西マリアは歌唱シーンのみの登場のようで、松竹青春映画にはつきものだった。桜田淳子とともに73年のレコード大賞新人賞を受賞している。

高校さすらい派

今回は他の森田健作主演作を見て行こうと思う。
「高校さすらい派」(70年)は、「少年サンデー」に連載されていた原作・滝沢解、画・芳谷圭児の漫画の映画化である。連載と言っても約二カ月で、単行本1冊に収まるくらいの作品である。この頃のサンデーやマガジンはほぼ青年向け雑誌だったのである。自分は子供だった時代だが、ジョージ秋山の「銭ゲバ」「告白」、楳図かずお「おろち」「アゲイン」、永井豪「まろ」、園田光慶「ターゲット」等あまり子供向けとは言えない作品が妙に印象に残っている。「高校さすらい派」は、短期間だったこともあってか全く記憶にない。芳谷圭児といえば「高校生無頼控」とか、やはり成人向け雑誌のイメージでサンデーに載っていたのが意外にも感じる。
当時の芳谷や滝沢はフジオプロ劇画部に所属。赤塚不二夫とは似ても似つかない絵の芳谷だが、これは赤塚がストーリー劇画をプロヂュースしたいとの思いから、芳谷を部長に迎えて発足させたもの。ちなみに70年当時のサンデーにはマガジンから移籍した「天才バカボン」が連載していた。しかし同時に「もーれつア太郎」が連載されており、そっちの人気が高まったこともありサンデー版の「バカボン」は半年程度で連載を終了している。
 

とまあ、話が大きく逸れたが映画版「高校さすらい派」は、モリケン演じる少年院出身の主人公が、編入した高校での教育方針に反発し、東大安田講堂のような闘争を繰り広げるというようなものだ。
この森田に賛同する同級生を演じるのが山本紀彦、武原英子。当時、山本は27歳で、武原は24歳。20代が高校生を演じるのが普通な時代なので、学ラン、セーラー服姿なら高校生に見えたかも。山本は問題児の役だが、どうしても気のいい兄ちゃんに見える。ちなみに「のりひこ」ではなく「としひこ」である。武原は年相応にしか見えなくて、先生役のイメージが強い。やはり翌71年の「おれは男だ」や「高校生ブルース」で、武原は先生役をやっているからだろう。ちなみに、武原は「新スター」とクレジットされている。
他の出演者だが、武原の妹役が吉沢京子、父親役が神田隆、校長が内田朝雄、教頭が佐野浅夫、加えて佐藤友美、山本麟一、三谷昇、佐藤蛾次郎、根岸一正、島津元、ケン・サンダースそして笠智衆。笠は少年院の教官役である。

当初、モリケンたちに賛同する優等生役の島津元は、まもなく脚本家に転身し畑嶺明となる。日テレ・ユニオン映画の「俺たちの旅」「俺たちの祭」など「俺たち」シリーズに参加するが、最も有名なのは「毎度おさわがせします」「夏・体験物語」等のエロティックコメディ?であろう。関係ないが島津元という名は佐分利信の若い頃の芸名でもある。
舞台となるのは鳥取で、OPはジープで鳥取砂丘を疾走する森田とケン・サンダース。主題歌は森田ではなく、ケンとエディ村田なる人物が歌っている。

松竹「旅行シリーズ」 その2

前回に引き続きフランキー堺主演の「旅行シリーズ」である。そこで触れたとおり、森田健作は第5作「縁結び旅行」(70年1月)には出演していないが、以降の作品には全て参加している。
第6作は「満願旅行」(70年4月)。森田も復帰し、伴淳三郎、ミヤコ蝶々といったいつものメンバーに加え、女優陣は香山美子、松岡きっこ、団令子らが登場。団令子と言えば東宝の女優であり、調べた限りでは松竹への出演は、この1本のみである。東映や大映への出演もなく約110本ある出演映画は本作以外は全て東宝(東京映画、宝塚映画を含む)なのである。ゆえに、本作への出演経緯が気になるところである。03年に亡くなったが、06年には息子の団優太が38歳で自死している。
第7作は「体験旅行」(70年10月)。本作には森川信や左とん平、左時枝の左コンビなどの他、奈美悦子や城野ゆき等は出演している。奈美悦子は当時19歳で、この年に元ヴィレッジシンガースの林ゆたかと結婚している。しかし72年には離婚。城野ゆきは東映のイメージが強いが、この時点ではフリーであった。自分らの世代だとやはり「キャプテンウルトラ」のアカネ隊員という印象が強い。
第8作は「開運旅行」(71年3月)。71年の本シリーズはこの1作のみである。倍賞千恵子が復帰し、大原麗子、園佳也子、財津一郎などがゲスト出演している。大原麗子も東映出身だが70年に日活と大映、71年に東宝と次々に出演。松竹への出演も本作が初だったようである。
第9作は「喜劇・誘惑旅行」(72年2月)。約1年ぶりにシリーズが復活。久々にタイトルにも「喜劇」が。倍賞千恵子に加え、尾崎奈々、森次浩司といった松竹青春映画の面々が顔を揃え、他に川口まさみ等。川口まさみは「ビーバー」のデビュー時の芸名で、高校時代のあだ名がビーバーだったそうだ。余談だが、黒澤映画「赤ひげ」で、一度は加山雄三の相手役に選ばれたらしいが、最終的に内藤洋子に変更となっている(長身のため)。
第10作は「喜劇・怪談旅行」(72年6月)。フランキーと森田以外はキャストが変わっており、三木のり平、ケーシー高峰、野川由美子、川崎あかね、日色ともえ等が出演している。川崎あかねは大映倒産のため、松竹に移籍してきたばかりだったが、翌年にはフリーとなっている。
第11作にて最終作となるのが「快感旅行」(72年12月)だ。伴淳三郎とミヤコ蝶々が復帰したが、倍賞千恵子は出演せず妹の倍賞美津子がシリーズ初出演となった。他に光本幸子、朱里エイコ、そして「ザ・ガードマン」でお馴染み藤巻潤。藤巻も大映倒産に伴ってか、初の松竹映画出演となった。

何故か本シリーズが初の松竹出演となっている役者が多いようである。

松竹「旅行シリーズ」

今回は松竹の「旅行シリーズ」(68~72年)である。いきなり感があるかもしれないが、これには森田健作もレギュラーで出演していたのである。
主演はフランキー堺である。フランキーの主演で「〇〇シリーズ」って言うと、東宝のイメージがあるのだが、68年に東宝から松竹に移っていたのである。そのタイミングで森田も松竹に入社しているので、彼も出演させようということになったのかもしれない。
実はこのシリーズについて、詳しく取り上げているような資料がなく、毎度のことながら見たこともない(と思う)。

そこで活躍するのが「松竹・映画作品データベース」である。松竹本社が公式にやっているのだが、どうやら昨年くらいから公開されたページのようで、新東宝、大映、日活に比べて調べにくかった松竹作品が、ある程度明らかにすることが可能になったわけなのだ。
というわけで、自力で調べた限りでは、この「旅行シリーズ」は全部で11本。森田はその中で、第1作「喜劇・大安旅行」(68年)と第5作「縁結び旅行」(70年)を除く9作に出演している。ちなみに、タイトルに「喜劇」と付くものと付かないものが混在しており、付かないものは喜劇色は薄いということなのだろうか。
主演のフランキー含めて、その役柄は毎回違う。ただ、基本的にフランキーは国鉄の職員で車掌であるというケースが多いようだ。
森田がシリーズ初出演となる第2作「喜劇・婚前旅行」(69年4月)は、森田自身の映画出演としては3作目。もちろん初の喜劇映画出演となる。伴淳三郎の息子がフランキーで、その息子が森田という設定で、三代にわたって国鉄マンだ。ヒロインは倍賞千恵子で、他に野添ひとみ、江美早苗、ピンキーとキラーズ、ミヤコ蝶々など。まあ、伴淳と倍賞、ミヤコ蝶々もシリーズレギュラーである。
第3作「喜劇・逆転旅行」(69年8月)は前述の出演者以外では佐藤友美、早瀬久美など。テレビシリーズ「おれは男だ」でも共演する早瀬とは、ここで既に共演していたのである(しかも恋仲)。ちなみに倍賞の役名は「さくら」だったりする。
第4作は「よさこい旅行」(69年11月)である。前述のとおり「喜劇」の文字がない。このポスターが特徴的でタイトルよりも「ホテル奥道後」という文字の方がでかかったりするのだ。愛媛・松山にあるホテルで、まあタイアップなのだろうが、ここまで強調されているのはあまり見たことがない。一度潰れかけたようだが、現在も「奥道後壱湯の守」として営業しているようだ。

森田健作の「夕陽シリーズ」

森田健作の初主演作となるのが、デビューから約半年に公開された「夕陽の恋人」(69年)である。その後「夕陽に向かう」(69年)「夕陽が呼んだ男」(70年)と続く「夕陽シリーズ」の主演を務めた。まあ、森田健作と言えば、夕陽に向かって「バカヤロー」と叫ぶイメージがあるが、これらの作品でそういうシーンがあるかどうかは知らない。いずれも未見なので。
「夕陽の恋人」の相手役は尾崎奈々である。なんだかこの辺りの時代の松竹青春映画って、ほぼギロインが尾崎奈々という感じがする。ちなみに「夕陽が呼んだ男」のヒロインも尾崎奈々である。「ウルトラセブン」でお馴染み森次浩司(晃嗣)が森田の兄役で、岡田英次が父役である。他のキャストだが、大坂志郎、柳沢真一、久保菜穂子、そして黛ジュン。ここでは本人役のようである。気になるキャストとしては巽千太郎だろうか。「光速エスパー」の研究所員でしか見たことがない。「特別機動捜査隊」「ナショナルキッド」等東映で活躍した巽秀太郎とは、恐らく関係はないだろう。ただ巽秀太郎は元々は松竹ニューフェイスだったはず。
順番が逆になるが「夕陽が呼んだ男」の他の出演者は竹脇無我、藤岡弘、辰巳柳太郎、藤岡琢也、左とん平、花沢徳衛、水戸光子といったところ。竹脇と藤岡弘は兄弟で、辰巳はその父役だ。ここでの藤岡弘は森田にとっては嫌な奴の役のようで、藤岡には珍しい役柄ではないだろうか。松竹青春映画には歌手が付き物だったりするが、本作には森山加代子、ベッツイ&クリスが出演している。後者は当時共に20歳の米国人デュオで、デビュー曲の「白い色は恋人の色」がヒットしていた時期である。
この両作でポスターに名前があったのが大橋壮多。「必殺シリーズ」等の時代劇で悪役としてお馴染みのちょいデブな役者である。子役あがりでその当時は大橋洋一の名で活動していた。
「夕陽に向かう」のヒロイン役は珠めぐみである。松竹所属のはずだが、映画出演は4本ほどしかない。専らテレビでの活躍が目立っていた。中学生でデビューし、その時の役名である珠子から芸名が付けられている(本名は不明)。割と知られているかもしれないが、彼女の姪にあたるのがダウンタウンの浜田雅功夫人として知られる小川菜摘である。
他のキャストは、田中邦衛、河内桃子、太田博之、左時枝、小松方正、根上淳、ピンキーとキラーズ等である。

夕月 

東宝の青春映画シリーズは、前回で終了。「青春」というワードで思い出される役者と言えば、森田健作であろう。ひよっとして最近の人は千葉県の知事だったと人としか認識してないのであろうか。
それはさておき、森田健作(本名・鈴木栄治)は49年生まれ。デビュー作は「夕月」(69年)という松竹映画で、森田が20歳になったばかりのときの作品で、主演は黛ジュンである。68年「天使の誘惑」が大ヒットし、その年のレコード大賞に輝いているが、「夕月」はその次のシングルのタイトル。類計では「天使の誘惑」を上回る売り上げだそうだが、個人的にはほとんど聞き覚えのない曲だったりする。
そのヒット曲の映画化に際し、松竹は相手役を募集し、それに選ばれたのが森田健作というわけである。ちなみに森田健作というのはその時の役名でもあり、それをそのまま芸名にしたという、昔はわりと多かったパターンである。
森田の事務所といえばサンミュージックだが、森田がそのタレント第1号なのである。ちなみに、黛の当時の事務所は石原プロだったりする。昔は女性タレントもいたのである。
当時、松竹の宣伝部にいた芸能レポーター石川敏男によると、オーディションの最終審査の際、ほぼ鈴木栄治(森田)で行くことは松竹や田中監督、サンミュージックの間で話はまとまっていたのだが、それに異を唱えたのが他ならぬ主演の黛であったという。オーディションには目黒祐樹も参加しており、彼女は「目黒さんと共演したい」と主張したという。最終審査で言いだされたので関係者も困惑。今更、変更もできないので関係者が彼女を説得。今回は森田で行くが、次回作は目黒も加えて撮ることで納得させたという。この辺の裏話は当時の森田は知る由なかった。
「夕月」の他の出演者は山口崇、佐藤友美、中山千夏、川口敦子、河原崎長一郎、田中邦衛、小沢栄太郎などである。黛は看護婦の役で、森田は高校生ではなくボクサーの役である。
ところで、前述の「次回作」にあたる作品は存在しないようである。「夕陽の恋人」(69年)でも森田、黛は共演しているが目黒の姿はなく、「栄光の黒豹」(69年)では森田、目黒が共演しているが、黛の姿はなかったりするのだ。まあ自分の主演作なので、新人よりは目黒の方が良いと考えただけかもしれないが。