お宝映画・番組私的見聞録 -31ページ目

谷啓の「図々しい奴」

渡辺プロ社長の渡辺晋は、クレージーキャッツのメンバーをバラ売りすることを目論み、植木等は東宝で、ハナ肇は松竹へ、谷啓は東映へ売り込むことを考えていた。東映の岡田茂は、その頃東映にも喜劇路線を導入しようと渥美清を起用したりしていたが、谷啓も面白いと考え、両者の思惑が一致し、起用が決定した。
その際に、渡辺晋が自分の名を企画に入れてほしいと主張し、岡田は企画は自分がやるのでと突っぱね、渡辺の名前を入れる入れないで揉めたという。結局、渡辺の名は入れないがギャラの一部を渡辺プロに支払うという形で落ち着いたという。
作品は柴田錬三郎原作の「図々しい奴」に決まった。しかし、これはつい三年前(61年)に松竹で映画化されたものであった。ちなみに主役の戸田切人は杉浦直樹で、津川雅彦(伊勢田直政)、牧紀子(美津枝)、高千穂ひづる(多嘉)、他に東野英治郎、小沢栄太郎、沢村貞子、渥美清などが出演していた。
また63年には大映テレビでドラマ化もされ、大部屋俳優だった丸井太郎が切人役に抜擢され、映画で切人だった杉浦直樹が直政役で出演した。他に久我美子(美津枝)、菅原謙次、姿三千子、玉川伊佐男、河野秋武、佐竹明夫らに加え、原作者の柴田も出演した。このテレビ版の主題歌を歌っていたのが谷啓であり、その流れから東映版の「図々しい奴」が企画されたようである。ちなみに、丸井太郎がその後は役に恵まれず、67年に自殺してしまったのは有名な話である。
東映版「図々しい奴」は翌64年に公開された。切人役は谷啓で、他ににとって初の主演作となっている。テレビ版で直政役だった杉浦直樹がそのまま直政役で出演。つまり杉浦は松竹版、テレビ版、そして今回の東映版と全てに出演しているわけである。他に佐久間良子(美津枝)、長門裕之、上原ゆかり、中原早苗、南廣、浪花千栄子(多嘉)、根岸明美、西村晃などが出演している。
その五か月後には「続・図々しい奴」(64年)も公開されている。基本的にスタッフ、キャストは前作と同じで、谷、杉浦、佐久間、長門、上原、中原、南、浪花、根岸らは引き続き同じ役で出演、新たには多々良純、大泉滉、潮健児などが加わっている。また、原作の柴田錬三郎と作家の水上勉が二等兵の役で出演している。
監督は瀬川昌治で、三島由紀夫の「愛の疾走」の準備をしていたところに企画が流れ、本作が廻ってきたという。

ハナ肇の「為五郎シリーズ」

ハナ肇、山田洋次のコンビは終焉を迎えたが、ハナを主演とした松竹作品は継続されている。それが「為五郎シリーズ」
である。
「アッと驚く為五郎」は、ハナが「巨泉×前武ゲバゲバ90分」(69~71年)で発したフレーズで流行語にもなっているギャグである。元々は浪曲「清水次郎長伝」の節回しで、為五郎はその登場人物。この部分がハナのお気に入りで、ふと彼が言ったところウケて、番組で使われるようになったようだ。
番組のヒットを受けてクレージーキャッツによるシングル「アッと驚く為五郎」も69年末に発売され、これもヒットした。当時は何かしらヒットすれば映画化されるような風潮もあり、すぐに松竹によって映画化されることになった。
タイトルはそのまま「アッと驚く為五郎」(70年)で、主演はもちろんハナ肇だ。共演は梓みちよ、尾崎奈々、佐藤友美、財津一郎、谷啓、監督は瀬川昌治が務める。
この「為五郎シリーズ」は、全部で五作品あり、第2弾が「なにがなんでも為五郎」(70年)で、共演が谷啓、光本幸子、小沢栄太郎、有島一郎である。
第3弾が「やるぞみておれ為五郎」(71年)で、共演が谷啓、光本幸子、緑魔子、財津一郎、伴淳三郎などである。
第4弾が「花も実もある為五郎」(71年)で、共演が藤田まこと、光本幸子、林美智子、范文雀、石山健二郎などである。この2~4作の監督は55号映画の野村芳太郎で、併映作品が渥美清、山田洋次の「男はつらいよ」シリーズになっている。そして最後となるのが「生まれ変わった為五郎」(72年)で、共演が緑魔子、財津一郎、殿山泰司、三木のり平、桜井センリなどで、監督は森崎東、併映がコント55号の「びっくり武士道」となっている。
ハナが演じる主人公は1作目は大岩為五郎だが、2~5作は坂東為五郎で統一されている。ただ、複数作出ている共演者(谷啓、光本幸子、緑魔子、財津一郎など)が同じ役なのか毎回違う役なのかは詳しい資料などもないので不明である。松竹作品ってそういったサイトもなく調べにくいのである(個人的に全て未見)。
ちなみに、71年をもって東宝のクレージー映画は終了しており、ハナの松竹における主演映画もこの72年の「喜劇社長さん」をもって終了し、主に脇役として活躍することになる。
ちなみに、為五郎はドラマ化されており、「男一番!タメゴロー」(70年)のタイトルで、26回に渡り放送されている。制作は松竹ではなく東映で、主演はもちろんハナ。共演は八千草薫、金子信雄、飯田蝶子、なべおさみ、入川保則、丹阿弥弥津子など。脚本には向田邦子が参加している。

ハナ肇の「一発シリーズ」

66年、主演ハナ肇、監督山田洋次のコンビでは「運が良けりゃ」「なつかしい風来坊」の二作が作られている。ヒロインは共に倍賞千恵子で、「運が良けりゃ」での共演はクレージーキャッツのメンバーでは、犬塚弘、桜井センリ、安田伸で、他に藤田まこと、田辺靖雄、「ケンちゃん」シリーズの宮脇康之、そして渥美清が特別出演扱いで出演している。
「なつかしい風来坊」での共演はメンバーでは犬塚弘と桜井センリ、他に有島一郎、中北千枝子の東宝勢、山口崇、松村達雄、真山知子などである。なおこの作品はブルーリボン賞の主演男優賞(ハナ)、監督賞(山田)を受賞しており、初期の山田作品では最も評価が高いようである。
そんなコンビで次に制作されたのが「一発シリーズ」である。ヒロインは全て倍賞千恵子で、メンバーでは犬塚弘がすべてに出演している。ただシリーズと言ってもタイトルに「一発」と入っているだけで、その内容や登場人物には繋がりは一切ない。
第一弾が「喜劇一発勝負」(67年)である。老舗旅館を舞台にしたコメディで、他の出演者は谷啓、桜井センリ、左とん平、石井均、三井弘次、当時スパイダースの堺正章、井上順、そして東宝から加東大介といった顔ぶれである。
第二弾が「ハナ肇の一発大冒険」(68年)である。タイトルに「ハナ肇」が入っているのは他のハナ主演作含めて本作のみである。渡辺プロも制作としてクレジットされている。倍賞美津子も出演しており、千恵子との姉妹共演が見られる(一緒のシーンがあるかどうかは未見なので不明だが)。他の出演者は桜井センリ、なべおさみ、入川保則、中村晃子などである。
第三弾が「喜劇一発大必勝」(69年)である、これは藤原審爾の「三文大将」が原作となっている。ストーリー上ではハナよりも谷啓が主役という感じになっている。他の出演者が佐山俊二、佐藤蛾次郎、蘆屋小雁などである。
この後、山田洋次はご存知の通り渥美清主演の「男はつらいよ」シリーズを撮ることになり、山田のハナを主演とした作品はこの「一発大必勝」が最後となっている。

ハナ肇の「馬鹿シリーズ」

クレージーキャッツによる東宝クレージー映画は非常に有名だと思うのだが、メンバー個々でも異なった映画会社で主演を務めているのである。植木等は東宝、谷啓は東映、犬塚弘は大映、そしてリーダーのハナ肇は松竹である。今回はハナ肇の主演映画から「馬鹿シリーズ」(64年)を取り上げてみたい。
ハナ肇はメンバー7人の中で年齢的には5番目であり、谷啓と安田伸のみが年下なのだが、グループを結成したのが彼ということもあり、リーダーに収まっている。
55年に「ハナ肇とキューバンキャッツ」を結成。メンバーには犬塚弘、クレージーキャッツのほとんどの曲を作曲することになる萩原哲晶もいた。翌56年には谷啓、石橋エータローが加入し、「ハナ肇とクレージーキャッツ」へ改称している。57年に植木等、安田伸が加入。60年に石橋が結核のため休養し、代役として桜井センリが加入。61年にスーダラ節が大ヒット爆発的な人気を得る。石橋が復帰するが、桜井もそのまま残ることになり、お馴染みの7人体制がスタートする。
62年に東宝クレージー映画第1作「ニッポン無責任時代」が公開されるが、実はそれより早く60年大映の「足にさわった女」でハナが主演を務めているのである。
そして64年、東宝クレージー映画がヒットを続ける中、松竹がハナ肇を主演とした映画を製作する。それが「馬鹿まるだし」だった。監督はこれが三本目だった山田洋次である。山田はハナの主演映画を8本撮ることになる。本作にはハナの他、犬塚弘、石橋エータロー、安田伸、桜井センリ、そして東宝との関係からノンクレジットだが植木等も出演している。谷啓がいないのは東映で主演映画「図々しい奴」を撮影していたからである。ヒロインは桑野みゆきで、藤山寛美や渥美清が特別出演扱いで登場。竜雷太が本名の長谷川竜男名義で出演しているようだ。
第2弾は「いいかげん馬鹿」(64年)。ヒロインは岩下志麻で、犬塚弘とハナの付き人だったなべおさみも出演している。
第3弾は「馬鹿が戦車でやってくる」(64年)。ちなみに戦車と書いて「タンク」と読む。ヒロインは岩下志麻で、犬塚はハナの弟役で出演。谷啓もチラッと登場するようだ。
ちなみに、テレビドラマ版もあり「おれの番だ!」という枠で「ハナ肇の『馬鹿まるだし』」(64年)のタイトルで放送されている。共演は犬塚と桜町弘子、中尾ミエなどである。

コント55号の映画(松竹版) その2

前回の続きだが、タイトルに55号がつかない55号映画がいくつか存在する。
まずは「泣いてたまるか」(71年)。これは66~68年にかけて放送された1話完結式のテレビドラマシリーズの映画版である。そこでの主演は渥美清、青島幸男、中村嘉葎雄の3人が務めたが、映画版では彼等ではなく坂上二郎が主演になっている。萩本欽一も準主演的な役(腹違いの兄弟)なので、55号映画にカウントしてもいいかもしれない。他の出演者は榊原るみ、倍賞千恵子、高橋長英、佐藤蛾次郎、浜村純、ミヤコ蝶々などである。倍賞千恵子は、妹の美津子とは対照的に55号映画だけでなくドリフ映画にも出演していないので、珍しいと言えるかもしれない。
「初笑いびっくり武士道」(72年)は、タイトルだけ聞くと時代劇コメディのようなものを予想してしまうが、実はこれ原作が山本周五郎の「ひとごろし」なのである。未見なので、本作が原作どおりにやっているかは不明だが、ここまで原作を想像できないタイトルは中々ないのではないか。この4年後には原作どおり「ひとごろし」のタイトルで萩本が演じた双子六兵衛を松田優作が、坂上が演じた仁藤昂軒を丹波哲郎が演じているのである。このキャストだけでも、原作が同じとは考えづらい気がする。
「びっくり武士道」の他の出演者だが、岡崎友紀、榊原るみ、宍戸錠、ピーター、森田健作、光本幸子、田中邦衛、フォーリーブス、野呂圭介、そして嵐寛寿郎と多彩な顔ぶれである。後輩のコント0番地や坂上の師匠にあたる阿部昇二も出演している。自分の記憶では「55号決定版」か何かで阿部昇二を見た記憶がある。小柄なしょぼくれたオジサンという感じだった。これらも監督は野村芳太郎である。
もう1本は時代が前後するのだが「俺は眠たかった」(70年)。これは萩本欽一が制作・監督・脚本・音楽・主演という一人五役を務めた作品である。坂上二郎はそれに対抗して?本人役を含む一人五役を演じている。55号が所属する浅井企画の浅井良二が製作としてクレジットされている。他の出演者は、前田武彦、青島幸男、左とん平、名古屋章、伴淳三郎、石立鉄男など。DVD化などはされていないようである。
萩本欽一の次回監督作品は23年後の「欽ちゃんのシネマジャック」まで待つことになる。
コント55号としての映画はこの68~72年の4年足らずに集中しており、以降はない。萩本はバラエティ番組をいろいろ立ち上げ、坂上は俳優としてそれぞれ活動して行くことになり、70年代中盤からはコンビとしての活動はほとんど見られなくなっていく。唯一、「ぴったしカン・カン」(75~86年)で二人が揃って解答者として出演していたくらいだろうか。
 

コント55号の映画(松竹版)

コント55号は、ドリフ同様に東宝と並行して松竹でも映画が撮られている。
その1作目が68年末に公開された「コント55号と水前寺清子の神様の恋人」である。何故、水前寺清子とセットなのかというと当時「チータ55号」という55号と水前寺(チータ)によるバラエティが放送されていたからだろうか。ちなみに、これは「突撃!ドリフターズ」でいかりやがケガをしたため休止となり、その穴埋め番組という扱いだったようだ。
他の出演者は悠木千帆(樹木希林)、佐藤蛾次郎、益田喜頓、藤岡弘、内田良平、田中邦衛、中原早苗、伴淳三郎といった顔ぶれ。伴淳は東宝版にも出演している。55号の事務所の後輩であるコント0番地も東宝版松竹版のほとんど顔を出している。当時の芸名はたんくだん吉(後に車だん吉)、いわたがん太(後に岩がん太)である。がん太の引退でだん吉はピン芸人となるのである。
松竹2作目も「コント55号と水前寺のワン・ツー・パンチ 三百六十五歩のマーチ」(69年)という水前寺とのセットで、長いタイトルの映画となっている。「ワンツーパンチ」の部分はいらんだろうと思った人も多いのではないか。どちらかと言えば、水前寺が主役といった感じだろうか。他の出演者は西村晃、花沢徳衛、藤岡弘、財津一郎、キックボクシングの沢村忠もちょこっと顔を見せているようだ。2作とも出ている藤岡弘は当時、松竹の青春スターである。
松竹3作目は「チンチン55号ぶっ飛ばせ!出発進行」(69年)で、別に下ネタではない。チンチン電車(路面電車)のことである。つい最近、CSで放送されていた。他の出演者は尾崎奈々、奈美悦子、生田悦子、ピンキーとキラーズ、皆川おさむなどである。
松竹4作目は「こちら55号応答せよ!危機百発」(70年)。他の出演者は倍賞美津子、長山藍子、石立鉄男、フランキー堺、珠めぐみ、由利徹、ピーター、財津一郎、特別出演で加藤剛となっている。ドリフ映画でもヒロインだった倍賞や長山が出演。坂上と「夜明けの刑事」で共演することになる石立とはここで共演済であった。加藤剛が特別出演扱いなのは役柄が大岡越前だからだろうか(大岡越前は東映制作)。
松竹5作目は「コント55号と水前寺清子の大勝負」(70年)。水前寺清子とのセットが復活。これもタイトルからして水前寺が主役という感じだろうか。他の出演者は有島一郎、長山藍子、ケーシー高峰など。
松竹6作目が「コント55号とミーコの絶体絶命」(70年)。ミーコとは由美かおるのこと。水前寺清子のチータ程には浸透してないような気がする。他の出演者は大地喜和子、倍賞美津子、財津一郎、田中邦衛、小松政夫、和田アキ子など。作詞家のなかにし礼やプロボクサーの西城正三なども顔を見せている。
これらは全て野村芳太郎が監督を務めている。

コント55号の映画(東宝版)

60~70年代にかけて、ドリフのライバルと言われていたのがコント55号であった。
66年に浅草フランス座で出会った萩本欽一と坂上二郎が、松竹演芸場でコンビを組んでコントを披露したところ、評判となり、その時の支配人から「コント55号」と名付けられた。当時、王貞治が記録した年間本塁打記録55号に肖ったものとされているが、当人たちが名付けたわけではないので、真実は不明だという。
67年に「大正テレビ寄席」に出演したことで、全国的に売れ出し、翌68年には「お昼のゴールデンショー」のレギュラーとなり、初の冠番組「コント55号の世界は笑う」で人気に拍車がかかった。
この頃から映画にも顔を出すようになっており、5本ほど立て続けに出演。そして初主演となる「コント55号世紀の大弱点」(68年)が公開されたのである。配給は東宝で東宝55号映画は4本存在する。他に松竹作品が10本ほど存在し、この辺はドリフと同じである。「世紀の大弱点」の監督も東宝ドリフ映画のうち3本を担当した和田嘉訓によるものだ。今回は東宝55号映画4本を紹介しておく。
「世紀の大弱点」の出演者だが、水垣洋子、真理アンヌ、宮地晴子、由利徹、上田吉二郎、曾我町子、内田裕也、前田武彦、森光子といったところである。前田武彦は前述の「お昼のゴールデンショー」のメイン司会者であった。
残る東宝版3本は福田純が監督を務める。69年の後半にその3本が立て続けに公開されている。
東宝2本目となるのが「コント55号人類の大弱点」(69年)である。ちなみに、この2作の間に松竹作品2作を挟んでいる。1作目とタイトルが似ていて混同しそうだが、本作は山本嘉次郎監督「狸の花道」のリメイクである。脚本の平戸延介とは山本嘉次郎のこと。山本は黒澤明、本多猪四郎などの師匠として知られる人物だ。他の出演者は白川由美、桑山正一、岡田可愛、大辻伺郎、藤木悠、人見明、コント0番地(車だん吉、岩がん太)など。
東宝3作目となるのが「コント55号俺は忍者の孫の孫」(69年)である。これは山田風太郎が原作となっている。他の出演者が柏木由紀子、高橋紀子、伴淳三郎、由利徹、藤岡琢也、大辻伺郎、柳家金語楼などである。
東宝4作目となるのが「コント55号宇宙大冒険」(69年)である。他の出演者は、高橋紀子、川口浩、カルーセル麻紀、南利明、由利徹、左卜全、応蘭芳、伴淳三郎、コント0番地などである。
監督の福田純の話では、当時はコント55号に興味もなく断っていた企画だったという。結局、やらざるを得なくなり前述のとおり、時間もなかったのでヤマカジ作品のリメイクになったという。しかし、55号が所属する浅井企画の浅井良二に気に入られ、あと2本撮ることになったようだ。福田本人的にはあまり触れたくない作品群らしい。

全員集合‼シリーズ その3

74年、荒井注がドリフ脱退を表明。個人的にも覚えているのだが、「8時だヨ全員集合」では「しばらく休ませてもらうわ」というコメントで辞めるとは一言も言わなかったのである。直後にドリフのみでなく芸能界を引退するという発表があったが、結局半年ほどで復帰し俳優として活動することになる。
ドリフ加入時、「リーダーより年上じゃまずいだろうから三才下ということにしておこう」と本当の年齢をメンバーにも秘密にしていたが、実はいかりやより三歳上の28年生まれだった。つまり6歳サバよんでいたわけである。ただ、一時期メンバー全員が年齢をサバ読んでいたことがあり、高木ブーなどはいかりやの1歳下なだけだが、8歳下つまり7歳もサバ読んでいたことがある。
そして、志村けんが正式に新メンバーとなった。「8時だヨ全員集合」では、すわ親治の方が目立っていたので、彼が新メンバーになるのではないかと言われていた。しかし、加藤が志村を強く推したこともあり、最終的に志村で落ち着いたのである。
そんなわけで松竹13作目(通算18作目)となるのが「超能力だよ全員集合‼」(74年)である。もちろん映画でも志村は正式メンバー扱いである。ヒロイン役は長山藍子、秋谷陽子。他にも榊原るみ、夏八木勲、由利徹、伴淳三郎など。安井かずみ、なかにし礼、フィンガー5などは本人として出演している。すわ親治はお得意のブルース・リー役である。
松竹14作目(通算19作目)となるのが「ザ・ドリフターズの極楽はどこだ‼」(74年)である。タイトルから「全員集合」の文字が消えた新シリーズで、今までの作品と一線を画したホームコメディとなっている。ヒロイン役は篠ヒロコ(ひろ子)で、森田健作、アン・ルイス、天地真理、キャンディーズなども出演している。本作でドリフ映画の全てを監督していた渡邊祐介が退く。
松竹15作目(通算20作目)となるのが「ザ・ドリフターズのカモだ‼御用だ‼」(75年)である。今回から監督が瀬川昌治となる。いかりやが刑事役で、倍賞美津子がヒロイン役に復活。他に伊東四朗、犬塚弘、悠木千帆(樹木希林)、キャンディーズなどがゲストである。
松竹16作目(通算21作目)で。最後のドリフ映画となったのが「正義だ!味方だ!全員集合‼」(75年)である。タイトルに「全員集合」の文字が復活したている。ヒロイン役は榊原るみで、金子信雄、財津一郎、伊東四朗、ミヤコ蝶々、キャンディーズなどがゲストである。本作で最後になった事情は不明だが、新加入の志村がまだ軌道に乗っていない時期ではあった。翌76年辺りからブレイクし始めるのである。そして、瞬く間に加藤と並ぶエースへと成長していくのであった。

全員集合‼シリーズ その2

前回の続きで、松竹ドリフ映画の紹介である。
松竹8作目(通算13作目)となるのが「春だドリフだ全員集合‼」(71年)である。ヒロインは長山藍子と新藤恵美。小柳ルミ子とゴールデン・ハーフが本人の役で登場。ゴールデン・ハーフは当時は4人組だった(後に3人組)。石山健二郎、森次浩司、早瀬久美、東八郎、萩原健一なども出演。落語界が舞台となっており、柳家小さん(5代目)、三遊亭圓生、入船亭扇橋(9代目)といった落語家も出演している。ちなみに、この71年4月~9月にかけて「8時だヨ!全員集合」は休止となり、代わりにクレージーキャッツの「8時だヨ!出発進行」が放送されていた。ドリフは日テレ系の「日曜日だヨ!ドリフターズ‼」という番組に出演していたのである。
松竹9作目(通算14作目)となるのが「祭りだお化けだ全員集合‼」(72年)である。ヒロインは林美智子と仁科明子。今回はクレージーキャッツからハナ肇、犬塚弘、桜井センリ、安田伸の四人が登場。落語界から前作にも出演している柳家小さん、入船亭扇橋に加えて柳家小ゑん、三遊亭圓右が出演している。他にも藤岡琢也、山口いずみなど。主題歌は何故か「お祭りマンボ」で、もちろん美空ひばりではなくドリフが歌唱している。
松竹10作目(通算15作目)となるのが「舞妓はんだよ全員集合‼」(72年)である。ヒロインは吉沢京子と早瀬久美という当時の青春スター。早瀬はシリーズ4度目の登場となるがヒロインは初だ。他に芦屋雁之助、伴淳三郎、西川きよし、大信田礼子、デビューまもない天地真理が顔を出している。
この72年、志村けんは井山淳と「マックボンボン」というコンビを結成。「ぎんぎら!ボンボン!」という番組を担当したが、1クールで打ち切りとなっている。ちなみに、これはあの「シャボン玉ホリデー」の後番組であった。ショックを受けた井山は失踪し、そのまま脱退となった。
松竹11作目(通算16作目)となるのが「チョットだけヨ全員集合」(73年)である。ヒロインは小鹿ミキで、玉川良一、益田喜頓、天地真理、寺尾聰などが出演している。
松竹12作目(通算16作目)となるのが「大事件だよ全員集合‼」(73年)である。ヒロインは松坂慶子で、伴淳三郎、長谷川明男、山本麟一、由利徹、アグネス・チャンなどが出演。志村けん(志村健名義)も数作ぶりに出演。新たな付き人すわ親治(諏訪園親治名義)も端役だが映画初参加となっている。逆に荒井注はこれが最後のドリフ映画出演となっている。ちなみに、10~12作目はDVD化もBD化もされていないようだ。

全員集合‼シリーズ

前回はドリフ映画の東宝版を紹介したが、今回は松竹版を紹介しよう。基本的にはタイトルに「全員集合」が付いている。全16作あるのだが、14作目まで監督は全て渡邊祐介が担当している。ちなみに東宝版の「盗って盗って盗りまくれ」と「特訓特訓また特訓」も渡邊が監督である(残り3作は和田嘉訓)。
1作目の「なにはなくとも全員集合‼」(67年)は前々回で紹介したとして、2作目(通算3作目)が「やればやれるぜ全員集合‼」(68年)である。ヒロインは松尾嘉代で、敵役が藤村有弘、他に田中邦衛、平尾昌晃、先輩であるクレージーキャッツから犬塚弘、安田伸、石橋エータローが出演している。
その後、前回書いたように東宝ドリフが4作続き、松竹3作目(通算8作目)となるのが「いい湯だな全員集合‼」(69年)である。ここからドリフのヒット曲をタイトルに入れるようになっている。ヒロインは生田悦子で役名は「美代」である。挿入歌として「ミヨちゃん」が使われている。他の出演者は木暮実千代、上田吉二郎、左とん平、左卜全、三木のり平、犬塚弘そしてドリフの付き人だった井山淳も端役で出演している。井山は7作目まで連続で端役ではあるが顔を見せている。本作から2カ月後に「8時だヨ!全員集合」がスタートしている。
松竹4作目(通算9作目)となるのが「ミヨちゃんのためなら全員集合‼」(69年)である。前作で挿入歌だった「ミヨちゃん」が主題歌となり、ミヨちゃん役は倍賞美津子となっている。ハナ肇、松岡きっこ、三木のり平らが助演。ここから4作の併映はコント55号の映画である。
松竹5作目(通算10作目)となるのが「ズンドコズンドコ全員集合‼」(70年)である。主題歌はもちろん「ドリフのズンドコ節」。本作から所属の渡辺プロが制作に加わるようになり井沢健の名がクレジットされている。ヒロインは野川由美子、中尾ミエ。日活の末期であり、宍戸錠(おそらく)初の松竹作品出演である。日活で同期ニューフェイスだった名和宏も出演。他に藤田まこと、堺正章も顔見せ的に出演している。
松竹6作目(通算11作目)となるのが「誰かさんと誰かさんが全員集合‼」(70年)である。ヒロインは岩下志麻で、こういった喜劇映画への出演は珍しい。他に内田朝雄、倍賞美津子、森次浩司、上田吉二郎、早瀬久美などで早瀬の役名がミヨである。本作では志村けんが上田の配下として出演(志村康徳名義)、後に相方となる井山は警官の役だった。
松竹7作目(通算12作目)となるのが「ツンツン節だよ全員集合‼」(71年)である。ヒロインは三作ぶりに倍賞美津子で役名も美代である。他に谷啓、香山美子、小松方正、伴淳三郎など。志村は今回は小松の部下の役として出演している。佐藤蛾次郎と太宰久雄が出演しているのは次作から併映が「男はつらいよ」シリーズになることが関係しているようだ。