0(ゼロ)の眼
前項で話題にした宮園純子がヒロインを演じた60年代ドラマの一つが「0の眼」(63年)である。熱血プロカメラマンが社会の悪と戦うといったような内容でタイトルはカメラのことを意味している。その主役のカメラマンを演じるのが水原一郎である。誰それ?という人も多いかもしれないし、私もよく知らない。61年ニュー東映(第二東映)が存在した時にデビューし、主演映画も3本存在する役者である。期待は大きかったようだが、東映が再び一本化すると3本ほど映画には出演しているが、二度と主演になることはなかった。テレビでの主演も本作のみで、翌年「特別機動捜査隊」に1本ゲストで出たのが記録上では最後である。どうやら彼の役者活動は3年ほどで終了したようである。
さて「0の眼」だが、OPのみ見たことがあるが顔入りで紹介されるのは水原と宮園だけである。宮園はさすがに若いが20歳には見えなかった。他の出演者はレギュラーかどうか不明なのだが、プロフェッサーギル、ドクトルオーバー、ガイゼル総統など特撮の悪役といえばこの人・安藤三男、「特別機動捜査隊」の西本係長こと鈴木志郎、現在は「日本野鳥の会」会長の柳生博、新東宝のスタア女優三原葉子などである。
紅つばめお雪
前々項の「緋剣流れ星お蘭」終了後、半年を経て始まったのが「紅つばめお雪」(70年)である。タイトルを見ただけで、お仙、お蘭の流れを汲んでいる番組であることがわかるが、前二作との大きな違いは女の二人旅ではなく、女一人男二人のドリカム状態(今は違うが)で旅をするところである。主演のお雪には当時27歳の宮園純子で、相棒となる剣の達人に里見浩太朗、お調子者の旅ガラスに工藤堅太郎といった布陣である。当時としては人気者であった三人を起用した番組であったが、如何せん3ヶ月で終了したため、記憶に残っている人があまりいない番組となっている。実際ネット上で検索しても、この番組について触れている記事など皆無に等しいのである。当然私も知らなかった。
しかし60年代の宮園の勢いはかなりのものである。東映の時代劇またはアクションドラマのヒロインはたいてい宮園であった時期があるくらいだ。宮園は東映ニューフェースの7期生であるが、この7期生というのは何故か全員女性である(ようだ)。宮園以外である程度活躍したのは三沢あけみ、三島ゆり子、結城美栄子くらいであろうか。このメンツを見ても宮園が突出した存在だったことがわかる。
翌71年「水戸黄門」の第3部がスタートし、里見は助さんとして、宮園は霞のお新として揃ってレギュラー入りし、人気を得ていくことになるのである。
江戸忍法帖
山城新伍&花園ひろみ夫婦の話題がでたが、このコンビが共演したドラマがあった。山田風太郎原作の「江戸忍法帖」(66年)である。山田風太郎の原作といえば、現在でもアニメやらマンガになったりもしているが、本作も将軍の隠し子を七人の忍者が暗殺しようとするというような話らしい。
しかし、この作品はいろいろいわくつきの作品なのである。テレビドラマデータベースには、64年に撮影されながら山城の不祥事で一時期オクラ入りになったとあった。そんな不祥事があったのかと、つい調べてしまうのが人というものだ。調べた結果、俗に言う拳銃不法所持であることが判明した。しかもその事件には意外なことに里見浩太郎もかかわっていたのである。経緯を簡単にいうと63年、山城と里見がハワイで拳銃を購入して日本に持ち帰った。数ヵ月後山城が捕まったが、その銃は里見から譲り受けた物であることがわかり、二人とも起訴されたというものである。山城は自分で購入した銃は暴力団員に譲り、里見から貰った銃を所持していたらしい。まあ山城はともかく、真面目人間という感じの里見がこういう事件にかかわっていたのは意外な感じがした。そういうこともあってか64年には1話のみ放映された記録があるのだが、事件のせいで放映中止になったのかどうかは不明である。結局関西では66年、関東では翌67年に陽の目を見たようだ。山城、花園以外の出演者は佐々木孝丸、前田通子、小林重四郎、相原昇などである。この作品、フォースメディアというサイトで見れる人は見れるのだが(私は見れない)、昭和33年(58年)と書いてある。山城のテレビ出演は59年からで、明らかに誤りであると思われる。
緋剣流れ星お蘭
前項で「旅がらすくれないお仙」の後番組としてスタートしたのが「緋剣流れ星お蘭」(69年)である。人気を得たかみなりお銀こと大信田礼子はそのまま残留し、ヒロインが松山容子から花園ひろみにチェンジされた。このパターンは半次こと品川隆二はそのまま残留し、主人公が「月影兵庫」から「花山大吉」に変わった(といっても役者は同じ近衛十四郎だが)と同じパターンである。しかし長く続いた「花山大吉」と違って、「流れ星お蘭」は半年で幕を閉じる。当時のこの番組の人気はわからないが「くれないお仙」は覚えていても「流れ星お蘭」を覚えている人はあまりいないのではないだろうか。
花園ひろみといえば、東映時代劇におけるお姫様女優の一人だが、個人的には山城新伍のカミさんというイメージしかない。調べてみると映画での活躍は60年代前半までで、テレビでもそれほど目立っていたわけでもなく、唐突な主役起用だった気がする。当時29歳と松山よりは若かったのだが、人気面ではピークを過ぎていた感がある。この番組終了後、花園はほとんどテレビドラマには出演していないようである。
山城とは東映ニューフェース4期の同期生で、 他に室田日出男、曽根晴美、水木襄、佐久間良子、山口洋子などがいた。二度の結婚と離婚を繰り返していることは有名で、現在は離婚状態である。山城は糖尿病を患い、テレビから消えて久しいが、近いうちに復帰するとの噂も出ている。
旅がらすくれないお仙
松山容子は元々はNHKの松山支局に勤めていたということである。それも野際陽子のようにアナウンサーではなく事務職だったらしい。それが週刊誌の表紙に起用されたことがきっかけで女優に転身したという話はファンならよくご存知であろう。松山という芸名はもちろんその松山市からきている。このブログで3項ほど前に取り上げた「七人若衆大いに売出す」にも出演しているのだが、その時は松山清子名義である。
さて夫の棚下照生とのコンビは「めくらのお市」が初めてだったわけではない。68年の「旅がらすくれないお仙」も同コンビの作品である。一般的にはこちらの方が有名であろう。私も見ていた記憶がある(おそらく再放送だと思うが)。これは同じ東映の人気番組であった「素浪人月影兵庫」の女版である。そちらでの焼津の半次・品川隆二にあたるのが当時19歳だった大信田礼子演じるかみなりお銀である。超ミニの着物姿は当時は評判になったものである。はっきりいってこの番組は松山よりも大信田目当てで見ていた人が多かったのではないだろうか。私も印象に残っていたのは大信田の方である。ちなみに中にはいていたのは男物の海パンだったらしい。
ところでこの番組、1年続いた人気番組だったが、フィルムはほとんど現存していないという。最近、東映お得意の1話のみ現存している作品特集で、第5話のみ放映された。実際はもっとあるのではと予想されるが、放映できる状態にあるのはほとんどないのであろう。本作より古い「月影兵庫」の第1シリーズはほぼ全話放映されたのに。レギュラーは基本的に二人なのでゲスト陣は結構豪華だったようだ。若山冨三郎、里見浩太郎、山城新伍、木村功、中野誠也、若林豪、近藤正臣、月形龍之介といったところが登場している。
松山容子は劇画家棚下照生と結婚したわけだが、大信田礼子は作曲家都倉俊一と結婚している。ただしこちらは4年あまりで離婚している。
めくらのお市・地獄肌
実は全く知らなかったのだが、前項の原作者である棚下照生と前々項の原作者寺田ヒロオは親しい友人であったということである。まあ同じ漫画家なので親交があっても不思議はないのだが、ザ・少年漫画という感じの寺田と成人向けの棚下の親交は意外な感じがする。まあ二人揃って盲目の人を主人公した漫画を描いたのは偶然なのだろうか。棚下はトキワ荘へ行くことも結構あったようだが、藤子らトキワ荘メンバーになじめなかったこともあってか、棚下とつげ義春に関しては「まんが道」を代表とするトキワ荘関連のお話に登場することはほとんどないようである。しかし近年公開された「トキワ荘物語」では棚下もつげも登場するようだ。
さて「お市」の映画版だが、4本あり「めくらのお市物語・真っ赤な流れ鳥」「地獄肌」「みだれ笠」「命貰います」であるが、その中から「地獄肌」(69年)をクローズアップしてみる。もちろん未見だが、松山容子以外の出演者は入川保則、松岡きっこ、安部徹、中丸忠雄、南廣、近衛十四郎と東映っぽいメンバーが多いが京都映画である。やはり悪役は安部徹のようだ。そして本作には原作の棚下も登場するらし い。
ところで棚下の本名は田中照生。つまり棚下と書いてタナカと読むのが正しいのであろうか。普通「タナシタ」と読んでしまうようなあ、やはり。
めくらのお市
前項で話題にしたので取り上ねばなるまい。「めくらのお市」(71年)である。本作は内容はともかく、そのタイトルのみで地上波はもちろん、衛星波でも放映されることはないであろう作品の代表的なものである。以前取り上げた「唖侍・鬼一法眼」はタイトルから「唖侍」を削除し、タイトルバックに映像処理を施すという力技で放映されたが、本作の場合はただの「お市」になってしまう。それにしても「座頭市」の女版だから「めくらのお市」って、」あまりにも安易なネーミングである。まあ「座頭のお市」では本家から抗議されそうだし、せめて「くらやみお市」とかだったら(ヤミ市みたいだが)、現在のような封印作扱いにはならなかったかも。
というわけで個人的に本作に関しては、主演は松山容子ということぐらいしか知らなかったりする。元々は映画でシリーズ化されており(全4作)、それのテレビシリーズ化であることや、原作は小説だとばかり思っていたのだが、実はコミックだったことなど初めて知った次第である。つまり原作の棚下照生が漫画(劇画)家だったことも初耳であった。その名は知っていたがずっと小説家だと思っていた。松山容子はこの棚下と結婚して引退するのだが、監督とか共演者とかプロデューサーとかと結婚という話はよく聞くが、原作者というのはあまり聞いたことがない。「キャプテン翼」の作者・高橋陽一がアニメで主人公翼の声を演じた小粥よう子と結婚したという話くらいしか思い浮かばない。
ところでテレビの方の出演者だが、レギュラーだかゲストだかは不明だが、鈴木やすし、藤岡弘、丹波哲郎、そして子役の矢崎知紀(「仮面ライダー」などに出演)、高野浩幸(「バロム1」でおなじみ)などが出ていたようである。まあ本作が放映されたり、ソフト化されたりするのは今後も困難だと思われるが、映画の方はたまにどこかで上映されることがあるようだ。
くらやみ五段
最近ここで柔道ドラマの話題を出したが、ふともう一つあったのを思い出した。「くらやみ五段」(65年)である。主演はつい先日、俳優引退宣言をした千葉真一である。だから思い出したというわけではないのだが。千葉も68歳だから引退しても不思議ではない。千葉といえばアクション。時代劇でアクション(スタント)といえば宍戸大全である。先日「水戸黄門」のオープニングをたまたま見ていると(中身は見ていません)、「特技・宍戸大全」の文字が。現在78歳のはずだが今だに現役だったことに驚く。まあ本人がスタントしているわけではないと思うが。
さて「くらやみ五段」だが、簡単にいえば、まさおくんを助けるために炎の中に飛び込んで行き、視力を失った柔道青年の話である。原作は寺田ヒロオの漫画「暗闇五段」で(こっちは漢字である)、寺田最後の少年誌(少年サンデー)での長期連載作品である。まあ長期といっても単行本2巻分であるけれども。寺田ヒロオに関しては藤子不二雄の「まんが道」などを読むとよくわかると思う。出演者だが千葉以外では、子役時代の小林幸子やヒマラヤジョーの役で丹羽又三郎が出ている。丹羽又三郎ってそんなに大柄なわけでもないのに(身長は不明だが見たかんじで)、何故ヒマラヤ?
しかし昔はこういったハンディキャップドラマが非常に多かったが、現在ではこういったドラマの制作はとても困難である。タイトルも難しい。「唖侍」とか「めくらのお市」とかはあまりにもストレート過ぎである。その点「座頭市」とかこの「くらやみ五段」とかはタイトルのつけ方がうまい。少なくともタイトルで封印されることはないだろう。
七人若衆大いに売り出す
58年松竹では「七人若衆誕生」という映画でタイトルどおり七人の新人を売出そうとしていた。その七人とは林与一、花ノ本寿、中山大介、川田浩三、大谷正弥、大谷ひと江、そして前項で取り上げた松本錦四郎である。これらの名を聞いても林与一くらいしか知らんという人も多いのではなかろうか。正直私も初めて聞く名前も多かったりする。同年シリーズ2作目「七人若衆大いに売り出す」が公開されたが、シリーズはこれで終わり大いに売出せず終わってしまった人も多い。中山、川田、大谷正弥あたりは60年代に入るとまもなく姿を消してしまっている。花ノ本寿(ヒサシではなくコトブキと読む)はその名の通り、日本舞踊花ノ本流の人であり当時16歳であった。一時期歌手に転向したり、65年には日活に入社したりと、テレビや映画にちょくちょく出ていたようだが、個人的には見た記憶がない。大谷ひと江は一瞬女かと思ってしまう名だが、勿論男である(本名横田一郎)。映画出演はこれでほぼ終わってしまったが、7代目嵐徳三郎を襲名し、歌舞伎界で永く活躍したようである。大谷正弥とは日大演劇学科の同級生だったらしい。ちなみに大谷という姓は当時の松竹会長大谷竹次郎からもらったものである。松本錦四郎は七人の最年長(当時25歳)で、「新選組始末記」(63年)では沖田総司役を演じるなど二枚目として活躍したが、前項の通り73年に自ら命を絶っている。中山大介はテレビドラマ「変幻三日月丸」(59年)では主役を演じたりしているが、短い活躍期間で消えてしまっている。
色男たちがセットで売出すといえば、現代ではジャニーズを思い出すが、当時はあまり受け入れられなかったようである。
柔一筋
前項でいっぱい柔道ドラマを羅列してみたが、その中から「柔一筋」(65年)をピックアップしてみたい。そこでも書いたように放送期間は5ヶ月ほどあるのだが、野球野球また野球という感じで全10回しかないのである。しかしこのドラマは日本初の連続90分ドラマという肩書きを持っているのである。そんなこともあってか、俳優陣は結構豪華な顔ぶれである。レギュラーは柔道ドラマ常連の平井昌一、御木本伸介、和崎俊哉、丹波哲郎に加え、松本錦四郎、早川保、「ジャングルプリンス」の矢野圭二といったところだが、山村聡、高田浩吉、山形勲、嵐寛寿郎といった大御所や、おそらく悪役な天津敏、南原宏治、ジェリー藤尾、そして若井はんじ・けんじ、島ひろし・ミスワカサ、島田洋介・今喜多代、夢路いとし・喜味こいしといった懐かしの漫才コンビなども出ていたようである。
主題歌はやはり美空ひばりの「柔」で、脚本には藤本義一の名もみえる。先にあげた松本錦四郎という役者は、名前のからわかる通り、松本幸四郎(八世)門下生として日舞を修行しているのだが、元々は日活のニューフェースであった。映画でもテレビでも主役ドラマがあったりするのだが、73年に39歳の若さで自殺している。合掌。