お宝映画・番組私的見聞録 -220ページ目

明治大帝と乃木将軍

さて新東宝の明治天皇シリーズ第3弾は「明治大帝と乃木将軍」(59年)である。今回も前作同様、大蔵貢が原作を書き、総指揮を執るという形である。当時の宣伝文句では「前作を凌ぐ巨費を投じ」と当然のように書かれていたようだが、どうもそうは思えない。

まず出演者だが、明治天皇・皇后は前作同様、嵐寛寿郎・高倉みゆきだが、タイトルにもある乃木大将を演じるのは林寛である。もちろん林寛子ではない。当時54歳の戦前から活動していたベテラン役者である。ピンとくる人はあまりいないかもしれないが、新東宝映画ではよく見かける名前なのである。わかりやすいし。しかしその顔はいまだに把握できてなかったりする。そんな地味な林寛が何故、今回の大役に抜擢されたのか?答えは簡単だ、前二作とも乃木を演じていたのが林寛だったからであろう。で、その妻役には村瀬幸子、二人の息子に片岡彦三郎と和田桂之助という布陣である。で他の出演者だが、中村竜三郎、明智十三郎、坂東好太郎、沼田曜一、細川俊夫、御木本伸介、江見俊太郎(このあたりで渉から改名している)といったところなのだが、妙に地味に感じてしまう。それもそのはず、前二作には登場していた宇津井健、若山富三郎、高島忠夫、天知茂、丹波哲郎、藤田進らが揃って出ていないのである。

本編ではその戦闘シーンになんと「明治天皇と日露大戦争」での戦闘シーンを使ったりしているらしい。さすがに観客もバカではなく、そのことに気付き非難轟々だったという。この新東宝らしい節約っぷり。明らかに前作以下の制作費で作られているといえよう。これで明治天皇三部作はとりあえず終了となった。しかし「天皇」物はまだ終わらなかったのである。次項に続く…と思う。

天皇・皇后と日清戦争

前項の「明治天皇と日露大戦争」のヒットを受けて、新東宝が続けて放ったのが「天皇・皇后と日清戦争」(58年)である。本作は大蔵貢自ら原作を書き、総指揮を執るという力の入れようである。歴史的にいえば日清戦争のほうが先なのだが、別にそんな順番にはこだわらないといったところか。明治天皇は前作同様の嵐寛寿郎。そしてタイトルにあるとおり今回は昭憲皇后が登場。演ずるは大蔵の愛人と言われた高倉みゆき、当時24歳である。実際の明治天皇・皇后の年齢差は知らないが、アラカンとは31歳差の夫妻である。

他の出演者は前作同様のオールスターキャストで、藤田進、高田稔、江川宇礼雄、沼田曜一、明智十三郎、中村竜三郎、天城竜太郎(若杉英二)、細川俊夫、丹波哲郎などはまあ前作と似たような役。前作ではそれぞれ将校の役だった若山富三郎は一等兵、高島忠夫が二等兵、御木本伸介も二等兵、宇津井健が兵曹といった一般兵を演じている。逆に舟橋元はチョイ役兵士から少佐役へと昇格している。他にも和田桂之助(和田孝)はラッパ兵、遊星王子こと三村俊夫(村上不二夫)、江見渉(俊太郎)、伊達正三郎の顔も見える。忘れちゃいけない天知茂は暗殺団員の役である。女優陣も高倉みゆき以外にも五月藤江とかも出ている(婆さんだけど)。

制作費も前作同様二億円との触れ込みであったが(実際はわからんが)、前作ほどはヒットしなかったようである。しかし大蔵は懲りずに次回作の制作に入ったのである。次項に続く。

明治天皇と日露大戦争

宇津井健といえば、やはり新東宝。新東宝といえば、やはり大蔵体制以降はエログロ映画というイメージであるが、もちろんそうでない映画もある。代表的なものとして「明治天皇と日露大戦争」(57年)があげられる。通常一本あたり一千万で制作されていたという新東宝作品であるが、本作は七千万の制作費が投入されている(宣伝上は二億円と称していた)。新東宝スター総出演(ただし男ばかり)のかいあってか、当時としては大ヒットを記録している。明治天皇を演ずるは戦前からのチャンバラスター嵐寛寿郎、当時54歳。映画で天皇が演じられるのは初めてだったと思われ、不謹慎ではないかという意見もやはりあったそうだ。しかし大蔵貢は耳を貸さず強行した。ちなみに森光子はアラカンの従妹である。

他の出演者は藤田進、江川宇礼男、沼田曜一、田崎潤、丹波哲郎、明智十三郎、天城竜太郎、中山昭二、江見渉(俊太郎)、高島忠夫、新東宝作品には珍しい気がする若山富三郎、そしてもちろん宇津井健といったところが軍関係であるのだが、なんと高島、若山、宇津井は死ぬ役なのである。以前、宇津井健が死ぬところなど見たことがないと書いたが、高島や若山もあまり死ぬところは見たことがない気がする。しかし本作ではそれぞれ戦死するのだ。もっとも宇津井は倒れるところは描かれないけれども。他にも天知茂、御木本伸介は代議士役、松本朝夫や舟橋元はチョイ役で、後未確認だが何故か勝新太郎がチラリと出ているらしい。

というわけで見どころ満載な作品なのである。調べると若山のスタートは新東宝で、59年まで在籍していたようだ。個人的にはほとんど見かけたことがないので意外な気がした。まあ勝が出ているとすればもちろん若山つながりであろう。

検事

宇津井健の初連続テレビドラマ出演作品となるのが「検事」(61年)である。五人の新人検事が犯罪に挑み社会悪と戦う法廷ドラマだそうだが、まあ2年も続いたところを見るとかなりの人気を得ていたようだ。五人の新人検事とあるが、おそらく宇津井健、佐竹明夫、園井啓介、高津住男、小山明子だと思われる。まあ実年齢で最年長の佐竹(当時35歳)と最年少の高津(当時25歳)と丁度10歳の差があるが、他の出演者で判明しているのが堀雄二と川喜多雄二(当時38歳)しかいないので、先の五人と判断した。当時の多くのドラマがそうであったように、本作も45分の生ドラマである。さすがの宇津井も毎回、非常に緊張していたようで、役者人生で一番きつかった作品だったと後に語っている。ところで宇津井はこのドラマを63年の初めに途中降板している。何でもこれは宇津井の所属していた大映の圧力だったらしい。映画会社所属の俳優がテレビで人気を得ているのが気に食わなかったのであろうか。しかしその63年、大映の「黒い報告書」で宇津井が演じたのは検事の役であった。翌64年の「検事霧島三郎」ではその霧島役と立て続けに検事を演じている。大映もえげつない会社である。実は宇津井はこれ以外にも検事役が多く、影の検事役者だったりするのである。

すいれん夫人とバラ娘

宇津井健の映画デビューは前項のとおりだが、テレビの方はどうなのであろうか。まあ宇津井でテレビといえば「ザ・ガードマン」(65年~71年)があまりに有名だが、もちろんそれ以前から出ていたわけで、調べたかぎりでは57年から進出しているようである。どうやら「紅屋ようかん」という単発作品が初ドラマのようだが、如何せんタイトルと出演・宇津井以外の情報がない。続いて「靴と女」、そして中野実アワーという枠の中の一本である「すいれん夫人とバラ娘」に出演しているようだ。主演はどうやら朝丘雪路で、女探偵という役柄のようだ。で、その助手役が本作が初の本格的テレビドラマ出演となる渥美清である。スタジオの床があまりにピカピカなので、思わず靴を脱ごうとしたというエピソードがあるらしい。宇津井はどんな役なのか不明だが、宇津井と渥美の共演など記憶にないので、ひょっとしたら唯一の共演かもしれない(あったらすいません)。他にも戦前からのスターである佐野周二に高杉早苗と中々豪華なメンバーが出ている作品なのである。高杉早苗は個人的にはあまり馴染みがないが、85年に亡くなる少し前くらいまで活躍していた息の長い女優だったのである。流石にこのメンバーだと渥美はもちろん宇津井もまだまだ無名の存在だったかもしれない。

まだテレビが普及する前の作品なので、見たことある人も覚えている人もほとんどいないだろうなあ。

思春の泉

月も変わったので、話題もガラッと変えようと思う。唐突だが、宇津井健のデビュー作というのをご存知だろうか。まあプロフィールとかを調べればわかると思うが、俳優座・新東宝の「思春の泉」(53年)という映画である。これは宇津井がまだ俳優座の養成所にいた時の作品で、新東宝に入社するのはこの翌年の話なのである。にもかかわらず、いきなり主演である。最初からスター候補だったのがよくわかる。古い映画だが意外と知った名前が名前が並んでいる。左幸子、永井智雄、東野英治郎、花沢徳衛、千田是也、成瀬昌彦、東山千栄子、岸輝子、小沢栄太郎(当時は小沢栄)といった、当然ながらほぼ俳優座の面々である。ちなみに俳優座は千田、小沢、東野、東山、岸ら10人で44年に結成された劇団である。

まあ話の内容は東北の農村を舞台にしており、婆さんがいっぱい出てくるといった印象。まあ個人的には普通だったらまず見たいとは思わないタイプの作品である。見どころは宇津井、それだけである。

宇宙大怪獣ギララ

「ガッパ」と来たら「ギララ」と相場が決まっている。というわけで今回は松竹唯一の特撮怪獣映画「宇宙大怪獣ギララ」(67年)である。こちらのほうが日活の「ガッパ」より約一月公開が早い。偶然とは考えづらいので、「日活がやるなら」「松竹がやるなら」と対抗して制作されたのではないだろうか。でなければ特撮映画はそのまま東宝と大映にまかせていたと思う。

ギララといえば、子供の頃「少年マガジン」やらで特集が組まれたり、プラモデルなども出ていた記憶がある。しかし実際映画を見たかどうか、はっきりしない。まあ大人になってからも見ていないので、内容を全く知らないことに変わりはない。で資料などを見ると意外とよく出来ているのではという印象である。ギララ自体もよく出来ていると思う。まあ四本指にクレームをつける輩がいるかもしれないけれども。主演は和崎俊哉で、「ミラーマン」の村上チーフが有名だ。元々は東映の役者で、日本電波に移り柔道物に多数出演、この時期は松竹と契約していた。この和崎を取り合う?のが西野バレエ団五人娘の一人・原田糸子とペギー・ニール。体調不良で宇宙へ行くのを取りやめるのが園井啓介。変わりにマイク・ダニングという外人が行くのだが、最初からダニングでよかったのでは?無理矢理でも人気のあった園井を出したかったのであろうか。他に岡田英次、柳沢真一、フランツ・グルーベルなど。フランツ・グルーベルはグルーバーと表記されることも多い。「ウルトラセブン」の第1話のみ登場するボガード参謀役も彼である。そして当時は松竹のホープだった藤岡弘。ステーションの通信員といった明らかにメインキャストではない役(東宝なら勝部義夫あたり)なのだが、当時のポスターには意外と大きく名前が載っていたりするのである(和崎、原田に次ぐ3番目)。「仮面ライダー」でスターとなるのはまだ四年後のことである。

大巨獣ガッパ

ピープロ特撮のネタもつきたので、目先を変えて特撮映画を取り上げてみたい。というわけで「大巨獣ガッパ」(67年)である。日活唯一の怪獣映画として有名である。子供の頃から知っていた映画ではあるが、最近まできちんと見たことはなかった。出演陣は意外と豪華である。川地民夫、山本陽子、小高雄二、和田浩治、藤竜也といった日活スターが並んでおり、主役は当時は準主役の多かった川地民夫である。他には弘松三郎、桂小かんの「ハレンチ学園」先生コンビ、雪丘恵介などである。特撮の方だが、初めての割にはよくやっているのではないだろうか。あらかじめ非公開の特撮映画を二本作ってから本作に望んだということなので、気合が入っていたのである。とはいってもストーリーのほうは、英映画「怪獣ゴルゴ」のパクリだそうである。まあ結局はこれ一本で日活怪獣映画は終わってしまうのである。コストの割りに実入りが良くなかったということであろうか。

この映画でよく話題になるのは強烈な主題歌である。歌っているのは当時の人気歌手・美樹克彦。「花は遅かった」「回転禁止の青春さ」などのヒット曲があり、アニメでも「紅三四郎」の歌がある。紅三四郎は堀江美都子のデビュー曲として有名だと思うが、当初は美樹克彦の歌う別の歌が主題歌だったのである。もともとは本名の目方誠で活躍していた子役で、60本ほどの映画に出演している。後半は美樹克彦情報になってしまった。

電人ザボーガー

ピープロの作品が続いているが、ついでなので「タイガーセブン」の後番組である「電人ザボーガー」(74年)についても取り上げてみよう。本作を最後にピープロは番組制作から撤退することになる(正確には「冒険ロックバット」という5分番組があるけれども)。本作においても、実際は友映という会社が制作を担当している。こういう形でないと赤字続きで制作体制が維持できないということらしい。原案に小池一夫とあるが、これは名義のみで実際はノータッチである。フジの土曜7時という枠をずっとピープロが独占していたため、他のプロダクションの横ヤリが入るため、ワンクッションおく意味があったという。

さて「電人ザボーガー」であるが、前2作が暗かったこともあってか、一転して割合単純なヒーローものとして描かれている。一年続いたのだから、それなりに人気はあったようだ。主演は当時29歳の山口暁で、「忍者部隊月光」や「ライダーマン」など特撮ではお馴染みの顔である。共演はかつての大映スター根上淳で、特撮ものは「帰ってきたウルトラマン」に続く出演である。その子供に星野みどり、神谷政浩。星野は「ハレンチ学園」に生徒役で出ていたりした子役で、神谷は「人造人間キカイダー」などでお馴染みだ。敵役の悪の宮博士に岡部健、ミスボーグに藤山律子で、藤山も「レインボーマン」など特撮番組の出演は多い。山口暁も藤山律子も「特別機動捜査隊」の終期に刑事役で登場している。

ところで主役の山口がザボーガーに変身すると思っている人もいるかもしれないが、ザボーガーはロボットなので、実際は「鉄人28号」のように操るのである。基本的に山口は生身で戦うのだ。等身大のロボットを操るというスタイルは意外とありそうでない。ちなみに山口演じる大門豊の身分は「秘密刑事」である。

鉄人タイガーセブン

「風雲ライオン丸」の後番組となるのが「鉄人タイガーセブン」(73年)である。当時、この番組については全く意識しておらず、やっていたことさえ知らなかった気がする。ライオン丸にしろこれにしろ何故見ていなかったのかと思ったが、これらは土曜7時の放送。アニメ「ど根性ガエル」を見ていたことに気付いた。というわけで、OP以外は全く見たことがなかったのだが、いずれにしろかなりマイナーな存在の番組であることには違いない。見た目からして虎というより人相の悪い猫のような仮面、その首から下には全く金を賭けていない感じがして、非常に安っぽい感じがする。そのタイトルも「鉄人28号」「タイガーマスク」「ウルトラセブン」を繋げただけという感じで、安っぽさに輪をかけている。しかし、その内容を調べてみて驚いた。「風雲ライオン丸」も暗かったようだが、それにも増して暗く重い番組であったことを知った。正体を隠すのがヒーローの約束事だが、そのために「肝心なときに、いつもお前はいない」と言われたり、バイク上で変身する途中で子供をはねてしまったりとか、触れてはいけない部分に本作では真面目に触れてしまうのである。とにかく主人公苦悩しまくりで、子供が見て面白いものではないだろう。人気が出なかったのもうなづける。

主演の滝川剛には「ライオン丸」のライバル番組であった「変身忍者嵐」の南城竜也がピープロにシフトしてきた。そして特撮物にもピープロにも縁がなかったと思われる中条静夫が高井戸博士役で出演する。剛の仲間である「高井戸グループ」と言われる面々に、達純一、佐久間宏則、久万里由香、吉田友紀といったレギュラー陣である。達純一扮する北川が何かと剛に文句を言ったり、殴りかかったりするキャラ。達純一だが、テレビドラマデータベースでは(剛達人)などとなっているが、これは明らかに誤りであろう。詳しくは不明だが、あの幻の特撮「サンダーマスク」で大魔王ベムキングの中に入ってたりした人である。佐久間宏則は「われら青春」では生徒の一人であった。久万里由香は真理アンヌの妹で、女番長映画などにも出ていた。吉田友紀は後の「あばれはっちゃく」で、現在も活躍中である。このタイガーセブンやライオン丸には鴨志田和夫という人が入っているのだが、その息子が吉田友紀だそうである。つまり本作では親子共演していたのである。

今まで関心のなかったタイガーセブンだが、調べてみると興味が湧いてきた。敵怪人であるガス原人とかコールタール原人とか地震原人とかその姿が予想もつかないので、見てみたいものである。