ブワナ・トシの歌
前項に書いた渥美清がパッとしなかった時期の作品に「ブワナ・トシの歌」(65年)という映画がある。渥美本人が大変気に入っている作品ということだが、本人が好きだからといってもヒットするとは限らない。監督が通常、渥美清とは縁のなさそうな羽仁進で、4ヶ月に渡る全編アフリカロケを敢行した作品である。というわけで日本人の出演者は渥美と下元勉の二人だけで、後はハミン・サレヘとかビビ・アグネスとかいう現地の人たちである。まあ内容がどうであれ、ヒットするタイプの作品ではない。よほどの渥美ファンか、アフリカに興味のある人でなければ見ない作品であろう。渥美自身はこの撮影でアフリカが気に入り、プライベートでもよく訪れていたという。
さて私は監督とうい人については詳しくないので、羽仁進についても、娘は羽仁未央だなとか漠然としたイメージしかない。調べてみると、やはりイメージどおりドキュメンタリー中心の人であった。本作のようなアフリカロケの作品は数多い。女優の左幸子と結婚していたが、浮気が元で離婚。その浮気相手は左の妹(左時枝ではない)だったという。その妹と羽仁は再婚。私生活の方がある意味ドラマチックな人だったようだ。
拝啓天皇陛下様
前項の「大番」でスターダムにのし上った渥美清だが、翌63年の「拝啓天皇陛下様」で主演映画俳優としての地位も確立する。本作はDVDも出てるし、おそらく渥美ファンなら誰でも知っている作品だと思うのだが、「男はつらいよ」シリーズさえ、ほとんどまともに見たことが無い自分は、当然未見である。別に渥美清が嫌いというわけではないが(好きでもないが)、国民的な映画や人情喜劇的な作品はあまり得意ではないのだ。
とにかく本作で演じた二等兵のキャラがうけ、続編として「続拝啓天皇陛下様」(そのまんまだ)や「拝啓総理大臣様」という作品まで作られた。他の出演者は長門裕之、左幸子、高千穂ひづる、中村メイコ、桂小金治、加藤嘉、西村晃、そして藤山寛美、さらに「裸の大将」こと山下清(本物)も登場するらしい。
本作の成功で一気に渥美清全盛期を迎えるのかと思いきや、これより数年間は低迷期(作品がうけないという意味)に入ってしまう。前述の続編もあまりウケなかったようだ。数項前の「喜劇急行列車」など東映での作品もその時代に撮られたものである。起死回生の一打は、やはり「男はつらいよ」まで待たなければならないのであった。
大番(テレビ版)
3項ほど前に戻るのだが、渥美清の話題である。渥美清は寅さんになる前からスターだったわけだが、どのあたりから人気が出たのか調べてみた。といっても正確なことはよくわからないのだが、テレビに限っていえば62年のドラマ「大番」ではないかと思われる。もちろんこれ以前から「夢であいましょう」や「若い季節」などの人気番組に出ていたし、主演ドラマもあったのだが、渥美が主役でドラマ自体が人気を博したということになれば「大番」ということになりそうである。この直前の主演ドラマである「マラソン人生」など知っている人は余程の渥美マニアであろう。しかし世間的には「大番」といえば加東大介主演の映画を思い浮かべる人の方が多いかもしれない。ネットで調べても出てくるのはほとんど映画のほうなのである。もちろん原作は同じ(獅子文六)で、人気映画のテレビ版(四年ほど経過していたが)なのである。共演は水谷良重、西村晃、八千草薫、松村達雄、森光子など蒼々たるメンバーが並んでいる。
ところで「大番」とは、辞書的な意味では、江戸幕府の組織のひとつ。大番組、大番役の略としかでていない。もちろん、本作は江戸時代の話ではなく、相場師の話である。つまりタイトルは日本語的には正しくないといえる。どうでもいい話だけれども。
大いなる驀進
鉄道映画をもう1本、前項の「大いなる旅路」と同じ60年の「大いなる驀進」である。タイトルも似ており、やはり「協力・日本国有鉄道」だが、内容は全然違う。「旅路」は大河ドラマだったが、こちらは「特急さくら」の東京~長崎間での一日の出来事を描いている。主演は「旅路」では若くして死ぬ役だった中村嘉津雄、そして引き続き三国連太郎、女優陣は佐久間良子、中原ひとみ、久保菜穂子と豪華である。中村、中原、そして三国は「さくら」の乗務員、佐久間は中村の恋人という役柄だ。他には月光仮面こと大村文武、七色仮面こと波島進、曽根晴美、小宮光江、ベテラン勢は花沢徳衛、小沢栄太郎、上田吉二郎といったところである。波島と曽根はともに殺し屋、大村は上田の秘書と、曽根は普通だが大村や波島はあまりない役柄であろう。
一晩の話だが、前述のとおり殺し屋が乗り込んだり、客が自殺を図ったり、台風で崖崩れに出くわしたりと色んな事件がおこる。まあそうしないと話が進まないので当然だが。ちなみに脚本は「大いなる旅路」もそうだが、新藤兼人が担当している。「95歳の現役映画監督」だが、監督作より脚本作の方が数 が多い(元々脚本家としてデビューしている)。
ちなみにブルートレインは58年が最初らしいので、まだ誕生したばかりの頃である。ちなみに本作の「さくら」はつい最近05年まで運行していたそうだ。まあ自分はブルートレイン自体乗ったことないけれども。
大いなる旅路
昨日書き忘れたが、10月14日は「鉄道の日」なんだそうである。何故、東映チャンネルで前項の「喜劇急行列車」など鉄道を題材にした映画を延々やっていたのか理解できた。今回も昨日放送された中から「大いなる旅路」(60年)を取り上げてみる。例の東映の三角マークの前に「協力・日本国有鉄道」の文字が出る。すでに懐かしさを感じる名前である。大正末期から戦後そして現代(もちろん当時のこと)まで、機関士一家を描いた大河ドラマである。主演は三国連太郎を初めとして中々豪華なキャスト陣である。三国の妻に風見章子、三人の息子役に南廣、高倉健、中村嘉津雄、娘に小宮光江、他に梅宮辰夫、星美智子、八代万智子、ベテラン勢では加藤嘉、東野英治郎、花沢徳衛、河野秋武、神田隆といったところである。
しかし三国連太郎、当時37歳であり、長男役の南廣は32歳と実は5歳しか違わないのだ 。ちなみに高倉は29歳、中村は22歳であった。三国は当時から今と変わらない貫禄があったのである。物語の後半は老けメイクで登場するのだが、まさしく今現在の三国という感じである。
雪中での機関車転落シーンとか本物を使っており、中々気合の入った作品である。パニック映画ではないのだから別に本物を使わんでもと思うのだが、やはり模型ではチャチだし。やはりこういう映画ではSLが一番絵になるのである。
喜劇急行列車
そろそろ千葉兄弟から話題をチェンジしたいと思う。
というわけで「喜劇急行列車」(67年)というタイトルから、どこが制作した映画だと思われるであろうか。たいていの人は「駅前シリーズ」や「社長シリーズ」の東宝を想像するのではないだろうか。しかし、この映画の主演が渥美清と聞くとじゃあ松竹かなと思うかもしれないが、これは東映の作品である。
この時、東映でも喜劇を制作しようと東宝から引き抜く形で主演スターとして迎えたのが渥美清であった(これ以前にも数本の東映作品に出演している)。その第一弾が本作なのだが、他の出演者も小沢昭一、西村晃、左卜全、Wけんじ、楠トシエなどパッと見て東映っぽくない名が並んでいる。ヒロイン役の佐久間良子こそ東映ニューフェース出身だが、この人も東映のイメージが薄い気がする。他にも大原麗子、岡崎二朗なども出演している。
翌年までに渥美主演の喜劇が5,6本制作されたのだがどれもあたらず、やはり東映では喜劇はだめだと社長の岡田茂が頭を下げて身を引いてもらったという。東宝に戻ろうとした渥美に岡田は「松竹の方が合っていると思いますよ」と助言したという(松竹ではすでに渥美の主演作があった)。「男はつらいよ」シリーズがスタートするのは69年のことである。まあ慣れないことはするもんじゃないということであろう。
アクマイザー3
千葉治郎が次に主演となったのが、またしても石ノ森章太郎原作の特撮ドラマ「アクマイザー3」(75年)である。しかし正確には、主役はザビタン、イビル、ガブラのアクマイザー3である。しかし着ぐるみなので、やはり彼らをサポートする約である千葉治郎が主演扱いとなる。またしても治郎は自らは変身しない役なのだが、ザピタンは人間の姿に変身する能力があり当初は治郎の姿になっていた。しかし途中から滝沢双の姿になる。この滝沢双という役者は今回、名前すら初めて聞いた。どうやら70年代中盤のみ活動していた役者のようだ。
正直このドラマ、当時は一度も見ておらず、CSで現在放映中なのを何度か見た程度である。役者の顔が見えないアクマ族中心のドラマということもあり、あまり興味が持てないということもあるが、本放送時に見ていないのは中学生になったからである。中学生は急に大人振りたくなる時期なので、「こんなのガキの見るものだ」とアニメや特撮物をあまり見なくなったと記憶している。
実質主役のザビタンの声は井上真樹夫で、巨人の星の花形やルパン三世の五右衛門が有名だ。ガブラは同じく巨人の星・伴宙太が有名な八奈見乗児、イビル役は矢田耕司だが、この人はこれといって思い浮かぶキャラがない。巨人の星では堀内の役だったようだ。個人的には山田俊司(現・キートン山田)と声も名前も似ていると感じていた。自分は当時から声優にも興味を持っていたのである。
内容にはほとんど触れなかったが、前述のとおり現在CSで放送中なので、見れる人は見てみよう。面白いかどうかは保証しないけれども。
ロボット刑事
千葉治郎が発の主演ドラマとなるのが「ロボット刑事」(73年)である。いや、正確には主役ではないのだが、主役はロボット(の着ぐるみ)であるため、顔出しではその同僚刑事である彼が主演ということになる。千葉治郎という人はいろいろな特撮ドラマに出演しているが、一度も自分では変身していないのである。いつもヒーローのサポート役である。宮内洋(仮面ライダーV3、怪傑ズバット)や伴大介(キカイダー、イナズマン)、誠直也(アカレンジャー、ファイヤーマン)のように複数のヒーローを演じた例もあるが、千葉治郎はサポート役が似合っていたということであろうか。本作の第1、2話のゲストは千葉真一で、テレビではこれが初の本格的共演ということになると思われる。しかも治郎演じる新條刑事の兄(元刑事の私立探偵)という役柄であった。
「ロボット刑事」というと、どうしても映画「ロボコップ」を思い出すが、もちろん「ロボット刑事」のほうが先である。まあロボコップは元は人間(瀕死の警察官)だが、こちらは完全なロボットである。他の出演者はベテラン芝刑事役に高品格。「大都会」シリーズの丸山刑事が印象深いが、そのルーツといえる。日活時代は悪役であったが、一般的にはベテラン刑事としてのイメージのほうが強いであろう。その娘役で紅景子と加賀由美子、コメディリーフの地獄耳平に三上左京などである。ゲストとしては23話に黒部進(ウルトラマン)、24話に山口暁(ライダーマン)、25話に成川哲夫(スペクトルマン)と3週連続でかつてのヒーロー役者が登場している。
ちなみにロボット刑事Kの声を演じるのは仲村秀生。「あしたのジョー」の力石や「宇宙戦艦ヤマト」の島などが有名である。敵ロボットはコシカケマン、ロッカーマン、コワシマンなどみんなマンがつく。演じるのは肝付兼太(ドラえもんのスネ夫)、立壁和也(ドラえもんのジャイアン)、八奈見乗児(巨人の星の伴宙太)、兼本新吾(巨人の星の左門)、大竹宏(パーマン2号)などかなり有名どころが多い。しかし何故かこの番組のOPクレジットの敵ロボット声優は間違っていることが多い(というかほとんど違うらしい)。たとえば第1話のワッカマンは矢田耕司となっているが実際は八奈見乗児だったりする。もちろんその原因などわかる術もないが、前述のとおり有名な「声」ばかりなので、実際は誰なのかをあてるのも面白いのではないだろうか。まあネットを探ればすぐに「正解」は見つかるのだけれども。
千葉治郎クロニクル
千葉真一の実弟といえば千葉治郎である。実は五人兄弟で残りの三人は女性だそうだ。二人の年齢差は丁度10歳である。途中で矢吹二朗に名前を変えるのだが、個人的にはしっくりこないので、ここでは千葉治郎にする。この人は意外と活動期間が短く、69年のデビューで82年には引退してしまったので13年ほどということになる。矢吹二朗に改名したのは76年、つまり千葉治郎としての活動期間は7年程度しかなかったのである。子供の頃さんざん見た顔なのでもっと長く活躍していた印象がある。
69年に「ブラック・チェンバー」でデビューして、「特命捜査室」「新平四郎危機一発」「ゴールド・アイ」といったアクションドラマに立て続けに出演(いずれもこのブログで取り上げているので探してみよう)しているが、やはりその名が知れ渡ったのは「仮面ライダー」(71年)の滝和也役であろう。それ以降、特撮物の多く出演しているので、特撮俳優のイメージが強い。千葉真一との共演は結構多いのだが、最初の共演はおそらく真一主演の映画「やくざ刑事・マリファナ密売組織」(70年)ということになると思う。しかし、治郎はデビューしてまもない頃に「キイハンター」に出演しているのである。真一がそのキイハンターの撮影で骨折し、車椅子で活躍する回があるのだが、その際に車椅子シーン以外を吹き替えを担当したのが治郎で、この時すでに「共演」していたといえる。
76年に改名し、JACを抜けたのは(移籍先は丹波プロ)、兄離れ的な意味があったと思うが、それ以降パッしなかったイメージがある。そのままJACに居れば、もう少し長く役者を続けていたのではないだろうか、と勝手に思ったりするのである。
黄色い風土
今、千葉真一関係でこのブログは進んでいるが、珍しくリクエストを頂いた。というわけで今回は「黄色い風土」(65年)である。松本清張原作のサスペンスである。そのOPのみ見たことがあるが中身は見たことがない。幸い?というかこのドラマにも千葉真一は出演しているのである。おそらくゲストだと思われる。
「黄色い風土」と聞いて自分はこちらのドラマしか思い浮かばなかったのだが、実は映画版もあったのである。61年ニュー東映の制作で主演は鶴田浩二、他に丹波哲郎、佐久間良子、柳永二郎、曽根晴美などが出演している。こちらのドラマ版も同じ東映の制作だが、映画で鶴田浩二のやった主人公を演じるのがなんと西沢利明である。当時、東映でこの手のドラマの主役といえば、天知茂か高城丈二かというのが相場だったが、西沢は29歳とはいえ、まだ無名の新人という感じだったと思われる。異例の大抜擢という感じだが、後にも先にも西沢の主演連続ドラマはこれ1本である(単発ドラマには主演作がある)。だいたいこの人は名前は知らないけど顔は知っているというタイプの役者であろう。主に知的な悪役として「キイハンター」「ガードマン」「太陽にほえろ」など、制作会社問わずに何度もゲストで出演している。他の出演者は磯村みどり、仲谷昇、千秋実、名古屋章、富士真奈美、岸田今日子、大辻伺郎など渋い面々が並んでいる。
まあ原作の小説も読んだことはないが、西沢扮する週刊誌記者が貨幣偽造団に単身で挑む姿を描くというストーリーのようだ。60年代の記者はスーパーヒーローといえる活躍をするのである。