お宝映画・番組私的見聞録 -215ページ目

続 新日本珍道中・東日本の巻

前項の続きである。西日本の巻とくれば、当然東日本の巻なのである。好評だった前作から4ヶ月後に公開されたのが「続 新日本珍道中・東日本の巻」(58年)である。前作のメンバーが今度は北海道、東北を訪れるのだが、役柄は前作とはみんな異なっており、宇津井健はメインをはずれ顔見せ的な出演になり、高島忠夫、由利徹、坊屋三郎、並木一路といった面々が旅をするようだ。女優陣は前作同様の久保菜穂子、高倉みゆき、三ツ矢歌子、万里昌代、大空真弓らに池内淳子も登場する。この中では大空真弓が北海道らしくアイヌの娘役で、名前はピリカ(アイヌ語で美しいという意味)だそうだ。

前作のような新東宝オールスターとまではいかないのだが、その代わりかどうか知らんが、何故か佐原健二、水野久美、船戸順といった東宝のメンバーが姿を見せる。それともう一人、鈴木伝明という戦前に活躍した役者がワンシーンだけ登場するのだが、これが10年ぶりの映画出演にして最後の映画出演となったらしい。当時、鈴木は参院選に二度出馬し、二度とも落選していた。何故この喜劇映画に登場することになったのか、その経緯は謎である。

新日本珍道中・西日本の巻

高島忠夫と宇津井健の坊ちゃんシリーズで主演の二人が(宇津井は一作だけだが)ダブル主演したのが、新東宝創立十周年記念超大作「新日本珍道中・西日本の巻」(58年)である。これは新聞記者の高島と宇津井が表日本組と裏日本組に分かれて、鹿児島から東京まで車で競争しながら、それぞれの土地を紹介していくというもの。表日本を近江俊郎が裏日本を曲谷守平がそれぞれ監督し、脚本は近江、曲谷、そしてスヌーこと川内康範(分かる人には分かるネタ)が担当している。ちなみに現在、裏日本という言葉は差別であると言われるので使わない方がよいと思う。

これを企画した「新東洋タイムス」の社長に由利徹、高島の相棒に坊屋三郎、宇津井の相棒に鮎川浩、社長秘書に大空真弓、三ツ矢歌子、あとはまあチョイ役だが、そこは十周年記念超大作、豪華なメンバーが顔を揃えている。当時のプレスシートに名が載っているのが嵐寛寿郎、中山昭二、東宝から三木のり平と柳家金語楼、女優陣は久保菜穂子、高倉みゆき、宇治みさ子、日比野恵子など。名は載っていないがアップになっているのが三原葉子、他にも万里昌代、小畠絹子、魚住純子、北沢典子といった新東宝お馴染みのメンバー、加えて天知茂が旅館の番頭で、若山富三郎は飛行機の乗客として顔を見せるそうだ。特にストーリーらしいストーリーはないのだが、好評だったらしく直ぐに続編が制作されるのであった。

坊ちゃんの特ダネ記者

近江俊郎の「坊ちゃんシリーズ」は全8作あり、主演は高島忠夫なのだが、何故か2作目の「坊ちゃんの特ダネ記者」(57年)だけは宇津井健が主演である。まあストーリー自体は宇津井扮する新聞記者が女優殺しを追って奔走し、事件を解決に導くというもので、まあ宇津井らしいといえば宇津井らしい。しかし、これは「坊ちゃんシリーズ」でなくてもよい気がするし、何よりも宇津井に「坊ちゃん」のキーワードは似合わないし、コメディ映画では浮いてしまうかも。近江も違和感を感じたのかどうかは知らんが、以後は高島に戻っている。加えて、この直後にあの「スーパージャイアンツシリーズ」が始まり、宇津井は正義のヒーローになってしまい、別路線を進んでいってしまったことも関係しているかもしれない。近江が新東宝で監督した作品は20数本あるが、宇津井が出演しているのは3本くらいしかない。まあ近江作品には宇津井だけでなく、丹波哲郎、天知茂、沼田曜一、御木本伸介あたりも出てこないのだが。

さて本作のヒロイン役は久保菜穂子、他に三ツ矢歌子、角梨枝子、藤間紫、喜劇陣は古川録波、坊屋三郎、コロムビアトップ・ライト、そして特別出演に柳家金語楼といった面々である。こういったメンバーに囲まれる宇津井は別の意味で面白いかもしれない。

坊ちゃんの野球王

高島忠夫の新東宝時代の人気シリーズといえば、「坊ちゃん」シリーズである。全部で8作あるのだが、現在こちらは野球シリーズが進行中なので、その中から第5弾「坊ちゃんの野球王」(58年)を取り上げてみる。

このシリーズの監督は全て近江俊郎である。ちなみに原作も近江で、他に脚色、制作も担当している。音楽を担当することもあり、近江が監督した作品は基本的に一人4役5役をこなしている。以前どこかで書いたが、近江俊郎は新東宝社長大蔵貢の実弟である。歌手としてなら知っている人も多いと思うが、55年に監督デビューし、大蔵が新東宝社長に就任すると、ここぞとばかり新東宝で映画を撮とりまくっていたのである。

さて本作だが、前項と一緒で高島は大学の野球部員である。その父役に古川録波、妹に大空真弓、ヒロイン役となるのは三ツ矢歌子、その父役に由利徹、ライバル役には高島と新東宝スターレット同期(1期生)の松本朝夫、他にトニー谷、藤村有弘、南利明の喜劇陣、野球部員として「遊星王子」の三村俊夫(現・村上不二夫)、平凡太郎などが出ている。ラストはやはり高島のサヨナラホームラン。三ツ矢との婚約、そして巨人軍への入団が決まり、めでたしめでたしという作品である。

女大学野球狂時代

50年代のタイトルに「野球」が付く映画はまだまだある。新東宝の「女大学野球狂時代」(56年)もその中の一つだが、「女競輪王」とか「女真珠王の復讐」とか「女○○」というのは当時の新東宝映画にはよくあるパターンであった。本作だが女大学というから女子大のことかといえばそうではなく、女子が野球の試合に出るというわけでもなさそう(未見なのであらすじから判断)。当時はまだまだ人気のあった大学野球が舞台で、主演は高島忠夫、久保菜穂子。当時のポスターのコピー文には「カーブで無らしてシュートで攻めてハートに恋のストレート!応援団対学生女房」とある。これだと主演の高島と久保が夫婦関係にあるように思ってしまうが、彼らは幼なじみで、学生結婚したのは別の部員(永野喜也、茂呂由紀子=後の北沢典子)のようだ。彼が退部させられたことをきっかけに応援団長(舟橋元)と女子学生たち(久保菜穂子、三ツ矢歌子、江畑洵子)が対立したりする。しかし、ポスターのキャッチコピーは「応援団長は学生女房!爆笑の恋愛ホームラン」とあり、同じポスターでコピー文の「応援団対学生女房」と矛盾しているし、前述のとおり久保菜穂子は高島忠夫の女房ではないはずなのだが、結局よくわからんのである。

他の出演者は細川俊夫、池内淳子、如月寛多、坊屋三郎などである。本作の主要メンバーは翌年の「角帽と女子大三人娘」にも揃って出演しており、「角帽」は当然高島忠夫だが、「三人娘」は久保菜穂子、三ツ矢歌子、そして江畑洵子ではなく池内淳子のことである(江畑も出演している)。

恋の野球拳 こういう具合にしやしゃんせ

三つほど本人登場の野球映画を紹介したが、もちろん本物が登場しない野球映画も沢山あり、特に50年代に多いようだ。でタイトルからチョイスしたのが「恋の野球拳 こういう具合にしやしゃんせ」(56年)である。野球拳というと、どうしても我が世代にはコント55号の「裏番組をぶっ飛ばせ」を思い出してしまう。ジャンケンで負けた女性タレントが一枚づつ服を脱いでいき、それを観客がオークション形式でセリ落とすという、悪評高いナイスな番組であったが、元々野球拳は愛媛県松山に伝わる宴会芸で、もちろん服を脱いだりするものではなかったようだ。

じゃあ本作は野球映画ではないのではと思うかもしれないが、ちゃんと野球で試合をするシーンはあるようだ。主演は船越英二、その父親に潮万太郎。リアルでは弓恵子、柴田昌宏、柴田侊彦という俳優兄弟の父親である。他に川崎敬三、伏見和子、岡村文子、ヒロイン役は新人の穂高のり子で、女優陣については正直よく知らない。あと中条静夫がひっそりと魚屋役で出ているらしい。

主題歌の「恋の野球拳」を歌うのは楠トシエ、CMソングの女王と言われるが、個人的には「おはよう子供ショー」にでているおば、いやお姉さんの印象が強い。あらすじなどを見た限りでは、野球拳が中心なのか野球が中心なのかよくわからないのだが、結局のところ青春恋愛映画といったところだろう。


川上哲治物語・背番号16

長嶋茂雄、稲尾和久とくればこの作品も取り上げねばなるまい。野球選手本人主演映画「川上哲治物語・背番号16」(57年)である。長嶋や王が現れる前の巨人のヒーローといえば「打撃の神様」こと川上哲治ではないだろうか。これは日活の作品で、川上の少年時代を信田義弘、青年時代、つまり戦前の川上は牧真介が演じている。牧真介は日活ニューフェースの1期生だが、わずか五年ほどで引退しており、私もその動く姿を見た記憶はない。戦後の川上は本人が演じるらしいが、ほとんど頷くだけでセリフはほとんどないそうである(やはりヘタなのだろうか)。本作で事実上の主演は牧のようである。

川上の妻役には新珠三千代、両親に河野秋武、高野由美、他に美川洋一郎、ニューフェース2期生の葉山良二などが出ている。本作では川上以外の選手は俳優たちが演じており、当時の藤本監督役に二本柳寛、川上と同期の捕手・吉原は牧とニューフェース同期生の宍戸錠が演じている。宍戸錠が豊頬手術をした姿はこの作品からである。一般にはアクの強い役をやるため自ら豊頬手術をうけたということになっているが、本作で捕手役を演じるにあたり太ってみえるように手術を受けたという説もある(しかもすぐに取り出すつもりだったらしい)。その後の活躍を考えると手術は成功だったといえよう。それともう一人、ニュフェース3期生である小林旭も本作に出演しているのだが、前々項にも登場したチームメイトの武宮の役だという話とノンクレジットのエキストラだという話がある。いずれにしろチョイ役のようだが、どっちが正しいのだろうか。

川上哲治、当時37歳。現役を退くのはこの翌年である。しかし個人的な興味はやはり、まだ売れっ子になる前の宍戸錠や小林旭の姿が見れることである。

鉄腕投手・稲尾物語

映画化された野球選手は長嶋茂雄だけではない。先日亡くなった西鉄ライオンズの稲尾和久を描いた「鉄腕投手・稲尾物語」(59年)も本人主演の作品である。稲尾が映画にまでなったのは、やはりこの前年58年に巨人との日本シリーズにおいて西鉄3連敗の後、稲尾の4連投で4連勝して西鉄の逆転優勝。第5戦ではサヨナラホームランまで放ち、「神様仏様稲尾様」とまで言われたからである。調べてみると7戦のうち5試合に先発し4試合で完投、リリーフの第5戦も7回を投げきっている。西鉄は稲尾しか投手がいないのか状態で(ちなみに巨人は藤田、堀内、大友など)、ローティーションが確立されている現在では考えられない使われようであった。

さて東宝で制作された映画の方だが、稲尾和久はもちろん本人が、両親役には志村喬と浪花千栄子が、兄弟たちは(稲尾は七人兄弟)、堺左千夫、山本廉、東郷晴子などが演じている。稲尾の友人役に「若大将シリーズ」の常連だった江原達怡、他にも白川由美、藤原釜足などが出ている。もちろん三原脩監督はじめ、中西太、豊田泰光、大下弘、関口清治、仰木彬といった西鉄の選手たち、何故か解説者の小西得郎なども登場する。

九州地方では稲尾が亡くなったのをうけ、本作が追悼上映されているようだ。ライオンズも今や西武となり所沢の球団となり、代わりにライバルだった南海がソフトバンクとなり福岡の球団となっている。ちなみに稲尾の背番号24は72年に永久欠番になったそうだが、翌73年に西鉄が太平洋クラブに身売りしたため、失効されたということだ(中西の6も同様)。その後、秋山とか平野とかブコビッチとか投手ではない選手がつけることが多いようだ。永久欠番くらい継承しろよと西鉄ファンだった人たちは思ったのではないだろうか。とにかく合掌。

ミスタージャイアンツ・勝利の旗

突然だが野球である。昔はプロ野球選手本人が出演した映画というのが、結構あったりした。その代表格といえる作品が東宝の「ミスタージャイアンツ・勝利の旗」(64年)である。タイトルからわかると思うが、主役は読売巨人軍・長嶋茂雄である。単なるドキュメンタリー映画ではなく、ちゃんと長嶋が演技をする俳優・長嶋茂雄が見られる貴重な作品なのである。長嶋に他にクレジットされているのが王貞治、広岡達郎、藤田元司、国松彰、柴田勲といった当時のスター選手(国松は地味だが)、そして監督の川上哲治、何故か鬼寮長こと武宮敏明(当時はコーチ)などである。彼らもちゃんと演技をする。川上はちょっと棒読みっぽいが、他は思ったよりは自然で、特に藤田はセリフも多い。王がリポビタンDを飲むお約束もあるし、川上の背番号がまだ現役時代と同じ16だったりする(65年より77)。

もちろん本職の役者も巨人番記者フランキー堺、巨人狂のタクシー運転手伴淳三郎を中心に、大空真弓(伴淳の娘)、佐原健二(長嶋と同期の野球選手)、事件記者でお馴染みの清村耕次(やはり新聞記者)、淡島千景、船戸順、千石規子、天津敏(刑事)などが出ている。本作には特別出演として新珠三千代、淡路恵子、アイ・ジョージ、池内淳子、伊藤久哉、伊東ゆかり、魚住純子、香川京子、加東大介、草笛光子、桜井浩子、宝田明、仲代達矢、西村晃、舟木一夫、三木のり平、八代万智子、柳永二郎らがクレジットされている。だいたいがチョイ役だが、宝田や草笛のように本人の役で出ている人もいる。しかし特別出演とそうでない人の違いがよくわからない。それにこういっては失礼だが、伊藤久哉(東宝のバイブレイヤー)、魚住純子(新東宝出身)、桜井浩子(ほとんど新人)、八代万智子(東映作品以外で見るのは珍しい)などは通常特別出演扱いにはまずならない人たちである。長嶋(巨人)ファンなのでノーギャラ出演とかであろうか。この辺の事情は不明である。

ちなみに、この作品が公開された64年巨人は3位であった。しかし翌65年からあのV9を達成するのである。

煙の王様(映画版)

前項の「煙の王様」には、翌63年に公開された映画版も存在する。人気テレビドラマが映画化されるのは珍しいことではないが、単発ドラマの映画化というのは稀有なのではないだろうか。テレビ版は出演者もスタッフも東宝系の人間が多いが、映画の方は日活で制作されている。当然、出演者も変更されているのだが、主役の少年を演じた市川好郎のみ、そのまま出演している。なにしろ市川はこの前年である62年の日活作品、吉永小百合主演の「キューポラのある街」でその弟を好演した実績がある。本作が映画化されることになったのは、芸術祭賞を受賞したということもあろうが、市川好郎の存在が大きかったのではないだろうか。

他の出演者は、まず浜田光夫。主役扱いになっているのは彼である。テレビ版では佐々木功が演じた役柄(市川の兄)である。そして十朱幸代、杉山俊夫、奈良岡朋子、殿山泰司、小沢栄太郎、小沢昭一、梅野泰靖などである。ちなもに浜田、殿山、小沢昭一、そしてテレビ版の母親役の菅井きんは「キューポラのある街」にも出演している。

ところで本作に関してはやはりテレビ版の方が有名であろう。映画の方は見たことがないので比べようはないが、たいていの場合オリジナルのほうが勝っているものである。