鉄腕投手・稲尾物語 | お宝映画・番組私的見聞録

鉄腕投手・稲尾物語

映画化された野球選手は長嶋茂雄だけではない。先日亡くなった西鉄ライオンズの稲尾和久を描いた「鉄腕投手・稲尾物語」(59年)も本人主演の作品である。稲尾が映画にまでなったのは、やはりこの前年58年に巨人との日本シリーズにおいて西鉄3連敗の後、稲尾の4連投で4連勝して西鉄の逆転優勝。第5戦ではサヨナラホームランまで放ち、「神様仏様稲尾様」とまで言われたからである。調べてみると7戦のうち5試合に先発し4試合で完投、リリーフの第5戦も7回を投げきっている。西鉄は稲尾しか投手がいないのか状態で(ちなみに巨人は藤田、堀内、大友など)、ローティーションが確立されている現在では考えられない使われようであった。

さて東宝で制作された映画の方だが、稲尾和久はもちろん本人が、両親役には志村喬と浪花千栄子が、兄弟たちは(稲尾は七人兄弟)、堺左千夫、山本廉、東郷晴子などが演じている。稲尾の友人役に「若大将シリーズ」の常連だった江原達怡、他にも白川由美、藤原釜足などが出ている。もちろん三原脩監督はじめ、中西太、豊田泰光、大下弘、関口清治、仰木彬といった西鉄の選手たち、何故か解説者の小西得郎なども登場する。

九州地方では稲尾が亡くなったのをうけ、本作が追悼上映されているようだ。ライオンズも今や西武となり所沢の球団となり、代わりにライバルだった南海がソフトバンクとなり福岡の球団となっている。ちなみに稲尾の背番号24は72年に永久欠番になったそうだが、翌73年に西鉄が太平洋クラブに身売りしたため、失効されたということだ(中西の6も同様)。その後、秋山とか平野とかブコビッチとか投手ではない選手がつけることが多いようだ。永久欠番くらい継承しろよと西鉄ファンだった人たちは思ったのではないだろうか。とにかく合掌。