川上哲治物語・背番号16 | お宝映画・番組私的見聞録

川上哲治物語・背番号16

長嶋茂雄、稲尾和久とくればこの作品も取り上げねばなるまい。野球選手本人主演映画「川上哲治物語・背番号16」(57年)である。長嶋や王が現れる前の巨人のヒーローといえば「打撃の神様」こと川上哲治ではないだろうか。これは日活の作品で、川上の少年時代を信田義弘、青年時代、つまり戦前の川上は牧真介が演じている。牧真介は日活ニューフェースの1期生だが、わずか五年ほどで引退しており、私もその動く姿を見た記憶はない。戦後の川上は本人が演じるらしいが、ほとんど頷くだけでセリフはほとんどないそうである(やはりヘタなのだろうか)。本作で事実上の主演は牧のようである。

川上の妻役には新珠三千代、両親に河野秋武、高野由美、他に美川洋一郎、ニューフェース2期生の葉山良二などが出ている。本作では川上以外の選手は俳優たちが演じており、当時の藤本監督役に二本柳寛、川上と同期の捕手・吉原は牧とニューフェース同期生の宍戸錠が演じている。宍戸錠が豊頬手術をした姿はこの作品からである。一般にはアクの強い役をやるため自ら豊頬手術をうけたということになっているが、本作で捕手役を演じるにあたり太ってみえるように手術を受けたという説もある(しかもすぐに取り出すつもりだったらしい)。その後の活躍を考えると手術は成功だったといえよう。それともう一人、ニュフェース3期生である小林旭も本作に出演しているのだが、前々項にも登場したチームメイトの武宮の役だという話とノンクレジットのエキストラだという話がある。いずれにしろチョイ役のようだが、どっちが正しいのだろうか。

川上哲治、当時37歳。現役を退くのはこの翌年である。しかし個人的な興味はやはり、まだ売れっ子になる前の宍戸錠や小林旭の姿が見れることである。