お宝映画・番組私的見聞録 -182ページ目

「××社員遊侠伝」シリーズ

前項の「昭和元禄ハレンチ節」の直前に「悪党社員遊侠伝」(68年)という作品があるが、これは主演が牧伸二で、他の出演者も「ハレンチ節」と似たような感じである。この68年には「まっぴら社員遊侠伝」、「極道社員遊侠伝」という作品もあり、そして翌69年には「猛烈社員スリゴマ忍法」があり、いずれも主演は同じ牧であり、サラリーマン喜劇ということでシリーズ作品ということになっているようだ。タイトルが微妙に違うので、名前がつけにくいが、一番多い「社員遊侠伝」シリーズとここでは呼んでおこう。
シリーズ第1作となる「悪党社員遊侠伝」だが、タイトルだけ聞いても喜劇映画とは想像しづらい。まあ出演者を見れば、一目瞭然だが。舞台は不動産会社で、牧に加え、立川談志、なべおさみ、小野ヤスシらが“悪党社員”を演じている。他に香山美子、林家パー子、小山ルミ、ドンキーカルテットそしてコント55号など。
2作目が前項の「昭和元禄ハレンチ節」で、3作目が「まっぴら社員遊侠伝」である。舞台は下着メーカーで、牧、立川、なべに加えてジェリー藤尾が“まっぴら社員”を演じる。他に真理アンヌ、シリア・ポール、沢知美、そしてコント55号など。
4作目が「極道社員遊侠伝」で、舞台は警備会社、牧、立川、なべのトリオが“極道社員”ということになる。他に佐藤友美、小山ルミ、横山ノック、晴乃チック・タック、トリオ・スカイラインなど。
5作目が「猛烈社員スリゴマ忍法」で、若干テイストが異なるらしく牧と立川が出世をもくろむ話になっている。上司役で藤村有弘、財津一郎、由利徹、牟田悌三、ヒロイン役は生田悦子、他にナンセンストリオ(前田燐、江口章、岸野猛)、見た目がコント55号に似ているストレートコンビ(橋達也、花かおる)、ヒデとロザンナなどが顔を出している。
牧伸二、立川談志の他、財津一郎、藤村有弘はこの全作に顔を出している。立川は牧と同じ中学出身で2年後輩にあたるという。そして牧と財津、藤村は前項で触れた「昭和九年会」のメンバーである。
スタッフでは、長谷部利朗が2、3、4作目の監督、1作目の脚色、5作目の脚本とすべてにかかわっている。3作目の脚本は藤本義一が担当している。
丁度40年経過しているが、牧伸二、立川談志、小野ヤスシ、なべおさみ、財津一郎などみんな現役で頑張っている。

昭和元禄ハレンチ節 その2

「ケメ子の歌」のテープ早回しの元祖といえばフォーク・クルセダーズの「帰ってきたヨッパライ」。以前ここでも取り上げたはずだが、本人達が主演で、あの大島渚の監督で同名タイトルの映画にもなっている。で、そのフォークルが出演していた映画がもう一本だけある。それが「昭和元禄ハレンチ節」(68年)だ。実はこれも四年ほど前にここで取り上げたのだが、その辺はスルーで。まあ、どうしても内容は一部重複してしまうと思うが。
さて「昭和元禄ハレンチ節」だが、別に歌謡映画ではない。当時の人気お笑いタレント総出演の喜劇映画である。主演は牧伸二で、他には立川談志、コント55号、藤山寛美、ドンキー・カルテット(小野ヤスシ、ジャイアント吉田、猪熊虎五郎、祝勝)、トリオスカイライン(東八郎、小島三児、原田健二)、晴乃チック・タック(高松しげお)らに加え、財津一郎、藤村有弘、京唄子、石井均、伴淳三郎といった面々が顔をそろえている。ちなみに牧伸二、坂上二郎、財津一郎、藤村有弘は「昭和九年会」のメンバーでもある。
女性陣は小山ルミ、沢知美、松岡きっこ、久里千春などで、フォーク・クルセダーズの三人(北山修、加藤和彦、はしだのりひこ)は出番は短いが舞台となる製薬会社の新入社員という設定。この時点で解散直前だったようだが「紀元貮阡年」という曲を歌っている。
あと、ゲイバーのシーンがあり、そこで演奏しているのがダウン・ビーツというGS。個人的には全く知らないが、この年のデビューで当初は六人組でボーカルが女性(富永真知子)という構成。「素敵なタミー」という歌を出しているが、これ一曲で富永は脱退したため、この作品では男五人組で「愛のあらし」という曲を歌っているようだ。ちなみに、この後もう一曲だけ出して消えていったようである。
内容が面白いかどうかは別として(この時代の喜劇映画って高確率で面白くはないが)、その顔ぶれを楽しむ作品であろう。

恋人と呼んでみたい

前項でも触れたが、ザ・ジャイアンツは永井秀和のバックバンドとしてスカウトされたと書いたが、その永井が主役を演じているのが「恋人と呼んでみたい」(68年)である。
永井は67年にデビューした当時17歳の歌手で、見ためは江木俊夫と太田博之を合わせたような感じである。この永井が年齢とおり高校生役でバンドなんかを結成してしまう青春ドラマである。ちなみにタイトルの「恋人と呼んでみたい」は永井のヒット曲のタイトルでもある。
ヒロイン役は永井と同い年でやはりデビューまもない鮎川いずみ(当時いづみ)という日活作品では珍しいコンビである。実際、永井は日活唯一の主役で、鮎川も日活はこれ一本のようである。しかし、当時だとやはり芦川いづみとややこしかったのではないだろうか。
永井のライバル役が「少年ケニヤ」の山川ワタルで、他に長浜鉄平、浜村純、そして永井の実父である永井秀明や先生役で杉良太郎も出演している。登場人物の名前が宮本武(永井)とか佐々木二郎(山川)とか、宮本武蔵にかけていて杉良などはそのまんま沢庵先生である。
GSも登場しており、カーナビーツが「恋をしようよジェニー」を、前項の「ケメ子の歌」にも出演していたダイナマイツが「トンネル天国」を歌ったりしている。そして永井のバックバンドであるデビュー直後のジャイアンツも顔を見せている。歌手では当時のポスターにも大きく写っている佐良直美や、マヒナスターズとのデュエットでヒットを出していた田代美代子なども出ている。永井と佐良は、前年度のレコード大賞の新人賞を受賞したコンビでもある。
前項でも書いたとおり、永井秀和は大学進学のため歌手業は廃業して、復帰後は父親と同様に俳優として活動していくことになり、現在も活躍中である。鮎川いずみはご存知のとおり「必殺仕事人」シリーズなどで活躍することになる。いまだ現役のイメージがあったが、92年に俳優業は引退してしまったようである。
とまあ、杉良くらいしか日活の役者が出ていない作品で、おそらくソフト化もされていないはずである。

ケメ子の唄

ラトルズを取り上げたので、次はGS系かなと思ったが、過去に結構取り上げている。しかし改めて探してみると「ケメ子の唄」(68年)という作品があった。
「ケメ子の唄」は、当時大ヒットした曲のタイトルで、知っている人も多いと思う。テープの早回しを取り入れたフォーククルセダースの「帰ってきたヨッパライ」が大ヒットしたが、この曲でもその手法を取り入れている。
一般的に知られているのはザ・ダーツというGSが歌ったものだが、ザ・ジャイアンツというGSが歌ったものもある。ダーツ版は「ケメ子の歌」で、ジャイアンツ版は「ケメ子の唄」という風に「うた」という漢字が異なっており、ジャイアンツ版のジャケットには<本命盤>と謳われていた。松平ケメ子なる歌手も登場し、「ケメ子の唄」と「私がケメ子よ」というアンサーソングを出すくらいケメ子ブームだったのである。
本作はタイトルに「唄」という字が用いられているように、大ヒットしたダーツではなく、ジャイアンツのほうが出演しており、当然楽曲もこちらの方が使われている。ザ・ジャイアンツはこの前年のデビューした永井秀和(もちろん長井秀和ではない)のバックバンドとしてスカウトされたグループで、メンバーは鈴木晴夫、谷しげる、飯田久雄、原道雄の四人。永井秀和は悪役俳優として知られた永井秀明の息子で歌手業は早々と引退し、俳優として活躍することになる。
主演は小山ルミで、もちろんケメ子の役である。他には竹脇無我、谷幹一、根岸明美、テレビ版「神州天馬侠」の黒田賢、そして大映の川崎敬三が珍しく松竹作品に出演している。
歌は知られていても、この映画の存在はあまり知られていないと思う。ソフト化もされていないのかなと思ったら、かつてビデオ化はされていたようである。
しかしジャイアンツではなくダーツを起用したらどうだったであろうか。まあ、グループとしてはほぼ同時にレコードデビューし(ジャイアンツが1週間早い)、どちらも翌年の同時期に消えていったようである。
ところで、GSブームの終焉には謀略説があり、ブームを疎ましく思っていた連中がブーム潰すため、逆にあざといバンドを沢山デビューさせたのだという。このジャイアンツもそんなグループの1つだったという。

ラトルズ 4人もアイドル その2

前項の続きで「ラトルズ」である。しかし、公開当時は確か「ラットルズ」と表現されていたと思う。綴りがRUTLESなので、ラットルズと読みたくなるが、いつの間にかラトルズと表記されるようになっていた。ラットはネズミのことかと当時は思っていたが、それだとRATなので違う。
というわけで、当時の吹き替え版では一律にラットルズとなっている。こちらの出演は何といっても広川太一郎である。本家ビートルズ映画でもジョン役などを担当しているが、本作では進行レポーター兼ダーク(ポール)役のエリック・アイドルを担当しており、最初から最後まで、しゃべりまくっている。モンティパイソンでもエリック・アイドルは広川なので当然のキャストだろう。他にはナスティ(ジョン)を「マジンガーZ」の石丸博也、ナレーションにやはりモンティパイソンのペイリン役だった青野武などが出演していた。
とはいうものの、この日本語吹き替え版というのは今まで発売されたことはないようである。自分の見た動画は録音してあった音声を字幕つきの映像にかぶせたものらしい。そのため、広川が字幕と全然違うことを言っており、かなりアドリブでやっていたのがわかる。
曲に関してだが、ビートルズのパロディなので、似ているのは当たり前なのだが、それにしても出来がいい。「ヘルプ!」→「アウチ!」、「アイ・アム・ザ・ウォルラス」→「ピギー・イン・ザ・ミドル」、「ゲット・バック」→「ゲット・アップ・アンド・ゴー」なんかは聞いた瞬間に元曲がわかってしまうくらい似ているが、何曲かを合体させ元曲がすぐにはわからないのもある。作詞作曲はすべて、ナスティ役のニール・イネスが担当している。CDを入手したことがなく、その後楽曲を聞く機会もなかったので、記憶にあったのはタイトルが覚えやすい「アウチ!」と「ゲット・バック」によく似た曲(つまり「ゲット・アップ・アンド・ゴー」)くらいであった。なので実際、30年ぶりくらいに聞いたことになるはずである。
こういったパロディものは元を知らないと面白くないものだが、本作はビートルズを知らなくても大丈夫ではないだろうか。まあ楽曲は普通にいい曲だと感じてしまうと思うが。

ラトルズ 4人もアイドル

前回までと全く関係ない話題になるが、動画サイトというのは便利なもので、長年見れなかった画像にふと巡りあうことがある。約30年ぶりにお目にかかったのが「ラトルズ」である。
簡単にいえば、ラトルズとはビートルズのパロディグループ。元々はイギリスのテレビ番組の1コーナーから派生し、やがて評判を呼び78年に「ALL YOU NEED IS CASH」のタイトルでテレビ映画にまでなり、日本でも同年放映され、自分もその頃にたまたま見た記憶がある。日本版タイトルについては忘れたが、近年発売されていたDVDでは「ラトルズ 4人もアイドル」となっている。ビートルズについては、中学時代に聞き始め、高校の頃には結構詳しくなっていたので、ラトルズの徹底したマネっぷりには驚いたものだった。
メンバーをえんじるのがニール・イネス(ジョン・レノン=劇中ではナスティ)、エリック・アイドル(ポール・マッカートニー=劇中ではダーク)、リッキー・ファター(ジョージ・ハリスン=劇中ではスティッグ)、ジョン・ハルシー(リンゴ・スター=劇中ではバリー)。
監督と脚本を担当しているのがポール役のエリック・アイドルである。イギリスのコメディアンであの「モンティパイソン」のメンバーであり、本作ではレポーター役も兼ねている。他の三人はれっきとしたミュージシャンで、唄も演奏も行っているが、彼のみ口パクの弾きマネである。実際はオリー・ハルソールというミュージシャンがポールによく似た声で唄と演奏を担当している。ちなみに彼はポールと同じ左ききだそうである。
音楽担当つまりラトルズの楽曲を作ったのがジョン役のニール・イネスで、顔も歌声もジョンに結構似ていると思う。実際、本作で使用された「チーズ・アンド・オニオン」という曲が、ジョン・レノンの未発表曲とカン違いされたというようなエピソードがある(海賊版で発売されたらしい)。
ジョージ役のリッキー・ファターはインド系のイギリス人。何故インド系なのかといえば、ジョージが一時期インドにハマっていたから、ということのパロディだろう。ちなみに、劇中では演奏している時以外は一言もしゃべっていない。リンゴ役のジョン・ハルシーは背の低いオッサンである。
他の出演者では、エリックと同じ「モンティパイソン」のマイケル・ベイリン、ダン・エイクロイドやジョン・ベルーシといった有名コメディ役者、そしてローリング・ストーンズのミック・ジャガーやサイモンとガーファンクルのポール・サイモンが本人としてインタビューを受け、ラトルズについて真面目に語ったりしている。ミックの当時の妻ビアンカもポールことダークの嫁さん役で顔を見せている(この翌年離婚)。
ついには、本物のビートルズ、ジョージ・ハリスンまでレポーター役として登場している。指摘されないとなんとなく似ている人と思ってしまうかもしれない。とりあえず続く。

月曜日のユカ

谷隼人の本当のデビューは「少年ケニヤ」(61年)の原住民の少年タリタリ小僧だったことは、割合知られている。当時は中学生で、その出演の経緯はわからないけれども。この番組にはニューフェースになる前の藤江リカ(当時18歳)も原住民の少女ポンコという役で出演していた。そのため彼女は東映では「ポン子」と呼ばれていたらしい。
で、その二年後谷隼人こと岩谷肇少年は高校を中退し、日活ニューフェースとなったのだが、翌年にはやめてしまい、その二年後(66年)に東映にスカウトされるという、結構面倒くさいルートを歩んでいる。で、その日活時代の出演作品で割合有名なものといえば「月曜日のユカ」(64年)あたりであろうか。
主演は加賀まりこ(松竹)。なぜ他社の女優かといえば、基本的に清純派路線の日活には加賀のような小悪魔的で脱ぎっぷりのよい女優はいなかったからではないだろうか。その相手役は中尾彬。デビューは61年だが、元々美大の出身で絵画を勉強していたため、そちらもあきらめられず63年には仏留学してしまい映画には出演していない。そのような経緯もあり注目されたのは本作からのようである。他には加藤武、梅野泰靖、北林谷栄など。まあ加賀まりこの美しさを堪能する作品といえよう。
で谷隼人(岩谷肇)だが、名前はクレジットされているが、加賀まりことクラブで一緒に踊っている若者という役どころ。谷の他にもニューフェース同期の沖田駿一(吉田毅)も同様で、やはり同期の山本陽子なんかもクラブのホステスというチョイ役である。沖田駿一は日活時代は吉田毅、吉田武史、吉田昌史などを名乗っていた。チンピラや不良の役が多いが、有名なのは「ウルトラマンA」の山中隊員だろうか。谷や沖田と一緒に踊っている若者役には山本正明もいて、彼は後に「忍者部隊月光」の終盤に満月役でレギュラーとなる。その時の芸名は山本磯六(数年で元に戻す)であった。彼で有名なのはやはり「ウルトラマンA」の今野隊員(デブな人)であろうか。八年後にTACの隊員となる二人が妙なところで共演していたのである。

抜き射ち三四郎/抜き射ちの竜 拳銃の唄

赤木圭一郎の「拳銃無頼帖」シリーズは、城戸禮の「抜き撃ち三四郎」が原作であるが、日活には「抜き射ち三四郎」(62年)というタイトルの作品もある。こちらは城戸禮の原作というわけではないのがややこしい。「撃ち」ではなく「射ち」という字を使っている。映画のタイトルでは大抵「射ち」という字を使っているようだが、「撃ち」を使ってはいけないのだろうか。
主演は和田浩治で、役名は不二三四郎といい、拳銃使いの少年という無国籍映画ならではの設定である。実際に和田は当時18歳であった。秘密捜査官に葉山良二、仇役が田中明夫、山内明、郷鍈治など、そして笹森礼子、楠侑子、佐野浅夫、野呂圭介などが出演している。
「拳銃無頼帖」シリーズは61年に赤木圭一郎が事故死したので必然的に途絶えてしまったが、64年に「抜き射ちの竜 拳銃の唄」というリメイク作品が作られている。主役の壇竜四郎を演じるのは高橋英樹である。赤木が亡くなってまもなく日活に入社し、その死によって撮影がストップしていた「激流に生きる男」の主役に抜擢されているのが英樹である。
壇竜四郎という役名は「拳銃無頼帖」シリーズの三作目「不敵に笑う男」四作目「明日なき男」での、赤木の役名と一緒である。宍戸錠演じるコルトのジョーも登場し、高橋英樹で新たなシリーズ化を狙ったかどうかは不明だが、英樹の抜き射ちの竜はこれ一作のみである。既に「男の紋章」シリーズという任侠物の主演を得ていた英樹には銃よりもドスが似合っていたということだろうか。まあ事実、時代劇路線を歩むことになるのだが。
この作品には山本陽子、小高雄二、金子信雄、垂水悟郎、郷鍈治、そして英樹の弟分役で当時17歳の谷隼人(当時・岩谷肇)などが出ている。直ぐにやめてしまったが実は日活ニューフェース7期生(同期に山本陽子、西尾三枝子、沖田駿一など)だった谷隼人の、数少ない日活出演作品の1本である。

忍術三四郎

前々項で「地下鉄三四郎」などを取り上げたが、「三四郎」というタイトルのつく映画は結構多い。もちろん基本は「姿三四郎」だが、東映では55年に波島進がにこの役を演じているが、その同じ年やはり波島の主演で「忍術三四郎」という作品が公開されている。波島が演じるのは女々良三四郎。'めめら’と読むのだろうか。女良という苗字なら存在するようだが、女々良は現実にはなさそうである。
三四郎は結核を患う恋人の治療費のため、謎のユダ老人の実験台となり、彼によって透明化させられたりする。恋人一家が悪人たちにとらわれた際には、神通力を使って三四郎を助けたりする。とまあ、あらすじを見た限りでは、「忍術」を使うのは三四郎ではなくユダ老人のようである。ユダ老人を演じるのは薄田研二。演劇界の重鎮だが、50年代の東映時代劇では大抵悪役を演じていた人である。他の出演者は宇佐美諄(淳也)、三笠博子、浦里はるみ、上田吉二郎など。
荒唐無稽な話に思えるが、原作の関川周は戦前に直木賞候補になったこともある小説家である。
本作には山本麟一や杉義一も出演しているが、この前年までは波島とともに「学生五人男」シリーズをやっていた(五人男は波島、山本、杉、福岡正剛、船山汎)。山本は悪役としてそれなりの地位を築いていったが、杉はその他脇役という感じになっていったと思う。この「学生五人男」で「恋愛ジャズバンド」という話があり、楽器を買ったので、放っておくのは勿体無いということで、この山本、杉、福岡や「地獄大使」こと潮健児などで東映のアクターズバンドを組むことになったという。
潮健児は49年に設立された太泉映画に参加。この時、三橋達也も一緒で大部屋で通行人などをやっていたという。大木実も俳優ではなく照明係として在席していたらしい。翌50年にニューフェースが募集され、この時の合格者が波島進や、「特別機動捜査隊」で波島の相棒となる南川直、藤島班の一人である三島耕、そして波島の妻となる川口節子などである。そして51年、太泉映画は、東京映画配給、東横映画と合併し東映が誕生したので、太泉ニューフェースはこの1期しか存在しない。
潮健児の書によると、波島進はとにかくケチで、「特別機動捜査隊」の時ドブ川に十円を落としただけで、撮影を中断させ探させたという。部下役の轟謙二なんかも一緒に探していたらしい。またある時、波島が珍しく「うちに飲みにこい」と誘ったので、潮や杉義一が行ってみるとつまみとして出たのは豆腐二丁だけだったという。しかし、車はジャガーで、使うところには使っていたようだ。
波島は立石主任の降板とともに芸能界を引退し、実業家に転身したが健在なのだろうか。

喧嘩社員/無敵社員/げんこつ社員

前項で名前が出たついでに城戸禮という作家について多少調べてみたが、主に貸本小説の作家として活躍していた人のようである。亡くなって20年以上たっていることもあり、新刊書店ではまず彼の作品を発見することは困難だと思われる。勿論、私自身一冊も読んだことはない。興味のある人は古本屋などを探してみてはどうだろう。
ジャンル的にはアクション物が多いようだが、サラリーマン物というのもある。それでも、主人公の名前は竜崎三四郎であることが多いようだ。その中の「無敵喧嘩社員」を原作とした映画が「無敵社員」と「喧嘩社員」(57年)である。二本に分かれているが「喧嘩社員」は「無敵社員」の続編で、出演者やスタッフは同じである。
主演は高倉健、そして山本麟一。二人は慶早大学野球部のバッテリーで、プロの誘いを断ってサラリーマンになるという設定である。ちなみに主人公の名前は竜崎三四郎ではない(原作がどうかは不明だが)。高倉は東映ニューフェースの2期生で、山本は1期生だが、この二人は明治大学の先輩後輩でもある。年齢は6歳違うため、高倉が入学した頃には山本は卒業していたのだが、山本は有名人でその悪名は学内に響き渡っていたそうである。そういう縁もあっての共演だったようだ。出演は他に浦里はるみ、中原ひとみ、小宮光江、三條美紀に加え、神田隆、須藤健、花澤徳衛、佐原広二といった「警視庁物語」メンバーや、高倉とはニューフェースの同期生である今井健二や古賀京子、岡田敏子といったところも顔を見せている。
同じ東映では「げんこつ社員」(56年)も、城戸禮の原作である。こちらの出演は波島進、南原伸二(宏治)、三笠博子、高千穂ひづる、三條美紀など。本作ではライバル同士という役柄の波島と南原だが、55年の「まぼろし怪盗団」では私立探偵(もちろん波島)と怪盗(とうぜん南原)、本作直後の「少年探偵団」シリーズでは直接対決ではないが、明智小五郎(波島)と怪人二十面相(南原)を演じることになる。
話は戻るが、高倉健も60年代初めくらいまでは、サラリーマンコメディ物に結構出演していた。若い頃からストイックなイメージが定着しているが、この頃は毎日のように女郎屋通いしていたのだそうだ。