茶入のこと
先日の稽古でのことお弟子さんが本当に気に入って買った茶入の話になった少し時代のあるキリッとした形の茶入結構奮発して手に入れたものだろう茶入は茶道具の中でも特に次第で価値が大きく左右されるものなので物の良し悪しももちろんあるけれども同じような出来でも次第のあるなしでかなりの差がありますねなので茶道具の中でも一番と言ってもいいほど物本位ではないかもしれませんのような話をしたのですがどうも次第がない茶入は価値がないそんな受け取り方をされたのかもしれません私は茶道具は作が誰か、箱書はあるのか、伝来や所持はあるのか確かにその要素は大切ですが一番は物がいいと思えるかどうかだと思っていますなので次第がないからいい茶入が手に入ったと思っていますそんなことを思っていて思い出した一冊の本「目の力」大阪の茶道具商の親子が茶道具を見ながら話をしていく今では伝説の茶道具商 戸田鐘之助と博さん2004年発行なのでもう20年前になります今ではなかなか伺えない貴重な内容ですここに茶入のことも取り上げています「茶入は次第で買う」茶入の中には、たまには同じ寸法、同じ出来のものがあるんですよところが一方は大名物、もう一方は無冠というだけで価値が5倍も10倍も違ってくるんですそうなると見た目には変わらないですから、ちょっとこの値段の差はないんじゃないかと思いますよねとあります色々と具体的に茶入を取り上げて最後にはですから、茶入はモノ本位でないことが本当によくわかるでしょう要するに茶入の持っている美術品的価値とは別なものが茶入ではものすごく重要なんですとあります誰がどれだけの思いを込めて持っていたのかその物語も含めてその物の価値になるいかにも茶の湯らしい価値のつき方ですそれが付加価値なんですねしかし付加価値付きの茶入をもてない私にはモノがよく気持ちよく使える茶入があるだけで嬉しくなります生涯大切に使える、何度使っても飽きない茶入に出会う機会が多くやってくることを期待して目を肥やしていきます