つけ台で寿司を・・・ | 店舗探し.comの過去コラム

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2011/2/23

 

「私たちは生き残っていけるんでしょうか?」
 
家の近所にある寿司屋のおかみさんが、不安そうに呟きました。

先日放送された『ガイアの夜明け』で、宅配寿司トップの
「銀のさら」が駆使する解凍技術や、経費削減の仕組みの凄さ
を知って圧倒されてしまったようなのです。
 
寿司業界ではイノベーションが次々に起こって、目覚しい進歩を
遂げています。
 
なんとなく大切な来客に出すことが憚られていた宅配寿司も、
ポリの使い捨て容器ではなく、普通の寿司桶で提供するチェーン
が増えて、出前の寿司と見分けがつかなくなりました。
 
「回転寿司」は、もはや寿司屋の主役の座を占めていると言って
も過言ではありません。

明朗会計でお手ごろ価格を実現して、高級料理として庶民には
なかなか手の出なかった寿司を大衆化した功績は大きいでしょう。
今では世界中に広まり、日本を代表する文化として知られていま
す。
 
回転寿司における技術革新も、止まるところを知りません。
グラム数を指定されたシャリ玉は、機械で次々に生産され、アル
バイトの手によってネタが載せられ、握りが次々に完成していき
ます。


レーンに乗せるネタは、過去の売り上げ実績等からその数量が
コントロールされ、一定時間経過した皿は自動的にレーンから
除外されます。
 
一方、近所の寿司屋の主人が握る寿司の大きさはまちまちです。

お客様が男性か女性か、お腹がすいていそうかどうか、などを
見極めて、さりげなくネタとシャリの量を調節します。


相手の機嫌を推し量って明るい話題で盛り上げたり、おとなしく
黙っていたり。
お客様の好みや懐具合までもを気遣いながら、最適なネタを提供
します。


少々財布には響きますが、たまにはつけ台に座って、そんな阿吽
の呼吸を味わいたいものです。
 
寿司、歌舞伎、大相撲。

 

伝統的な文化といえども、時代の洗礼を受け、時代とともに変化
するのは当然でしょう。
 
しかし、歌舞伎の芸が、虚実皮膜という事実と虚構の微妙な境界
にその本領があるのだとしたら、事件後の海老蔵さんの記者会見
は、良い悪いはともかく、もっとも歌舞伎的だったと言えるかも
しれません。
 
大相撲という国技は、そこから【スポーツ】としての要素を引き
算した時に残る、「行事」や「しきたり」の中にこそ、伝統文化
としての本質が潜んでいるとも言えます。
 
ダイエットを気にしている女性客に、小ぶりの握りを出すのを
見咎めて、量をごまかす詐欺だ、減らした分の差額を返金しろ、
などと無粋なことを言う酔っ払いが、せめて近所の寿司屋に登場
しないことを願うばかりです。