傷はぜったい消毒するな | 店舗探し.comの過去コラム

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2011/4/27

 

あくまで素人判断ですが・・・
傷は消毒しない方がいいんじゃないでしょうか?

1年ほど前に『傷はぜったい消毒するな 生態系としての皮膚の科学』
(夏井睦著 光文社新書)を読んで「湿潤治療」に興味を持ちました。

「湿潤治療」の考え方は【傷は消毒せず、乾燥させなければ、痛まず、
早く、しかもきれいに治る】という臨床結果から導き出されたもので
従来の「消毒して乾燥」という治療方針を変えるべきだというのが、
著者の主張です。

「湿潤治療」に対応した絆創膏が商品化されているとのことで読後
すぐに近所のドラッグストアに行ってみたものです。
従来型の絆創膏が並んでいる中に、確かに「湿潤治療」を謳った
絆創膏がありました。
もっとも陳列されていたのは端の方で、全体の1割ぐらいの面積を
占めているに過ぎませんでした。

そして1年後の現在、近所のドラッグストアでは、「湿潤治療」対応
の絆創膏が売場の半分を占めています。
絆創膏売場を見る限りは「湿潤治療」が浸透しているといっていいで
しょう。

気になるのは皮膚科医院の現場はどうなっているのかということです。


著書でも指摘していましたが、仮に「湿潤治療」が実は正しいとわかっても、現場の医師は簡単に治療方法を変えにくいというのです。

傷口を消毒し、乾かしておくように指示した患者の次回の診療の時に


「いやあ、ごめんごめん。消毒して乾かしたのは間違いだったから、
 今日からは『湿潤治療』に切り替えるね。」


と、自らの非を認めるなど医者の立場ではなかなか出来ることでは
ないでしょう。
むしろ、「湿潤治療」は間違っているとの立場で、治療の一貫性を
保ちたくなるに違いありません。

専門家にとっては、長年正しいと主張していたことが誤りだと気づい
ても、素直に間違いだと認めるのは簡単なことではありません。


しかし素人は、基本的知識や先入観、利害などももちろんありません
から、容易に知識を変更できます。


たった本一冊の知識と売場が示す事実。


これだけあればさっさと「湿潤治療」が絶対に正しいと洗脳されて
転向してしまうのです。

・・・こういった素人判断は、しかし時に悲惨な事態を招きます。

原発に関して、ろくな知識も無い素人が、あらぬ偏見を持ったり、
全く科学的根拠のない風評を撒き散らしたりして、無関係の多くの
人に迷惑を掛けています。

医学のずぶの素人にすぎない私が、こうして「湿潤治療」の是非に
ついて不用意に意見表明することと、罪は一緒なのでしょう。

誰もが容易に情報発信ができる時代を生きている私たちですが、TPO
をしっかりわきまえていなければ、発言する資格はないでしょう。