2011/10/25
「新そば入荷しました!」
時間がなくて入りそびれたそば屋のポスターを未練がましく眺めて
いたら、
「クニ子おばばが作るソバの味は濃い。」
菅原文太さんのナレーターの声が、ふと甦りました。
もう1ヶ月くらい前のことです。
NHKスペシャルで『クニ子おばばと不思議の森』という番組を放映
しました。
クニ子おばばこと椎葉クニ子さん(87歳)は「焼き畑農業」を続
けています。
縄文時代に始まった焼き畑ですが、今でも毎年やっているのは
日本でただひとりだそうです。
彼女の焼き畑農業は素晴らしい仕組みで営まれています。
8月、焼き畑をするとすぐにおばばはソバを蒔きます。
ソバは2ヵ月半で収穫出来るからです。
翌2年目にはヒエ、3年目は小豆、4年目には大豆と、作物を変え
ながら収穫を重ねます。
作物を栽培するのは4年目まで、その後は放置して森へ帰します。
焼き畑の場所を毎年少しずつ変えていくというわけです。
そして30年かけて山全体を一巡すると、再び最初の場所で焼き畑
を行うのです。
焼き畑によって死んだ植物を菌糸がチッソ、リン酸、カリに
分解します。菌糸は土中に生き残った生物との共同作業で土を
豊かにし、代替わりを促進するのです。
焼き畑の森は30年で一サイクルを終えるわけですが、代替わり
によって森全体の命のバトンは次世代に受け継がれていきます。
森に住むあらゆる動植物が、見事なアンサンブルを発揮して森
を再生していく様は、私たち地球に住む全ての生き物の営みの
縮図になっています。
地球全体の生態系を安定的に維持していくために、許される人間
の活動範囲はいかほどなのか、私たち人間はキャリング・キャパ
シティー(環境収容能力)をきっちりわきまえていかなければ
ならないのです。