2012/10/26
青は不思議な色です。
東京大学の研究グループによると、首都圏の71駅において検証した
結果、青色灯を設置した駅は未設置駅と比較して、自殺者数が平均
で84%減少することが判明したそうです。
青色灯には人間の気持ちを落ち着かせる効果があるとされ、防犯灯
として設置する地域が増えていますが、社団法人日本防犯設備協会
が国からの依頼で青色防犯灯について検証した際の報告によれば、
期待されたような利点は認められない、という結論に至っています。
青色防犯灯を導入後一定期間を経過すると逆に犯罪が増えた事例も
報告されており、青色灯の効果が科学的に実証し切れたというわけ
ではありません。
「青信号」は今でこそ青色ですが、数年前まではどう見ても緑色に
しか見えませんでした。
「青々とした」「青果」が、実際には緑色を指すことが多いように、
日本語では青色と緑色の区別があいまいです。これは、東南アジア
や中南米など世界各地でも同様の言語体系がみられるそうです。
「青い空」「青い海」は確かに青色に見えます。
しかし、気体が青いのではなく、太陽光の波長より小さな空気分子
が、短い波長をより多く散乱する“レイリー散乱”によって青く見
えているだけなのです。
海の水を掬っても透明な水があるばかりですが、それは、海の青色
は、空の青色が反射したり、水自身が光を吸引することによって起
きる現象だからです。
「青いバラ」は人工的に作り出すことは不可能とされてきました。
サントリーがバイオテクノロジーを駆使して作ったと発表した「青
いバラ」も大きな話題となりましたが、やはり真っ青とは程遠い色
に見えます。
空と海のように、すぐそこにあるように見えていながら、青はなか
なか手にすることが難しい色なのです。
だから、メーテルリンクは、追いかけるたびにするりと逃げてしま
う“幸せ”を、「青い鳥」に仮託したのでしょう。
いったいいつ始まって、いつ終わってしまったのか。
まさにその渦中にいるときには自覚がなく、終わってしまってから
随分経って振り返った時には、あれがそうだったとはっきりわかる
時代を「青春」と呼ぶのも頷ける気がします。
空、海、水、誠実、信頼、落ち着き、冷たい、男性、寂しさ、開放
感、涼しさ、知性、精神、清潔、眠り、気持ちよい、平和、失望、
悲しみ、不安、安息、冷酷、憂鬱、広大、デリケート、夏、忠実。
以上は、人が「青」から連想するイメージです。
「涼しさ」と「夏」、「解放感」と「淋しさ」、「気持ち良い」と
「憂鬱」、「安息」と「不安」。
青が喚起するイメージもまた、右に左に大きくぶれながら一定しま
せん。
「平和」という概念もまた、抽象的であいまいだからこそ、青で
イメージされるのでしょう。
だれもが望んでいながらその具体的な形を示すことは難しいのです。
“世界平和”を目的とする『国際連合』のシンボルカラーも青です。
いずれの日か人類は、青=平和を手にすることは出来るのでしょう
か。