エスクローおじさんのブログ -845ページ目

金融危機を繰り返さないためには、どうするか?

昨夜は、NHKスペシャル『マネー資本主義』の最終回「危機をくりかえさないために」でした。


資本主義がだめだったから、社会主義などということもありませんし、新自由主義がすべてだめでケインズ型経済が良いというわけでもないでしょう。名案があるわけではありませんが、こういう番組を作ることは必要だと思います。


番組内では、「人間の強欲をどう抑えるか。」とか「株主資本主義から公益資本主義の流れがある。」とか「地域の借り手が金融機関と共存できる融資を模索している。」ことなどが挙げられていました。


今回の金融危機の原因を人間の欲に求めると言うのは、いささか浅い議論です。


私達FPは、日頃お客様のファイナンスのプランニングをする中で、マネーの専門家などと呼ばれていますが、それでは「マネーの本質とは何か?」と言うことになると意外に勉強していません。


そんなことを思いながら『緑の資本論』(中沢新一著・ちくま学芸文庫刊・900円+税)を読んでみると、マネーの本質の一旦がよく理解できました。


2001・9・11同時多発テロで何が問われたのか。


同じ一神教からスタートしたにもかかわらず、「父と子と聖霊」という三位一体論をこじつけて編み出し、モノの増殖性や利子を認めたキリスト教(グローバル経済の根拠)と一神教を忠実に守って利子を認めず拡大生産を認めないイスラーム教。


一方が経済的文化的に世界を侵食する中で、圧倒的に不利なイスラーム世界はあのような反撃に出ざるを得なかった。


マネーの本質は増殖性だけにあるのではなく、多様であるということをイスラーム教の経済=緑の資本論を鏡として認めることから始めよう、という内容。


マネーを宗教と絡めて分析した精緻な本です。読んでいる間に感動すら覚えました。経済を考えるときに是非読んでおきたい本だと思います。


もう一度。マネーを増殖させること(利益を得る。経済成長すること。)だけが唯一の価値観でないということを「理解すること」から始めることが大切でしょう。


決してイスラーム経済にしろとか言っているのではありません。念のため。

NHKスペシャルシリーズ『マネー資本主義』

昨夜のNHKシリーズ『マネー資本主義』の第4回目は『ウォール街の”モンスター”~金融工学はなぜ暴走したのか』


今回の金融危機の原因の一つは、サブプライムローンという怪しげな住宅ローンをリスク軽減する手法によって、最終的には世界の投資家に証券として販売していたことによるものです。


今回は、その証券化の仕組みを作った人たちが登場。


経済に数学者や物理学者が多数参加していることは知られていましたが、原爆の研究をしていたような人たちが、証券化商品のリスク分析に参加していたことなどが報じられました。


彼らが研究開発したリスクの軽減手法でCDOやCDSという複雑な商品が登場したのです。


面白かったのは、登場した彼らはすべて「元ベアスターンズ」とか「元リーマン」という肩書きであること。会社がなくなったので止むを得ませんが。


中には金融の世界から足を洗って、牡蠣の養殖をやっている人まで出てきました。『年収は大幅に下がったけれど、生きていくには問題のない収入だ。」と話していました。


それでも番組の最後には、今回の反省を踏まえて「人間の脳の研究によって、冷静な投資分析ができるようにするにはどうしたら良いか。」なんていうことを研究する科学者まで登場しました。懲りない面々。


おそらく金融工学のモンスターは、死ぬことはないでしょう。


暴走を二度と繰り返さないためには、世界の経済は、そういう価値観だけで動いているのではないと言うことを理解しておくことが重要なんだと思います。


今夜は最終回『危機をくりかえさないために』です。



景気判断と新型インフルエンザ

最近新型インフルエンザ報道は、一時のような過剰露出はありませんが、実際の感染者数は今月に入って急上昇だそうです。


私の所属しているある団体などは、先月までイベント・集会は基本的に自粛としていましたが、今月から一部緩和にしました。逆でしょう。


報道などの露出が多くなると感覚が麻痺してきます。報道がマンネリ化してくると、ことの規模を無視して露出が少なくなります。こういう情報操作にはよくよく注意しておかなければなりません。


景気が底打ちしたとの発表もありましたが、どん底に落ちた経済が回復しつつあると、何かとても良くなったような気がするのも、同様のことです。


今後、経済成長2%というようなことは起こりそうもありませんが、(対前年ではなく、景気落ち込み以前の2%という意味で)底から回復に向うと2%成長しているような錯覚に陥ります。


日本の経済は長期的には高コスト体質を是正しつつ(長期デフレ)、効率のよい投資先を求めてマナーが流れ込む(多発性ミニバブル)時代になると思います。


巡航速度で経済成長2%以上となることはないでしょうから、報道や雰囲気に流されず、きちんと分析をしておくことが必要になります。

総額10億円の賃貸マンション投資を考えているお客様

知人の紹介で総額10億円の賃貸マンション投資を検討しておられるお客様にお会いしてきました。


ところが、考え方に大きな開きがあり、意見交換だけで2時間くらいかかってしまいました。


お客様「面倒なことは嫌なので、一棟で10億円の物件が欲しい。」


私「地震や事故事件などのリスク分散を考えて、3億円程度を3棟にされてはどうでしょうか。また、仮に将来売却となった場合、名古屋地区では10億円単位の物件を購入できる人はいませんので、出口戦略上も3億円程度がよろしいと思います。」


お客様「金融危機で一気に価格が下がっているので、すぐに購入したい。」


私「確かに価格は下がっていますが、景気の遅行指数である賃料が今後下がりますので、せっかく安く購入されても利回りは低下します。賃料のドミノ現象がひと段落する数年後ではどうでしょう。」


お客様「ちまちました物件は嫌いなので、富裕層狙いで家賃20万円位の物件が良い。」


私「その路線はよいと思いますが、10億円全部をそこに投資されるのはどうでしょう?」


お客様「築年数は3年以内を希望。」


私「築年数が新しい物件は、新築プレミアがあって賃料が高めについていますので、購入後利回りが低下することも考えられます。中古であれば、管理が十分してないために賃料が割安になっている物件もありますので、対象を拡げられてはどうでしょう?」


ことごとく異なる考え方ですので、大変楽しくお話しさせていただきました。


ご本業は、1つ数千万円もするような商品を全国の富裕層に販売されている方ですので、それなりの情報もお持ちだと思いますが、オール借り入れでお考えの投資は難しいのではないかと思った次第です。


不動産投資に対する私の考え方が全部出ているので、実際の内容を少し加工して書かせていただきました。


住宅ローンの貸し手=金融機関にもいろいろあるんだなぁ

昨日は朝9時から17時まで、大阪で大手都市銀行さんの住宅ローン担当者のみなさんの研修を担当した後、名古屋にもどって19時から20時30分まで名古屋市のFP講座で相続の基礎知識の話をしました。


一日8時間半お話ししたのは新記録です。30分更新!ギネスブックには、どの位の記録があるのでしょう?20日位話し続ける人がいそうですね。


東海地区では住宅ローンが各行の主戦場となっており、特に地銀・信金が採算を度外視した低金利を提示しているため、金利勝負では都市銀行の出番がないのが実情です。


しかし、こちらの都市銀行のお話では、特に金利で勝負するつもりはなく手元に来るお客様をきっちり審査して、優遇する人は優遇しできない人は通常金利で貸し出すという姿勢。


金融機関としては、経営上これは極めて正しい姿勢だと思いますね。一般の商品と同じで薄利多売を狙うのかどうかという判断です。


ただ、住宅ローンは他の商品と違って、商品性に違いが少ないという特徴がありますので、今後はそのあたりの差別化をすることが必要になって来るでしょう。


例えばA銀行の住宅ローンを借りている人には、全国の優良な医療機関の優先利用権があるとか、年に一回は借り手以外は知ることができない丸秘資産運用セミナーに招待されるとか。


バッグと言えばルイヴィトンと言われるのと同じように、住宅ローンと言えばA銀行でしょうと言われるようになれば、金利勝負をしなくてもお客様が行列を作ると思うのですが・・・


これは素人の発想で、現場ではなかなか難しいのでしょうね。