『苦役列車』

監督　山下敦弘
脚本　いまおかしんじ
音楽　ＳＨＩＮＣＯ
主題歌　Trash/ドレスコード

出演　森山未来、高良健吾、前田敦子、マキタスポーツ、田口トモロヲ、
伊藤麻実子、中村朝佳、柳光石、高橋努、中村昌也、藤井京子、古澤裕介、佐藤宏、
橘家二三蔵、辻本耕史、我妻三輪子、イエローコックローチ、宇野祥平、
松浦祐也、二宮弘子

（あらすじ）

１９歳の北町貫多（森山）は父親が性犯罪者として逮捕され、夜逃げ。
中学を卒業すると
日雇い労働者としてその日位暮らしを続けていた。
友達も恋人もおらず、
給料はあっという間に底をつき、再三催促される家賃も払えず
追い出される寸前だった。
そんな彼の唯一の楽しみは読書だった。

職場で知り合った専門学校生の正二（高良）と友達になる貫多。
正二の口利きで、密かに思いを寄せていた
古本屋で働く女子大生の康子（前田）とも友達になれた。

が、彼には「友情」というものが理解出来ず、
靖子の手を舐めてしまった。

真面目な勤務状態が評価されて倉庫番に昇格した貫多と正二。

先輩ヅラし、「夢を持て」と説教してきた同僚の高橋（マキタ）が
事故で足の指を失いながら日雇いのため労災も下りなかったことを目の当たりにし、
倉庫番を辞めて運搬に戻る貫多。

いよいよ部屋を追い出されることになった貫多は
正二に金を借りて引っ越しをする。
そこで父のことを告白する貫多。正二は優しく彼を励ます。

正二に仲介してもらい、康子と仲直りする貫多。
３人はボウリングをしたり、海で泳いだりと楽しい時間を過ごした。

高橋に会社からの見舞金を届けに行った貫多は
「夢なんて持つな」などと毒舌を吐かれながらも
自分は書く事がしたいと告白。
高橋は自慢の歌声を披露する。

正二とその恋人・美奈子（中村）と飲んだ貫多だったが
悪酔いしてからんでしまい、正二から絶縁を言い渡される。
また康子に「やろう」と迫って断られ、絶好される。

やる気のない仕事ぶりで上司から蹴られ、殴りかかってしまう貫多。
近く美奈子と同棲する予定の正二からも完全に距離を置かれてしまった。

彼は風俗に行って元カノの寿美代（伊藤）と再会、
やらせてくれるように迫りながらもノッてこない彼女に暴言を吐き、
彼女の男・寺田（柳）に殴られた。

康子が古本屋を辞めたことを店主（田口）から聞かされ、
彼女が「この本を読んで貫多を思い出した」というメモが挟まった
土屋隆夫の「泥の文学碑」を渡される。

－３年後、相変わらずの貫多は店主から再三借金をするようになっていた。

高橋がテレビの素人参加番組に出演しているのをめし屋で見て、
そこで客（中村昌）らとチャンネル争いになり、殴り合いとなる。

身ぐるみ剥がされた貫多はこれまでのことを思い出しながら
部屋に戻ると、憑かれたように筆を走らせ始めるのだった。

（感想）

西村賢太の芥川賞受賞作（未読）の映画化。

映画はあまりに苦いながらも
青春映画として良く出来ていた。

主人公の「苦役」が始まるきっかけとなる父の事件や、
彼が受けたダメージが台詞でしか出てこないので、
終始主人公が被害妄想過多で、
付き合いづらい人という印象しか持てない。

きっと監督は「苦役」という感覚よりも
「青春」を打ち出したかったのでしょう。

なので多分、小説はもっと苦いだろうし、
おそらく別物になっているのでは？と思う。

森山がとても良かった。
全く似ていないはずなのに
時折背中のあたりが西村に見えた。

前田も、人気なのがちょっと理解出来た好演だった。

マキタスポーツのやさぐれた感じ、
田口の目の奥に優しさがある感じも良かった。

ＡＶ男優・花岡じったの登場に驚き。
彼の出演したシーンも含めて、
あらすじを書く際には詳細をカット出来ても
物語に色彩・情感を与えているシーンが多々あり、
（ヘルタースケルター　とはここが違う　笑）
そういう場面にこそ魅力があったりするわけなので、
あらすじを読んだだけで観た気になってはダメ、
ということを思った作品だった。

★★★関連作品レビューへのリンク★★★

森山未来　