SUPPORT SOURCING -32ページ目

Q 転籍を一方的に命令することは可能ですか。

Q 転籍を一方的に命令することは可能ですか。


 転籍とは、元の会社との労働契約が解消され、転籍先の会社に新たに雇用されることです。つまり、元の会社を退職して、新しい会社に採用されるということになりますが、これらが同時されるところに特徴があります。

 転籍は、労働契約の解約と新たな労働契約の締結という法律行為ですから、使用者が一方的に命ずるとか、就業規則に定めて、それを根拠に命ずるという性質ではなく、労働者本人の同意を必要とします。判例上も労働者の個別的、具体的同意が必要としています。

 ただし、判例の中には、入社時に転籍の同意をとったケースなどで転籍の命令を認めたものもあります。

 また、民法625条に「労働者の承諾を得なければ、その権利を第三者に譲り渡すことができない」とあり、転籍先が使用者としての権利を取得するには労働者の承諾が必要となります。(労働者が転籍先で労務に従事することについての同意とは別問題です。)

 転籍については、転勤や出向とは法的な性質が異なるので、一方的な命令は不可能と考えたほうが妥当と思います。

Q 年齢によって雇用について規制はありますか。

Q 年齢によって雇用について規制はありますか。


雇用については次のような規制があります。

1.中学生など児童については、満15歳に達した日以後の最初の3月31日が終了するまでは、労働者として使用してはいけません。例外として、新聞配達等については満13歳以上、映画製作や演劇では満13歳未満でも所轄労働基準監督署長の許可を条件として修学時間外に使用することができます。

2.高校生など満18歳に満たない者については、時間外や深夜に労働させることはできません。

以上のような規制がありますので、雇用する際には年齢の確認が重要となります。
ご注意ください。

Q 雇い入れ時の「身元保証書」は必要でしょうか。

Q 雇い入れ時の「身元保証書」は必要でしょうか。


一般的に労働者を雇用する場合、身元保証人をつけ、当該労働者から身元保証書を提出させます。これは、労働者の人物保証、指導監督を目的とするのではなく、労働者が使用者に対して負担する損害賠償義務を保証させることを目的とします。したがって、将来損害が発生したことに対する債務保証なので、身元保証書をとっておいたほうが会社としては将来発生した場合の問題解決の選択肢が増え、メリットがあると思います。ただ、以下の通り、しっかりと管理する必要があります。

身元保証書は身元保証契約にもとづき、「身元保証ニ関スル法律」によって規制されています。「期間」については、注意しなければなりません。5年を超えて期間の定めはできません。さらに、期間の定めのない場合は3年間有効です。契約の更新はできますが、自動更新は認められず、3年または5年ごとに更新の手続きをとる必要があります。よく身元保証契約書の中に自動更新の旨を入れてあるものを見ますが、これは無効となります。

したがって、更新手続きのことを考えると、親族以外の複数人の身元保証人を必要とすると、更新が難しかったり、労働者が高齢になると、さらに難しくなったりする可能性があります。

あと注意しなければならない点として、労働者に業務上、不適格または不誠実な事跡があって、身元保証人に責任が生ずるおそれがあるときに、労働者の任務または任地の変更によって身元保証人の責任が加重され、または監督が困難となる場合は、使用者は遅滞なく身元保証人に通知しなければなりません。身元保証人は、この通知を受けたときは以後の身元保証契約を解除できます。

Q 65歳までの雇用延長が義務化されましたが、その手法の1つとして「継続雇用制度」を採用する際の

Q 65歳までの雇用延長が義務化されましたが、その手法の1つとして「継続雇用制度」を採用する際のメリットについて教えてください。<2005年6月>


公的年金制度の支給開始年齢の段階的引き上げに伴い、企業の雇用延長も平成25年4月までに段階的に65歳にすることが義務化されました。まずは、平成18年の4月から62歳が義務化されます。

雇用延長の手法は既にご存知のとおり、
1.定年延長
2.継続雇用
3.定年制廃止
の3つがあげられます。このうち「2.継続雇用」を採用する企業が大部分になると思います。各手法については、かなり詳細なリーフレットが行政側から配布されていますので、それを参照することをおすすめします。

継続雇用制度は、
・ 再雇用制度
・ 勤務延長制度
の2つに分けられます。
再雇用制度は、定年時に一度退職し、再度雇用契約を結ぶ制度です。一般的にこの時点で退職金が支払われ、清算されます。その後嘱託契約を結ぶケースが多く、現在このような制度を導入している企業も多く見られます。
勤務延長制度は、定年になっても退職せずに勤務を継続します。したがって、退職金の支給もなく、再雇用制度より雇用の安定度が高くなります。

高年齢者雇用安定法では、継続雇用に関して、「現に雇用している高年齢者が希望するときは、当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度」としています。つまり、希望するならどの社員もでも定年以降も働き続きけることが可能となる仕組みを企業に求めています。しかし、希望者全員を継続雇用するのは企業側にとっては相当困難な話です。
そこで、改正法では、「労使協定で基準を定めたときは、希望者全員としないで一部の高齢者を適用除外することもできる」としました。また、この労使協議が不調に終わった場合、大企業は法律施行日から3年間、中小企業は同5年間については就業規則で基準を定めることが可能としています。

退職金の清算という視点から、「再雇用制度」が企業にとっても従業員にとってもニーズは高いように思います。企業にとって退職金コストは軽視できず、特に退職給付債務が発生する場合は、当該債務を少なくする仕組みは考えなければなりません。従業員にとっても60歳時でまとまった資金を手にする希望はそんなに低くないことと思います。
また、再雇用制度によって心機一転、肉体的、精神的に軽易な職務に転換することも重要ではないかと思います。そのような点からも一度どこかでリセットすることのニーズは高いのではないでしょうか。

雇用延長は企業にとってコスト増になる可能性が高いと思います。それに対して何の手も打たないと、コストはみるみる膨らみます。対策としては、例えば、雇用延長によるコスト増に応じて、逓減するような賃金カーブ、退職金カーブを再デザインして制度全体を見直すことが必要です。支給水準は下がっても雇用延長による生涯収入の増加を考えると、一概に不利益変更と言えません。部分的な修正追加ではなく、トータルな人件費管理が望まれます。

Q 事業場に過半数加入労働組合がない場合の労働者代表との協定で注意すべき事項は?

Q 事業場に過半数加入労働組合がない場合の労働者代表との協定で注意すべき事項は?


【労働者代表とは】
 労働者代表は「労働者の過半数を代表する者」が該当します。平成11年4月1日施行の規則において、労働者代表は次のいずれにも該当する必要があります。
1.法第41条第2号に規定する監督または管理の地位にある者でないこと
2.法に規定する協定等をする者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方 法による手続きにより選出された者であること

次に労働者の範囲ですが、すべての労働者を対象とします。つまり、管理監督者、年少者、休職者、パートタイマー、アルバイトなどすべてを基礎として過半数を代表とします。ただし、派遣された労働者は雇用契約関係がないので対象外となります。
例えば、裁量労働の労使協定で、裁量労働の対象者から過半数代表者を選出するのではなく、関係のない労働者も含む事業場全体から選出しなければなりません。

【労働者代表の任期は】
労働組合があれば、組合の代表者の任期中は労使協定締結の当事者ということで問題ありませんが、このケースの場合は、原則としてその都度選出することが予定されています。しかし、その都度選出していては手続き上のわずらわしさもあります。
したがって、1年間の任期で代表者を選出することを制度化して、これを社内規定として確立しておくことが望ましいと思います。こうすれば任期制にすることの法的問題はないと思われます。

【労働者代表の同意と労働契約は】
注意しなければならないのは、労働者代表といっても個々の労働者の代理人ではないということです。あくまで労基法上定められた代表者選出手続きに基づき、個々の労働者の代表者選出意思に基づいて選出された代表であるのです。法的に執行権をもった代表者というわけではありません。
また、使用者は労使協定を締結することにより、労基法上禁止されていることなどが解除されたに過ぎず、これをもって個々の労働条件を強制的に変更できるというものではありません。
例えば、三六協定において、当該協定を締結したから残業命令ができるのではなく、残業義務が発生するかどうかは個々の労働契約に基づきます。つまり、労基法では1日8時間、週40時間労働を原則としており、労使協定の締結により、当該原則を解除したわけです。したがって、残業させるかどうかは個々の労働者との合意になります。労働者との合意は労働契約、就業規則などの定めによる必要があります。