2007年8月27日:がんセンター外来

6コース目Day20、白血球が2900個まで回復。主治医に7コース目を依頼。
約1分間の沈黙(主治医と私は普段1秒も迷わないし黙らない)後、相談。
「来週の採血結果を見て決める」事になった。

・単純計算では7コース目のメリットもあるかも知れない。
・しかし癌細胞の活性度が異なったり?耐性が出来てたり?する事による
 「生き残り」だった場合は空振りになる危険もある。
・同等負荷の7コースは過去1例はあった。が統計・経験的には判断困難。
 (そもそも普通この段階まで骨髄は保たないハズ)

結局、9月2日、白血球が4300まで回復し9月7日に最終投与を決定。
メリットは「中間的サイズの病巣の根治可能性」、
デメリットは「骨髄抑制の回復の遅れ」。
ショック症状のリスクが増す8回目は回避する方針で意見は一致。


一般的に考えられる最大投与量を最長期間実施する事になる。これは正しい
事なのか?結果は数ヶ月後の経過と血液状態の回復を見るまでは判らない。

幾つかの根拠・仮定は私個人の推論に過ぎず、「理屈部分は」主治医には相談
していない。「証拠の無い事」や「判らない事」を訪ねられてもがんセンター
の医師として答えることは許されないハズだからである。

今回の治療経過は「後先考えない抗癌剤のゴリ押し」との批判を受ける可能性
もある。勿論主治医も私も科学が判らずにやっている訳ではない、しかし万一
の事があれば(昨今の風潮を鑑みると)問題になる可能性すらある。

私の主治医は単に抗癌剤に詳しいだけでは無い。重要な局面で私の意志と方針を
受け入れ、その上で最適な解を提案できる柔軟性がある。この最終局面でも
私の意志を尊重し「これまでの理解」を越えた判断をしてくれた。

私の骨髄の反発力は実はそれほど強くは無い。(適量ではあるが)同じレジメン
の患者と比べてもダメージは大きい。ただしダメージの蓄積を最小限に抑える事
が出来た。重要なのは超人的な体力では無く細心の体調管理だと考える。

寛解という結果自体は多くの人の参考にはならない。しかし比較的楽に7回目
投与が可能だった事実は重要だと考える。本ブログで私は
「打席に入り目をつぶって振ったら当たった」という事を言いたい訳では無い。
「配球を読みチーム全員で戦略を立てればマルチネスからでも点は取れる」
という事を示すと共に、他の経過や意見を伺い参考にしたいと考えている。
癌患者が最も緊張する「瞬間」の1つは「検査結果を聞く」時である。
治療効果は?大きさは?今後の見通しは?、、等々、どれも命に関わる事なのに
通常「ああ、サイズ不変なので効果出てますね、、」程度の説明しかされない。

CTから癌の成長速度を類推するのは通常難しい。癌の成長速度は体内環境や
治療効果に大きく作用される上に測定点も少ない。添付図はあくまでも一般論
とたった2点の(私の)治療前データを表したモノである。
腫瘍増大

エラーバーの取り方もデータ点のプロットもデタラメである。もしも学生や若い
研究者がこの図を書いてきたら小一時間は説教をせねばならないであろう。

図は平均的な肺癌の細胞分裂速度「30日に1回」でプロットしたモノである。
正確な評価は難しいが私の場合、標準よりも「高速タイプ」の様に見える。
強引にフィッティングを試したら「24日に1回」が最も合う事が判った。

画像上は「肺癌は3ヶ月で倍増」「乳癌だったら1年で倍増」と言われる。
見た目の印象は当然「現在の腫瘍径」により異なる。3mmから6mmになるのは
我慢できても10mmが20mmになるのを冷静に眺められる人は少ない。

ただ(大雑把な)0次オーダーの近似とはいえ、幾何学的な原理を一応知って
おくと心の準備はできる。例え「15mmが30mmになった」としても、それは
急激に悪くなった訳では無い。増殖の速度はあくまでも「一定」なのである。

例えば「10mmの肺転移が3ヶ月で12mmに微増」という状態は患者にとっては
著しく不安である。が、図を眺めていると「悪くない結果?」と思えなくも無い。

余談ではあるが、この図を信じると肺転移が起きたのは2004年10月頃と類推
される。同程度の期間が原発巣の成長に必要だったとすると私の癌化がスタート
したのは2002年8月頃と推定される。あるいは原発発生後数ヶ月で転移した、
と考えれば2004年の夏頃かも知れない。

ただしGompertzianのモデルでは増殖の初期では「成長が遅い」との事なので
もう少し前の事かも知れない。臨床的には腫瘍径が大きくなると中心付近では
酸素不足による癌細胞の壊死などが起こると考えられている。モデルによると
腫瘍径30mm前後から図の点線の様に成長速度が遅くなるとの事である。

腫瘍成長図は自分の余命を推定する事にもなるので不愉快な図ではあるが、
あれこれ考えるには示唆に富んでいて(甚だ不謹慎ではあるが)興味深い。
病理検査の報告書などでは健常細胞と癌細胞は混在して撮影されている。
また癌細胞自体も一般的には「一様」では無く分化度などの異なる細胞が混在
している。添付図のマンガは素人の私が想像する癌細胞周辺の構造である。

細胞と細胞の隙間には毛細血管なども存在するハズである。結局CTなどで撮影
される腫瘍サイズに対しどの程度の割合を癌細胞が占めるのだろうか?

一般的に言われている以下の仮定、
・「癌細胞1粒の大きさ約10μm」
・「1cmの腫瘍には100万個から1億個の癌細胞が含まれる」
から類推すると、体積換算の癌細胞充填率は大体0.1~10%程度と計算される。

私は扁平上皮癌と診断されている。活性度は高く、充填度も高いと考えるのが
妥当であろう。ここでは約10%と仮定し細胞数vs腫瘍サイズをプロットした。

主治医と私の興味の中心は治療前1~2mm程度の大きさであった「中間的」サイズ
の腫瘍群がどうなったか?である。CT断面で確認されただけでも数十点、原理的
にはその数倍はあったハズである。

cmオーダーの腫瘍の推移から類推すると中間的腫瘍群のサイズは約0.1~0.2mm
に縮小した可能性がある。6コース後には0.1mm以内に入ったかも知れない。
その場合の癌細胞の個数は「約100個」程度と計算される。

腫瘍増大のモデルの1つであるGompertzian仮説に基づくと「腫瘍は指数関数
的に増加するが100個を越えると速度は速まり1億個を越えると再び鈍化する」
との事である。

さらにこのモデルから導かれる抗癌剤投与の一般的な考え方にNorton-Simon
の仮説がある。「腫瘍縮小に伴い治療後のリバウンドが強くなる」という考え方
である。が、この一般論は腫瘍サイズが0.1mmを切る場合には適用できないと
考えるのが自然である。

また近年の研究で癌細胞が免疫撹乱物質を利用し排除を逃れるとの指摘がある。
この機構の詳細は別途検討が必要であるが、癌細胞が集合化し免疫撹乱を相補的
に行うことで「煙幕」としての機能は補強されそうではある。

逆に1つの病巣あたりの癌細胞が10個程度になると各癌細胞は周囲の体内環境
に「独立」にさらされる事になる。詳細な機構は判らないまでも癌細胞にとって
過酷な環境である事は想像できる。

これらの考察と以下の期待から私は治療目標を50μmに再設定し直した。
・「成長速度の遅いサイズ域まで追い込む事で再発までの時間を稼ぐ」
・「1病巣あたり10個程度になる事で全癌細胞を直接体内に暴露できる」

可能性があるかもしれない。熟慮の末、主治医に7コース目の実施を申し出た。
私は「脱毛の推移」から類推し、残存影に対する「疑い」を強く持った。

私の場合1コース目のDay13~16に頭髪の約99%が抜けた。しかし、
残った1%は2コース目、3コース目を終えても「そのまま残って」いた。
(ただし分散して残った毛は擦れやすく5コース目には完全にハゲたが、、)

頭髪は通常10万本程度あり、男性の場合2~5年のサイクルで抜けると言われる。
(ゆえに1日50本~100本の抜け毛は気にする必要はないらしい、、、)
1cm^2辺り、おおよそ100本の毛がある(あった)ハズである。妻に頭髪を
数えてもらったところ約1本/cm^2に脱毛し、その後はあまり変化無かった。

数人の癌医療従事者に聞いたところ、抗癌剤による効果と副作用にはあまり相関
が無いそうである。確かに吐き気や悪心は代謝機能や精神的要素に左右される。
また苦痛の感じ方も個人差があるのでバラツキが大きくてもやむを得ない。

ただし「3倍量」などの投与をすれば効果が期待できる反面、激しい副作用が
現れる事が科学的に確認されている。相関の程度は不明だが「効果と副作用」
に一定の関連が有ることは間違い無いと思われる。

抗癌剤による脱毛はドラマや映画では癌闘病の象徴として必ず取り上げられる。
独創性に乏しい作家や製作者にとっては欠かせないアイテムではあるが、実際は
特に問題になる事では無い。私は「有害作用」として捉えていない。しかし、

抗癌剤の細胞殺傷効果を他の要因に左右されず比較的ストレートに表すのは
「脱毛」ではないだろうか?調べると頭髪は毛乳頭と呼ばれるボール状のイボ?
を毛母細胞が取り巻き「絶えず」細胞分裂することでくっついているらしい。
抗癌剤や放射線障害で細胞分裂が止まると、ある期間を経て脱落する。

髪の成長サイクルは年単位なので、ある割合の毛髪は「たまたま」細胞殺傷が
作用しない時期にあったのかも知れないが、投与期間は2~3ヶ月に渡る。
4~5年(50~60ヶ月)の髪サイクルに対して1%は、どうしても残り過ぎ
の様な気がする。

定量的評価は難しいが0.1~1%の髪が「薬剤が効かず」残ったとも考えられる。
一方、画像上「残存」した腫瘍も体積で約0.1~0.5%程度である。患者としては
やはり疑わない訳にはいかない。
2007年8月13日:6コース目Day6、経過説明
添付図は唯一「残存」が疑われる病巣の治療前、後のCTの比較である。
他の原発、転移巣にはスライス断面10mm間隔の画像では異常は認められない。
腫瘍マーカは元々陰性なので判断に用いず。(これは珍しい事ではない)

主治医の判断は
・CR、寛解判定(腫瘍が確認できなくなること。完治とは異なる)。
・経過観察に移行したい。最初は月1回、半年程度経過後は3ヶ月毎。

私の意見は
・多くの再発例は同様の判断の結果では?。直ちに追加的な放射線、あるいは
 手術を実施すべきではないか?
・肺野の「残存影」の活性度が非常に気になる。早めのPETを御願いしたい。

この「残存」に対する捉え方と処置について珍しく主治医と私は対立した。
意見の違いを生じさせた原因は以下の様な「理解の違い」であったと思う。
1.再発リスクの考え方の違い
2.次回治療までの時間的猶予の感じ方の違い
3.手術、放射線における「リスク」の理解の差


1時間近い議論の末、以下の共通理解・対応を決め。抗癌剤治療を終了した。

1.1~2mm程度の「中間的なサイズの腫瘍」は消失した可能性もある。
  これらが再発するかどうかの見極めが最も重要。

2.原発を含め4カ所あった5mm以上の病巣については再発可能性が高い。
 (どんなに抗癌剤が奏効してもcmオーダーの腫瘍は20~30%は再発する
  と考えるのがスジ。例えば4つあれば1~2個は考えておくべき。)

3.しかしながら、その「順位」は今は判断できない。再発の対応は放射線、
  手術、ラジオ波等が考えられるが今「当てずっぽう」な処置をとることで
  将来の選択肢を無くす可能性がある。メリットもあるがデメリットもある。

4.治療は「始めたら休み無く一気に!」がコツだが、治療の間の腫瘍成長は
  通常の癌では(患者が感じる程には)デメリットにはならない。休薬期間を
  有効利用し、癌の「出方を探る」メリットは大きい。

5.PET-CTは1ヶ月後の9月14日に予約。

経過観察とは「何もしない期間」では無い。
「癌の性質を見極め」「こちらの体力回復をはかる」重要な治療の一環である。
2007年7月22日:5コース目Day11
5コース目骨髄抑制が最下点に近づいた時に感染症にかかった。これまで生きて
きた中で最悪の高熱と下痢、体力低下であり、治療に支障をきたす事になった。

・7月22日:外食で天丼を食べた際、口の中が荒れた。(すぐに忘れる程度)
・7月23日:奥歯と歯茎がちょっと痛い。(気にせず放置)
・7月24日:口内炎が拡がる。(気になったが放置)
・7月25日:口内炎で口が動かせなくなる。(どうして良いか判らない)
・7月26日:口内炎で口半分がマヒ。昼高熱(推定40℃以上)。布団をかぶる
       が寒気。夕方熱が下がった気がして検温すると39.5℃(!?)
・7月27日:朝は38℃程度だが夕方になると40℃近い発熱。水下痢。
       熱、下痢止まらず。ついに抗生剤と解熱剤を服用。37℃まで低下
・8月 2日:約1週間抗生剤を飲み続け、平熱近くに復帰。下痢も止まる。
・8月 3日:6コース投与予定日。(当然)血液状態が悪く投与延期。

私は腸内細菌に対する抗生剤の影響を懸念しギリギリまで服用を避けた。
「たかが口内炎や風邪で薬など必要ない」という固定概念もあったと思う。しかし
血液&脈拍グラフを見ても明らかな様に白血球はこの時点で1000個/μL程度である。
この状態ではもはや「どんな病気も」自己治癒力では回復できない。

口内炎が感染症の原因だったのか、結果だったのかは判らない。ただ言える事
は抗癌剤治療中はどんな些細なシグナルも見落としてはいけない。「口内炎」は
抗生剤を飲み始めるサインとして当然がんセンターでも指導されていた。が、

結果として私は従わず、最悪の事態となった。40℃近い高熱が3~4日続き、
水下痢、悪心に悩まされ結果的に約1週間の投与遅れとなった。副作用死の
大半は感染症による死亡と言われている。最終的な死因は肺炎や心疾患など
になるとは思うが私は下手をすると「天丼」が原因で死んでいたかも知れない。
心拍数を正しく測るのは結構難しい。測定自体にバラツキが有る上、体調や精神
状態により容易に変動するからである。私は市販の酸素飽和度計(3万8千円!)
を断腸の思いで購入し、かつ当初は妻に協力してもらい測定を行った。

図は測定の1例である。脈、飽和度ともに安定するまで2~3分を要している。
充分安定し脈拍が最下点、飽和度が最高点に達した段階で数回測定し平均する。
(10秒おきに記録してもらう。2~3日で自分で行える様になると思う。)

「数点の測定なので残差の和を測定回数の2乗根で割って、、、」などと一応
の作法もあるが要するに図の程度だと誤差は「±1回以内」程度と思って良い。

また私が購入した「1番安物の」酸素飽和度計は誤差5%とある。この手の測定
装置の場合、安い部品で組み上げると保証範囲は大抵は「誤差5%」程度になる。
恐らく原価は3~4千円ではなかろうか、、、。

通常、誤差の大部分は「絶対値成分」に対してなので、相対測定(繰り返し測定
のバラツキ)はそれほど大きくはない。校正装置が無いので確かな事は言えない
が多分相対誤差は±1回程度以内と思われる。

これらの誤差を(2乗平均でも)合計しても約±1~2回以内の測定は可能である。

より難しいのは有意なデータが得られる程度に体調を整えることである。
運動、食事、仕事、ストレス、睡眠、、。人間の心拍数は様々な要因で変動
する。これらは「誤差」では無く、測定値そのものの「変動」である。
抗癌剤治療中はこれらのバックグランドに重なる形で「血液の変化」が現れる。

日常生活を制限し過ぎるのも良くないがイレギュラーな飲酒や睡眠不足は影響
が大きい。典型的な抗癌剤による影響(3~5回の変動/day)が見える程度に
「それ以外の要素による変動」を一定に保った生活を心がける必要がある。
以下は幾つかの仮定と(私の)1症例結果から得られた半実験的な検討である。
是非とも先輩患者や専門家の皆様のご批判、ご指摘を頂きたいテーマである。

私は抗癌剤治療を開始するに至り、ほぼ初めて血液について勉強を行った。
調べ始めると奥が深く、現時点でもごく表層的な理解しか出来ていない。
間違いもあると思うが一般的に説明される血液生成の流れを図に示す。

造血には骨髄中の幹細胞から各血液細胞に至る、分裂・分化の流れがあり概略
1~2週間で生産されるものと思われる。これは私の(最も骨髄が元気だった)
1コース目の経過や培養実験、骨髄移植等から得られる推定と矛盾しない。

この「幹細胞から血液までの流れ」そのものを増やす方法は残念ながら私には
発見できていない。「体調を整え、回復を待つ」しか策が無いのが現状である。
もっとも、何か便利な方法があれば医療機関で活用されているハズなのでやむ
を得ない事なのかもしれない。

しかし赤血球を早く回復させる方法はある(と勝手に考えている)。酸欠や
赤血球不足を感じると腎臓はエリスロポエチン(EPO)という物質を分泌し、
赤血球の増産を促す。このタンパク質は細胞分裂の盛んな前駆細胞のどこか
の段階に作用する為、僅か1~2日で赤血球を増加させる。2000年頃から
様々なスポーツ競技で行われ(続け?)ているドーピングの手口である。

アメリカではEPOによる抗癌剤補助療法が行われている。このプロセスを
「体内の自然な反応」で促すのが私の抗癌剤対策の1つである。

すなわち貧血が酷い場合やヘモグロビンが血液検査で引っ掛かりそうな時、
1.運動(坂登り程度のトレーニング)を取り入れ「酸欠」を進める。
2.同時に日頃は極力取らない牛肉、卵を摂取し造血に必要な材料を身体に
  提供する。経験的には1~2日後に10%前後の赤血球増加が得られる。
3.この「増加」は心拍数の「低下」となる。脈拍は毎朝自宅で観測出来る
  ので「もう大丈夫」と思えば肉食を停止する。

私にとって予想外だったのは、この対策により血小板も同様の回復が得られた
ことであった。EPOはあくまでも赤血球に対する誘導因子である。
理由についてはまだ調査中であるが、この「運動と食事」が血小板の生成を
促す何かの因子を分泌した可能性がないか?と想像している。(詳細は不明)

上図は私が抗癌剤治療でテストした骨髄抑制に対する考え方と方策である。
食事に細心の注意を払う理由はひとえに「体調管理の為」である。肉、卵は
赤血球に対して即効性の効果をもたらすが同時に腸内環境を悪化する。

便の色と質は悪化し、量も減少する。宿便等を形成していることが感じられる。
特に抗癌剤治療中は容易に下痢・便秘を繰り返す。これは「幹細胞から血液へ」
の基本的な造血作用に遅れをもたらす危険性がある。

骨髄抑制対策のベースはあくまでも幹細胞の「回復待ち」である。玄米・菜食は
その為の「守り」である。必要に応じて肉、卵の「攻め」を行う。その指針は
日々の「脈拍」で判断した。

経験的には1コースに4~5日の食べられない期間「ロス」があっても白血球
の80~90%は回復する。このペースさえ維持できれば「健康的に」抗癌剤治療を
継続する事は可能である。他の偶発的なロスを防ぐ事こそが私の闘いであった。
血液状態(骨髄抑制)は抗癌剤治療において最も厳しいハードルを与える。
殆どの患者は最終的には骨髄抑制の為に治療を断念する事になる。

米国臨床腫瘍学会(ASCO)のガイドラインでも「(例えば胚細胞腫瘍など)治癒
可能な症例以外ではG-CSF投与よりも薬剤の減量を考慮すべき」と指導している。

要するに「一定の骨髄抑制が現れたら諦めなさい」ということである。

(統計的余命と)全力で闘う私としては絶対に従う訳にはいかない「常識」である。
このテーマは癌患者にとって非常に重要かつ厚みもあり、後日別途まとめるつもりで
あるが僚友のハンフリーさんが疑問に思われている様なのでその一部を記事にしたい。
骨髄抑制

添付図上段は私の4、5コース目の血小板と白血球の推移である。抗癌剤投与後
低下し、血液が回復したら次の投与、、。癌患者にはお馴染みのパターンである。

下段は「起床後安静時」の脈拍である。副作用の高まりに応じて跳ね上がり徐々に
正常レベルに戻っているのが判ると思う。注目して頂きたいのは投与前数日に脈拍
が「下がって」いる点である。これは私が「狙って」下げているのである。

通常、血液検査は多くても週1~2回である。投与予定日に採血し「白血球が少し不足
です。残念でした、また来週」となる。私は「その合間の体調を知りたい」と思った。

抗癌剤投与後数日間は身体全体が炎症に近い反応を起こしており脈拍は異常に高くなる
(後述するがこの間は心臓マヒに注意!)。そのピークを過ぎたDay14あたりから、
心拍数は白血球や血小板の推移と「逆相関」の関係を示す。

このDay14以降に対する私の(勝手な)解釈は、
1.体重や代謝が同等な身体に酸素を供給する必要がある為、骨髄抑制による酸素量
  低下を補うべく心拍数が上がる。
  (これは「運動したら息が切れる」という事と同じ?)

2.心拍数の増加は「赤血球の濃度低下を補う」程度と推定される。

3.赤血球も白血球も血小板も同じ造血幹細胞から生産される為、脈拍から赤血球数
  が推定されれば、それは白血球の推移も概略示しているハズである。
  (ただしそれぞれ寿命が異なるため血液動態は少し違って観測される。後述。)

さらに、体調を維持し食事や運動を工夫する事で10~20%程度は意図した方向に脈拍
(つまり血液状態)を変動できる様になった(と勝手に思っている)。私の場合は投与日に
65回/分以下の脈拍になるように調整する事で抗癌剤投与条件を満たせることが判った。

(後述の様に)正しく脈拍を測る事は結構難しい(図のデータは誤差±1~2回/分)が、
抗癌剤治療に対して非常に有意な情報を与えてくれた(と勝手に思っている)。

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脈拍の測り方、血液の「制御」のしかた等も出来るだけ早く記載してゆきます。
すいません、、、。
偶然、本ブログへのアクセス件数が判る仕組みがある事に気が付いた。これまで
数人のブロガーの方にご挨拶したのと、癌総合情報ページにリンクを御願いした
事もあり時々順位が変動している認識はあったが、せいぜい「数件/日」程度の
アクセスのつもりでいた。(それも主として患者や医療関係者だけのつもり)

本ブログは準備営業のつもりで、後日掲示板などでご挨拶し「公開」するつもり
で居た。が、予想に反しアクセスは既に「数百件/日」のオーダーである。
検索ツールでもヘタをすると本ブログが抽出される様になり始めている。

正直とまどい「当面、非公開にすべきか?」とも考えたが、リピーターの人も居る
様なのでそれも気が引ける、、。そこで、とりあえず以下のポリシーと注意点を
掲げ、ご指摘・ご批判を受けながら適時修正してゆくことにしたい。

1.公告・誹謗中傷の排除
2.患者、医師、病院名、商品等の匿名化(ただし公的機関とその研究成果等は除く)
3.(主として私の)診療情報に基づく事故・不利益等の免責

尚「国立」がんセンターや「厚労省」「政府官房」と言った税金で設立され運営される
公的機関、独立行政法人名については公開自由とする。ただし、その構成員たる職員
については課長・局長等の1部管理職を除き匿名性を保持したい。


また本ブログの「がん難民」の記事に対しいくつかの感想が寄せられているが、
これらは「病院や医者がひどい」と言った事を訴える為の記事ではない。彼(彼女)
らの判断・指示は今日の医療行政、国内の癌医療の現実からすれば当然の「正しい」
処置なのである。
(勿論、どの業界の若手にもありがちな軽率さや判断・根拠の希薄さはあったが、
 矛盾点を指摘し論点を整理すれば議論可能なレベルであり将来性は充分である。
 最終的には「本当の事」を言ってもらえ大変感謝している。)

私は極普通にがん難民になり、生きるか死ぬかの瀬戸際にも関わらず情報収集や通院
にフル活動することを強いられた。恐らく周囲のサポート無しには今日現在、生存
できて居なかったハズである。今日も同じ様な境遇の人がワラをもすがる思いでネット
を検索しているかも知れない。あるいは同様の体験をして「治療断念」という最悪の
決断をしているかも知れない。少しでも参考になれば、というのが掲載根拠である。

ちなみに、本ブログでは(見られて無いつもりで)ダラダラと治療経過の説明を続けて
きたが進め方や形式にご意見・ご要望があれば是非頂きたいと存じます。特に患者さん
からの質問・要望に対しては出来るだけの対応をしたいと考えています。