タイトルですが、当初「私的整理ガイドライン・コロナ特例」としていましたが、私的整理ガイドラインは大企業の債務整理を念頭に作られた制度であり、中小企業向けにも同様の制度ができたというような誤解を生む可能性があるため、
「自然災害ガイドライン・コロナ特例」に変更いたしました。(2021.8.27)
コロナ対策として融資や特別保証のほか、さまざまなセーフティネットが用意されています。
その一つが、「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」の「新型コロナウイルス感染症に適用する場合の特則」です。
もとからある、「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」をもとにしたものです。このガイドラインは東日本大震災で原型が登場しその後相次ぐ自然災害に対処するため改良を重ね今の形となりました。自然災害により家をなくした人を二重ローンの負担から救う、工場や施設に被害を受けた中小企業個人事業主の債務を整理する、というような対処を念頭に設けられました。
コロナ特例はこの仕組みをベースに、
「コロナウイルス感染症の影響を受け破産等の法的手続きの要件に該当する債務者の債務整理を進め自助努力による生活や事業の再建を目指すもの」とされています。
対象となる債務は、
(1)2020 年2月1日以前に負担していた既往債務
(2)2020 年2月2日以降、本特則制定日(2020 年 10 月 30 日)までに新 型コロナウイルス感染症の影響による収入や売上げ等の減少に対応 することを主な目的として以下のような貸付け等を受けたことに起 因する債務
① 政府系金融機関の新型コロナウイルス感染症特別貸付
② 民間金融機関における実質無利子・無担保融資
③ 民間金融機関における個人向け貸付け
です。
要件は以下のものになります。
① 新型コロナウイルス感染症の影響により収入や売上げ等が減少したこ と(具体的には、基準日以前の収入や売上等に比して自然災害ガイドラ イン第6項(1)の債務整理開始申出日時点における収入や売上等が減 少していること)によって、住宅ローン、住宅のリフォームローンや事業性ローンその他の本特則における対象債務を弁済することができな い又は近い将来において本特則における対象債務を弁済することがで きないことが確実と見込まれること。
② 弁済について誠実であり、その財産状況(負債の状況を含む。)を対象 債権者に対して適正に開示していること。
③ 基準日以前に、対象債務について、期限の利益喪失事由に該当する行 為がなかったこと。ただし、当該対象債権者の同意がある場合はこの限 りでない。
④ 本特則に基づく債務整理を行った場合に、破産手続や民事再生手続と 同等額以上の回収を得られる見込みがあるなど、対象債権者にとっても 経済的な合理性が期待できること。
⑤ 債務者が事業の再建・継続を図ろうとする事業者の場合は、その事業に事業価値があり、対象債権者の支援により再建の可能性があること。
⑥ 反社会的勢力ではなく、そのおそれもないこと。
⑦ 破産法(平成 16 年法律第 75 号)第 252 条第1項(第 10 号を除く。) に規定する免責不許可事由がないこと。
それぞれ、そうだろうな、という妥当な条件だと思います。
中小企業個人事業主の再生をこの仕組みを使ってやろうと思えば、かかわってくるのが②と⑤だと思います。
「弁済について誠実であること」。情報を開示し、隠し立てなく、返せる範囲のものは返してきたこと。
少し深読みすれば、金融機関と信頼関係が築けていること、とも取れます。
「その事業に価値があり、対象債権者の支援により再建の可能性があること」も非常に重い条件です。ただ債務を免除して終わり、ということではなく再生に向かうことができるかどうかが問われます。簡単に言うと営業黒字かどうか、今赤字なら黒字転換する可能性が高いかどうか、ということになると思います。
この特例が適用され、特定調停の合意がなったときには、法人の信用情報に傷はつかず、連帯保証人に対する請求も行われません。
日弁連の報告書によると2021年2-3月にコロナ関連で全国で相談のあった事例、1024件のうち、127件がこの私的整理ガイドラインコロナ特例に関するものだった、としています。
適用にはそれなりのハードルがありますが、行き詰った=破産、ではなくこのような手立てもあることを認識していただければと思います。
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