司法試験 起死回生への道   -18ページ目

司法試験 起死回生への道  

屈辱の論文総合A落ちからどこまではい上がれるかを自己観察し続けるブログです



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 民事訴訟法第一問

一  証明責任とは、判決においてある事実が存否不明の場
  合に、自己に有利な法律効果の発生または不発生が認め
  られないことになる一方当事者の不利益をいう。
   弁論主義とは、判決の基礎となる事実・証拠の収集・
  提出を当事者の権能と責任とする建前をいう。この弁論
  主義から3つの原則が導かれる。すなわち①当事者が主
  張しない事実を判決の基礎とすることはできない②当事
  者に争いのない事実は裁判所を拘束する③争いある事実
  の認定は当事者の提出した証拠による、という原則であ
  る。

二 1 では、弁論主義の下、証明責任はいかなる機能を果
   たしているか、その前提として、証明責任の分配基準
   につき述べる。
    この点、証明責任は当事者の訴訟追行の基準となる
   ものであり、明確性・公平性が要求される。そこで、
   実体法規の用件事実を基準とすべきと考える。具体的
   には、ある法律効果の発生を争う者は、これを基礎づ
   ける権利発生規定の要件事実を、一旦発生した法律効
   果の変更消滅を争う者はこれを基礎づける変更・消滅
   規定の要件事実について証明責任を負うと考える。具
   体的には、消費貸借契約(民法587条)に基づく貸
   金返還請求においては原告が権利根拠規定たる金銭授
   受・返還約束の合意について証明責任を負い、被告が
   権利消滅規定たる弁済の事実について証明責任を負う
   ことになる。
  
  2 (一) まず、前述の第一テーゼからはある主要事
       実について当事者のいずれもが主張がなけれ
       ば裁判所はこれを基礎として判決することは
       できないから、当該主要事実について証明責
       任を負う者は敗訴の危険を負うことになる。
       これを主張責任という。前述の例でいうと、
       原告・被告のいずれもが金銭授受・返還約束
       の合意について主張しなかった場合、これに
       つき主張責任を負う原告は敗訴することにな
       る。これを証明責任を負わない当事者から見
       れば、自ら進んで主張するはないということ
       になる

    (二) 次に、前述の第二テーゼからは、相手方に
       証明責任のある主要事実について自白が成立
       すれば、裁判所はこれに拘束されるし(17
       9条)、自白した者もこれを自由には撤回が
       できなくなる。これを前述の例で見ると、金
       銭授受について自白が成立した場合、これに
       つき証明責任を負っている原告は立証の負担
       から免れる反面、被告はこれを自由に撤回で
       きなくなる。これを証明責任を負わない当事
       者からみれば、自白が成立しないよう注意す
       る必要があることになる。
   
    (三) さらに、前述の第三テーゼからは、争いあ
       る事実の認定は当事者の提出した証拠によっ
       てのみなしうることになる。もっとも、証拠
       の証明力の評価は裁判官の自由心証に委ねら
       れている(247条)。そこで裁判官は証明
       責任を負う当事者・負わない当事者のいずれ
       が提出した証拠であるかを問わず、その者の
       有利にも不利にも事実を認定できることにな
       る。
                    以上

 民事訴訟法第2問

一 事例1について

 1 裁判所のなすべき判決について

    裁判所は、甲債権・乙債権のいずれもが存在し、かつ相殺
   適状にあることについて心証を得ている。そして、Yは乙債
   権を自動債権とする相殺の主張をしている。
    そこで、裁判所は「Xの主張する200万円の甲債権は、
   300万円の乙債権を自動債権とする相殺により全額が消滅
   している。よって、甲の請求を棄却する」との請求棄却判決
   をすべきである。

 2 既判力について
   
   (一) まず、判決主文たる甲債権の不存在について既判力
      が生じる(114条1項)
   
   (二) さらに判決理由中の部分たる乙債権が200万円の
      限度で消滅した点についても既判力が生じることにな
      る(114条2項)。
       たしかに、判決理由中の判断には既判力は生じない
      のが原則である。なぜなら、当事者の紛争解決のため
      には主文のみに既判力を及ぼせばそれで足りるからで
      ある。しかし、例外として相殺の抗弁については理由
      中の判断についても既判力を及ぼさないと、別訴で訴
      求債権の存否が蒸し返され、紛争解決の実効性を損な
      うおそれがあるからである。

   (三) よって、甲債権の不存在のみならず、乙債権につい
      ても相殺で対抗した200万円の消滅についても既判
      力が生じる。そして、XYのいずれもこれについて後
      訴で争うことはできない


二 事例2について
    
  1 裁判所のなすべき判決について

    裁判所は、甲債権が存在すること及び乙債権も存在してい
   たが、Xが乙債権について全額弁済したことについて心証を
   得ている。そこで、裁判所は「Yの相殺の抗弁についてはX
   の弁済により理由がない。よって、YはXに対し、貸金20
   0万円を支払え」との請求認容判決をなすべきである。

  2 既判力について
   
  (一) まず、判決主文たる甲債権の存在について既判力が生
     じる(114条1項)

   
  (二) さらに、前述のように相殺の抗弁については既判力が
     生じるから、相殺に供された乙債権が不存在である点に
     ついても既判力が生じる(114条2項)

三 事例3について

 1 裁判所のなすべき判決について
   
  (一) Xの主張する相殺の抗弁は、Yの相殺の抗弁を理由な
     からしめるための再抗弁である。そして、裁判所は甲・
     乙・丙債権のいずれもが存在し、かつ相殺適状にあった
     ことにつき心証を得ているため、Xの請求を認容する判
     決をなすべきか

  (二) 思うに114条2項は判決理由中の判断に既判力が生
     じる唯一の例外である。また、再抗弁についてまでも既
     判力が生じるとすれば、既判力の及ぶ範囲が不明確とな
     り、法的安定性を害する

  (三) よって、裁判所はXの抗弁についてふれるべきでなく、
     事例1と同じく「Xの主張する~棄却する」との判決を
     すべきである。


 2 判決について 

   裁判所のなす判決が事例1と同じである以上、その既判力も
  事例1と同じである。そして、丙債権の存否については既判力
  は生じないから、XYが別訴でこれを争うことは可能である。

                     以上


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刑法第一問

一 甲の罪責について
 
 1 甲は殺意をもって出刃包丁でAの腹部を一回突き刺しており、
  かかる行為は人の死という結果発生の危険性を有する行為であ
  るから、殺人罪(199条)の実行行為にあたる。
   ただし、AはBに救助されて一命を取り留めており、Aの死の
  結果は発生していないから未遂となる(203条、199条)
 
 2 もっとも、甲は刺突後にAの出欠を見て大変なことをしたと
  思ってAを救命しようとしている。そこで、中止犯(43条但
  書)が成立し、その刑が必要的に減刑・免除されないか。中
  止犯が成立するためには①「自己の意思により」②「犯罪を中
  止した」ことが必要であるが、甲はかかる要件を満たすか

 (一) まず甲は「自己の意思により」の要件を満たすか、中止
    犯の法的性質に関わり問題となる。
     思うに、中止犯が成立した場合、その刑が必要的に減刑
    免除されるのは責任が減少するからに他ならないと考える。
    なぜなら、責任とは犯罪を決意した点に対する道義的非難
    であり、犯罪を決意した意思を撤回したり、結果不発生に
    向けた行為があれば責任が減少するといえるからである。
     そして、「自己の意思により」といえるためには「やろ
    うと思えばできたがやらなかった」といえればよいと考え
    る。
     本問では、甲はそのまま何度もAを出刃包丁で突き刺せば
    容易にAを死に至らしめることができたにもかかわらず、大
    変なことをしたと悔悟し、これを中断している。よって、
    甲は「自己の意思により」の要件を満たす。

 (二) 次に、甲は「犯罪を中止した」の要件を満たすか。前述の
    責任減少説からは、実行行為が終了した後は、結果不発生に
    向けた真剣な努力が必要となる
     これを本問についてみると、確かに甲はタオルで止血して
    Aが失血死しないようにし、携帯電話で119番通報を試み
    てもいる。しかし、同居人乙のいうがまま「くれぐれもよろ
    しく頼む」とAを残したまま逃走し、医者に状況を説明するこ
    とはおろか、救急車が現実に到着したかどうかも確認してい
    ない。
     とすれば、甲には結果不発生に向けた真剣な努力がみられ
    ず、「犯罪を中止した」の要件を満たさない。

 (三) よって、甲には中止犯は成立しない


 3 以上より、甲にはAに対する殺人未遂罪(203条 199条)
  が成立し、その罪責を負う。

二 乙の罪責について
 
 1 乙は失血死寸前のAを放置したまま外出している。そこで、乙が
  Aを救命しなかったという不作為について、殺人罪(199条)の
  実行行為性があるか、不作為犯の実行行為性が問題となる。

 2(一) ここに、実行行為とは構成要件結果発生の現実的危険性
     を有する行為をいう。そして、不作為によっても構成要件
     結果の発生は可能であるから、不作為にも実行行為性あり
     といえる。ただ、あらゆる不作為に実行行為性を認めれば
     処罰範囲が不当に拡大し、自由保障機能を害する。そこで、
     不作為に実行行為性が認められるためには①作為義務の存
     在②作為の容易性・可能性③作為との同価値性が必要と考
     える
   
  (二) これを本問について見ると、①社会通念上、寝食を共に
     する者同士は互いの生命・身体の安全に配慮する義務があ
     ると解されるところ、乙はAと同居しており、Aの生命の安
     全に配慮する義務があるといえる。そして②乙がAを救命す
     るために119番通報をすることは容易であるし、また可
     能でもある。さらに③Aが瀕死の状態にあることを知ってい
     る乙を逃走させており、Aの生死は乙の手に委ねられている
     といえ、作為との同価値性の要件も満たす。
   
  (三) 以上より、乙の不作為は殺人罪(199条)の実行行為性
     ありといえる

 3 もっとも、Aはその後Bに救命されたため、死の結果は発生せず未
  遂(203条、199条)となる。
 

 4 以上より、乙はAに対し、殺人未遂罪(203条、199条)の罪
  を負う。

                           以上


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刑法第二問

一 甲の罪責について

 1 第二売買について
  
 (一)(1) まず、Aに対して土地を売却した後、さらにこれを
       Bにも売却した点につき、Aに対する横領罪(252条
       1項)が成立するか
  
    (2) まず、甲はAから代金全額を受け取っていることか
       らこの時点で所有権は甲からAに移転し、土地は「他
       人の物」といえる。そして、「占有」とは濫用のおそ
       れのある支配力をいい、事実上の支配だけでなく法律
       上の支配も含むところ、甲は登記名義を有しているの
       で法律上の支配を有しており、「占有」ありといえる。
       さらに、甲はAがその所有権を第三者に対抗できるよう
       にする義務を負っており、委託信任関係もある。さら
       に「横領」とは委託の趣旨に反してその物につき権限
       がないのに所有者でなければできないような意思が外
       部に発現することをいう。この点、甲はBから売買代
       金を受け取っただけであり、登記までは移転してない
       ことから、所有者でなければできない意思が外部に現
       れたとまではいえず、甲の行為は「横領」と評価する
       ことはできない。
  
    (3) よって、Aに対する横領罪は成立しない

 
 (二)(1) 次に、土地を既にAに売却していた事実を秘してさら
       にBに売却し、代金を受け取った点につき、Bに対する
       1項詐欺罪(246条1項)が成立するか。
    (2) 思うに、民法上、先に対抗要件たる登記を備えれば
       自己の権利を第三者に対抗できる以上(民法177条)
       財産上の損害は発生しないといえる。

    (3) よって、Bに対する1項詐欺罪は成立しない

 2 Cに抵当権を設定した行為について
 
 (一)(1) 前述のように、甲は「委託信任関係」に基づいて「他
       人の物」たるAの土地を「占有」している。そして、その
       後Cに抵当権の登記を備えさせ、Aに対抗できる地位を得
       させることは所有者でなければできない意思が外部に発
       現しているといえるから、かかる行為は「横領した」と
       いえる。
     
    (2) よって、かかる行為についてAに対する横領罪(252
       条1項)が成立する

 (二) さらに、Cに対する詐欺罪の成否が問題となるも、Cは登記を
    備えたことにより抵当権をAに対抗できる(民法177条)ので
    あるから、Cには財産上の損失はなくCに対する詐欺罪(246
    条1項)は成立しない

 3 乙に土地を売却した行為について

 (一) では、さらに乙に対して土地を売却して所有権移転登記を備
    えた点につき、Aに対して横領罪(252条1項)がまた成立す
    るか。
       
 (二) 思うに、抵当権の設定にとどまるのであれば本人は不完全な
    がらも所有権を対抗できるのであり、委託信任関係が破壊しつ
    くされたとはいえない。とすれば、委託信任関係の破壊程度が
    重大な所有権移転登記をすれば横領罪がまた成立すると考える

 (三) よって、甲にはAに対する横領罪(252条1項)が成立する
  

 4 以上より、甲には横領罪(252条1項)が2つ成立するが、後
  者の方が委託信任関係の破壊程度が大きいため、前者は後者に吸収
  され、包括一罪となる

二 乙の罪責について

  乙が甲から買い受けた土地は甲の横領行為によって領得された財物
 である。そして、乙はこれを知って買い受けているので、盗品有償譲
 受罪(256条2項)が成立し、その罪責を負う。


                          以上

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商法第一問

一 設問前段について

 1 株主Bは、新株発行無効の訴え(280条ノ15)を提起す
  ることにより、Q社に対する新株発行の無効を主張するという
  手段をとることができないか。

 2(一) この点、280条ノ15は何が新株発行の無効事由と
     なるかについて何も規定していない。そこで、何が新株
     発行の無効事由となるかは、新株を引き受ける者の取引
     の安全や旧株主が受ける不利益を総合衡量して決すべき
     である
   
      まず、新株発行にあたって株主総会特別決議(280
     条ノ2第2項)を欠いたことが新株発行の無効事由とな
     るか。  
      確かに、新株の発行により、旧株主は株価の下落等の
     不利益を受けることになる。しかし、思うに、授権資本
     制度(280条ノ2第1項本文)を採用する現行法の下
     では、新株発行は取締役会の権限に委ねられているので
     あり、取引行為に準ずるものといえる。そして、特別決
     議を経たかどうかは会社外の第三者には不明確なところ、
     かかる理由を持って新株発行が直ちに無効になるとすれ
     株式を引き受けた者に対し不測の損害をもたらすことに
     なる。とすれば、株主総会特別決議を欠いたことは、新
     株発行の無効事由にならないと考える。

  (二) 次に、「特ニ有利ナル価格」で新株を発行した点につ
     いて、無効事由となるかも問題となるが、この点につい
     ても(二)と同じく、会社外の第三者にとっては不明確
     であることから、無効事由とならないと考える。
   
  (三) よって、Bは新株発行無効の訴え(280条ノ15)
     により新株発行の無効を主張するという手段をとること
     はできない。
   
 2(一) そこで、株価の大幅な下落という損失を受けたBは、
     266条ノ3に基づき代表取締役Aに対し損害賠償を請
     求するという手段をとることができるか。

  (二) そもそも、266条ノ3の趣旨は、株式会社が経済社
     会において重要な地位を占めていること、そして会社の
     経営が取締役の職務に依存していることから、第三者保
     護の観点から特に取締役の責任を加重した法廷責任であ
     る。とれば、悪意・重過失は職務懈怠の点にあれば足り
     ると考える。
      本問では、代表取締役Aは株主総会特別決議を経ずに
     発行価額の20分の1もの安値で新株を発行しており、
     職務懈怠につき悪意といえる。そして、損害には間接損
     害も含まれると考えるので、株価の下落という間接損害
     も266条ノ3の損害に含まれる。そして、株主も会社
     との関係では第三者といえる。

  (三) 以上より、BはAに対し、266条ノ3に基づき損害賠
     償を請求するという手段をとることができる。

二 設問後段について
 
 1 それでは、新株発行事項の公示(280条ノ3ノ2)がなさ
  れていなかった場合において、Bは新株発行無効の訴えにより
  新株発行の無効を主張することができないか
 
 2 そもそも230ノ3ノ2の趣旨は、新株発行が旧株主の利益
  にとって特に重要であることに鑑み、これを事前に公示するこ
  とにより旧株主に不当に不利益を被らせないために設けられた
  点にある。とすれば、かかる目的は旧株主保護のために特に重
  要といえ、新株が無効とされることにより被る株式の引受人の
  不利益よりも重大といえる。よって、新株発行の公示を欠いた
  ことは新株発行の無効事由となると考える。
 
 3 以上により、設問後段の場合においては、Bは新株発行無効
  の訴えにより新株発行の無効を主張するという手段をとりうる。
 
 4 また、設問前段と同じく、266条ノ3によりAに対して株価
  下落についての損害賠償を請求するという手段をとることもでき
  る。

                       以上

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商法第二問
 
一 A社に対する手形金の請求について

 1 甲はA社の代表取締役ではないから、甲には手形の振出権限はない。
  よって、甲が「A株式会社代表取締役甲」名義で手形を振り出しても
  本人たるA社には効果帰属せず、A社の追認なき限りCはA社に対して
  手形金の支払いを請求できないのが原則である。 
 
 2(一) もっとも、表見代表取締役の規定(262条)によりCが
     保護される場合には、例外的にCはA社に対し手形金の支払い
     を請求できる。では、Cはかかる規定により保護されるか
   
  (二) そもそも262条の趣旨は、会社の犠牲の下、代表取締役ら
     しい外観を有する取締役の行為を信頼した第三者を保護する点
     にある。
      まず、取締役甲は議事録を偽造し、A社の代表取締役に就任
     した旨の登記をしており、あたかもA社の代表取締役であるか
     のような虚偽の外観が存在する。そして、A社がかかる事態に
     ついて知りつつ放置したというのであれば、消極ではあるが
     「附シタ」と評価でき、外観作出についての帰責性も認められ
     る。
      さらに、「善意」であるが、手形取引安全をはかる観点から
     は善意無重過失であればよいと考える。そして、手形の転々流
     通性質からは、転得者も保護されると考える
  
 3 以上より、受取人BもしくはCが、甲が手形の振出権限がないこと
  について善意無重過失である場合には、262条によりCはA社に対し
  手形金の支払を請求できる

二 Bに対する手形金の支払請求について

 1 CのA社に対する手形金の支払請求が認められる場合には、Bに対し
  ても手形金の請求が認められることについて問題はない。では、Cが
  262条により保護されず、A社に対する手形金の支払請求ができない
  場合についても、Cは裏書人Bに対して手形金の支払請求ができるか、
  手形行為独立の原則(手形法77条2項、7条)が裏書にも適用され
  るかが問題となる。

 2 思うに、裏書に手形行為独立の原則が適用されないとすれば、手形
  行為独立の原則の意義が小さくなりすぎる。そこで、裏書にも適用さ
  れると考える。
   もっとも、手形行為独立の原則は、手形取引安全の観点から政策的
  に認められたものであるから、手形行為独立の原則により保護される
  ためには政策的に保護に値する事情が必要と考える。そこで、悪意ま
  たは重過失で手形を取得した者は手形行為独立の原則による保護は受
  けられないと考える
 
 3 以上より、Cが262条により保護されず、A社に対する手形金の支
  払請求ができない場合には、手形行為独立の原則による保護もうけら
  れず、CはBに対して手形金の支払を請求することはできない。

三 甲に対する手形金の支払請求について
  
   甲は取締役にすぎず、甲の手形振り出し行為は無権代表行為である。
  そこで、甲は無権代理人として手形上の責任を負う(77条2項、8
  条)。
   もっとも、8条の趣旨は手形取引の安全を図るための規定であるから、
  8条で保護されるためには無権代理行為であることにつき善意であるこ
  とを要すると考える。
   そこで、Cは、甲がA社の代表取締役でないことにつき善意であれば、
  甲に対して手形金の支払を請求することができる

                            以上

 再現率80パーセント
                         
    
  

  
     

民法第一問

一 小問1について

 1 まず、Aは641条によりBとの請負契約を終了させる旨の
  主張をすることが考えられる、
   そもそも641条の趣旨は、注文者にとって不要になった
  契約の目的について注文者の意思に反してまで履行させるこ
  無意味であることから設けられた規定である。もっとも、6
  41条によって契約を終了するためには請負人に損害賠償を
  する義務があるため、基礎工事の完全性について不満を有す
  るにすぎないAにとっては、損害賠償をしたうえでBとの請負
  契約を終了させることはAの意思にそぐわないものと思われ
  る。

 2(一) そこで、Aは請負契約に付随する説明義務に違反し
     たとして、これの債務不履行による解除を主張してB
     との請負契約を終了させる旨の主張をすることができ
     ないか。

  (二) 思うに、契約という特別の社会的接触関係に入った
     当事者間には、契約そのものの債務の履行だけでなく、
     これに付随して相手方に不当に損害を被らせないよう
     に契約の内容についても説明する義務をも負うものと
     考える。もっとも、軽微な説明義務の利口を怠ったこ
     とを理由に債務不履行解除を認めたのでは、契約の安
     定性を不当に害し妥当でない。そこで、説明内容が当
     事者にとって客観的に重要であり、相手方にとって特
     に不利益ともならず、この不履行による負担が著しい
     場合に限り、説明義務違反による債務不履行解除が認
     められると考える。

  (三) 本小問では、建物の基礎工事が不完全なまま建築を
     続行すれば軽微な天災等により建物が崩落し居住でき
     なくなるおそれがある。しかも請負契約の代金は20
     00万円とかなりの高額に上るのであり、その上その
     半額が内金として契約締結時に支払われているのであ
     るから、基礎工事の適切性は当事者たるAにとっては
     客観的に重要な事項といえる。また、基礎工事の内容
     が本当に適切なのかどうなのかは建築のプロたるBに
     とっては簡単かつ明白であり、これをAに対して説明
     することが特に重たい負担となるわけでもない。以上
     の点を総合考慮すれば、Bの説明を受けないまま工事
     を続行されるAの不利益は重大であるといえ、AはBに対
     して説明義務の債務不履行に基いて契約を解除するこ
     とができる。
   
 3 以上より、AはBとの契約関係を終了させるために請負契約
  の内容の説明義務違反による債務不履行解除を主張すること
  ができる。

二 小問2について

 1 Bが建物を完成させたため、Aは641条に基づく解除を理
  由にAからの請負代金請求を拒むことはできない。
 
 2(一)(1) もっとも、Bの屋根の防水工事の手抜きによ
        り2階に雨漏りが生じており、その補修工事に
        要する費用100万円に相当する損害がAに生じ
        ている。そこで、AはBの請負残代金請求に対し
        て、634条に基づき屋根の補修を要求し、こ
        れがあるまで代金の支払いを拒むとの主張をす
        ることが考えられる。
  
     (2) まず、雨漏りするような家では日常生活もま
        まならず誰も住みたくないと考えるだろうから、
        雨漏りという瑕疵は重要である。また、補修費
        費用100万円は高額とも思えるが、請負契約
        の代金総額が2000万円に比して過分とまで
        はいえないし、請負人たるBには補修できるだ
        けの能力を持ち合わせているはずだから瑕疵修
        補義務を課してもBに格別不当というわけでもな
        い。よって、AはBに対し、634条に基づいて
        屋根の補修を要求し、これがあるまで代金の支
        払いを拒むとの主張をすることができる。

  (二) では、雨漏りによってパソコンが使い物にならなく
     なった結果生じた50万円の損害についてはどうか。
     パソコン故障の損害は、雨漏りに起因して生じた拡大
     損害であるが、かかる損害についてもAはBに対し損害
     賠償請求をなしうるか。
      思うに、瑕疵のない仕事をするのが請負人の義務で 
     あるのであり、またそれだけの技量を請負人は備えて
     いる。そこで、請負人の損害賠償義務は瑕疵からら生
     じた拡大損害にまで及ぶと考える
      よって、AはBに対し、パソコン故障の損害について
     も損害賠償請求をなしうる。また。同時履行について
     も同様である


  (三)(1) さらに、AはBに対し、請負代金の残額と上記
        の損害賠償とを相殺し、850万円のみ払う旨
        主張することができないか。両債権には同時履
        行の抗弁権が付着しているため、相殺が許され
        ないのではないかが問題となる
 
     (2) 思うに、請負代金債権と損害賠償債権とは同
        じ金銭の給付を目的とするし、必ずしも現実の
        履行を強制する必要に乏しい。また、簡易な清
        算を認める方が契約当事者の意思にも合致する。
        よって、請負代金債権と損害賠償債権の相殺は
        認められると考える。
     
     (3) 以上より、Aは、Bに対して相殺を主張して8
        50万円のみ支払う旨の主張をすることができ
        る。

                          以上。
                     

   再現率80パーセント 

  民法第二問
 
一 1 Eは、Aが甲不動産に対して有する第一順位の抵当権設定
   登記の抹消を請求するために、抵当権の披担保債権たるB
   に対する貸付金債権の消滅時効が完成しておりこれを援用
   する旨の主張をすることが考えられる。これに対し、Aと
   しては、後順位抵当権者Eは時効の援用をなし得る「第三
   者」(145条)たりえないと反論し、Eの請求を拒むこ
   とが考えられる。では、いずれの主張もしくは反論が適切
   か。

  2 そもそも時効制度の趣旨は①永続した事実状態の尊重②
   権利の上に眠る者は保護しない③立証の困難の救済にある。
   そして、時効援用をなし得る「当事者」とは①永続した事
   実状態の尊重という観点からは、時効により直接の利益を
   うける者をいうと考える

  3 これを本問についてみると、確かに後順位抵当権者に時
   効の援用を認めれば、目的物から優先弁済を受けられる可
   能が高くなる。しかし、かかる利益は事実上のものにすぎ
   ないし、後順位抵当権者に時効の援用を認めなくても後順
   位抵当権者が抵当権を有することが否定されるわけではな
   い。とすれば、後順位抵当権者は時効の完成により間接的
   に利益を受けるにすぎず、時効の援用をなし得る「第三者」
  (145条)に当たらないといえる。
   
  4 以上より、後順位抵当権者EはAの主債務の消滅時効の援
   用をなしえず、Aの反論が適切である。

二 1 次に、Eは、抵当権設定者Cの有する消滅時効の援用権を
   代位行使(423条)することにより、Aが甲不動産に対
   して有する第一順位の抵当権設定登記の抹消を請求する旨
   の主張をすることが考えられる。これに対し、Aとしては
   ①物上保証人Cも時効の援用をなしうる「第三者」ではな
   いこと、②仮に「第三者」であるとしても、Cの時効援用
   は権利の濫用(1条3項)にあたるから、その代位行使
   も許されないと反論することが考えられる。ではいずれの
   主張もしくは反論が適切か。

  2(一) まず、①物上保証人Cが時効の援用をなし得る「
      第三者」たりうるかについては、Eの主張が適切と
      考える。なぜなら、抵当権設定者は時効の援用によ
      り抵当権の実行・目的物の喪失という負担から免れ
      ることができるから、時効の完成につき直接の利益
      を受けるからである。

   (二)(1) では、抵当権設定者Cの、主債務の消滅時
         効の援用が権利の濫用(1条3項)にあたり
         代位行使も許されないという点についてはど
         うか。

      (2) 思うに、時効の援用が権利の濫用にあたる
         か否かは、債務の内容・時効の援用により援
         用権者が受ける利益・債権者が被る不利益を
         総合考慮して決すべきと考える。
   
      (3) これを本問についてみると、確かにBの主
         債務は2000万円とかなり重たく、物上
         保証人Cが時効を援用してこれを担保する抵
         当権の負担から免れる利益は大きい。しかし、
         Cは抵当権の実行を避けるために複数回にもわ
         たって800万円もの金額を弁済し、残額に
         ついても代わって弁済する旨繰り返し申し出
         ていることから、Aとしては「CはBの父親だか
         ら代わりにきちんと払ってくれるのだろう」
         と信頼して、主債務について特に時効中断の
         手続をとらななかったものと思われる。かか
         る事情にもかかわらず、物上保証人Cが手の
         ひらを返して主債務の時効を援用することは
         債権者Aに著しい不利益を及ぼすものといえ、
         権利の濫用(1条3項)にあたり許されない。
      
      (4) 以上より、物上保証人Cが主債務の時効消滅
         を援用することは権利の濫用にあたり許され
         ないことから、これを後順位抵当権者Eが代位
         行使することも許されない。

三 このように考えることは、後順位抵当権者Eが弁済の機会を得
 られないことになりEにとって酷とも思われる。しかし、以前か
 ら第一順位の抵当権を有していたAが抵当権を突然失うことの方
 がもっと酷であり、かかる結論は妥当と考える。
                          
                           以上
 再現率80パーセント 

                
   

       
    
憲法第一問

一 1 本問法律は、性犯罪者のプライバシー権を侵害するものであ
   り違憲ではないか。まず、そもそもプライバシー権が憲法上保
   障されるか、憲法上プライバシー権に関する明文規定がないた
   め問題となる。
  
  2 思うに、憲法は人権カタログにある権利しか保障しない趣旨
   ではなく、制定当初において特に重要と考えられていた人権に
   ついて規定したにすぎない。そこで、人権カタログに無い権利
   であっても、人格的生存に不可欠と考えられる権利については
   新しい人権として13条後段により保障されると考える。
  
  3 これを本問についてみると、前科・前歴に関わる情報は個人
   情報の中でももっとも他人に知られたくない情報であり、これ
   らが不当に他人の自由に委ねられれば、実生活での信用を失う
   ことも考えられる。とすれば、かかるかかる情報をコントロー
   ルする権利としてのプライバシー兼は人格的生存に不可欠であ
   るといえ、13条後段により保障される。

二 1 もっとも、かかる人権も絶対無制約なものではなく、公共の
   福祉(12条、13条)による必要最小限度の制約を受ける。
   では、本問法律における性犯罪者についての個人情報の開示が、
   プライバシー権に対する必要最小限としての制約として合憲と
   いえるか、違憲審査基準が問題となる。
     
  2 思うに、前述のように前科・前歴にかかわる情報は個人情報
   の中でももっとも他者に知られたくない情報であり、これが不
   当に侵害されれば実生活で他社からの信用を失う等の不利益を
   負うことから特に保護すべき必要があるといえる。そこで、プ
   ライバシー権に対する必要最小限の制約として制約として合憲
   となるためには、①目的が重要であり、②かつ、目的と手段と
   の間に実質的関連性を要するという厳格な合理性の基準によっ
   て判断すべきと考える。
   
  3 これを本問についてみると、①13歳未満の子供は未だ発育
   途上にあり、自己で独立した生活を営むことができず、しかも
   心身ともにぜい弱であることから性犯罪からに自己を防衛する
   ことは著しく困難であるといえる。そこで、保護者たる親権者
   が子供に代わって性犯罪者から子供を守る必要がある。そして、
   これを容易にするためにためには、子供に対して性犯罪を犯す
   可能性がある者がどこにいるかをあらかじめ知る必要があると
   いえ、本問法律は重要な目的を有するといえる。そして、②子
   供が接触し、加害者となりうる可能性が高い犯罪者は同一市町
   村内に居住する者である。そして、かかる者による性犯罪から
   から子供を保護するためには、事前にこれらの者を特定するに
   足りる関する情報が必要であるところ、氏名・住所・顔写真が
   あってはじめて特定が可能となるといえる。また、開示される
   のは前述の情報だけにとどまり、過去の具体的な犯罪態事実ま
   でもが開示されるわけでもないから目的との関係では過ぎたも
   のといえず、目的との関係でも実質的な関連性を有するといえ
   る。
    とすれば、本問法律は性犯罪者のプライバシー権に対する必
   要最小限度の制約といえ、不当な侵害とはいえず合憲である。

                          以上


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憲法第二問
 
一 設問前段について
  
 1 公職選挙法第10条は、衆議院議員と参議院議員とで、被
  選挙権の資格について年齢差をもうけている。そこで、年齢
  による差別として憲法44条但書の趣旨に反し、違憲ではな
  いか。

 2 確かに、議員定数や選挙人の資格については立法裁量に委
  ねられている。しかし、かかる立法裁量も法の支配の下、憲
  法には拘束される。そして、そもそも44条但書が「人種~
  収入によって差別してはならない」規定した趣旨は、法の下
  の平等について規定した14条1項の趣旨のあらわれであり、
  憲法の明文上認められた例外以外の事由による差別も禁止さ
  れていると考える。
 
 3 そして、憲法は両議院の構成について、衆議院議員につい
  ては任期を4年、参議院議員については6年とし、衆議院に
  ついて解散規定を設けているにすぎない。
   とすれば、公職選挙法第10条は44条但書は、参議院の
  被選挙権の資格について年齢による差別を設けている点で4
  4条但書の趣旨に反し、違憲である。

二 設問後段について

 1 それでは、衆議院議員及び参議院議員のいずれも披選挙権
  の資格を年齢満35歳以上の者とすることについてはどうか。
  前段と異なり、両議員とも被選挙権の年齢については同じで
  あるから、かかる点については差別はない。しかし、35歳
  未満の若手には被選挙権が認められない点でやはり年齢によ
  る差別として44条但書の趣旨に反し、違憲ではないか。

 2 確かに、国会の果たすべき役割である多数の民意の反映・
  統合を達成するためには、一定程度の人生経験・教養や、政
  治的資質が求められることは否定できない。しかし、かかる
  資質等を備えているかどうかは本来選挙民が行うことである
  はずである。また、若手の斬新な政治的意見が国政に反映さ
  れないという問題もある。そして、成人以上であれば民意の
  反映・統合という能力について備わりだすと思われる。
   とすれば、両議員の議員の被選挙権を成人まで引き下げる
  ことは容認されるが、これより引き上げることはやはり年齢
  による不当な差別として憲法44条但書に反して違憲になる
  と考える。
 
 3 以上より、本問後段の改正は国会議員の被選挙権について
  被選挙権の年齢により若手を不当に差別するものであり、4
  4条但書の趣旨に反し、違憲である。

                      以上


  再現率80パーセント
  

      
    
一 警察官が、連続強盗事件の犯人を特定すべく、カメラを設置し
 て甲宅から出てきた甲の容ぼうおよび乙の容ぼうを写真撮影した
 ことは適法か。もしかかる写真撮影が強制処分にあたるとすれば
 かかる撮影は無令状で行われているため、違法となる。そこで、
 強制処分と任意処分の区別が問題となる。

二 1 この点、有形力の行使を基準に強制処分か任意処分かを区
   別する見解もある。しかし、現代においては科学技術の発達
   により盗聴のように有形力を行使しなくても通信の秘密(憲
   法21条2項)やプライバシー権(同13条)を侵害する新
   しい捜査方法もあることから、かかる基準は妥当でない。そ
   こで、強制処分か任意処分か否かは、個人の意思に反してそ
   の重要な権利を侵害するおそれがあるか否かに求めるべきと
   考える

  2 本問においては、写真撮影かなされれば、いつどこで何を
   していたか明らかになってしまうことから、プライバシー権
   (憲法13条)という重要な権利を侵害するおそれがあるの
   であり、原則として強制処分に当たるといえる。
    もっとも、自宅内でくつろいでいるようなところを撮影し
   たような場合とは異なり、公道での写真撮影はプライバシー
   権が放棄されているといえるから強制処分にはあたらず任意
   処分として許されると考える。

三 1 もっとも、任意処分だからといってこれが無制約になされ
   たのでは国民の権利・自由を不当に侵害するおそれがある。
   そこで、かかる写真撮影が任意捜査として適法とされるため
   には、写真撮影の必要性があり、具体的状況の下で相当と認
   められる限度において行われることが必要である。以下、甲
   ・乙について行われた写真撮影について必要性と相当性の要
   件を満たし、任意捜査として適法か否かを検討する。

  2(一) 甲について
       甲は「集団による~グループの一員」の疑いが濃厚
      とされている。また、強盗事件においては被害者が反
      抗抑圧されてしまうことから、被害者の証言だけで犯
      人の素性をつかむことは著しく困難であり、犯人の特
      定のためには似顔絵などによるよりも写真の方が確実
      であるといえ、写真撮影の必要性は認められる。そし
      て、撮影した場所もビルの一室から見渡せる限りの範
      囲を撮影したのではなく、甲宅の出入り口付近に限っ
      ており、相当性の要件をも満たす。
       したがって、甲の容ぼうを撮影したことは任意捜査
      として適法である。

   (二) 乙について
       本問で捜査の対象となっている事件は単独犯による
      犯行ではなく「集団による連続強盗事件」なのである
      から、犯行グループの一員であるとの疑いのある人物
      宅に常時出入りする者についても共犯者であるとの疑
      いが濃厚といえる。よって、甲宅から出てきた乙につ
      いて写真撮影をすることは甲と同様、必要性が認めら
      れる。次に、甲と異なり、甲宅前ではなく路上を歩行
      しているところを撮影されていることから相当性の要
      件を満たさないのではないかが問題となるが、カメラ
      の設置場所いかんでは乙の容ぼうを適切に撮影するこ
      とが困難であることも考えられる。また、甲と異なり、
      乙にとっては甲宅は生活の本拠地ではないのだから次
      に撮影するチャンスが必ずしもあるとは限らない。し
      たがって、路上を歩いているところを撮影した点につ
      いてもなお相当性の要件を満たすといえる。                     したがって、乙の容ぼうを写真撮影した点について
      も任意捜査として適法である。

                      以上

一 本問における検察官面前長所は裁判所の面前での反対
 尋問を経ていない供述証拠であり、伝聞証拠にあたる。
 そして、伝聞証拠には原則として証拠能力が認められな
 い(320条1項)。なぜなら、供述証拠は知覚・記憶
 ・表現・叙述の過程を経て裁判所に到達するが、各過程
 には誤りが混入するおそれがあるのであり、これを反対
 尋問(憲法37条2項)でチェックする必要があるから
 である。
  そこで、検察官面前調書を甲に対する証拠とすること
 ができるためには伝聞例外(321条~328条)の要
 件を満たす必要がある。以下、審理経過に言及しつつ論
 ずる。

二 1 まず、甲の同意があるのであれば反対尋問権(憲
   法37条2項)の放棄があったといえるから、検察
   官面前調書を甲に対する証拠とすることができる。
   もっとも、甲は捜査・公判を通じて否認しているこ
   とから、かかる同意を得ることは困難と思われる

  2(一) そこで、甲と乙が共同正犯として起訴され
      て併合審理されていることから、共同被告人
      たる乙の自白を録取した当該調書を自白調書
     (322条1項)として証拠能力を肯定し、証
      拠とすることができないか。

   (二) 思うに、共同被告人であっても、本人から
      見れば「第三者」であるし、共同被告人同士
      で利害対立がある場合もあることから、任意
      性の要件だけで証拠能力が認められる322
      条1項を安易に用いるのは危険である。

   (三) したがって、322条1項によっては証拠
      能力を肯定できないから甲に対する証拠とす
      ることはできない

三 321条1項2号による場合
 1 そこで、本問の供述調書が検察官面前調書であるこ
  とから、これについて規定した321条1項2号によ
  り証拠能力が認められ甲に対する証拠とすることがで
  きないか。以下、2号の要件を満たすかを検討する

 2(一)2号前段による場合について
   (1) 乙に対する被告人質問に対して乙が黙秘権
     (311条1項)を行使した場合、2号前段に
      より証拠能力を肯定できるか。
                           
   (2) まず、2号前段列挙事由が例示列挙か限定
      列挙かが問題となるが、これらは証拠とする
      ことの必要性を示したにすぎず例示列挙であ
      ると考える。そして、黙秘権行使が2号前段
      の供述不能に該当するかが問題となるが、黙
      秘権が行使されれば何らの供述も得られない
      のであるから、供述不能の要件を満たすとい
      える。さらに、検察官は一方当事者であるこ
      とから、2号前段が合憲となるためには後段
      と同じく特信状況が必要と考える。
                          
   (3) 以上より、乙が黙秘権を行使した場合、特
      信状況が認められるのであれば2号前段によ
      り検察官面前調書に証拠能力が認められ、甲
      に対する証拠とすることができる。

  (二) 2号後段による場合について
      2号後段によって証拠能力が認められるため
     には、相反供述がなされたか、実質的に異なっ
     た供述がなされ、さらに特信状況が肯定される
     ことが必要である。そこで、乙に対し反対質問
     がなされたにもかかわらず、否認を続けた等の
     事情があり、特信状況も認められるのであれば、
     2号後段により検察官面前調書に証拠能力が認
     められ、甲に対する証拠とすることができる。

三 弾劾証拠(328条)として用いる場合
  さらに、乙が否認を続けた場合には、乙の不一致供述
 が存在することを要証事実として使用するのであれば伝
 聞の問題は生じないから、弾劾証拠として甲に対する証
 拠とすることができる。    

                  以上
一 民事訴訟法は私益を巡る紛争を相対的に解決することを目的
 とする制度であるから、当事者の意思を尊重することが望まし
 い。しかし訴訟手続の進行面において利害の対立する当事者の
 全くの自由に任せれば、逆に手続が混乱・遅延し、上記目的の
 達成は困難となる。そこで、法は訴訟手続の進行については裁
 判所が責任と権限を有するという職権進行主義を採用する。
  もっとも、当事者の意思も可及的に反映されるように一定の
 配慮がなされている。

二 では、職権進行主義において当事者の意思はどのように反映
 されているか、以下、手続の進行段階に沿って述べる

 1 手続の準備段階において
 (一) 準備的口頭弁論(164条)
     訴訟手続を迅速かつ効果的にに進めるためには、前も
    って準備しておくことが必要不可欠である。そこで、裁
    判所は争点及び証拠の整理を行うため必要があると認め
    る場合に準備的口頭弁論を行うことができる
     もっとも、裁判所は準備的口頭弁論を終了するにあた
    って証明事項につき当事者との間で確認しなければなら
    ず、この点において当事者の意思も反映されている(1
    65条1項)

 (二) 弁論準備手続・書面による準備手続
     準備的口頭弁論と同じ趣旨で、裁判所は事件を弁論準
    備手続に付すことができる(168条)また、当事者が
    遠隔地に居住している等の理由がある場合には、書面に
    よる準備手続に付すこともできる(175条)
     もっとも、弁論準備手続・書面による準備手続は公開
    主義か制限される等の不利益があるため、裁判所は当事
    者の意見を聞いた上でこれらの手続に付さなければなら
    ないから、この限度において当事者の意思が反映されて
    いる

 2 口頭弁論段階において
 (一) 期日指定権
     口頭弁論を行うための期日については職権で裁判長が
    指定・変更するものとされている(93条1項)
     もっとも、当事者に不利益な期日指定がなされないよ
    う、申立てをすることも可能であるし(同条1項)最初
    の期日の変更にあたっては当事者の合意がある場合にも
    許されており、この限度においてではあるが当事者の意
    思も反映されている(同条3項)

 (二) 訴訟指揮権(148条)
     円滑・迅速に手続を進行させるために、口頭弁論は裁
    判長が指揮するものとされており、不適切な発言を禁止
    する等の措置を講じることができる。
     もっとも、不適切な訴訟指揮権の行使により当事者の
    裁判を受ける権利が害されてはならない。そこで、裁判
    長等の訴訟指揮に不服のある当事者が異議を述べた場合、
    裁判所は決定でその異議について裁判をしなければなら
    ないとされ、訴訟指揮に関しても当事者の意思が反映さ
    れている

 (三) 適時提出主義(157条)
     攻撃防御方法の提出時期について、当事者の全くの自
    由に委ねれば訴訟手続が遅延し、迅速な紛争解決が困難
    となる。そこで、法は攻撃防御方法は訴訟の進行状況に
    応じて適切な時期に提出しなければならないという適時
    提出主義を採用し、時期に遅れた攻撃防御方法について
    は職権で却下する(158条1項)ものとして、円滑な
    手続の進行を図っている。
     さらに、時期に遅れた攻撃防御方法の提出により不利
    益を受ける相手方当事者についても申立てという形で却
    下を促すことができ、かかる形でも当事者の意思が反映
    されている
  
 3 判決段階において

   裁判所は、当事者の一方または双方が口頭弁論に欠席する
  等、訴訟手続の進行に協力する意思がないと認められ、相当
  と判断した場合には終局判決をすることができる(244条)
   もっとも、当事者の一方が出席もしくは在廷している場合
  には終局判決をする場合には、当該当事者の申出がなければ
  できないとされ(同条但書)、手続進行に協力的な当事者の
  意思が反映されている


                     以上

一 小問1について
 1 (1)について
  (一) 乙の訴えについて、反訴として提起できる以上別
     訴は許されないとする甲の主張は正当か。そもそも
     乙の訴えが、2重起訴禁止(142条)にあたり別
     訴が許されないのかが問題となる。
   
  (二) 2重起訴禁止(142条)とは、すでに係属して
     いる同一事件について訴え提起が禁止されることを
     いう。その趣旨は、同じ訴えを重ねて提起すること
     は訴訟不経済あること、また被告の応訴の煩や矛盾
     判決を回避することにある、そして、二重起訴に該
     当するか否かは①当事者の同一性と②事件の同一性
     を基準に判断される。

  (三) 本小問においては、甲の乙に対する訴えと、乙の
     甲に対する訴えとでは原告被告が入れ替わっただけ
     であり、当事者は同一であるといえる。しかし、先
     行する訴えの訴訟物は絵画の引渡請求権であるのに
     対し、後行する訴えの訴訟物は売買代金債権である
     から事件が同一とはいえないから、乙の訴えは2重
     起訴禁止にはあたらず別訴提起が許される。
      したがって、甲の主張は妥当でない

 2(2)について
  (一) 甲の請求について
   (1) 裁判所はその認定に従い「乙は甲に対し、70
      0万円の支払いを受けるのと引換に絵画を引き渡
      せ」との判決をすることができるか。申立事項と
      異なる判決が許されるのかが問題となる

   (2) 思うに、全部棄却判決を下されるよりは一部で
      も認容判決を受けることが原告にとっては有利で
      ある。そこで、原告の意思に合致し、被告にとっ
      ても不意打ちにならないのであれば申立事項と異
      なる判決、すなわち一部認容判決が許されると考
      える

   (3) 本小問では、原告甲にとっては絵画の引渡請求
      権について棄却判決を受けるよりは、代金を払っ
      てでも認容判決を受けたいと思うのが通常であろ
      うから、引換給付判決を受けることは原告甲の意
      思に合致する。また、被告乙にとっては無条件で
      絵画の引き渡しを命ぜられるよりも代金700万
      円と引換になる点で有利であり、不意打ちともな
      らない。
       したがって、裁判所が七〇〇万円の支払いと引
      換に絵画の給付判決を下すことはできる
  
  (二) 乙の請求について
   (1) では、乙の請求について「甲は乙に対し、絵画
      の引き渡しを受けるのと引換に七〇〇万円を支払
      え」との判決をすることができるか。前述の基準
      に当てはめる。

   (2) まず、原告乙については、一〇〇〇万円の代金
      債権が全部棄却されるよりはその代金額の一部か、
      あるいは目的物の引換給付判決を望むであろうか
      ら合理的意思に合致する。また、被告甲にとって
      も無条件の給付判決ではなく絵画との引換給付判
      決を受けられるのであるから不意打ちともならな
      い。
       したがって、裁判所が絵画の引き渡しと引換に
      七〇〇万円の給付判決を下すことができる。

二 小問2について
 1 甲の乙に対する訴訟において、「乙は~絵画を引き渡せ」
  との判決が確定した後に乙が甲に対し、絵画の売買代金額
  が1000万円であると主張してその支払いを求める訴え
  を提起することができるか。乙の訴えが前訴の既判力(1
  14条1項)に触れるのではないかが問題となる。

 2 既判力とは、確定判決の主文について生じる後訴に対す
  る通用力ないし基準性をいう。そして後訴においてこれと
  矛盾する主張をすることは紛争の蒸し返しになるから許さ
  れない

 3 本小問においては、主文たる「五〇〇万円の支払いを~
  引き渡せ」との部分に既判力が生じる。そして、乙が、絵
  画の売買代金額が1000万円であると主張して支払いを
  求めることは前訴の既判力に抵触することになるから、か
  かる訴えを提起することはできない。

                    以上



           
因果関係完全スルーでA。第2問は試験終了直後の主観では死亡
認定だったのに、辰巳の某講師からは跳ねAといわれたのでその
せいかもしれない。

一 甲の罪責について
 1 甲は殺意を持ってクリスタルガラスの花瓶でAの後頭部を
  殴打して頭蓋骨骨折の重傷を負わせており、殺人未遂罪(2
  03条、199条)が成立する

 2(一) その後、乙と共にAを山中に埋めているが、これば
     時間的にも場所的にも離れているため別個の行為と評
     価される。そして、まだ生きているAを埋める行為は
     殺人罪(199条)の客観的厚生要件に該当する。も
     っとも、甲はAがすでに死亡しているものと思いこん
     でいるため、殺人罪の「罪を犯す意思」(38条1項)
     がなく、殺人罪の罪責を問うことはできない(同条2
     項)では、甲の認識していた軽い罪である死体遺棄罪
     (190条)の罪責を問えないか。重い殺人罪の客観
     的構成要件の中に死体遺棄罪の客観的構成要件が含ま
     れているといえるかが問題となる。

  (二) 思うに、客観的に発生した構成要件と認識していた
     罪の構成要件が異なっていたとしても、構成要件該当
     性は実質的・規範的になされるべきである。具体的に
     は、行為態様、保護法益等の構成要件メルクマールを
     基準に構成要件面で実質的な重なり合いがあるかどう
     かを判断すべきである
  
  (三) 本問においては、死体遺棄罪と殺人罪は、行為態様
     の面では死体を遺棄する点と虫の息の人間を放置して
     死に至らせる点で重なり合いがあるとはいえるものの、
     保護法益面では、殺人罪は人の身体・生命の安全であ
     るのに対し、死体遺棄罪のそれは国民の宗教感情とい
     うように全く異にするものである。したがって、死体
     遺棄罪と殺人罪との間には客観的構成要件面での重な
     り合いはなく、甲が認識していた軽い死体遺棄罪の罪
     責を問うことはできない

 3 もっとも、まだAが生きていたことに気が付かずに生き埋
  めにした点について、重過失致死罪(211条1項)が成立
  する

 4 以上より、甲には殺人未遂罪(203条、199条)、重
  過失致死罪(211条1項)が成立し、両罪は併合罪(45
  条)となる。

二 乙の罪責について

 1 乙は甲と異なり、まだAが生きていることを知りつつAを
  生き埋めにして窒息死させており、殺人罪(199条)が成
  立する
  
 2(一) さらに、乙は甲とともにAを生き埋めにしているこ
     とから共同正犯(60条)が成立するか

  (二) そもそも共同正犯が「すべて正犯とする」とされる
     のは、特定の犯罪を実現する意思で相互に相手の行為
     を利用補充しあって特定の犯罪を共同して実現した点
     にある。とすると、本問では甲は重過失致死罪(21
     1条1項)、乙は殺人罪(199条)を行っているの
     であり、特定の犯罪を実現したとはいえないとも思わ
     れる。
      しかし、それぞれの構成要件が異なっていても、構
     成要件が重なり合う範囲ではその限度で相互利用補充
     しあって特定の犯罪を共同して実現したといえ、共同
     正犯が成立すると考える(部分的犯罪共同説)

  (三) 本問においては、重過失致死罪と殺人罪は自然の死
     期に先だって生命を断絶させる点で構成要件面で共通
     性があるし、また規範的に見て故意は過失を含むとい
     えるので、重なり合いのある重過失致死罪の限度で共
     同正犯が成立する

 3 以上より、乙には殺人罪(199条)と重過失致死罪の共
  同正犯(60条、211条1項)が成立し、両罪は同時犯と
  なる

                        以上
一 借入申込書を作成した行為について

 1 甲が、氏名欄に本名である「甲」と記載した借入申込書を
  作成した点につき私文書偽造罪(159条1項)が成立する
  か

 2(一) まず、借入金申込書は、X社から金員を借り入れる
     ために債務者の身分関係を明らかにするための文書で
     あるから社会生活に交渉を有する文書といえ、「事実
     証明に関する文書」にあたる。そして、甲はかかる文
     書を金員の借入をうける目的で作成しているから「行
     使の目的」もある。

  (二)(1) では、「偽造した」といえるか。甲は本名で
        ある「甲」を記載しているのであるから「偽造
        した」といえないのではないが問題となる
 
     (2) そもそも文書偽造罪の保護法益は文書に対す
        る公共の信頼にある。そして、公共の信頼は作
        成名義の真正さに向けらているから、「偽造」
        とは作成者と名義人の同一性を偽ることをいう
        と考える

     (3) 本問では、甲は本名を記載したのであるから
        作成者と名義人には同一性があり、「偽造した」
        とはいえないとも思われる。しかし、甲は20年
        以上もの長期間にわたって乙という名前で社会生
        活を営んできたのであり、しかも事実上の身分証
        明書としての役割も果たしている運転免許証まで
        取得していることから、文書の名義人は作成者で
        ある「乙こと甲」とは別人の「甲」であるといえ
        る。とすると、本問借入金申込書の作成者と名義
        人には同一性がないから、かかる文書を作成した
        甲は「偽造した」といえる

 3 以上より、甲には私文書偽造罪(159条1項)が成立する

 
二 イメージスキャナーで読みとらせた行為について
 
 1 前述の借入金申込書をイメージスキャナで読みとらせてディ
  スプレイに出力させてYに閲覧させた行為について、偽造私文
  書行使罪(160条1項)が成立する

 2(一) では、免許証の氏名欄に「甲」と記載した紙片をはり
     つけた上、これをも読みとらせてディスプレイに出力さ
     せた行為につき、公文書偽造・同行使罪(155条1項、
     158条1項)が成立するか
 
  (二) 思うに、前述の通り、文書偽造罪の保護法益は文書に
     対する公共の信頼にある。そして、公共の信頼は通常は
     原本に向けられているから、写しは文書偽造罪の客体と
     はならないとも思われる。もっとも、写しであってもこ
     れが原本と同様の社会的機能を有する場合には、これに
     対する信用をも保護する必要があるから文書偽造罪の客
     体となると考える

  (三) 本問においては、イメージスキャナーは媒体を光学的・
     機械的に読みとる機器であり、これがディスプレイに表
     示されれば、これを見た者はあたかも画像と全く同じ原
     本が存在するかのごとくの信頼を抱くといえる。

 3 したがって、甲には公文書偽造罪・同行使罪が成立する

三 キャッシングカードを発行させた点について
 1 画像を確認した係員Yにカードを発行させた点につき、詐欺
  罪(246条1項)が成立するか。

 2 甲は、前述の通り、偽造文書を用いて身分を偽り、欺罔行為
  ありといえる。そして、係員Yはこれにより錯誤に陥っている。
  そして、Yが発行したカードが「財物」といえるかが問題とな
  るも、カードが有れば限度額内であれば何度でも借り入れが可
  能であるから「財物」足りうる。したがって、Yはカードとい
  う財物を処分したといえる。゛

 3 したがって。甲には詐欺罪(246条1項)が成立する。


四 現金支払機から30万円を引き出した点について

 1 では、引き続いてカードを使って現金支払機から30万円を
  引き出した点につき窃盗罪(235条)が成立するか。カード
  の発行をもって詐欺罪として包括して評価すべきかが問題となる。

 2 思うに、カードが発行されたとしても直ちに現金が引き出さ
  れるとは限らないし、また、係員Yはカード発行をもって現金
  支払機内の現金について処分したともいえない。
 
 3 したがって、30万円を引き出した行為について別途窃盗罪
  (235条)が成立する。

五 罪数
  甲には①私文書偽造罪②同行使罪③公文書偽造罪③同行使罪④
 詐欺罪⑤窃盗罪が成立し、①②と③④はそれぞれ牽連犯(54条
 1項後段)となり、これらと⑤、⑥は併合罪となる

                            以上 
一 事例1について

 1 本事例において、代表取締役Bが、C社のD銀行に対する借入
  金債務についてA会社を代表してC銀行と債務保証契約を締結す
  ることは利益相反「取引」(265条1項にあたり取締役会決議
  が必要なのではないか

 2 そもそも265条1項が利益相反取引について取締役会の承認
  を必要とした趣旨は、取締役が会社の犠牲において「自己又ハ第
  三者ノ」利益を図ることを防止しようとした点にある。そこで、
  「自己又ハ第三者ノ為ニ」とは、もっぱら自己又は第三者の利益
  を図る目的を言うと考える

 3 本問では、BはC社の監査役でもあり、C社の会計監査や業務
  監査にも通じているものと思われる。とすると、保証契約は10
  億円という巨額の借り入れ金額からしてもこれはC社の救済融資
  目的でなされたものとみられ、もっぱらC社という第三者の利益
  を図る目的でなされた取引といえる。したがって、利恵相反取引
  に当たり、A会の取締役会決議が必要である

二 事例2について

 1 A会社がF会社のG銀行に対する1000万円の借入金債務に
  ついてG銀行との間で保証契約を締結する場合、事例1と同じく
  取締役会の承認が必要か。
 
 2 この点、Eは平取締役でありEが直接会社を代表するわけでは
  ないから「取引」にあたらず承認は不要とも思われる。しかし、
  EはF会社の70パーセントもの株式を保有する支配株主である。
  そして、A会社から保証契約を得られることにより滞りなく融資
  を得られると思われ、ひいては支配株主たる取締役Eの利益にな
  るといえる。とすれと、実質的には「自己又ハ第三者ノ為ニ」す
  るといえる。したがって利益相反取引にあたり、A社の取締役会
  決議が必要である

三 事例3について

 1 Hが事業の一部門のみ競合するI社の代表取締役に就任し、A
  社とは直接競合しない不動事業部門の取引のみを担当する場合、
  「競業取引」(264条1項にあたりA社の取締役会決議が必要か

 2 まず、「自己又ハ第三者ノ為ニ」とは利益の帰属主体をいい、
  本問ではI社のための取引であるからこれをみたす。次に、担当部
  門がA会社のそれと異なることから「会社ノ営業ノ部類ニ属スル取
  引」といえるか 
  そもそも本条の趣旨は、取締役がその地位に基づいて得た情報を自
  己又は第三者のために用いて会社に損害を与えることを防止する点
  にある。そこで、「会社ノ営業ノ部類ニ属スル取引」とは広く市場
  において会社と取引先が競合するおそれのある取引をいうと考える。

 3 本事例では、ホテルの経営にあたってはこれに適した土地や建物
  の選定・取得も不可欠であるところ、HがI社の取締役に就任すれ
  ばここれらの取得取引が競合し、A社が損害を受けるおそれがある
  といえる。したがって「競業取引」にあたり、A社の取締役会決議
  が必要である

以上

一 小問1について
 1 甲山に対して
  (一) CはAに対して債権を有しているのであり、甲山に対して
     は何ら債権を有していないから弁済を請求できないのが原則
     である
      しかし、Bが用いている商号には「甲山一郎」の名前があ
     る。そこで、名板貸人(23条)の責任を負うとしてAと連
     帯責任を負うことを根拠に弁済請求できないか。
  (二) 同条の責任が認められるための要件は、他人に「自己ノ氏
     名」を使用して営業することを「許諾」し、相手が名板貸人
     を営業主と「誤認」したことである
  (三) 本小問においては、Aが用いた商号である「ブティック甲
     山一郎」には「甲山一郎」と氏名がそのまま使われている。
     そして、甲山も「自己の名前が~どんどん使って欲しい」と
     答えており、「許諾」もある。そして、「誤認」の要件であ
     るが、迅速な商取引のためには軽過失であっても保護すべき
     要請がある一方、重過失は悪意と同視すべきである。そこで、
     Cが、甲山一郎が営業主であると善意無重過失で信じていた
     のであれば、甲山はAの債務について連帯責任を負うから甲
     山に対しても弁済を請求できる

 2 Bに対して
  (一) Bとの間で何らかの取引があったわけではないから、Bに
     対しても何ら弁済を請求できないのが原則である。
      しかし、営業譲渡後の商号は「甲山一郎ブティック」であり、
     譲渡前の商号である「ブティック甲山一郎」とは「甲山一郎」
     と「ブティック」が入れ替わっただけできわめて類似している。
     そこで、26条1項により営業の譲受人たるBに対しても弁済
     請求できないか。
  (二) 譲渡人の債務について、26条1項により営業の譲受人に対
     してついて弁済請求できるためには「商号ノ続用」が必要であ
     る。本小問においては、譲渡前と譲渡後では商号は異なってい
     ることから、26条1項を適用することは出来ないとも思われ
     る。しかし、同条の趣旨は営業譲渡後に譲受人が商号を引き続
     き用いる場合は債務も移転したのであろうという債権者の信頼
     を保護する点にある。そこで、主要な部分が同一であればも2
     6条1項を類推適用して債権者を保護すべきと考える。

  (三) 本小問においては前述の通り営業譲渡の前後で「甲山一郎」
     と「ブティック」が入れ替わったにすぎず、商号の主要な点は
     同一といえる。したがって、Cは譲受人Bに対しても弁済を請
     求できる


二 小問2について

 1 Dは甲山と取引したわけではないから甲山に対して何ら弁済を請求
  できないのが原則である。また、甲山はBに対しては自己の氏名を商
  号に用いることを許諾しているわけでなく、名板貸人の責任(23条)
  をも負わないのが原則である。
   もっとも、かかる結論は、Dが、甲山が営業の主体と信じていた場
  合に不測の損害を与えることになる。23条を類推適用してDを保護
  できないか。
 
 2 そもそも23条の趣旨は名板貸人が営業主であると誤認した者に対
  して営業主と連帯責任を負うという外観法理にある。そこで、①外観
  の存在と、②本人の帰責性、そして相手方が善意無重過失で誤認して
  いた場合には、23条を類推適用して保護すべきと考える。
    
 3 本小問においては①甲山の氏名がそのまま使われている。そして②
  については、甲山が、Bが「甲山一郎」を使用して営業を続けている
  ことを知りつつ放置しているといった事情が有れば帰責性ありといえ
  る。そして、Bが、善意無重過失であれば23条類推適用により甲山
  はBの債務について連帯責任を負うから、Bは甲山に対して弁済を請
  求できる

                                 以上



              


一 Bに対する請求について
  
 1(一) Dは暴走する犬を避けようとして転倒し重傷を負
     っている。そして、犬を運動させていたのはBであ
     るから、動物「保管者」の責任(718条2項)を
     根拠に損害賠償請求をする事が考えられる

  (二) これに対し、Dとしては犬を運動させていただけ
     の自分には「過失」がない、あるいは犬はかみつい
     たわけではないから「加エタル」にあたらない、ま
     た、仮に「加エタル」にあたるとしても過失相殺の
     類推適用により損害賠償額が減額されうるとの反論
     をなすことが考えられる


  2 見解について
    (一) まず、「過失」については、Bが犬を散歩さ
        せていたのは歩道や公園ではなく往来のある
        路上であるから、犬がCの自転車に衝突され
        たことにつき「過失」がないとはいえないと
        考える。よってBの反論は妥当でない

    (二) 次に「加エタル」については、同条の趣旨は
       危険な動物を支配する者に課せられる危険責任
       にあることから、動物が直接危害を加えたこと
       による損害のみならず、広く動物の行動から発
       生した損害も含まれると考える。よって、Bの
       反論は妥当でない。


    (三) では、過失相殺(722条2項)の適用があ
       るとする反論についてはどうか。
       確かに、被害者に障害があることは「過失」と
       はいえない。しかし、被害者の素因が損害拡大
       に寄与している場合にその全てについてまで責
       任を負わせることは、損害の公平な分担という
       不法行為制度の趣旨に反する。そこで、被害者
       の素因が損害拡大に寄与している場合にも72
       2条2項を類推適用し、損害賠償の減額が認め
       られると考える。したがって、この点に関する
       Bの反論は妥当である


二 Aに対する請求について

 1 DはAに対して、BがAの経営する酒屋の店員であるこ
  とから、使用者責任(715条1項)を根拠に損害賠償請
  求すること、さらに犬の飼い主でもあとから「占有者」(
  718条1項)をも根拠として損害賠償請求することが考
  えられる

 2 これに対してAとしては、Bに犬の運動を命じたことは
  「事業ノ執行ニ付キ」とはいえず使用者責任は成立しない
  こと、自分は718条の「占有者」にあたらないとの反論
  をすることが考えられる


 3 見解について

  (一) まず、使用者責任であるが、同条の趣旨は他人を
     利用して利益を上げている者はそこから生じた危険
     についても責任を負うという報償責任に基づくもの
     である。そこで、「事業ノ執行ニ付キ」といえるか
     どうかは行為の外形から客観的に観察して判断すべ
     きと考える。本問においては、犬の運動は外形的・
     客観的に観察して酒屋の業務とはなんら関連性がな
     く「事業ノ執行ニ付キ」とはいえない。したがって、
     この点に関するAの反論は妥当である
  
  (二) そして718条1項の「占有者」とは、本条の趣
     旨が前述のように危険責任にあることから、危険を
     防止できる者、すなわち直接占有者を指し、間接占
     有者は含まないと考える。したがって、間接占有者
     にすぎないAの反論は妥当である

三 Cに対する請求について

  1(一) Cに対しては、犬の暴走はCの衝突に起因する
      のでるから、709条を根拠に損害賠償請求する
      こと、さらにはBとともに共同不法行為責任(7
      19条1項)をも根拠として損害賠償責任を追及
      することが考えられる。

   (二) これに対して、Cとしては過失相殺の類推適用
      があること、また自分とBは示し合わせて損害を
      与えたわけでないから共同不法行為責任は負わな
      いとの反論をなすことが考えられる

  2 まず、過失相殺の類推適用については、Bと同じく認
   められ、減額されうるのでこの点に関するCの反論は妥
   当である。そして、共同不法行為の成否であるが、同条
   は「共謀」等の文言をしていないのであるから、主観的
   関連性は不要であり客観的関連共同性があれば共同不法
   行為が成立すると考える。本問ではCとBの一連の行為
   によりAは重傷を負っているのであるからBCには共同
   不法行為が成立し、連帯して責任を負う。よって、この
   点に関するCの反論は妥当でない。


           以上

一 小問1について
  
 1 本小問においてAはBに対していかなる請求が出来る
  のであろうか。AB間の土地売買契約は数量指示売買(
  565条)にあたるのかと関連して問題となる。

 2(一) 数量指示売買とは、売主が一定の数量・面積・
     員数等をあることを表示し、かつこれを基礎とし
     て代金額が定められた売買契約いう。
      本問では、登記簿上330平方メートルと記載
     されている土地をについて、売買代金額が3,3
     平方メートルあたり25万円として代金額が25
     00万円と決定されており、数量指示売買にあた
     る。
      そして、数量指示売買においては一部他人物売
     主の責任に関する563,564条が準用される
     から、善意の買主は損害賠償請求、代金減額請求
     、目的不到達の場合には解除をなしうる。本小問
     においては、不足部分相当額である825万円の
     代金減額請求をなしうるし、解除も可能である
  
  (二)(1)では、損害賠償の範囲についてはどう解す
       べきか。本問ではAC間で転売を予定してい
       たところ、面積不足を理由に解除されており、
       Aは1000万円の利益を失っている。そこ
       で、数量指示売買における損害賠償は履行利
       益をも含むか、565条の法的性質が問題と
       なる。

     (2) 思うに数量指示売買における売主の担保
        責任は、売買の等価的均衡を保つための無
        過失責任たる法定責任である。そして不足
        部分については一部原始的不能であり履行
        が観念できない以上信頼利益にとどまると
        考える

     (3) 本小問においては、得べかりし1000
        万円の損害は履行利益であるから、これに
        ついてはAはBに対して損害賠償請求でき
        ない。ただ、AB間において実際に予定通
        りの面積ある土地を取得させるという黙示
        の保証契約が認定できる場合にはこれに基
        づいて1000万円の損害賠償請求ができ
        ると考える。

二 小問2について
  
 1 AがBから土地を買い受けた後、DもBから同一の土
  地を買い受けて先に移転登記を受けておりDが土地所有
  権を取得する(177条) 。そして、DとしてはAに
  対して建物収去土地明渡請求をなすものと考えるが、こ
  れは認められるか

 2 この点、Aが土地賃貸人Bから土地を買った時点で土
  地の賃借権が混同で消滅(179条2項本文)し、Aは
  Dに対してもはや土地賃借権を対抗できないとも思われ
  るが、かかる結論は、Dが登記を取得するまで土地を自
  由に使用できたAにとって著しく酷である。そこでAを
  保護するための法律構成が問題となる

   思うに、賃借人保護の観点から不動産の二重譲渡がな
  された場合、登記を備えて完全な所有権を取得できるま
  では土地賃借権は混同により消滅しないと考える

 3 本小問においてはAは完全な所有権を取得できなかっ
  た以上AB間の土地賃貸借契約は消滅しておらず、Aは
  Dに対して土地賃借権を対抗できる

                         以上