民事訴訟法第一問
一 証明責任とは、判決においてある事実が存否不明の場
合に、自己に有利な法律効果の発生または不発生が認め
られないことになる一方当事者の不利益をいう。
弁論主義とは、判決の基礎となる事実・証拠の収集・
提出を当事者の権能と責任とする建前をいう。この弁論
主義から3つの原則が導かれる。すなわち①当事者が主
張しない事実を判決の基礎とすることはできない②当事
者に争いのない事実は裁判所を拘束する③争いある事実
の認定は当事者の提出した証拠による、という原則であ
る。
二 1 では、弁論主義の下、証明責任はいかなる機能を果
たしているか、その前提として、証明責任の分配基準
につき述べる。
この点、証明責任は当事者の訴訟追行の基準となる
ものであり、明確性・公平性が要求される。そこで、
実体法規の用件事実を基準とすべきと考える。具体的
には、ある法律効果の発生を争う者は、これを基礎づ
ける権利発生規定の要件事実を、一旦発生した法律効
果の変更消滅を争う者はこれを基礎づける変更・消滅
規定の要件事実について証明責任を負うと考える。具
体的には、消費貸借契約(民法587条)に基づく貸
金返還請求においては原告が権利根拠規定たる金銭授
受・返還約束の合意について証明責任を負い、被告が
権利消滅規定たる弁済の事実について証明責任を負う
ことになる。
2 (一) まず、前述の第一テーゼからはある主要事
実について当事者のいずれもが主張がなけれ
ば裁判所はこれを基礎として判決することは
できないから、当該主要事実について証明責
任を負う者は敗訴の危険を負うことになる。
これを主張責任という。前述の例でいうと、
原告・被告のいずれもが金銭授受・返還約束
の合意について主張しなかった場合、これに
つき主張責任を負う原告は敗訴することにな
る。これを証明責任を負わない当事者から見
れば、自ら進んで主張するはないということ
になる
(二) 次に、前述の第二テーゼからは、相手方に
証明責任のある主要事実について自白が成立
すれば、裁判所はこれに拘束されるし(17
9条)、自白した者もこれを自由には撤回が
できなくなる。これを前述の例で見ると、金
銭授受について自白が成立した場合、これに
つき証明責任を負っている原告は立証の負担
から免れる反面、被告はこれを自由に撤回で
きなくなる。これを証明責任を負わない当事
者からみれば、自白が成立しないよう注意す
る必要があることになる。
(三) さらに、前述の第三テーゼからは、争いあ
る事実の認定は当事者の提出した証拠によっ
てのみなしうることになる。もっとも、証拠
の証明力の評価は裁判官の自由心証に委ねら
れている(247条)。そこで裁判官は証明
責任を負う当事者・負わない当事者のいずれ
が提出した証拠であるかを問わず、その者の
有利にも不利にも事実を認定できることにな
る。
以上
民事訴訟法第2問
一 事例1について
1 裁判所のなすべき判決について
裁判所は、甲債権・乙債権のいずれもが存在し、かつ相殺
適状にあることについて心証を得ている。そして、Yは乙債
権を自動債権とする相殺の主張をしている。
そこで、裁判所は「Xの主張する200万円の甲債権は、
300万円の乙債権を自動債権とする相殺により全額が消滅
している。よって、甲の請求を棄却する」との請求棄却判決
をすべきである。
2 既判力について
(一) まず、判決主文たる甲債権の不存在について既判力
が生じる(114条1項)
(二) さらに判決理由中の部分たる乙債権が200万円の
限度で消滅した点についても既判力が生じることにな
る(114条2項)。
たしかに、判決理由中の判断には既判力は生じない
のが原則である。なぜなら、当事者の紛争解決のため
には主文のみに既判力を及ぼせばそれで足りるからで
ある。しかし、例外として相殺の抗弁については理由
中の判断についても既判力を及ぼさないと、別訴で訴
求債権の存否が蒸し返され、紛争解決の実効性を損な
うおそれがあるからである。
(三) よって、甲債権の不存在のみならず、乙債権につい
ても相殺で対抗した200万円の消滅についても既判
力が生じる。そして、XYのいずれもこれについて後
訴で争うことはできない
二 事例2について
1 裁判所のなすべき判決について
裁判所は、甲債権が存在すること及び乙債権も存在してい
たが、Xが乙債権について全額弁済したことについて心証を
得ている。そこで、裁判所は「Yの相殺の抗弁についてはX
の弁済により理由がない。よって、YはXに対し、貸金20
0万円を支払え」との請求認容判決をなすべきである。
2 既判力について
(一) まず、判決主文たる甲債権の存在について既判力が生
じる(114条1項)
(二) さらに、前述のように相殺の抗弁については既判力が
生じるから、相殺に供された乙債権が不存在である点に
ついても既判力が生じる(114条2項)
三 事例3について
1 裁判所のなすべき判決について
(一) Xの主張する相殺の抗弁は、Yの相殺の抗弁を理由な
からしめるための再抗弁である。そして、裁判所は甲・
乙・丙債権のいずれもが存在し、かつ相殺適状にあった
ことにつき心証を得ているため、Xの請求を認容する判
決をなすべきか
(二) 思うに114条2項は判決理由中の判断に既判力が生
じる唯一の例外である。また、再抗弁についてまでも既
判力が生じるとすれば、既判力の及ぶ範囲が不明確とな
り、法的安定性を害する
(三) よって、裁判所はXの抗弁についてふれるべきでなく、
事例1と同じく「Xの主張する~棄却する」との判決を
すべきである。
2 判決について
裁判所のなす判決が事例1と同じである以上、その既判力も
事例1と同じである。そして、丙債権の存否については既判力
は生じないから、XYが別訴でこれを争うことは可能である。
以上
再現率85パーセント
再現率80パーセント