司法試験 起死回生への道   -17ページ目

司法試験 起死回生への道  

屈辱の論文総合A落ちからどこまではい上がれるかを自己観察し続けるブログです



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商法第一問

一 Bに対する責任追及について

 1 甲はBに対して、356条1項2号、365条1項違反を理由に、
  任務懈怠責任(423条3項1号)を追及することが考えられる。
  
 2 そもそも356条1項2号の趣旨は、強大な権限を有する取締役
  が自らの地位を利用して自己もしくは第三者の利益を図り、会社に
  損害を加えることを防止した点にある。
   本問では、Bは自らが取締役をつとめる乙社救済のために、甲を
  代表して3億円程度の土地を5億円で乙から買い取って、これによ
  り少なくとも2億円もの損失を甲に与えており、任務懈怠ありと評
  価できる。
   したがって、甲社はBに対して423条3項1号に基づく責任を
  追及できる。

二 Dに対する責任追及について
 
   Dは取締役会決議において、上記の買い取りに賛成しているため
  任務懈怠が推定される(423条3項1号)。よって、Dが任務懈
  怠がなかったことを反証しない限り、甲は423条3項1号に基づ
  く責任をDに対して追及できる。

三 Cに対する責任追及について

  Cは上記の議決に加わっていないため任務懈怠はないとも思われる。
 しかし、決議の要件である過半数要件を満たしていなかったのであり、
 Bは取り引きできないのであるからこれを取引を止めるべき義務があ
 ったといえる。したがって、Bの取引を放置していた点に任務懈怠が
 みてとれるため、Cも423条3項1号に基づく責任を負う。

四 Eに対する責任追及について
 
  Eは決議において棄権しているため、任務懈怠責任を負わないとも
 思える。しかし上述のように過半数要件を満たしていない以上、Bは
 かかる取引をなしえないのだからこれを止めるべき義務があったはず
 である。かかる点に任務懈怠があるので、Eもまた423条3項1号
 に基づく責任を負う。

五 Aに対する責任追及について
  
  Aは当初の決議において病気で入院のため出席しておらず、任務懈
 怠は観念できないとも思われる。しかし、後のBからの報告で価格の
 適正さについて知り得たはずであり、十分な事後調査を尽くさなかっ
 た点について任務懈怠を観念できる。
  したがって、Aもまた423条3項1号に基づく責任を負う。

                          以上

商法第2問

一 B社に対する責任追及について
  
  DはBに対して、部品の売買契約(民法555条)に基づく代金債権
 を支払うよう請求することが考えられる。しかし、Bは事業の継続が困
 難でくらいであるから無資力であると考えられるので、効果的ではない。
 
二 A社に対する責任追及について
 1(一) Dは、実際にAと取り引きしたわけではないのだからAに対
     して何らの請求もできないのが原則である。もっとも、AはC
     に対して「A代表取締役」との肩書を付した名刺の使用を許諾
     し、Dは取引の相手方をAと誤認しているため、例外的に表見
     代表取締役の責任(354条)を追及して、部品代金100万
     円を支払うよう追及できるか。

  (二) まず、表見代表取締役について規定した354条は、行為を
     なしたのが取締役であることを前提としているが、CはA社の
     取締役ではないので354条を直接適用することはできない。
      しかし、354条の趣旨は代表権を有するような名称を付さ
     れた取締役の行為を信じた相手方を保護することにある。とす
     れば、行為をした者が取締役であるかよりも、代表権を有する
     かのような名称を付したかどうかが重要であるから、この場合
     には354条を類推適用してよいと考える。
      また、「善意」の意味については、商取引保護の観点から代
     表権の不存在について無過失まで要求すべきではないが、取引
     上要求すべき最低限度の注意すら払わない重過失の者は保護に
     は値しないため、悪意と同視すべきである。したがって、代表
     権の不存在について善意無重過失であることをいうと考える。
 
  (三) 本問においては、DはA社の商号まで掲げられた事務所で、
     代表権を有するのが通常であるところの副社長の肩書がついた
     名刺を見ているため、CにA社の代表権がないことについて少
     なくとも重過失はないといえる。また、かかる名刺はA社が渡
     しものであるから、外観の作出についてA社に責任もある。
      したがって、354条の類推適用により、DはAに対して部
     品代金を支払うよう責任追及できる。
 
 2 さらに、名板貸人の責任(9条)を問うことも考えられる。
   名板貸人の責任(9条)の趣旨は、他人に名称使用を許諾した名板
  貸人を営業主と信じた相手方を保護することにある。
   本問においては「許諾」ありといえるかが問題だが、前述のとおり
  CにあたかもA社の副社長であるかのような名刺を渡した上で取り引
  きすることを許諾しているため、肯定してよい。
   したがって、DはAに対し名板貸人の責任を追及することも可能で
  ある。

三 Cに対する責任追及について
  Cは実際にはA社副社長ではないから、A社の代表権限は有しない。
 そこでCの行為は無権代表行為となるため、無権代表者としての責任
 (民法117条1項)を負う。
  したがって、DはCに対し、無権代表者としての責任を追及できる。

                   以上
  
  


民法第一問

一 小問1について
 1(1)について
 (一) AB間の登記に合致する贈与がある以上、Bは177条の「第三者」
    に該当する。したがって、Xは登記を有していない以上、Bが背信的
    悪意者でない限り自己の所有権をBに対抗することはできない。
     また、仮にXより先に甲土地の引渡を受けていた場合に留置権(2
    95条)を主張して、Aからの損害賠償請求がなされるまで甲土地を
    留置する旨の請求をすることも考えられるが、これもできない。なぜ
    なら、留置権は物を留置することにより心理的圧迫を加えて債務の弁
    済を促す制度であるところ、被担保債権成立時においては債務者と請
    求の相手方が異なるため、留置権成立の要件を満たさないからである。
 (二) もっとも、Aは甲土地が唯一の財産であるため、AB間の贈与契約
    を詐害行為として取り消せないか。  
     まず、移転登記請求権という特定物債権を被担保債権とする詐害行
    為取消(424条)の可否が問題となるが、可能と考える。なぜなら、
    特定物債権であっても究極的には損害賠償請求権に転化するのであり、
    行使時に特定物債権である必要はないからである。
     ただ、このように解すると177条で対抗要件制度をとったことが
    無意味になるとの批判があるが、424条で取消が認められるために
    は別途債務者の詐害意思と受益者の悪意が必要となるため、177条
    を無意味にするものではないと考える。
     したがって、XはAB間の贈与契約を取り消すことにより、登記を
    Aの下に戻すようBに請求することができる。
 2(2)について
  (1)と異なり、AB間に所有権移転の事実はないのであるからBの登記
  は無効な登記である。したがって、Bは177条の「第三者」に該当せず、
  Xは登記なくして自己の所有権をBに対抗できる。したがって、XはBに
  対して所有権に基づいて登記を移転するよう請求することができる。
 
二 小問2について
 1(1)について
 (一) AB間の登記に合致する贈与がある以上、CはBから有効に甲土地の
    所有権を承継取得する。よって、Cも前述のBと同じく177条の「第
    三者」に該当するから、登記のないXは甲土地の所有権をCに対抗する
    ことはできず、移転登記請求をすることはできないのが原則である。
     もっとも、BもCも背信的悪意者である場合には、例外的に登記なく
    して所有権を対抗できるため、移転登記請求をすることが可能である。
 (二) そして、甲土地がAの有する唯一の財産であるため、前述(1)と同
    じく詐害行為取消(424条)の可否が問題となるが、債務者Aの詐害
    意思と転得者Cの悪意という要件を満たせば、これは可能である。
 2(2)について
 (一) AB間の登記は虚偽の登記であり、また登記には公信力はないことか
    ら、B名義の登記を信頼したとしてもCは保護されず、甲土地の所有権
    を取得しないのが原則である。とすれば、Cは177条の「第三者」に
    該当せず、Xは登記なくして甲土地の所有権を主張して移転登記請求を    
    することができるのが原則である。  
     もっとも、例外的に94条2項の適用によりCが保護される場合には
    Cは甲土地の所有権を取得するから、この場合は177条の「第三者」
    にあたるため、登記のないXは自己の所有権を対抗することはできず、
    移転登記請求はできない。
 (二) なお、この場合に詐害行為取消権(424条)の行使については要件
    を満たせば可能である。
                    以上 

     
民法第二問

一 BC間の法律関係について
 1 AB間において、本件建物の賃貸借契約を合意解除しAが転貸人B
  の地位を承継する旨の合意が成立したが、転借人Cがこれに反対した
  場合、AはBの地位を承継しないのか。転貸人たる地位の移転は免責
  的債務引受の性質を有するところ、免責的債務引受には債権者の同意
  が必要なことから問題となる。
   たしかに、免責的債務引受は債務者の変更を伴うことから、債権の
  満足が図られなくなる危険があるため債権者の同意が必要なのが原則
  である。もっとも、転貸人の地位が建物所有者たる賃貸人に移転され
  る場合には、建物を使用収益させる債務が所有者ならば誰でもできる
  非個性的な債務であることから、例外的に同意は不要と考える。
   したがって、転借人Cの同意がなくても、転貸人たる地位はBから
  Aに移転する。
 2 もっとも、BCの転貸借契約はABの賃貸借契約を基礎とすること
  から、他人に迷惑をかけるような権利の放棄を許さないとする398
  条の法理から、AB間の合意解除はCに対抗できないとも考えられる。
  しかし、前述のように転貸人たる地位が賃貸人に移転する以上、Cは
  何ら不利益になることはないので、Cに対抗できると考える。

二 AC間の法律関係について
 1 前述のとおり、AはBから転貸人たる地位を承継する。では、Aは
  Cに対して敷金返還債務をも引き継ぐのか。
   たしかに、敷金契約は転貸借契約とは別個の契約である。しかし、
  敷金は貸主に対して賃貸借契約から生じる一切の債務を担保する目的
  で差し入れられるものであり、転貸借契約に従たる性質をもつ。とす
  れば、転貸人の地位の移転に伴いこれに随伴して移転すると考える。
  また、敷金を交付した転借人にとっても、建物所有権を有する賃貸人
  に引き継がれるとする方が担保としての建物が存在する以上、保護と
  なる。
   したがって、敷金返還債務は転貸人たる地位の移転に伴って移転する
  と考える。
   したがって、Cに対して敷金返還債務を負担する者は転貸人たる地位
  を引き継いだAである。
                         以上

    
   
  
  
憲法第一問

一 A市が市職員の採用にあたり日本国籍を有することを要件とする条例を
 定めていることは、外国人の公務就任権を不当に制約するものであり違憲
 ではないか。
 
二1 まず、そもそも外国人が人権享有主体性たりうるのかが問題となるが、
  人権の前国家的性格および憲法が国際協調主義(98条2項)を採用し
  ていることから、権利の性質上日本国民のみを対象とするものを除いて
  外国人にも保障されると考える。
 
 2(一) では、公務就任権は権利の性質上外国人にも保障されるか。
      思うに、公務であっても民間業務と同じく生活の糧を得る手段
     としても役割もあることから、権利の性質上外国人にも保障され
     る
  (二) これに対し、市議会議員の選挙権は権利の性質上外国人には保
     障されないと考える。なぜなら、選挙権は政治に参加する権利で
     あるから国民主権原理(全文、1条)のもと国民にのみ保障され
     るべき権利であるし、地方自治体たる市も国と不可分に一体であ
     るからである。

三1 では、日本国民と同じく外国人にも公務就任権が保障されるのに、外
  国人については条例で採用を否定することは不当な差別にあたるとして、
  法の下の平等(14条)に反しないか。

 2 まず、差別的取り扱いを定めた法をいかに平等に適用したとしても無
  意味であるから、法の下の平等の「法」とは執行機関だけでなく立法者
  をも拘束すると考える。また、「平等」とは14条が個人の尊厳につい
  て規定した13条を受けて規定されていることから、絶対的平等ではな
  く具体的差異を考慮した合理的区別を許容する相対的平等を意味すると
  考える。
   では、本問条例は不合理な差別として14条に反し違憲か。
   思うに、日本国籍を有するか否かは14条列挙事由ではない以上、厳
  格性がやや緩和された基準によるべきと考える。具体的には目的が正当
  であり、かつ手段が目的達成との関係で実質的関連性を有していればよ
  いと考える。

 3 これを本問条例についてみると、まず目的については、市職員であっ
  ても市議会や市長が決定した施策を忠実に遂行することが求められるこ
  とから、日本国と永続的関係を有するわけではない外国人が公務に就く
  ことを認めれば公務が忠実に遂行されなくなるおそれがあり、日本国籍
  を有することを要件とすることには正当性が認められることを否定でき
  ない。
   次に目的との関係で手段が実質的関連性を有しているかについてみる
  と、市職員の公務といっても租税の徴収手続のような権力的公務そのも
  のから、ゴミの収集や給食の調理といった民間業務と大差ない非権力的  
  公務まで千差万別であり、後者については国籍を有するか否かで公務が
  忠実に遂行されなくなるおそれがあるということは疑問である。
   とすれば、市職員が行う全ての公務について日本国籍を有することを
  要件とすることは目的達成との関係で実質的関連性を欠くものであり、
  不合理な差別として14条に反し違憲である。
   これに対し、市議会議員の選挙権については、もともと外国人には権
  利の性質上保障されていないのだから14条に反するか否かという問題
  は生じない。


憲法第2問
 
一 本問法律は、内閣が条約を締結するにあたり最高裁が違憲との見解を示せば、
 内閣は当該法律を締結できないとするものである。そこで、当該法律は内閣の
 条約締結権(73条3号)を侵害し、違憲ではないか。
 
二1 そもそも内閣に条約締結権を専属せしめた趣旨は、もともと条約締結権が
  行政権を有する国王の専権であったこと、また条約の締結にあたっては特殊
  専門的な知識と相手国との微妙な駆け引きを要することから、行政権の長た
  る内閣が適任であることに基づく。ただ、条約は国民・国家に重大な影響を
  及ぼす可能性を有することから、国民代表機関たる国会の事前もしくは事後
  の承認を要するとして、民主的コントロールに服させている。

 2 では、条約の締結にあたり、さらに最高裁判所に締結を予定する条約が違
  憲であるか否かについての見解を求める旨の法律は、73条3号に反しない
  か。
   たしかに、違憲の疑いのある条約が一旦締結されてしまえば、後にこれを
  改定することは相手国の同意が必要なため著しく困難であることが予想され
  る。そこで、あらかじめ最高裁判所に違憲の疑いがあるかどうかについて審
  査させることが国民の人権保障につながるとも思える。また、合憲性につい
  て見解を求めるか否かについては内閣の判断に委ねられているのだから、内
  閣の条約締結権を侵害するとまではいえず、国会の立法裁量の範囲内にある
  とも思える。
   しかし、法の支配の下、立法裁量もまた憲法に拘束される。また、最高裁
  判所は法の番人として違憲審査権(81条)を行使することができるとして
  も、何らの事件性の要件もないのに法令の合憲性を判断できるとすれば、司
  法の政治化を招来し、逆に司法への不信を招くおそれもある。
   とすれば、条約の締結段階においては国会によるコントロールだけを及ぼ
  すのが憲法の態度であり、それ以外のコントロールは否定する趣旨であると
  考える。

三  以上より、本問法律は内閣の条約締結権を実質的に侵害するものであって
  73条3号に反し違憲である。


刑事訴訟法第一問
一 携帯電話の差し押さえの適法性について
 1 Aは甲を通常逮捕した際に、甲が持っていた携帯電話をメ
  モリーの内容を確認することなく差し押さえているが、かか
る行為は適法か。逮捕に伴う捜索・差し押さえの物的範囲が
問題となる。
2 憲法35条1項・法220条1項2号・3項において、無
 令状での捜索・差し押さえが認められた趣旨は、被疑者によ
 る証拠破壊・隠滅の防止と、逮捕者の身体・生命の安全を確
 保する点にある。とすれば、逮捕に伴う捜索・差しさえとし
 て許される物的範囲は、秘技事実に関連する物と、逮捕の完
 遂を妨げる凶器等に限られると考える。
3 これを本問についてみると、甲は覚醒剤譲渡の被疑者とし
 て通常逮捕されている。そして、違法な薬物の取引において
 おいては捜査機関による発覚を防ぐために、客との取引にお
 いて携帯電話が用いられるのが通常である。また、携帯のメ
 モリーはボタン操作だけで簡単に消去可能であるから、その
 内容を確認することなく差し押さえた行為は、逮捕に伴う捜
 索・差し押さえの物的範囲として適法である。

二 Aが携帯電話のメモリー内容を精査した行為の適法性について
1 携帯電話のメモリーの内容を精査することは、事物の性状
を五官の作用で感知することにあたり、検証にあたるから検
   証令状を得てなすのが原則である。
  2 もっとも、前述のように甲は覚醒剤譲渡の被疑者として逮
   捕されている。そして、その過程で差し押さえられた携帯電
   話のメモリー内には、甲の顧客となっていた者の情報が納め
られている可能性があり、甲の犯行の証拠となる可能性があ
   る。よって、Aが無令状で携帯電話のメモリー内容を精査し
   た行為は、逮捕に伴う検証(220条1項2号・3項)とし
   て適法である
    
三 乙を現行犯逮捕した行為について
 1 さらに、Aは携帯に保存されていたメールを手がかりに、約
  束の場所に現れて覚醒剤を差し出した乙を現行犯逮捕している
  が、かかる行為は適法か。Aは乙に自己を甲と誤認させて覚醒
  剤を差し出させており、かかる捜査方法はおとり捜査といえる
  ので、おとり捜査の適法性が問題となる。
 2 まず、おとり捜査そのものは、個人の意思に反してその重要
  な権利・利益を制約するものとまではいえず、任意捜査である
  と考える。もっとも、任意捜査としても個人の権利・利益に対
する不当な干渉になるおそれがあるため、適法となるためには
捜査をなす必要性と相当性の要件を満たすことが必要と考える。
3 これを本問でのおとり捜査についてみると、覚醒剤は心身に
重大な影響を与える重大犯罪であり、しかも常習性が高く、そ
の犯罪の密行性から通常の捜査方法で一網打尽にすることは困
難であり、おとり捜査によることが必要であるいえる。次に相
当性の要件であるが、犯罪意思を有する者に犯罪の機会を提供
したにすぎない場合は相手方の人格的自律権を侵害するわけで
はなく、相当性の要件を満たすと考える。これに対し、犯罪意
思を有しない者に対して犯罪を行うよう働きかけるという、犯
意誘発型の場合には不当に人格的自立権を害することになり、
相当性の要件を満たさないと考える
  本問においては、Aは甲と名乗って身分を偽っているが、も
  し正直に警察官であることを明かせば、乙が覚醒剤を差し出す
  ことは考えられないといえる。また、Aは譲渡の約束に応じて
  現れた乙に対して「約束の物はもってきてくれましたか」と言
  っただけにすぎず、ことさらに覚醒剤を譲渡するよう強く働き
  かけたわけでもない。とすれば、本問のAによるおとり捜査は
  機会提供型といえる。よって、Aが乙を覚醒剤所持罪の容疑で
逮捕した行為は任意捜査として適法である。
以上
再現率80%

刑事訴訟法第二問
一1 裁判所がビデオテープを証拠として採用することができる
ためには、ビデオテープに証拠能力が認められることが必要
である(317条)。
2(一) そして、証拠能力が認められるためには自然的関連性
    ・法律的関連性を満たし、証拠禁止にあたらないことが
    必要であるが、このうちビデオテープは伝聞証拠として
    法律的関連性を欠き、原則として証拠能力が認められな
    い(320条1項)のではないか。
     そもそも伝聞証拠が原則として法律的関連性を欠くと
     して証拠能力を否定された趣旨は、供述証拠が知覚・記
     憶・表現・叙述の過程をたどるものであり、各過程には
誤りが混入するおそれがあるため、反対尋問権(憲法3
     7条2項)でこれをチェックする必要があるからである。
この点、ビデオテープはねつ造・編集が容易であるから
供述証拠にあたるとして伝聞法則の適用を受けるとする
     見解もある。しかし、ビデオテープはその光学的特性に
     より対象を機械的に記録するものであり、知覚・記憶の
過程を経ることはないのであり、恣意が入り込む可能性
は少ない。よって、ビデオテープそのものは非供述証拠
であり、伝聞証拠ではなく自然的関連性の要件を満たせ
ば証拠能力が認められると考える。具体的には、撮影者
の撮影状況や時刻の証言により関連性を認めることがで
きると考える。
(二) もっとも、本問のビデオテープは捜査機関によって放送
   れたものを録画したものであり、原本の写しにあたる。
そこで、前述の条件に加えて、録画者に対して原本たる
     ビデオテープの放送内容を正確に録画したことの証言を
     要すると考える。
二1 もっとも、ビデオテープの中に被告人の供述が含まれる場合
  には当該ビデオテープは供述証拠としての性質を有することに
  なるから、伝聞法則の適用を受けるのであり、伝聞例外の要件
  を満たさない限り証拠能力は認められないと考える。そして、
本問のビデオテープは被告人の供述を録取したものといえるか
ら、324条1項の準用する322条1項の要件を満たすこと
が必要と考える。
2  これを本問についてみると、甲がインタビューで語っていた
  内容は放火時に現場付近にいたことを認めるものであって、犯
  行を推認させる間接事実にあたるから「被告人に不利益な事実
  の承認」にあたる。また、起訴前に私人たるテレビ局に対して
  のインタビューであり、任意になされたものでない疑いもない。
もっとも、本問ビデオテープには被告人甲の署名・押印がない。
しかし、署名・押印を要求が要求された趣旨は二重の伝聞性を
払拭させる点にあるから 、テープの画像等から甲の供述である
ことが明らかとなれば署名・押印は不要と考える。
3 以上より、テレビ局の撮影者がインタビューを正確に録画し
  たことおよび、捜査機関が原本たるビデオテープの放送をその
  まま録画したことの証言があれば、前述のように法律的関連性
  も認められるので、裁判所は本問のビデオテープを証拠として
採用できる。

       以上
再現率80%
民事訴訟法第一問
控訴審における攻撃防御方法の提出については、裁判長が当事者
 の意見を聞いた上でその提出時期を定めるとするとし(301条1
 項)、これに遅れた当事者は、裁判所に対して期間内に提出できなか
 なかった理由を説明すべきとされる(同条2項)。では、なぜ控訴審
 においては攻撃防御方法の提出時期について制約が設けられている
 のであろうか。

二 1 そもそも民事訴訟における訴訟の審理においては、口頭弁論
   の一体性から攻撃防御方法はいつ提出しても同じように扱われ
   るのであり、旧法下においては自由で活気ある審理を期待して
随時提出主義を採用していた。ところが、実際には攻撃防御方
法をいつ提出してもいいことを利用して訴訟の駆け引きに悪用
されたりするなど、かえって訴訟が遅延し当事者の訴訟に対す
る協力を低下させている等の問題があった。そこで、現行法下
においては、随時提出主義を改め、攻撃防御方法は訴訟の進行
状況に応じて適切な時期に提出しなければならないという適時
提出主義を採用した(156条)
2 そして、控訴審は第一審とは続審の関係にあるから、前述の
  口頭弁論の一体性により、攻撃防御方法は適切な時期に提出す
ればよいはずであり、時機に遅れた攻撃防御方法のみこれを却
下よいはずである(297条・157条1項)。しかし、いか
   に適時提出主義を採用し立てしても、当事者の怠慢による審理
   訴訟の遅延は免れない。さらに、控訴審にあたる裁判所は高等
   裁判所であるのが通常であるから、第一審を担当する地方裁判
   所よりもその数は少なく、弊害は著しいものとなる。 
3 そこで審理の迅速化を図るべく301条1項が設けられた。
ただ、これに違反した場合に攻撃防御方法の提出を認めないと
いう強力な効果を認めれば、失権効をおそれる当事者によって
ありとあらゆる仮定的な抗弁が控訴審に提出されてしまい、審
理の迅速化を図るという同条の趣旨をかえって阻害することに
なる。そこで、301条1項は当事者に説明義務を課すという
間接的な制裁規定を置くことにより審理の迅速化と当事者の負
担のバランスを図ったものといえる。
 
三 以上より、口頭弁論一体の原則から、第一審と続審の関係にある
 控訴審においても適時提出主義(156条)が原則であるところ、
 控訴審の負担を緩和するために301条1項で提出時期について一
 定の制限を設けたものといえる。
以上
再現率95% 


民事訴訟法 第二問

一 小問一について
 1 甲の所有権に基づくA土地の明け渡しを求める訴えが認容
  された後、後訴において審理判断の対象となる事項とは何か。
ます、その前提として前訴の既判力が何に生じるかについて
論じる。
2 ここに、既判力とは確定判決に与えられる前訴判決の後訴
に対する通用力をいう。この既判力は、原則として判決主文
にのみ生じる(114条1項)。なぜなら、当事者はここに
攻撃防御を集中するのであるから裁判所もここにのみ判断す
れば足りるし、理由中の判断にまで及ぶとすればかえって審
理が長引き当事者・裁判所に過剰な負担を強いるからである。
そして、既判力に拘束されるのは争った当事者に限られるの
が原則である。なぜなら、争ってもいない当事者にまで既判
力を及ぼすとすればその者の手続保障を欠くことになり不当
だからである。
そして、既判力により確定された権利関係は常に変動する
可能性を有する。そして、当事者は前訴の口頭弁論集結時ま
で自由に攻撃防御方法を提出できる。そこで、後訴において
審理判断の対象とされるのは、既判力と矛盾しない事項、す
なわち口頭弁論終結時までの権利関係を前提に、それ以降に
生じた事由に限られると考える。
2 これを本小問についてみると、前訴において甲の所有権に
  基づくA土地の明け渡し請求を認容する判決が確定している
  ことから、前訴の口頭弁論終結時において甲が乙に対しA土
  地の明け渡し請求権を有することについて既判力が生じる。
  よって、甲が乙に対して所有権に基づくA土地の明け渡しを
  求める後訴においては、前訴の既判力と矛盾しない事項であ
  るところの、訴え提起時において甲が乙に対しA土地の明け
  渡し請求権を有しているかが審理判断の対象となる。

二 小問2について
 本小問においても、前訴において甲の所有権に基づくA土
  地の明け渡し請求を認容する判決が確定しており、小問1と
  同じく前訴の口頭弁論基準時において甲の乙に対するA土地
  の明け渡し請求権が存在したことについて既判力が生じる。
  そこで、本小問の後訴において審理判断の対象となるのは、
  これと矛盾しない事項であるところの、基準時以降に乙が甲
  に対してA土地の明け渡し請求権を取得したかどうかである。
三 小問3について
1 本小問においては、前訴において甲の所有権に基づく明
 け渡し請求が棄却されており、前訴の口頭弁論終結時にお
 いて甲の乙に対するA土地の明け渡し請求権が存在しない
 ことについて既判力が生じる。もっとも、後訴において甲
 が相手取っているのは乙ではなく丙であり、判決の相対効
 からは争わなかった丙との関係では既判力は及ばないとも
 思える。
2 しかし、丙は前訴の確定判決後に当事者乙からA土地の
   占有を譲り受けており、口頭弁論終結後の承継人(115
   条1項3号)にあたるから、例外的に既判力が及ぶ。その
   趣旨は、承継人に対しても既判力を及ぼすことにより紛争
   解決の実効性を図ることと、承継人には当事者による代替
   的な手続保障があるからである。
よって、前訴における確定判決の既判力は承継人たる丙
にも及ぶので、本小問の後訴において審理判断の対象とな
るのは前訴の口頭弁論終結時以降に甲が丙に対してA土地
の明け渡し請求権を取得したかどうかである。

以上
再現率85% 
刑法第一問

一 乙の罪責について
 
 1 まず、乙は窃盗目的でA会社の倉庫に侵入しており、
  かかる目的での立ち入りはA社の意思に反するため建
  造物侵入罪(130条前段)が成立する。
 
 2(一) 次に、Bからの逮捕を免れるためにBの腹を蹴
     り上げるという暴行を加え、その後Bが臓器破裂
     による出血性ショックで死亡しているため、乙に
     強盗致死罪(240条後段)が成立しないか。 
(二) まず、乙は窃取目的でA社所有の絵画を手にと
    っており、乙は事後強盗罪(238条)の「窃
    盗」にあたる。そして、乙はBからの逮捕を免
    れて逃走する目的でBの腹部を強く蹴り上げて
    おり、これは反抗を抑圧するに足りる程度の暴
    行であるため、乙には事後強盗罪が成立する。
    よって、乙は「強盗」にあたる。
(三)  もっとも、Bの死因となった臓器破裂に基づ
    く出血性ショックは、後の丙の暴行により生じ
    た可能性がある。そこで、 かかる死因となっ
    た暴行が丙のものであった場合をも含めて、乙
    に強盗致死罪(240条後段)が成立するか、
    結果的加重犯の共同正犯の成否が問題となる。
そもそも共同正犯が「正犯」(60条)とされ
     全部の責任を負う根拠は、共犯者が物理的・心
     理的に相互に影響を及ぼして、結果に対して因果
     的影響力を及ぼすからである。そして、結果的加
     重犯が重く処罰される根拠は、基本犯の中に重い
     結果を生じさせる高度の危険性を内包しているか
     らである。とすれば、基本犯を共同して実行した
     者については、そこから発生した相当因果関係あ
     る重い結果について責任を問うても責任主義に反
     しないと考える。
 これを本問についてみると、丙は乙を逃がす意
思のもとに乙と意思を通じてBの腹部を蹴り上げ
ており、丙との間に事後強盗罪の共同正犯(60
条・238条)が成立する。そして、臓器破裂に
よるBの出血性ショック死という重い結果は、か
かる暴行と相当因果関係関係があるといえるから
乙には強盗致死罪(240条後段)が成立する。
    
3  以上より、乙にはA会社に対する建造物侵入罪(13
  0条前段)とBに対する強盗致死罪(240条後段)が
  成立し、両罪は牽連犯(54条1項)となる。

二 丙の罪責について

  1 (一) 乙が財物たる絵画を確保した後に、乙と意
       思を通じてBに暴行を加えたにすぎない丙に
       事後強盗罪の共同正犯(60条・238条)
       が成立するか、事後強盗罪の法的性質が問題
       となる。
(二) 思うに、事後強盗罪は窃盗犯が所定の目的
   をもって暴行・脅迫を加える犯罪類型である
から、事後強盗罪の本質は身分犯と考える。
そして、事後強盗罪は窃盗という身分を持っ
た者しか犯せない犯罪類型であるから、真正
身分犯と考える。次に、身分犯について規定
した65条について、1項・2項のいずれが
適用されるかが問題となるも、1項が「身分
によって構成すべき」とし、2項が「刑の
軽重」と規定していることから、真正身分
犯について規定した65条1項が適用される
と考える。さらに、65条1項の「共犯」に
共同正犯が含まれるかが問題となるが、身分
のない者も身分のある者と共同して法益を侵
害することは可能であるから、含まれると考
える。
(三) よって,乙と意思を通じてBに対して暴行
   を加えたにすぎない丙について、事後強盗罪
   の共同正犯(60条・65条1項・238条)
   が成立する。

2 (一) さらに、丙が臓器破裂に基づく出血性ショ
      ックで死亡していることから、丙は乙の死の
      結果まで責任を負うか、承継的共同正犯の成
      否が問題となる。
    (二) そもそも前述のように、共同正犯が「正犯」
        とされすべての責任を負うのは、共犯者が相
        互に物理的・心理的に影響を及ぼして結果に
        対して因果を及ぼすからである。とすると、
        後行者が加功する前の先行者の行為について
       は共犯者相互間に物理的・心理的影響力を及
ぼすことはありえず、結果に対して因果的影
        響を及ぼしたとは言えない。よって、承継的
共同正犯は否定すべきである。
(三) としても、同時障害の特例に関する207
条の適用により丙はBの死の結果について責
任を負わないかが問題となるも、同条は「疑
わしきは被告人の利益に」という利益原則の
重大な例外であるため、否定すべきである。

3 よって、丙にはBに対する事後強盗罪が成立し、乙とと
  もに共同正犯となる(60条・65条・238条)。

三 甲の罪責について
 1(一) まず、甲は乙に対してA会社の倉庫に入ることを
     唆し、その結果乙はA会社の倉庫に侵入しているた
     め甲にはA会社に対する建造物侵入罪の教唆犯(6
     1条1項・130条前段)が成立する。

  (二) さらに甲は、A会社の倉庫には何も財物がないこ
     とを知っていたにもかかわらず、乙に対して倉庫か
     ら財物をとるように唆している。そこで、甲に窃盗
     未遂罪の教唆犯が成立するか、教唆犯にいかなる認
     識があれば教唆の故意があるといえるかが問題とな
     る。
   そもそも、教唆とは人に犯罪の実行の決意を生じ
  させることをいう。とすれば、教唆の故意としては
  正犯が実行行為に出ることの認識で足り、結果発生
  の認識までは不要と考える。
本問では甲は乙の度胸を試すつもりで唆している
ことから、乙が実行行為に出ることの認識に欠ける
ことはないといえ、窃盗未遂の教唆の故意ありとい
える。

2 としても、甲は乙が窃盗にでることまでの認識しかなく
乙が強盗を犯すことの認識はないから、重い事後強盗及び
その結果的加重犯たる強盗致死罪の教唆犯(61条1項・
240条後段)の罪責は問えない。としても、かるい窃盗
罪の限度で教唆犯が成立しないか
 そもそも故意責任(38条1項)の本質は、規範に直面
し反対動機を形成できたにもかかわらずあえて行為に出た
ことに対する道義的避難である。そして、規範は構成要件
の形で与えられており、この重なり合いの範囲内であれば
規範の問題に直面するからその限度で故意責任を問いうる
と考える。
 本問では、窃盗未遂罪と事後強盗罪は、軽い窃盗未遂罪
の限度で重なり合いが認められる。よって、甲には窃盗未
遂罪の教唆犯(61条1項・243条・235条)が成立す
る。

3 以上より、甲には建造物侵入罪の教唆犯(61条1項
 ・130条前段)と窃盗未遂罪の教唆犯(61条1項・
 243条・235条)が成立する

以上
再現率90%

刑法第二問
一 乙の罪責について
1  乙が甲から80万円を届けさせることの意味について承諾
した点につき、単純収賄罪(197条1項)が成立するか。
2 まず、乙はB市の総務部長であり「公務員」にあたる。そ
  して「職務に関し」とは当該公務員の一般的職務権限に属
  する行為をいうところ、乙は総務部長として広報誌の印刷
  発注をする職務にに従事しており、「職務に関し」といえる。
  さらに「賄賂」人の欲望を満足させる職務の対価としての
一切の利益をいうが、80万円はこれにあたり「賄賂」と
いえる。そして、乙はこれを受け取ることを了承しているか
ら「約束」があり、乙には単純収賄罪が(197条1項)が
成立する。そして、後に丙を介して80万円を受け取った点
については包括一罪となる。
3 以上より、乙には単純賄賂罪(197条1項)が成立する。

二 甲の罪責について
 1 まず、甲については前述の通り、公務員たる乙に対して賄賂
  を提供することを約束しており、贈賄罪(198条)が成立す
  る。そして、事情をしらない丙を道具として80万円を届けさ
  せた点については、先の贈賄罪と包括一罪となる。
 2(一)(1) さらに、丙に対して「県の幹部職員である~80
        万円を届けなさい」と偽って自己のために乙へ80
       万円を届けさせた行為につき、詐欺罪(246条1
       項)が成立するか。この点、80万円は賄賂の趣旨
       で乙に交付されたものであり、不法原因給付(民法
       708条)として丙に返還請求権はないため丙に損
       害はなく詐欺罪は成立しないのかが問題となる。
(2) 思うに、私人間の利益調整を目的とする民法と法
   益保護・社会秩序維持を目的とする刑法とでは目的
   を異にする。そこで、民法上不法原因給付となる場
   合でも、欺罔されなければ交付しなかったであろう
   という関係があれば、詐欺罪は成立すると考える。
(3) 本問では、丙は乙の真意を知っていれば、80万
   円を乙に交付しても自己にとって何のメリットもな
   く交付するだけ無駄であるから、欺罔されなければ
乙に交付することはなかったという関係にある。よ
って、甲には丙に対する詐欺罪(246条1項)が
成立する。
(二)(1) そして、後に事実関係を知って80万円の弁償を
求めてきた丙に対して「そんなことを言うなら~公
表するぞ」と申し向けて丙からの請求を断念させた
      行為につき、甲に丙に対する恐喝罪(249条2項)
が成立するか。 まず、前述の申し向けた「そんなこ
と~できなくなるぞ」と申し向ける行為は、害悪の
告知にあたる。もっとも、前述の通り80万円の交
付は不法原因給付(民法708条)にあたり、丙に
返還請求権はないため、甲は財産上不法の利益を得
たとはいえないのではないかが問題となる。
 (2) 思うに、前述の通り、刑法と民法とではその目的
    を異にする。そこで、不法原因給付として民法上の
    返還請求権を有しない場合であっても不法の手段で
    返還を免れた場合は恐喝罪が成立すると考える。
 (3) 本問においては、甲は前述の通り申し向けること
    によって丙からの返還請求を断念させており、財産
    上不法の利益を得たといえる。よって、甲には丙に
    対する恐喝罪(249条2項)が成立する。
2 以上より、甲には①贈賄罪(198条)と丙に対する②詐欺罪
 (246条1項)、③恐喝罪(249条2項)が成立するが、②と
①は同一の財産的利益を目的とするものであるため、③は②に
吸収される。

三 丙の罪責について
 1 丙は自己の道路工事の発注の便宜を図ってもらう趣旨で乙に8
  0万円を交付しているが、前述の通りこれは甲にだまされて甲の
  便宜を図る趣旨で交付されたものである。そこで、甲にだまされ
  て80万円という賄賂を交付した丙について、贈賄罪(198条)
  が成立するか。
 2 そもそも、賄賂罪の保護法益は職務の公正とこれに対する国民
  の信頼にある。そして、交付が瑕疵ある意思によりなされたとし
  ても、任意の意思からなされたのであれば賄賂罪の保護法益であ
  る職務の公正とこれに対する国民の信頼は害される。よって、交
  付について意思に瑕疵があっても任意でなされたといえる余地が
  あるならば贈賄罪(198条)が成立すると考える。
3 本問では、丙は甲にだまされているものの、なお自らの意思で
  道路工事の発注の便宜を図ってもらう意思で自ら丙に80万円を
  届けている。よって、丙には贈賄罪(198条)が成立する。

以上
再現率85%


 
   








商法第一問
一 小問1について
1 甲社において、取締役Aおよび監査役Bの退職慰労金の支給は
   「報酬」(269条1項)にあたり、株主総会で具体的な金額等
   を決定せず取締役会にこの決定を一任することは法令違反とな
   るのではないか。
  2(一) 取締役A について
(1) そもそも取締役は会社と任用契約を結ぶのであり、報
   酬の決定は任用契約の一内容となるのであるから、報酬
   の決定は業務執行として取締役会の決定事項とされるは
ずである。しかし、報酬の決定を取締役会にゆだねると
すれば会社の利益よりも自らの利益を優先し、会社財産
流出を招くというお手盛りの危険がある。そこで、法は
報酬の決定を株主総会決議事項としたのである。
(2) これを退職慰労金についてみると、たしかに退職慰労
   金の決定については退職する取締役は関与しないものの、
いずれは取締役のすべてが退職金を受け取る以上、これ
を見越して不当に退職金の額をつり上げる等悪しき前例
となり、お手盛りに準じた弊害がある。また、退職慰労
金は報酬の後払いとしての性質を有する。とすれば、退
職慰労金は「報酬」にあたり、具体的な金額等の決定に
ついて株主総会決議が必要なのが原則と考える。
 もっとも、退職者はごく少数にとどまるのが通常であ
るから、具体的な金額まで株主総会決議によるべきとす
れば退職者のプライバシーを侵害することになる。そこ
で、お手盛りの弊害防止と退職者のプライバシー保護の
調和の見地から、退職慰労金の具体的な支給基準が存在
し、これがお手盛り弊害防止という269条の趣旨に合
致していること、そしてこの基準が株主にとって明らか
にされているか、もしくは容易にしることができ、かつ
当該基準によることを明示又は黙示に決議した場合には
取締役会への一任決議は有効と考える。
(3) これを本小問についてみると、甲社における退職慰労
   金の支給基準は存在するものの、これが269条の趣旨
   たるお手盛り弊害防止に合致しているとみる事情はなく、
また、株主にとって明らかにされていたり、これによる
ことを明示又は黙示に決議したみる事情も存しない。よ
って、取締役Aの退職慰労金の一任決議は269条1項
に違反するという商法上の問題点がある。
 
(一)(1) 監査役Bについて
では、監査役Bの退職慰労金について具体的な金額等
の決定を取締役会に一任したことについて、商法上どの
ような問題があるか。
(2) 監査役の報酬の決定は株主総会決議事項とされている
   が、その趣旨は監査役の独立性を報酬面から確保する点
   にある。すなわち、監査役は取締役の職務執行の監査に
   あたるところ、監査を受ける地位にある取締役によって
監査役の報酬が決定されるとすれば監査役の職務が歪め
られるおそれがある。そこで、監査役の報酬については 
株主総会決議事項としたのである。そして、前述の通り
退職慰労金は報酬の後払いとしての性質を有する以上、
具体的な金額や支給基準等についても株主総会による決
議が必要なのが原則である。
 もっとも、前述の通り、具体的な金額まで決定すべき
とすれば退職者のプライバシーを不当に侵害する。そこ
で、退職慰労金の算定基準が職歴に比例する等、恣意的
な基準ではなく、株主がかかる基準をしり、または知る
ことが容易であり、かつ当該基準によることを明示又は
黙示決議した場合には一任決議も例外的に有効と考える。
(3) これを本小問についてみると、上記で述べたような基
      準で監査役Bに退職慰労金を支給することを株主が明示
又は黙示に決議したと見られるような事情はない。よっ
      て、監査役Bの退職慰労金についての一任決議は279
      条1項に反するという問題点がある。

二 小問2について
1 C専務取締役の月額報酬を、職務内容が非常勤取締役に変更
   されたことを理由に7万円に変更した乙社の株主総会決議につ
   いて、商法上いかなる問題があるか。
  2 前述の通り、取締役と会社は任用契約を結ぶのであり、この
   契約は取締役と会社の双方を拘束するのであるから、取締役の
   同意がない限りその意思に反して報酬を減額することはできな
   いのが原則である。もっとも、Cは専務取締役から非常勤取締
   役に職務が変更されており、非常勤取締役としてふさわしい報
   酬であれば同意なく変更できるとも思える。しかし、非常勤取
   締役であっても取締役として会社・債権者に対して負うべき責
   任は他の取締役と変わらない。また、正当事由なく解任した場
   合に取締役に対して損害賠償をなすべきとする257条1項を
   潜脱するおそれもある。
    よって、職務内容に変更があっても、当該取締役の同意がな
   い限り報酬を減額することは許されないと考える。   
3 本小問においては、Cの同意なく月額報酬を70万円から7
   万円に変更した乙社の株主総会決議は違法であるという商法上
   の問題がある。  

三 小問3について  
1 本小問では、丙社において取締役にストックオプションとして
   総額10億円の新株予約権を付与し、具体的な発行時期等につい
ては取締役会に一任するとの株主総会決議がなされているが、か
かる決議には商法上どのような問題があるか。
2 ここにストックオプションとは職務に対するインセンティブを
高める目的で、市場価格より安い価格で会社から株式を購入でき
   る権利をいう。そして、ストックオプションの付与については2
   69条1項の「報酬」にはあたらないものの新株の有利発行と同
   じ危険があることから、280条の21により株主総会特別決議
を要する。
3 これを本小問についてみると、丙社取締役に与えられる新株予
 約権は一株あたり1万円で購入できるものであり、有利な条件で
 の発行にあたるから具体的な発行時期等について株主総会の特別
 決議により決定することを要する。ところが、丙社はこれを普通
 決議の方法で一任しているため、丙社の決議は280条の21に
 反するという商法上の問題点がある。
以上
再現率85%


商法第2問
一1 X銀行がY社に対して手形金を請求することができるため
  には、まずYが手形債務を負担していることが必要である。
もっとも、手形の裏書を行ったY支店長AにはY社の内規で
手形の振り出しや保証を行うことが禁じられているため、無
権代理行為としてY社には効果帰属せず、これによりYの手
形債務も発生せず、Xの手形金請求は認められないのではな
いか。
 2 もっとも、AはY社の甲支店長であり、商法上の支配人と
  いえれば権限の内部的な制限を善意の第三者に対抗できない
(38条3項)。そこで、Aが「支配人」といえるか、支配人
の意義が問題となる。
   そもそも、同条は取引安全の見地から支配人の包括的支配
  権に対する信頼を保護する点にある。とすれば、「支配人」と
  は包括的代理権を有する者をいうと考える。
 3 これを本問についてみると、Aは手形の振り出しや保証の
  権限すら与えられておらず、包括的代理権を有するとはとう
  ていいえない。よって、Aは「支配人}とはいえず、Yの手
  形金債務は発生しないのが原則である。
二1 もっとも、かかる結論は手形を取得したXにとって不測の損
  害を与えることになり妥当でない。そこで、表見支配人(42
  条1項)の規定によりXを保護できないか。
 2(一) 本条の趣旨は、支配人でない者に支配人の名称を附し
     た本人の犠牲の下に、支配人であると信じた相手方の取
     引の安全を保護する点にある。まず、外観たる支配人た
る名称を附した点については「Y社甲支店長」は「支店
ノ営業ノ主任者タルコトヲ示スベキ名称」にあたる。そ
して、甲支店が営業所の実質を満たすかについては不明
であるが、甲支店が営業所の実質を有しているのであれ
ば 問題はない。そして、取引安全を図る要請がある一
方、重過失は悪意と同視すべきであるから、主観的要件
   として善意無重過失が必要と考える。  
 (二) もっとも、Aも本問手形に裏書をなしており、当然A
     は悪意であるため、Aから手形の交付を受けたX銀行が
     善意無重過失 であっても手形金の請求は認められない
     のではないか。転得者も表見支配人の規定で保護される
     かが問題となる。
たしかに、代理権の存在について信頼を抱くのは直接
     の相手方であり、転得者ではない。しかし、手形は転々
     流通する性質を有するのであり、直接の相手方を保護す
     るだけでは手形取引の安全を害する。そこで、手形取引
     においては直接の相手方だけでなく転得者も保護される
と考える。
 1 以上より、X銀行が、甲支店長AがYの支配人でないことに
つき善意無重過失であれば、Yに対する手形金の支払請求は認
められる。                 
以上
再現率80%

民法第一問
一 小問1について
 1  契約の解除の主張について
(一) Aからの請負代金の連帯保証債務の請求に対し、連帯保証
   人Cとしては、AB間の契約を解除(635条1項)するこ
   とにより、附従性により連帯保証債務も消滅したと主張する
   ことができるか。
(二) 思うに、連帯保証人は契約の当事者ではない。また、本件
   機械は修理すれば本来の商品生産能力をあげることが可能で
   あるから、そもそも契約の目的を達成できないとはいえない。
(三) よって、CはAからの請負代金の連帯保証債務の請求に対
   し、AB間の契約を解除してその附従性により連帯保証債務
も消滅したと主張することはできない。
 2 同時履行の抗弁権(634条2項・533条)の主張について
 (一) それでは、Cは、BがAに対して損害賠償請求権を有する
    ことから、これが支払われるまで保証債務の履行に応じない
    と同時履行の抗弁権を主張できないか。
 (二) たしかに、Cは請負契約の当事者ではないため、かかる同
    時履行の抗弁を主張できないとも思われる。しかし、Aが本
    件機械の修理をすることなく代金全額を回収することができ
    るとすればAC間の公平を害する。また、Aとしては修理に
    応ずれば代金全額を回収することができるのであるから、A
    にとって格別不当というわけでもない。
そこで、同時履行の抗弁権を主張させることが不当である
 等の特段の事情がない限り、連帯保証人にも同時履行の抗弁
 権の主張が認められると考える。
 (三) 本小問においては、AC間には同時履行の抗弁権を主張さ
    せることが不当である等の特段の事情はない。よって、Cは
BがAに対して損害賠償をしない限り、保証債務の履行に応
じないというという同時履行の抗弁権を主張できる。

二 小問2について
1(一) Dは債権者代位権(423条1項)を行使することにより
     BのAに対する損害賠償を請求できないか。
(二) まず、Aが制作した本件機械には本来の生産能力を有しな
いという不具合があり、BはAに対して損害賠償請求権を有
する(634条2項)。そして、Aは多額の債務を残して行方
不明となっており、上記債権を行使しないまま無資力となって
いる。
(三) よって、DはBへの本件機械の修理代金債権を被担保債権
として、債権者代位権(423条1項)によってBのAに対する
損害賠償請求権を代位行使して自己に修理代金を支払うよう請求
できる
2(一) さらに、Aが修理に応じないまま代金全額の支払いを受けて
     いることから、修理代金相当分の不当利得がAに生じたとして、
     BはAに対して不当利得返還請求(703条)をすることができ
るか。
(二) 思うに、不当利得返還請求権が認められるかどうかは、請負契
     約を全体的に見て、対価なしに利得を得た場合に限られると考え
る。なぜなら、対価なしに利得を得たといえない場合にまで不当
     利得返還請求権を認めれば、相手方に二重の負担を強いることに
     なり妥当でないからである。
(三) 本小問についてみると、前述のようにAはBに対して損害賠償
   債務を負担しているのであり、代金全額を受け取っていたとして
   も請負契約を全体としてみれば対価なしに利得を得たとはいえな
   い。よって、DはAに対して、修理代金相当額の不当利得返還請
   求(703条)はできない。   
以上
 再現率80%


民法第二問
一 小問1について
 1 Cは庭石の売買契約(555条)をAと締結しているが、その
  「引渡」を受けていないため庭石の所有権を「第三者」に対抗で
  きないのが原則である(178条)。もっとも、Eの前者たるDは
  専らCに嫌がらせをする意図で庭石を譲り受け、引渡を受けてい
  ることから、その背信性ゆえに例外的に「引渡」がなくても庭石
  の所有権を対抗できるのではないか。178条の「第三者」の意
  義が問題となる。
2(一) ここで、まず同条の「第三者」とは、当事者および包括
     承継人以外の者で、引渡のけん欠を主張する正当な利益を
     有する者をいうと考える。そして、法は自由競争を前提と
     する以上、単純悪意であってもなお保護されるべきであり、
     178条の「第三者」たりうると考える。もっとも、専ら
     いやがらせ目的で取得する等、自由競争原理を逸脱した背
     信的悪医者はもはや保護されるべきではなく、引渡のけん
     欠主張する正当な利益を有する「第三者」たりえないと考
     える。
これを本小問についてみると、Dは自己利用目的等で庭
石を購入したのではなく、日頃快く思っていなかったCに
嫌がらせをする目的で購入したのであり、その意図からD
は背信的悪意者にあたるため、Dは引渡のけん欠を主張す
る正当な利益を有する「第三者」ではないといえる。
(二)(1) では、その背信的悪意者から庭石を譲り受け、引渡
     をうけたEとの関係についてはどうか。背信的悪意者
     からの譲受人も178条の「第三者」といえるかが問
     題となる。
   (2) 思うに、背信的悪意者が「第三者」たりえないのは
その背信性ゆえであり、契約そのものが否定されるわ
けではなく有効である。よって、背信的悪意者からも
有効に譲り受けることか可能であり、転得者について
も背信的悪意者といえないかぎり、引渡のけん欠を主
張する利益を有する「第三者」といえると考える。
(3) これを本問についてみると、EについてはCを害す
       る意図等はなく、背信的悪意者とはいえない。そして、
EがCより先に引渡を得た以上、庭石の所有権につい
てはEがCに優先することになる。

二 小問2について
1 Bとしては、Eに対して庭石に抵当権の効力が及んでいること
   を理由に抵当権に基づく物権的返還請求権を行使することが考え
   られるが、これは認められるか。
2(一) まず、庭石は時価200万円と高価なものであり、甲土
    地に置かれているため、隣接して継続して甲土地の効用を
    高めるものといえる。そして、甲土地も庭石もA所有であ
    るから、庭石は甲土地の従物(87条1項)といえる。そ
    して、Bは甲土地に抵当権の設定を受けているため、この
効力が従物たる庭石にも及ぶか。従物も抵当権の効力の及
ぶ「付加一体物」(370条本文)といえるかが問題となる。
   そもそも抵当権の本質は設定者に占有をとどめたままそ
    の交換価値を把握する点にある。そして、従物は主物と一
    体となってその経済的価値を高めるものである以上、従物
    も「付加一体物」に含まれると考える。
よって、本小問においても、従物たる庭石にBの抵当権の
 効力が及んでいるとも思われる。
(二) もっとも、従物そのものに抵当権の効力が及んでいるこ
      とが登記により公示されるわけではないから、従物の取得者
      に対して抵当権の効力が及ぶことを当然に主張することがで
      きるとすれば、取得者に不測の損害を与える。そこで、従物
      が抵当権の公示の衣に包まれているといえる場合に限り、抵
当権の効力が及ぶと考える
(三) これを本小問についてみると、庭石はDによってトラック
   で搬出されてしまっており、甲土地の抵当権の公示の衣の外
   に包まれているとはいえず、抵当権の効力はもはや及んでい
   ないといえる。
3 よって、BのEに対する抵当権に基づく庭石の物権的返還請求権は
 認められない。              
以上
再現率85% 


   
憲法第一問
一 小問1について
1 飲食店で客に酒類を提供するにあたり、知事からの酒類提供
免許取得を要すること、および酩酊者に酒類を提供することは
免許の取消事由とすることは、営業の自由を侵害し、違憲では
ないか。 
2(一) まず、営業の自由が憲法上保障されるかが問題となるが、
一度選択した職業を遂行できなければ職業選択の自由を保
障した意味がなくなるから、営業の自由は22条1項によ
     り保障されると考える。そして、飲食店で酒類を提供する
ことは、酒類を提供しない他の店よりも多くの来客が見込
めることから、酒類を提供する自由は22条1項で保障さ
れると考える。  
 (二) もっとも、かかる自由も絶対無制約ではなく、公共の福
  祉(22条1項)に基づく必要最小限度の制約を受ける。
   では、本問の法律による制限は、飲食店における酒類提供
   の自由に対する必要最小限度の制約として合憲か、違憲審
   査基準が問題となる。
    思うに、営業の自由をはじめとする経済的自由の規制立
   法は、精神的自由を規制する立法と異なり民主政での自己
   回復が容易である。また、裁判所は経済的自由に関する立
   法能力に秀でた政治部門の判断を尊重すべきである。よっ
   て、経済的自由を規制する立法については合憲性の推定が
   及ぶと考える。
    さらに、経済的自由を規制する立法については、その規
制目的により審査基準を二分すべきと考える。すなわち、
弱者救済・社会発展の調和を図るという福祉主義目的でな
   される積極目的規制立法については実態に即した政治部門
   の判断を尊重すべきであり、規制手段が著しく不合理であ
   ることが明白でない限り合憲と考える。これに対し、他者
   への害悪防止という警察目的でなされる消極目的規制につ
   いては実態に即した政治部門の判断は不要であるから、目
   的の重要性と、目的達成のためより制限的でない他に選び
   うる手段の有無を厳格に審査すべきと考える。 
(三) これを本小問の法律についてみると、酒類の提供を免許
     制にすることは、酩酊者が周囲の者に迷惑を及ぼすことを
     防止することを目的とするものであり、消極目的規制とい
     える。そして、その規制目的は酩酊者が自覚のないまま周
     囲に迷惑をかけることを防止することにあるといえ、重要
     といえる。しかし、その目的達成手段としては、免許制に
よらずとも届出制でも十分である。また、酩酊者に酒類を
提供した場合にいきなり取消事由としなくても、それより
も軽い行政指導・戒告等の手段があるのであり、より制限
的でない他の選びうる手段があるといえる。
 
 3 よって、本小問の法律は、飲食店における酒類提供の自由を不
  当に制限するものであり、22条1項に反し違憲である。     

二 小問2について
1 道路・公園等、公共の場所において管理者の許可なく飲酒する
ことを禁止し、違反した者を拘留・科料に処するとする本小問
 の法律はは飲酒の自由を侵害し、違憲ではないか。
2 まず、そもそも飲酒の自由が憲法上保障されるか。
思うに、憲法は人権カタログにある人権のみを憲法上の人権と 
して保障する趣旨ではなく、憲法制定当時に明確でなかった権利
  であっても、人格的生存に不可欠な権利といえる場合には13条
  後段により保障されると考える。
これを本小問についてみると、飲酒の自由は人格的生存に不可
欠な権利とまではいえず、13条後段によって保障されないと考
える。もっとも、飲酒の自由が13条後段によって保障されない
権利であっても、国家権力により恣意的な取り扱いは受けないと
いう保障はあると考える。
 そして、飲酒の自由が憲法上保障されない権利である以上、そ
の違憲審査基準は合理性の基準、すなわち目的が正当であり、か
つ目的達成のための規制手段との間に合理的関連性があれば合憲
と考える。
2 これを本小問についてみると、公共の場所における飲酒は周囲
  の者に迷惑を及ぼす可能性が大きく、これを防止するためにかかる
  場所での飲酒を禁止するという目的は正当といえる。そして、かか
る目的を達成するために拘留・科料という比較的軽い刑罰を用意す
ることはという手段との間には合理的関連性もある。
 よって、本小問の法律は飲酒の自由を不当に制限するものでは
なく合憲である。           
                 以上
再現率70%

憲法第二問
一 設問前段について
 1(一) 裁判所法を改正して、最高裁判所が「訴訟に~事項」、
     すなわち裁判所規則事項(77条1項)について法律案
     提出権を認めることは、国会単独立法の原則(41条)
     に反しないか。 
(二) 国会単独立法の原則とは、法律の制定にあたって、国
     会以外の他の機関の関与を経ずに両議院の議決のみによ
     り成立するという原則である。その趣旨は、他の国家機
     関が国民代表機関たる国会の議決への関与することを否
     定することにより国民の権利・自由を保障することにあ
     る。
    これを法律案の提出についてみると、国会における立
     法作用は法律案の審議・議決が中心であり、その提出は
     立法作用の本質ではない。また、国会は法律案を自由に
     修正・否決することもできる。
      よって、裁判所法を改正して最高裁判所に規則制定事
     項に関する法律案の提出権を認めることは41条の国会
     単独立法の原則に反しない。
 2 もっとも、最高裁判所に規則制定事項に関する法律案の提出
  権を認めることは、司法権の中立を害し、許されないと考える。
  すなわち、最高裁判所に法律案の提出権を認めれば、その成立
  のために最高裁判所が駆け引きにでることになり、妥協を強い
  られることが考えられる。かかる事態は、少数者の最後の砦と
  しての裁判所の地位に反するものであるし、純理性的に法を解
  釈・適用するという法原理機関性にも反するからである。
 3 よって、裁判所法を改正して規則制定事項について最高裁判
  所に法案提出権を認めることは司法権の中立性に反し違憲であ
るため、かかる改正は許されない。

二 後段について
 1 では、内閣の法律案提出権は憲法上認められるのか。
 2 まず、41条の国会単独立法に反しないかについては、裁判
  所と同じく、国会は法律案の修正・否決を自由になし得るので
  あるから、反しないと考える。
   さらに、法律案の提出は「議案」(72条)に含まれると解釈
  できるし、内閣は国会に対して連帯責任を負う地位にあるのであ
  り(66条3項)共同関係が要請されている。さらに、福祉主義
  (25条以下)の下、専門的立法については行政権が専門的スタ
  ッフを多く擁しているのであり、憲法上、内閣の法律案提出権は
許容されているだけでなく、要請されていると考える。
 3 よって、内閣の法律案提出権については何ら問題なく認められ
  る。    
     
三 異なる理由について
  まず、最高裁判所・内閣ともに、法律案の提出権を認めることが
 国会単独立法の原則に反しないことは共通する。しかし、裁判所は
 少数者の人権を守る最後の砦として政治的中立性が要求される機関
 であり、政治部門たる国会とは一線を画すべき地位にあるため、こ
 れを害するおそれのある法律案の提出権は否定される。これに対し、
 内閣は国会と同じく政治部門に属するのであり、議院内閣制(66
 条3項)の下、裁判所と異なり国会との共同関係が要請されている
 ため、法律案提出権が憲法上要請されていると考える。
以上
再現率80%
刑事訴訟法第一問

一 小問1について
 
 1 警察官が捜索差押さえをなすには、原則として裁判官の発付
  する令状が必要である(令状主義 憲法35条 法218条1
  項)。その趣旨は、捜査機関の権限濫用から国民の権利・自由
  を守るため、中立公平な立場にある裁判官に捜索差し押さえの
  可否のを判断を委ねた点にある。
   本小問では警察官は甲宅に対する捜索差押令状を有していな
  いことから、警察官の捜索差押さえが適法となるためには逮捕
  に伴う捜索差押さえとして許される必要がある(220条1項
  2号、同条3項)

 2(一) では、甲宅が「逮捕の現場」といえるか。
   まず、警察官が捜索差押さえを行ったのは甲の生活の
     本拠たる甲の自宅であり、甲の支配下にあるといえる。
     しかし、警察官は甲を逮捕することなく甲宅内を捜索し
     ている。そこで「逮捕の現場」といえるためには現実に
     被疑者が逮捕されたことが必要かが問題となる
  
  (二) この点、逮捕が間近いときに予定されていれば、逮捕
     が先行していなくても捜索差押さえをなしうるとする見
     解もある。かかる見解によれば、甲の帰宅直前に行った
     本小問の捜査押さえは適法ということになる
      しかし、前述した令状主義の精神は堅持されるべきで
     あり、捜査機関の権限濫用を下級的に防止するため「逮
     捕の現場といえるためには被疑者が現実に逮捕されたこ
     とを必要とすべきと考える

  (三) 本小問においては、甲は現実に逮捕されていない。と
     すれば、甲宅は「逮捕の現場」とはいえず、警察官が甲
    宅内でなした捜索差押さえは不適法である。

二 小問2について

 1 本小問においては、小問1と異なり乙は逮捕状により現実に
  逮捕されている。そして、乙の勤務先の机は乙の支配下にある。
  よって、「逮捕の現場」といえる。
   では、捜索の過程で発見された覚醒剤入りの小袋を警察官が
  押収することができるか。逮捕に伴う捜索差押さえの物的範囲
  が問題となる。

 2 思うに。前述の令状主義の精神を堅持する観点から、逮捕に
  伴う差押さえが許される範囲は厳格に解するべきである。そこ
  で被疑事実に関する証拠の破壊の防止・逮捕者の安全を確保す
  るための凶器の押収のみが許されると考える。
   本小問においては、覚醒剤入りの小袋は乙の逮捕の被疑事実
  たるAへの強盗とは何ら無関係であるし、逮捕の妨げとなる凶器
  ともいえない。とすれば、逮捕に伴う捜索差押さえとしてこれ
  を押収することはできない。

 3 そこで、緊急逮捕に関する210条を類推適用し、緊急捜索
  ・差押えとして押収が許されないか。
   思うに。前述の令状主義の精神を堅持する観点からは、明文
  にない捜索差押さえの例外は認められないと考える。したがっ
  て、緊急捜索・差押えとして押収することはできないと考える

 4 そこで、警察官としては、乙に対して覚醒剤入りの小袋の任
  意提出を求めた上でこれを領置(221条)するか、あるいは
  覚醒剤不法所持罪で現行犯逮捕した上で、これに伴う捜索差押
  えにより押収することができる。
                  
                      以上


  再現率 80パーセント

刑事訴訟法第二問
 
一 小問一について

 1 本小問において、甲の供述調書を甲に対する証拠とすること
  ができるためには、当該調書に証拠能力が認められることが必
  要である(証拠裁判主義 317条)
   もっとも、甲の供述調書は警察官Aから虚偽の事実を告げら
  上でなされたものであり、「任意にされたものでない疑のある
  自白」(319条1項)として証拠能力が否定されるのではな
  いか、その趣旨と関わり問題となる

 2 この点、適正手続の保障(憲法31条)と違法捜査抑制の観
  点から、自白採取手続に違法がある場合に証拠能力が否定され
  るとする見解もある。しかし、「任意」の文言は供述者の内心
  を問題にしていることは明らかであり、かかる見解は319条
  1項の文言と調和せず妥当でない。
   思うに、任意性のない自白は真実でない蓋然性が高く、これ
  を証拠として用いれば誤判の危険を招来するおそれがある。ま
  た、仮に自白が真実であったとしても、それは供述の自由を中
  心とする人権を侵害して得られた自白であるから、人権確保の
  見地からかかる自白については証拠能力が否定されると考える
  (任意性説)
   そして、「任意になされたものでない疑のある自白」として
  証拠能力が否定されるか否かは①虚偽自白を誘発するおそれの
  ある状況の有無②供述の自由を中心とする人権を不当に抑圧
  するおそれのある状況の有無により判断すべきと考える

 3 本小問においては。①取調べの苦痛に甘んじざるを得ないと
  いう弱い立場にある被疑者にとって、取調べをなした警察官A
  から第三者の目撃がある旨を聞かされれば、被疑者は大混乱に
  陥り、その結果、実際に放火をしたわけでもないのについ放火
  した旨自白した可能性がある。また、②仮に乙と一緒に放火し
  たのが真実であったとしても、第三者の証言を聞かされて「も
  はやこれまでか」と観念して黙秘を続けることをあきらめて自
  白したとも思われ、供述の自由を中心とする人権を不当に抑圧
  する状況があったといえる。
   とすれば、甲の自白は「任意になされたものでない疑のある
  自白」にあたり、その証拠能力が否定され、甲に対する証拠と
  することはできない。

二 小問2について

 1 甲の供述調書は、裁判所の面前での反対尋問を経ない供述証
  拠あり、伝聞証拠であるから原則として証拠能力は認められな
  い(320条1項)。その趣旨は、供述証拠には知覚・記憶・
  表現・叙述の各過程に誤りが入る可能性があるので、被告人の
  憲法上の権利たる反対尋問権(憲法37条2項)でこれをチェ
  ックする必要があるからである。
   もっとも、321条以下の伝聞例外の要件を満たせば証拠能
  力が認められ乙に対する証拠とすることができる。

 2(一) まず、甲の供述調書を証拠とすることについて乙の同
     意があれば、証拠能力が認められる(326条1項)。
     もっとも、乙は公訴事実について否認していることから
     かかる同意を得ることは困難と思われる。

  (二) そこで、伝聞例外の原則規定たる321条1項3号に
     より証拠能力が認められ、乙に対する証拠とすることが
     できるか。
      まず、甲は人定質問前に死亡しており、供述不能の要
     件を満たす。次に、本小問からは明らかではないが、甲
     の供述以外に放火を裏付ける証拠がないのであれば不可
     欠性の要件も満たす。
      では、絶対的特信状況が認められるか。
      思うに、小問1で前述したように、甲の供述調書はA
から虚偽の事実を告げられて得られた任意性のない自白
     であり、かかる供述調書について絶対的特信状況がある
     とは到底いえない。とすれば絶対的特信状況は認められ
     ず、321条1項3号によっても証拠とすることきでき
     ない

 3 以上より、甲の供述調書には証拠能力は認められず、乙に対
  する証拠とすることはできない。


  再現率90パーセント